第29話 この進路相談なんか変
船の停泊の前日、闇の魔術に対する防衛術の教室では、机が壁際へ寄せられていた。
空いた場所には厚い敷物が敷かれ、その上を木の人形が歩き回っている。
以前の訓練で見たものと似ていたが、今日の人形は棍棒を持っていなかった。
「今日は、相手の体の動きを封じる呪文を教える」
グリンデルバルドが手を動かすと、人形たちが止まった。
一年生の背丈ほどのものが五体、それぞれ生徒の前へ向き直る。
「ペトリフィカス・トタルス。全身金縛りの術だ。初歩的な呪いだが、子供であっても場面によっては成人の魔法使いの動きを封じることができる」
浮き上がったチョークが、黒板へ呪文を書き始めた。
呪文のスペルをめもりつつ、トムは原作でハーマイオニーがネビルを固めるときに使っていた魔法だと気が付く。
隣でハンナが手を上げた。
「先生。呪いということは、闇の魔術なんですか?」
「そうだ。何か問題があるかね」
「その……使ってはいけないものなのかなと」
「闇の魔術は他者を傷つけること、支配すること、あるいは死に至らしめることを目的としたすべての魔法の総称だが、もちろん程度の分類は存在する。ウィズリー君、呪いの分類をこたえなさい」
「えっ?」
急に指名されたロンは素っ頓狂の声を上げた。彼は急いで手元の教科書をぱらぱらめくる
「そ、あ、はい。呪いは威力によって悪戯呪文、軽度な呪い、強力な呪いに分類されます」
「よろしい。ただし、違いは威力だけではない。発動するために、術者自身の強い害意を必要とするものもある。例えば――ドルール・トルケレ」
老人が片手を突き出すと、床すれすれの空間が歪んだ。甲高い悲鳴のような音が走り、人形の胴へぶつかる。
人形はまるでトラックにはねられたように吹き飛び、壁の手前で見えない何かに叩きつけられた。
一年生たちは息をのんだ。トムは吹き飛ばされた人形から目を離せなかった。
嵐の夜に見た魔法だ。そして、狼人間となったトレローニーへ、自分が放ったものでもある。
「害意で空間を捻じ曲げ、その悲鳴を相手へ叩きつける。表面を覆うだけの防御では、内部まで伝わる衝撃を防ぎきれん」
人形が浮き上がり、生徒たちの前へ戻ってきた。
胴の裂け目から、砕けた木屑がぼろぼろとこぼれ落ちる。
「このような呪文を日常的に使うことは常に激しい害意を抱えているに等しい。そんな風にしていては心が病ないほうがおかしいだろう」
「先生。では……悪戯呪文レベルの魔法には害はないということでしょうか?」
ハンナは恐る恐る続けて聞いた。
「残念ながら違う。他者を力で屈服させ、自分に従わせることと言うのは非常に強い満足感をもたらす。それに慣れてしまえば、より大きな力を求め、気が付けば、強力な呪いに手を出すことになる」
「なら」
「アボット君。故にこの防衛学の授業があるのだよ」
グリンデルバルドが手を振ると、散らばった木屑が集まり、人形のひびを埋めていく。
「闇の魔術は毒のある薬だが、よく効く場面もある。それを完全に捨てて、使わないというのは自ら両手を縛るに等しい。君たちも場面によっては、呪いを使うことを避けることはできない。そして、重要なのはその際に常に自分たちが何のためにその呪文を使ったか意識することだ。他人を支配するためか?それともそれよりも重要な、避けられないことのためか?何かを護るために使うのか?」
ハンナは口を閉じた。
「防衛学とは外部の危ないものを自分をまもるだけではない。呪いを使う自分自身からも心を守らなければいけないのだ。今日はそれを含めて学ぶ。よろしいかね?」
「「「「「「はい!」」」」」
*
授業が終わると、生徒たちは鞄へ筆記用具をしまい始めた。
ロンが最初の説明内容も試験に出るのかと小声で尋ね、ネビルが何か返事をしていた。
一方、トムは少し考え込んだ。
ドルール・トルケレ。
空間を捻じ曲げ、悲鳴を上げさせる闇の魔術。
あの夜、自分はラベンダーを助けたかった。それは間違いない。
けれど、彼女へ覆いかぶさった狼人間をどうしたかったのかと考えると、簡単には答えられなかった。
そうしていると、突然グリンデルバルドが声をかけて来た。
「ブライト君。君は残りたまえ」
ロンとネビルが何かしたのかという顔を向けてきたので、トムは首を振った。
友人たちを先に行かせ、教本を鞄へ収める。
最後の生徒が出ていくと、老人は教卓の椅子へ腰を下ろし、トムにも向かいの席を示した。
トムは鞄を足元へ置き、腰を下ろした。
背後では、人形たちが壁際へ歩き、順番に動かなくなっていく。
「杖を返せば、すぐに聞きに来るものと思っていたが」
「……あの夜の魔法ですか?」
「医務室では、ずいぶん気にしていたではないか。先日は玩具の話ばかりだったな」
トムは鞄の留め具へ目を落とした。
「クィレル先生から闇の魔術の話を聞いて……あれは、学ぶべきではないと思ったんです」
「それで、自分が何をしたかも聞かずにおいた?」
トムは答えられなかった。
先ほど砕けた人形に、あの夜のトレローニーの姿が重なる。
「ラベンダーを助けたかったんです。でも、先生を傷つけたかったのかもしれません。あの瞬間、もしかしたら、殺意まで……」
グリンデルバルドは鼻で笑った。
「自分がそんなことを考えたかもしれないのが、怖いのかね」
「先生だと分かっていました。薬を飲めなかったのも、僕たちのせいなのに」
「それでも、君の友人を殺そうとしていた。だから排除したかった。違うかね」
トムは膝の上で手を握った。
ラベンダーを治した杖で、その直後には先生を吹き飛ばしていた。
「……違わないと思います」
「友人を助けたいという願いと、襲ってくるものを傷つけたいという願いは両立する。片方をなかったことにしても、君が使った魔法は変わらん」
老人の口調には、慰めも非難もなかった。
トムは顔を上げた。
「では、どうすればよかったんですか」
「まず、自分は追い詰められれば人を殺したいと思うかもしれんと、覚えておくことだ。しかも、君にはそれを実行できるだけの力がある」
腰の杖が気になった。トムは触れずに、老人の次の言葉を待った。
「とりわけ、誰かを守るためなら何をしてもよいと思い始めたときは、気をつけたまえ。大義があれば、人は自分のしたことを随分と寛大に評価できる」
グリンデルバルドは壁際の人形へ目を向けた。粉々になった一体は、もうほかと区別がつかない。
トレローニーの怪我は、あんなふうには戻らなかった。
「君はあの時、必要な威力を判断して放ったわけではあるまい。結果としてブラウン君は助かったが、次も同じように済むとは限らん」
彼女は狼人間のすぐ下にいた。
そのことを思い出し、トムは息を詰めた。あのときは当たってくれとしか考えていなかった。
「今日、私が狙った人形の隣には、もう一体あった。そちらまで倒れたかね」
トムは首を振った。
「威力を出すだけなら、君にもできた。どこへ届かせ、どこで止めるか。それを決められて、ようやく自分の魔法と呼べる。そして、他人と自分を護れる。」
グリンデルバルドが指を動かすと、教卓の紙が一枚、トムの前へ滑ってきた。
羽根ペンがその上で立ち上がり、呪文を書きつける。
ドルール・トルケレ。
文字になってしまえば、短いものだった。
「教えてくださるんですか」
「何をしたか分からぬまま、次も見よう見まねで放たれては迷惑だ」
トムは紙を見つめた。
知れば、また使えるようになるかもしれない。それはまだ怖かった。
だが、知らないことにしておいても、あの夜に使えた事実は消えない。
「……お願いします。どこで止めればよかったのか、知りたいです」
「まず、どこを狙ったかからだ。君はそこも怪しい」
老人は紙の上へ短い線を引かせた。
「杖はしまっておきたまえ。今日は説明だけだ」
腰へ動きかけた手を戻すと、グリンデルバルドは片方の眉を上げた。
「怖がる割に、手は早いな」
トムは何も言い返せず、鞄から筆記用具を取り出した。
*
夕食を終え、寝室へ戻ると、ロンが開いた鞄を前に、チェス盤を入れるかどうか悩んでいた。
隣ではネビルが木箱へ布を詰め、アグラオフォティスの鉢を収めている。
「それも持っていくんだ?」
「うん。駆除の薬がかかると困るから。先生に聞いたら、外へ出すようにって」
ネビルは鉢を軽く揺らし、箱の中で動かないことを確かめた。
薄紫色に縁取られた葉が、箱の上へ広がっている。
「僕の荷物より、よっぽど丁寧に詰めてるな」
ロンが言うと、ネビルは鉢の脇へもう一枚、布を差し込んだ。
「ロンの鞄は、ひっくり返しても枯れないでしょう」
「中の駒は怒るぞ」
鞄の中から、小さな抗議の声がした。結局、持っていくらしい。
トムも自分の荷物を広げた。着替えに教本、日記帳。ポンフリーのノートを入れると、それだけで鞄がずいぶん重くなる。ハロを二体並べたところで、ロンがこちらを見た。
「両方?」
「片方だけじゃ、比べられないだろ」
「チェス盤のほうが小さいじゃないか」
それには反論できなかった。
緑色のハロが耳を開き、鞄の縁へ足を掛ける。
トムは転がり落ちる前に抱え、服の間へ収めた。
*
翌朝、船は浮上した。
暗い水が次第に明るくなり、窓の外を泡が流れていく。
やがて船体が大きく揺れ、広間へ白い光が差し込んだ。
甲板へ出ると、風が頬を冷やした。
目の前には森に囲まれた入江が広がり、岸辺では、すでに数人の魔法使いがこちらへ合図を送っていた。
一月のときとは違い、生徒たちが下りる前から周囲に人が配置されている。
森の縁で杖の光が走り、枝と枝の間へ薄く広がって消えた。
「前を見て進んで! 船は逃げないから、後ろの人を押さない!」
トンクスに急かされ、トムたちもタラップを下りた。
ネビルは両手で植物の箱を抱えていたため、彼の鞄はロンが持っている。
「父さん!」
岸へ着いたところで、ロンが声を上げた。
アーサー・ウィーズリーが木の陰から顔を出した。片手には紙束、もう片方には杭の束を持っている。
「やあ、ロン。みんなも元気そうだね」
「来るなら教えてくれればよかったのに」
「決まるまで、話せないこともあってね。ジニーは?」
「後ろ。パーシーと一緒だよ」
アーサーは甲板へ手を振ったが、すぐに森の奥から呼ばれた。
「ああ、今行く! あとで話そう。君たちは、先生に言われた場所から出ないように」
急いで戻っていく背中を、ロンが見送った。
「何をしてるんだろ」
「船の魔法を止めるから、代わりに守ってくれるんじゃない?」
ハンナが言った。
実際、岸へ下りてくる先生たちと、外から来た騎士団員たちは、図面を広げながら担当する場所を確かめていた。船の周囲と、生徒たちが過ごす場所を、それぞれ別の魔法で守るらしい。
トムたちは名簿で人数を確認されてから、テントを張る区画へ案内された。
*
魔法界のテントであっても、残念ながら袋から出しただけでは立ってくれなかった。
ロンが柱を持ち上げ、トムが布を広げ、ネビルが綱を引く。
隣では、ハンナとラベンダーが上級生に結び方を教わっていた。
「そっち、引っ張りすぎ」
「引っ張れって言ったじゃないか」
「柱が抜けるほどとは言ってないぞ」
傾いた柱をロンが押し戻した。トムは杭の周りの土を少し柔らかくし、差し直してから元へ戻す。
ようやく屋根が張ると、三人は揃って手を離した。
見た目は小さかったが、入口を開けると、奥には寝台と机が並んでいた。
「よかった。床で寝るのかと思った」
「チェス盤を入れる場所もあるね」
ネビルに言われ、ロンは真っ先に鞄を寝台へ置いた。
植物の箱は、入口から少し離れた明るい場所へ置かれた。
ネビルは葉を一枚ずつ確かめ、外から吹き込む風が強すぎないか、しばらくそばで見ていた。
トムも荷物を下ろし、ハロたちを自由にした。
二体は耳を開き、寝台の間を飛び始めた。
緑色のハロは軽々と椅子を避け、自作のほうは少し遅れて、そのあとを追った。
*
駆除が始まるまでには、まだ少し時間がかかった。
マクゴナガルが学年ごとの名簿を確かめ、ハグリッドが運び出した檻を数え直す。
ポンフリーは医療用のテントへ薬箱を運ばせ、クィレルは教室から持ち出した箱の札を確認していた。
最後にムーディーが船を下りた。
「誰もおらん。始めていい」
タラップが引き上げられ、扉が閉まる。
窓の灯りが順番に消えた。甲板の縄が動かなくなり、船縁にいた飾りの鳥も羽ばたくのをやめる。
船体は岸へ渡された太い綱で固定され、先生たちは外から場所を確かめながら、駆除に必要な魔法を解いていった。
やがて、船腹の小さな口から白い煙が噴き出した。
細い筋だった煙が甲板を這い、帆柱へ絡みつく。風に吹き散らされることなく、船の周囲へ張られた透明な膜の内側で渦を巻いた。窓の向こうも白く曇り、部屋の中が見えなくなっていく。
「寝室も、ああなってるんだ」
ネビルが言った。
「虫だけじゃなくて、靴下の匂いも取れるかな」
「誰の?」
ハンナに聞かれ、ロンは返事をしなかった。
薬が行き渡ったあとも、点検と換気、それから止めた魔法を戻す作業がある。
すぐには帰れないと知らされ、上級生の何人かは早くも参考書を取りにテントへ戻っていった。
トムたちには、昼食用の長椅子を運ぶ仕事が回ってきた。
*
炊事場のそばで、七年生の男子が、麦わら色の髪をした大柄な魔法使いを呼び止めていた。
「あの、ポドモアさん。この間の工房の件なんですが」
「ああ、返事を預かっている。ちょっと待ってくれ」
男が上着の内側を探すと、別の七年生も荷物を下ろして近づいた。
「僕も聞いていいですか?」
「構わんよ。まず、この紙を広げる場所が欲しいな」
「そこの君たち、その椅子、ここへ置いてくれる?」
頼まれ、トムとロンは長椅子を下ろした。
七年生たちは木箱を寄せて机の代わりにし、一人が筆記用具を取りに走る。
「誰?」
トムが小声で聞くと、ロンが答えた。
「スタージス・ポドモア。父さんの知り合いだよ。あっちの人も、うちに来たことがある」
ロンが示した先では、頬の赤い黒髪の魔女が食料品の荷解きをしていた。名前はヘスチア・ジョーンズと言うらしい。
彼女はポドモアたちが仕事の話をしているところを見ると、近づいてきた。
「働き口の話なら、私もいくつか預かっているわ」
ヘスチアの従妹は騎士団へ物資を提供する魔法薬店を運営しており、求人を預かっているという。
店員を希望していた女子生徒が、手帳を開いて話を聞きにきた。
もう一脚、椅子が必要になったのでトムたちが運んで戻ってくると、机には求人の手紙が並び、七年生の数も増えていた。周囲の防護を確かめ終えたアーサーも加わり、書類が風で飛ばないよう石を載せている。
先生が始めると言ったわけでも、看板が出たわけでもない。
けれど、いつの間にか進路相談の場ができていた。
*
「船の試験結果でも、応募できるんですか?」
「相手によるな」
ポドモアは答えた。
「資格が必要な仕事は国で認められる試験や手続きを受けないといけないわ
ただ、今日持ってきた話は、君たちの事情を説明したうえで預かったものだ」
「うちの従妹のほうは、資格より実際に働くところを見たいそうよ」
ヘスチアが続けた。
「最初は品物の整理と注文の確認。薬の名前を覚えていても、棚から違う瓶を持ってきたら困るでしょう?」
「調合の勉強もできますか?」
「仕事に慣れてから相談になるわね。店が忙しいときは、そちらを手伝ってもらうことになるわ」
住まいは店の上の二人部屋を使えるという。
女子生徒は条件を書き留め、ヘスチアの従妹へ取り次いでもらうため、自分の連絡先を添えた。
隣では、ポドモアが更に箒と革の手袋の印が入った手紙を広げた。
大陸の店へクィディッチ用品を卸す工房で、見習いを二人探しているらしい。
「裁縫ができれば、役に立ちますか?」
別の七年生が尋ねた。
「ああ。選手用の手袋や膝当てを作っている。動きを邪魔せず、衝撃を和らげる工夫が要るそうだ。
最初は材料の裁断や修理からだな」
「箒に乗るのは、あまり得意じゃないんですけど」
「職人全員が選手並みに飛べる必要はないだろうが、試作品を試す仕事もある。
何を任せたいのか、先方に確かめておこう」
ポドモアは手紙の余白に書き込み、工房の住所を示した。ロンまで首を伸ばして覗こうとする。
「こっちは湿地の保全団体からのオファーだ」
一方、アーサーは川沿いの地図を広げた。
水質の検査や薬草の分布調査を手伝う仕事で、現地の宿舎を使えるという。
「魔法生物の世話もするんですか?」
「繁殖地の手入れもある。ただ、池だけ守っても上流からマグルの汚れた水が来れば意味がないからね。水路を直したり、ごみを集めたりする仕事も多いらしい」
「薬草学は得意です。魔法薬学も要りますか?」
「検査を任されるなら必要だね。最初は採取と記録の補助からで、場所や時刻を正確に書ける人を探している」
上級生たちは賃金や勤務時間の欄を見比べ、確認したい条件を手紙の余白へ書き込んでいった。
トムは長椅子の端で会話を聞きながら、少し安心した。
船の試験は正式な資格ではないため、魔法省や公式的な仕事に就くのは難しいかもしれない。
しかし、先輩たちが勉強して身につけたことまで無駄になるわけではないのだ。
そこへ、名簿を抱えたマクゴナガルが通りかかった。
「成績の評価や推薦状が必要なら、先生方へ申し出なさい。先方が求めるものを、先に確かめておくこと」
「試験の前でも、いいんですか?」
「相談を始めるのに、結果を待つ必要はありません。ただし、勉強をやめる理由にもなりませんよ」
七年生たちは揃って頷いた。
少し後ろでは、パーシーも手帳を開いていた。まだ卒業まで時間はあるが、聞いておくつもりらしい。
*
「騎士団では、人を募集していないんですか」
七年生の男子が尋ねた。
周辺確認を終えたムーディーが、ちょうど近くへ戻ってきていた。
「人手は要る。ただし、敵を倒したいだけなら、よそを当たれ」
ムーディーは空いている椅子へ座った。
「今いちばん足りないのは、狙われているマグルや、マグル生まれの魔法使いを逃がす人間だ。本人だけでなく、家族も連れ出す。逃がしたあとは寝床と食事、怪我人には治療が要る」
ヘスチアも頷いた。海外の働き口を探すのも、避難した人々が暮らしていくための仕事なのだという。
ムーディーの義眼が、机を囲む生徒たちを見渡した。
「イギリスでは、純血の家に都合のよい法律が次々に作られている。あっちのホグワーツでは来年から純血魔法使いは卒業試験として、マグルを一人殺すことが決まった」
羽根ペンの音が止まった。
トムは、今聞いた言葉を理解するのに時間がかかった。
さっきまで話していた試験は、教わったことを確かめ、働き口を得るためのものだった――その同じ扱いで、人を殺すことが学校で定められた。
「相手に何か罪があるわけではない。マグル狩りを競技として認めようという動きまである。記憶を処理する部署を増員し、家族や目撃者から、何が起きたかも分からなくさせている」
「そんな……」
「だから、被害が出る前に知らせる者も、逃げてきた人を一晩泊める者も必要になる。戦いだけが仕事ではない」
「僕にも、できますか」
最初に尋ねた男子生徒が言った。ムーディーは、すぐには頷かなかった。
「何を任せられるか、訓練で確かめる。成績だけでは決められん。秘密を守れるか、指示に従えるか。困ったとき、自分だけで何とかしようとせず助けを求められるか。おまえを救うために、別の人間を危険にさらすわけにはいかんからな」
男子生徒は背筋を伸ばして頷いた。
丁度その時だった。
「そこの一年生たち、手空いてる?」
炊事場からトンクスがトムたちを呼んだ。彼女の周りには皿の束が浮いている。
「そっちの話は長くなりそうだから、お昼を配るのを手伝って」
「ここへ持ってくるの?」
ロンが聞くと、トンクスは頷いた。
「机を濡らさないようにね。スープの染みがついた推薦状じゃ、あんまりよい印象を持ってもらえないだろうし」
五人は立ち上がる。
皿を受け取り、トムは椅子の間を通って話に夢中の上級生たちに食事を配った。
今後の変なハリポタについて、方向性として最も希望するもの
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現在の方向性で続きを読みたい
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主人公の判断・行動の合理性を高める
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人物たちの性格や言動を原作に忠実に
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独自の魔法設定を控える。
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説明や訓練を短くして、事件や物語を進める
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仲間との日常や明るい掛け合いを増やす
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