トムは老人を見て、それから、潰れた壁へ目を向けた。
最後の呪文は、そこへ当たった。狙いを外したのではない。何かに押され、曲げられたのだ。
「……先生が、やったんですか」
声が掠れた。グリンデルバルドは答える前に、壁際へ倒れた四人を見回した。
「ああ。ちょうど間に合ってよかった。逸らしたのは、私だ」
トムは立ち上がろうとした。しかし、膝に力が入らず、床へ手をついただけだった。
掌の傷へ冷たい水が染み込み、ようやく自分も怪我をしているのだと気づいた。
「どうして」
グリンデルバルドは答える前に手を振り下ろした。
床へ広がった水が細くまとまり、壊れた板の隙間へ吸い込まれていく。同時に、四人の体がゆっくりと浮かび、乾いた場所へ移された。
「そうしてもらう必要があった」
あまりにも平然とした返事だった。
トムはしばらく、言われたことを理解できなかった。
石を守るために、皆が戦っているのではなかったのか。
自分たちは何のために殴られ、縛られ、記憶まで奪われかけたのだ。
「わざと、逃がした?」
「そうだ」
「最初から、そのつもりだったんですか?」
「クィレルが石を持って船を去る。それは予定どおりだ。君が彼を殺しかけたことを除けばね」
ようやく、怒りが追いついた。
「ロンたちが倒れているのも予定どおりですか!」
立ち上がろうとしたが、膝に力が入らなかった。棚へ手を掛けて体を支える。
グリンデルバルドが近づこうとしたので、トムは反射的に杖を向けた。
何もできないことは分かっていた。それでも、老人の足が止まった。
「僕たちに何をしたか、見ていたんでしょう!」
「杖を下ろしたまえ、ブライト君。今の君には、私を脅すよりも先にすることがある」
老人が四人へ目を向けると、彼らの濡れたローブから湯気が上がった。
ハンナの顔に掛かっていた髪が払い除けられ、苦しそうだった呼吸が、少しずつ落ち着いていく。
「彼らは目を覚ます。忘却術の影響も調べさせる」
「だから、いいって言うんですか」
「そんなことは言っていない」
グリンデルバルドは手を軽く振って、倒れた椅子を起こし、トムの後ろへ寄せた。
「座りたまえ。怒り続けるにも、立っていられなくては不便だろう」
「説明すれば済むと思ってるんですか」
「説明を聞かずに、何を許さないか決めるつもりかね?」
トムは老人を睨み、杖を向けたまま、椅子へ腰を下ろした。
グリンデルバルドは赤い扉へ手を向け、取っ手の周囲を淡く光らせる。それから、声を落とした。
「クィレルは、アルバスが送り込んだ間諜だ」
*
――それはこの場から数日後に起こった。
この時、クィレルは磨き上げられた床へ片膝をついていた。
左肩から脇腹にかけて、まだ痛みが残っている。治療師からは安静を命じられていたが、この呼び出しを断るつもりなどなかった。
断れば、二度目はないかもしれない。
「顔を上げよ、クィリナス・クィレル」
高く、静かな声だった。
外国から戻ったばかりだという男には、旅の疲れなど微塵も見えなかった。椅子の肘掛けに置かれた白い手。
その長い指の間で、赤い石が光っている。
クィレルが顔を上げると、赤い目と視線が合った。
頭の奥へ、冷たいものが入り込んだ。
城の教室。旅先で読んだ本。帰還して知った敗北。海の底で続く生活。スラグホーンの紹介状。そして、赤い扉の向こうで杖を向けた少年。
思い出したくない顔が浮かび、反射的に目を逸らそうとした。
「俺様に見せたくないものでもあるのか?」
「い、いいえ、我が君」
「ならば、そう身構えることはあるまい」
男の唇が、笑みの形になった。
クィレルは、自分の望みを見られていると分かった。認められたかった。知識を得たかった。
才能を磨き、それにふさわしい地位へ就きたかった。
船で教えることが嫌だったわけではない。
ただ、あそこで一生を終えたくなかった。
その望みのために生徒へ杖を向けたことを、どこかで恥じてもいた。赤い目は、その恥まで眺めていた。
「なるほど」
ようやく頭への圧迫が緩み、クィレルは息を吸った。
「ダンブルドアのもとでは、才能まで飢えねばならぬらしい」
*
「そんなはずありません」
トムは首を振った。
「先生は、本気でした。僕たちに魔法をかけたんですよ。僕だって、本当に――」
「そのようだな」
グリンデルバルドは淡々と続けた。
「今のクィレルは、自分を裏切り者だと信じている」
「……どういうことですか」
「順に話そう。アルバスが長く苦しめられてきたのは、敵の数や力だけではない。そもそもあの男を倒せない以上、戦うのは得策ではない。それに騎士団の連中はテロリストではないと自称している。あくまで敵に狙われたものを助けているとな。しかし、誰が狙われ、どこへ連れていかれ、いつ移されるのか。すべてが分からなかった」
それは理解できる話だ。魔法省を掌握されている以上、情報アドバンテージは完全に奪い取られているようなものだ。
だが、クィレルがあんなことをする理由には、まだつながらなかった。
「普通に、協力してくれる人を探せば――」
「探した。送り込みもした。だが、あの男の近くへ行くことは不可能だ」
グリンデルバルドは足を組んだ。
「奴は開心術に長けている。こちらへの忠誠を胸に秘めた者を送り込めば、その胸の内を見られて終わりだ。偽りの経歴を覚え込ませても、本人が嘘だと知っている限り、綻びは残る。奴をだませるほどの閉心術の達人はそうそういない」
トムは研究室を思い出した。
記憶を取り出す練習。忘れる練習。どこまでを失い、何を残すかを確かめるための記録。
「……まさか、記憶を変えたんですか」
「彼の同意を得てな」
あまりにも普通に言われ、トムはすぐには返事ができなかった。
「クィレルの野心は本物だ。城へ戻りたいという願いも、自分の能力が正当に扱われていないという不満も。私が植えつけたものではない。その無意識の存在が非常に都合よかった」
「でも、先生は生徒のことを――」
「大切に思っている。それも本物だ」
老人は、壁際に横たわる四人へ目を向けた。
「だからこそ、アルバスは彼に頼んだ。そして彼は引き受けた。引き受けた理由を、忘れることまで含めてね」
トムは口を閉じた。
「私は依頼を受けた記憶と、計画を知る記憶を切り離した。残った望みや不満を、彼が裏切りを選んだという経緯につないだ。今の彼にとっては、それが自分の決断なのだ」
「そんなことをしたら、元の先生は……」
「消えてはいない。君を勧誘し、ほかの子供たちまで殺さずに済ませようとしたのも、彼自身の選択だ」
その言葉は、少しも慰めにならなかった。
親切な先生も、杖を向けた先生も、同じ人間だったのだ。どちらかが偽物なら、もっと簡単だったのに。
「ヴォルデモートには、見破られないんですか」
「見破られる危険はある。だが、奴が探すものは、そこにある。野心、恐れ、不満、報酬への期待。奴はそれを見つけ、自分なら扱える男だと考えるだろう」
グリンデルバルドは、わずかに目を細めた。
「人から聞いた話より、自分で見抜いたと思ったもののほうを信じる。ああいう男は、とりわけそうだ」
*
「よくやった」
ヴォルデモートが言った。
クィレルは頭を下げたまま、その言葉を聞いた。
「これを、ダンブルドアから奪ったのだな」
「はい、我が君」
「あの老人は、石を治療に用いていたと聞いたが」
「私の知る限りでは、そのとおりです」
「代わりは?」
「まだ、見つかっておりませんでした」
白い指が、赤い石をゆっくりと回した。
「惜しいことをしたな、ダンブルドア。あれほど他人を信じたがるからだ」
部屋の端で、何人かが笑った。
クィレルは笑えなかったが、顔を伏せていれば見えないはずだった。
「忠実な働きには、報いがある。望みを言え、クィレル」
何度も考えた言葉だった。
それなのに、口に出そうとすると喉につかえた。ここまで来てしまったのだという実感が、今になって押し寄せた。
「ホグワーツで、再び教鞭を執ることをお許しいただければと存じます」
「ほう」
「魔法史でも、マグル学でも、私のお役に立てる科目がございましたら――」
「ダンブルドアの船を降りて、今度はダンブルドアの城へ戻りたいというわけか」
クィレルの背中が冷えた。
「いえ、そのような意味では」
「そう怯えるな。まだ断ってはおらぬ」
ヴォルデモートは石を机へ置き、椅子へ背を預けた。
*
「石まで渡す必要が、あったんですか」
トムが尋ねると、グリンデルバルドは頷いた。
「船から逃げてきただけの男と、賢者の石を持ち帰った男では、迎えられ方が違う」
「でも、本物なんでしょう。ヴォルデモートが使ったら、不死になってしまうんじゃ……」
「命の水を飲み続ける限りは、な」
老人は、トムが口を挟む前に続けた。
「石を失えば薬を作れず、薬が尽きれば死を待つことになる。奴は、そういう不死には満足せんだろう。自分の命を保つために、何かを持ち続け、飲み続けねばならん。その依存を嫌う。まして、ニコラス・フラメルのようになりたいとは思うまい」
トムの頭に、映画で見た老人が浮かんだ。
握手をしただけで、こちらが心配になるほど頼りない体。少し乱暴に触れれば、骨が折れてしまいそうだった。
あの姿で永遠に生きられると言われても、ヴォルデモートは喜ばないだろう。
欲しいのは、ただ死なない体ではなく、誰にも脅かされない力なのだ。
「……黄金は?兵隊を雇ったり、外国から物を買ったりできます」
「できる。それまで否定するつもりはない」
あっさり認められ、トムは顔を上げた。
「だが、今や奴らは国を支配する側だ。税を取り、土地や商売を押さえ、財産を蓄えている。そこへ際限なく黄金を流し込めば、どうなる?」
トムは少し考えた。
金貨を増やしても、薬草が早く育つわけではない。職人の数も、食料も、そのままだ。同じ品物を、増えた金貨で買おうとすることになる。
――ハイパーインフレーションだ。
「物の値段が上がって……」
「金庫に山ほど金を持つ連中には、面白くない話だろうな」
その金庫を持っているのは、ヴォルデモートを支える純血の家々でもある。
金を作れるからといって、国を無制限に豊かにできるわけではなかった。
「使い道はある。こちらを苦しめるためにも使うだろう。敵に利益を与えぬまま、敵の信用だけを買えると思うほど、我々も楽観してはいない」
グリンデルバルドの声から、皮肉が消えた。
「偽物を見破られれば、クィレルは死ぬ。ささやかな手土産では、ささやかな褒美しか得られん。欲しいのは、とある魔法省のポストだ」
「ダンブルドア先生の治療は?」
「その代償も、アルバスは承知した」
トムは老人を見つめた。
石を渡した理由は分かった。分かってしまったことが、かえって腹立たしかった。大人たちは危険を見落としたのではない。
数えた上で、このやり方を選んでいたのだ。
「でも、クィレル先生はホグワーツへ戻りたいんでしょう。魔法省へ行くとは限りません」
「そのとおりだ。任命するのはヴォルデモートだ。しかし、奴は疑い深い。裏切った人間の第一希望を聞くほど甘くない。だから、われわれのほうでちょうどいい椅子を作り出してやった」
老人が言葉を切ったところで、トムの頭に新聞の一面が浮かんだ。
担架を囲んで走る魔法使いたち。その下に書かれていた、局長の名前。
「……まさか、マグル魔法使い管理局の、ジャグソンって人を」
「奴は長く執務に戻れない。次長は代行を務めているが、正式な後任はまだ決まっていない」
「そのために、襲ったんですか」
「そうだ」
*
「ルシウス」
呼ばれた男が、一歩前へ出た。
「はい、我が君」
「クィレルには、もっとふさわしい仕事があるのではないか。せっかくの知識を、子供相手の授業だけに使わせるのも惜しい」
ルシウス・マルフォイは、短くクィレルへ目を向けた。その視線は傷めた肩にも留まったが、気遣う言葉はなかった。
「それでしたら、マグル魔法使い管理局はいかがでしょう」
「続けよ」
「ジャグソンはいまだ執務に戻れず、次長のファッジが代行しております。しかし、重要な部署をいつまでも代行に任せるわけにはまいりません。クィレルはマグル学にも通じております。マグル生まれの者たちの能力を見極め、適切に配置するには、役立つ知識かと」
クィレルの指が、床の上で動いた。
管理局。
思い描いていた教室とは、あまりにも違っていた。そこが何をしている場所か、自分は知っている。
生徒たちへも、その一端を話したことがあった。
「不服か、クィレル」
赤い目がこちらへ戻っていた。
「い、いいえ」
「おまえは、能力を認められたかったのではなかったか」
クィレルは唇を湿らせた。
ここで断れば、何が残る。
戻る船はない。自分を迎えてくれる生徒も、もういない。
「身に余る光栄です、我が君」
「そうであろう」
ヴォルデモートは微笑んだ。
「ルシウス、必要な手続きを進めよ。身分についても、この働きにふさわしい扱いを」
「承知いたしました」
クィレルは深く頭を下げた。額が床へ近づくにつれ、肩の傷が引きつれたが、今度は声を漏らさなかった。
*
「そこまで、思いどおりになるんですか」
「ならぬかもしれん」
グリンデルバルドは、ためらわずに言った。
「向こうが別の者を選べば、別の手を考えるしかない。ただ、クィレルには知識と功績があり、独自の支持基盤は乏しい。与えられた地位を失うことを恐れ、任命した者に恩義も感じる。支配する側には、使いやすい人材だ」
「逆らわれずに済むから……」
「そうだ。望んだ仕事は与えず、それでも以前より高い地位には就ける。報いたという形を整えながら、次の望みを残しておける」
トムは、クィレルが去っていった扉を見た。
あの先生は、自分たちへ差し出したのと同じものを、向こうで差し出されるのだろう。
安全。身分。能力にふさわしい仕事。
選ばなければ何も残らないと思わされながら。
「でも、先生自身は裏切ったと思っているんですよね。どうやって情報を送るんですか」
「彼が知っている必要はない。受け取った書類をどう分け、どこへ置くか。その習慣に、細工をしてある」
移送の日程。収容先の変更。新たに見つかった子供の名簿。
そうした情報を含む書類を読むと、クィレルは決まった処理をする。本人には、仕事を進めるための整理としか思えない。
その後で誰が書類を取り、どこへ運ぶかを知らないから、尋ねられても答えようがない。
「受け取る人も、魔法省にいるんですか」
「いる。ただし、その者だけでは必要な書類を揃えられない。局長の手元には届いても、下へ回されぬものがある。何が伏せられているかさえ分からなければ、盗み出しようもない」
トムはしばらく考え、ようやく顔を上げた。
「クィレル先生が、必要なものを選んで渡すんですね。自分でも、知らないうちに」
「そのようにしてある」
「そんなことまで、人の記憶で……」
「以前、君のような子供の記憶をいじって、アルバスを殺す方法は十三通りあると、話したはずだ」
グリンデルバルドは、少しも得意そうではなかった。
「本人が忘れた命令は、命令だと思われぬまま働くことがある。今回は、それを人を救うために使う」
トムは黙った。
目的だけで、使った魔法の性質が変わるわけではない。
授業で聞いた言葉が、今になって胸へ落ちてきた。老人も、そのことは分かっているはずだった。
「クィレル先生は、いつ元に戻るんですか」
グリンデルバルドは、すぐには答えなかった。
「さぁね」
それは一番聞きたくない返事だった。
*
新しい執務室には、古い主の匂いが残っていた。
高価な革椅子と、甘すぎる葉巻の匂い。壁には管理局の功績を称える額が並び、窓の外では魔法省が用意した晴天が続いている。
クィレルは冷めたコーヒーを飲み、次の書類へ手を伸ばした。
南部地区からの移送予定。氏名、年齢、魔法の習熟度、割り当て先。
十二歳という数字のところで、指が止まった。
トムも、それくらいだった。
クィレルは目を閉じ、すぐに開いた。考えても仕方がない。あの子は自分で断ったのだ。自分が差し出せるものには限りがあった。
書類へ確認の印をつけ、機密情報書類入れに置きかけたが、思い直して机の端の浅い盆へ置く、念のため後でもう一度確認しよう。
そして、そう考えた理由を、わざわざ確かめはしなかった。
――その時、扉が叩かれた。
「やあ、局長。お邪魔しても?」
コーネリウス・ファッジが、書類を抱えて入ってきた。
「引き継ぎは順調ですかな。いやはや、就任早々これでは、さぞ骨が折れるでしょう」
「確認の必要なものが、いくつかあります。特に移送の日程変更は、私にも知らせてください」
「もちろん、もちろん。手続きは大切ですとも」
ファッジは机へ書類を置き、机の端へ手を伸ばした。
短く目を通し、そのまま自分の束へ重ねる。
「これは私のほうで回しておきましょう。お茶でもいかがです? 少し席を離れるのも――」
「いえ。まだ、こちらがありますので」
「仕事熱心で結構。ですが、無理はなさらんことです」
ファッジは愛想よく頷き、部屋を出ていった。
扉が閉まると、クィレルは次の頁をめくった。
先ほど読んだ十二歳の子供たちの名前のことを、何故かすっかり忘れてしまった。
*
ロンが、小さく呻いた。
トムは椅子から腰を浮かせた。
グリンデルバルドが手を添えようとしたが、首を振り、自分で壁際まで歩いた。
ロンはまだ目を閉じていた。額へ触れると温かく、呼吸も落ち着いている。
その隣ではラベンダーが横向きに寝かされ、ハンナとネビルが続いていた。
「みんなの記憶は、戻せるんですか」
「まずはポンフリーに診せる。何が残り、何が失われたかを確かめるのは、その後だ」
トムはロンのそばへ座り込んだ。
自分は忘れなかった。忘れなかったから、今、説明を受けている。
「僕まで忘れていたら、どうするつもりだったんですか」
背後で、衣擦れの音がした。
「どうにかする必要はあるのかね?」
「……」
トムは深呼吸をして、杖をしまった。
ロンの袖を直した。濡れていると思ったのが、どうやらもう乾かされていた。それでも、しばらく指を離せなかった。
「あと、なぜ僕に石を持たせたんですか。先生の部屋から盗ませればよかったでしょう」
「もう一つ確かめたいことがあった」
老人の目が、じっとこちらを見ていた。
「君が、どうするかも見たかった」
トムは、一瞬何を言われたのか分からなかった。
「信じていた者が敵になったとき、何を選ぶのか。差し出された安全のために、何を手放すのか。我々を裏切るのか」
「……試験だったんですか」
「君にとっては、そう呼べるものではなかっただろうな」
胸に、再び怒りがこみ上げた。だが、今度は怒鳴る力もなかった。
「ラベンダーも、ハンナも、ネビルも、ロンも、何も選んでいません。僕はあちら側に付かなかった。これで満足ですか?」
グリンデルバルドは、トムのそばへ立った。
「ああ。これで君は十分能力と忠誠を示した」
「……」
少し沈黙が流れる。
杖とか、ダンブルドアの計画とかでもう少し聞きたかったが、この老人と会話する気にもなれなかった。
とにかくもう医務室のベッドでねたい。
「ブライト君」
この場から去ろうとすると、今度は呼び止められた。
不満をあらわにして老人を睨みつけていると、彼は無表情で告げた。
「……君にはハッフルパフ強制収容所へ潜入してもらう」
*
その日の夕方、コーネリウス・ファッジはいつもと違う出口から魔法省を出た。
帽子の位置を直し、二つ角を曲がり、人気のない路地へ入る。
そこで待っていたフクロウを見つけると、その脚へ、小さく畳んだ包みを結びつけた。
鳥は羽ばたき、建物の間から暮れかけた空へ上がる。
ファッジはフクロウを眺め、ただ静かにその無事を祈る。そして、踵を返して何事もなく家に帰った。
一方、フクロウは飛び続ける。街を超え、山を越え、人家の灯りが途切え、やがて水辺の岩へ降りる。
そこで包みを落とすと、二度嘴で岩を叩く。そして、再び休むことなく飛び去っていった。
しばらくして、水面におそるおそる頭が現れた。
人魚は岸を確かめ、岩の上の包みを防水袋へ収めた。
その体が水中へ消えると、岸には小さな波だけが残った。
*
その郵便が受け取られたとき、ダンブルドアはまだ起きていた。
机の上には、各地から届いた報告が広げられている。その全て、既に起きた出来事を記したものだった。
しかし、新しく届けられた包みは異なった。
今後「実習」と言う名目の強制奉仕活動に従事することになる子供の名前。現在地。出発予定。
護衛の人数と、引き渡し先。
ダンブルドアは一枚ずつ読み、最後の頁を机へ置いた。
「この子がちょうどいいだろう。関心が薄く、護衛もいない」
ムーディーの義眼が、名簿を見つめた。
「クィレルは、うまく入り込んだようだな」
「そのようじゃ」
「だが、代償は小さくない。彼は彼でなくなってしまった」
ダンブルドアもその言葉に頷いた。
しばらく、二人とも口を開かなかった。壁の向こうから、夜の見回りをする者の足音が聞こえ、やがて遠ざかっていった。
ダンブルドアはもう一度名簿を見た。
――まだ顔を知らない子供たちの名前ばかりだ。
机の端へ地図を引き寄せ、細い指で道をたどった。
「アラスター、皆を集めておくれ」
ムーディーは頷き、扉へ向かった。
「そろそろこちら側の反撃とさせてもらうよ。トム」
このハリポタと賢者の石なんか変は大体以上です。
後はやっとトムがダンブルドアと話すところやハーマイオニーの状況のエピローグです。
本当は今日中にやり切りたかったけど疲れた……
また明日。
今後の変なハリポタについて、方向性として最も希望するもの
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現在の方向性で続きを読みたい
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主人公の判断・行動の合理性を高める
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人物たちの性格や言動を原作に忠実に
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独自の魔法設定を控える。
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説明や訓練を短くして、事件や物語を進める
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仲間との日常や明るい掛け合いを増やす
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その他(よければ感想欄へ)