青峰大輝 in ブルーロック   作:AIで小説を上手く書きたい!

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本作はAIを使用した小説執筆の試行です。作成した小説からはAI小説由来の物足りなさは感じるのですがうまく言語化できていません。ぜひ感想等を通じて改善点の言語化に協力ください。


第001話 青峰大輝

 「青峰、こっち! 青!」

 

 フェンスを開けたところへ、ビブスが飛んできた。

 

 青峰大輝は片手で受け取り、肩に掛けていたバッグをベンチへ投げた。雨上がりの人工芝には、もう水たまりはない。小さなコートの両端にゴールがあり、青と橙に分かれた男たちが、再開を待っていた。

 

「遅刻」

「一分だろ」

「その一分、お前抜きで守ってたんだよ」

 

 受付の仕事もしている世話役が、青のゴールから声を張った。壁の時計では、三十分の利用時間が既に動いている。

 

 青峰は上着を脱ぎ、ビブスを被った。

 

「入れられた?」

「まだ。だから早く入れ」

「じゃ、問題ねえな」

 

 世話役が何か言い返す前に、青峰はコートへ出た。

 

 キーパーを含めて五人ずつ。年齢も、普段蹴っている場所もばらばらだ。仕事帰りの男もいれば、青峰とそう変わらない年の男もいる。学校の試合のように、同じ相手と何日も練習して臨むわけではない。その日に来た十人で分かれ、時間まで蹴る。

 

 青峰は相手ゴールを見た。

 

 橙の四番が中央に立っていた。青峰と目が合っても下がらず、横の味方に一言伝える。青峰が右へ歩くと、自分も同じ方へ寄った。

 

 少なくとも、最初から守るのをやめてはいない。

 

「お前、前でいい?」

 

 青の右側にいた、短髪の男が尋ねた。

 

「どこでも」

「じゃあ前。俺、右から行くから」

 

 男はそう言って、再開のボールへ走った。横から来たパスを受け、正面の守備者に向かって運ぶ。青峰はその左前へ出た。パスをもらえば、ゴールまで一人だった。

 

 男は撃った。

 

 正面にいた守備者の脛に当たり、ボールが中盤へ跳ね返る。

 

「あー、くそっ!」

 

 男はすぐに追った。青峰も戻り、競り合いからこぼれたボールを先に拾う。

 

 ゴールまでは十数メートル。正面に一人、その後ろに四番。どちらも青峰を見ていた。青峰は右足でボールを運び、一人目の前で速度を落とした。

 

 相手が腰を下げる。

 

 青峰は右へ出た。

 

 ボールを大きく蹴り逃がしたのではない。相手の足が届く少し外へ置き、その横を身体ごと通り抜けた。守備者が向きを変えた時には、もう青峰の背中が前にあった。

 

「四番、来る!」

 

 声を受けて、四番がゴール前から詰める。

 

 青峰はそちらを見たまま、左へボールを切り返した。四番の足が右側の進路を塞ぐ。その逆へ抜け、キーパーと向き合った。

 

 キーパーが前へ出る。

 

 青峰は、その足元を通した。

 

 低いシュートがゴールの左隅に入り、ネットを揺らした。

 

 一対〇。

 

「……速っ」

 

 追ってきた短髪の男が、ゴールの前で止まった。

 

「最初、ゆっくり来たから追いつけると思ったのに」

「走りゃいいだろ」

「走ってたわ!」

 

 青峰は男の顔も見ず、中央へ戻った。後ろでは、抜かれた一人目が四番に両手を広げている。

 

「動いてからじゃ間に合わねえ。近づけない方がいい」

「遠くで待ったら撃たれるぞ」

「じゃあどうすんだよ」

 

 四番は答えず、青峰の足元を見た。

 

 短髪の男が並んでくる。

 

「さっき、俺の左にいた?」

「いた」

「パスの方がよかったか」

「自分で撃つなら、前の奴くらいどかせよ。あのまま撃ったら脚に当たるだろ」

 

 男は、自分のシュートを防いだ相手を見た。

 

「分かってんだけど、ゴール見えると撃ちたくなるんだよな」

「じゃ、入れろよ」

「次は入れる」

 

 返事が早かった。

 

 青峰は、ゴールの中のボールを見ていた。

 

 男が何を言いかけても、相手の再開が始まればそちらへ顔を向ける。短髪の男も追うのをやめ、自分の位置へ戻った。

 

 次の攻撃は、世話役から右へ出た。短髪の男が受ける。青峰は中央で手を出したが、男は自分で運んだ。さっき撃った場所より一歩深く入り、守備者の横へボールをずらす。

 

 シュートはキーパーに弾かれた。

 

「惜っしい!」

 

「どこがだよ」

 

 青峰はゴールへ詰めた。四番が先にこぼれ球を外へ蹴る。背後から青峰の足が来るのを見て、浮かせて逃がしたクリアだった。

 

「今、入ってきたのか」

 

 四番が振り返る。

 

 青峰は答えず、キックインの場所を指した。ボールを拾った男が、黙ってこちらへ転がしてくる。遠いところからでも、足元へ来れば十分だった。

 

 まだ、二十八分近くある。

 

*

 

 二点目の機会は、右サイドで来た。

 

 青峰が持つと、四番が正面を塞いだ。左にはもう一人。中央へ入る道を二人で閉じ、タッチライン沿いに追い出そうとしている。

 

 短髪の男が、その外を追い越した。

 

「青峰、縦!」

 

 青峰は見なかった。四番の足元へ、右足でボールを近づける。外へ押せば、タッチラインまで一メートルもない。左へ切り返せば、もう一人が待っている。

 

 四番は奪いに来ない。青峰が止まるのを待っていた。

 

 青峰は、二人の間へ右肩を入れた。

 

 四番が腰を引く。ぶつかると思った隣の守備者も、そちらへ足を寄せる。その足が揃った瞬間、青峰は左足の内側でボールを中央へ押し出した。右へ傾いていた身体が、踏み込んだ一歩で左へ移る。

 

 四番の隣の男が腕を伸ばした。

 

 届く前に、青峰が二人の間を抜けた。

 

 四番はついてきた。

 

 青峰はさらに速度を上げる。四番が並びかけたところで急に止まり、その身体だけを一歩先へ行かせた。

 

 正面が空く。

 

 短い振りで撃ったボールが、遠い側のゴールネットへ突き刺さった。

 

 二対〇。

 

「こっちも空いてた!」

 

 短髪の男が、右の端から叫んだ。

 

「見えてた」

「だったら一本くれよ」

「俺が撃てるだろ」

 

「俺も撃てたって話だよ」

 

「先に取れよ。欲しけりゃ」

 

 男は何か言いかけ、二対〇の表示を見た。青峰は既に相手の再開を待っている。得点を喜んでいるのでも、味方をからかっているのでもなかった。

 

 男が走った右側には、結局一度もボールが来なかった。

 

 青峰は追い越された四番を見た。四番は膝に手をつきかけ、すぐに起き上がる。

 

「急に止まんなよ」

「ついてくりゃいいだろ」

「簡単に言うな」

 

 それでも四番は、次も前に出てきた。

 

 三度目は、さっきより早かった。

 

 青峰が右のタッチライン際で受けると、四番は中央を塞ぎ、肩を寄せた。青峰はボールを前へ押し出して抜ける。ただし、今度はゴールへ真っすぐ向かえない。四番に外へ押し出され、ゴールラインに近い、角度のない場所まで来ていた。

 

 中央では短髪の男が手を上げる。

 

 キーパーもそれを見た。青峰から味方への折り返しに備え、ゴール中央へ半歩動く。

 

 近いポストと、キーパーの身体の間が開いた。

 

 青峰は、そちらへ右足を振った。

 

 四番に肩を押され、身体はコートの外へ傾いている。踏み直してゴールを向く暇はない。それでも右足の外側がボールを捉えた。

 

 シュートは細い隙間を抜け、近い側のネットを打った。

 

 青峰はラインの外で足を踏み替え、倒れずに止まった。

 

 三対〇。

 

 キーパーがポストを見て、それから四番を見る。

 

「今の、撃ったの?」

「俺に聞くなよ」

 

 青峰がボールを取りに入ると、キーパーが先に拾い上げた。

 

「あの体勢から、こっちに蹴れんのか」

「空いてたろ」

 

 キーパーは、自分とポストの間をもう一度見た。

 

 中央へ戻ってから、四番が言う。

 

「崩したと思っても撃つぞ。身体、起きるの待つな」

 

 身体を崩しても、青峰のシュートは止まらない。踏ん張れなければ横へ倒れながら、右足が塞がれば左足で撃つ。守る側が普通のシュートの形を待っている間に、ボールはゴールへ飛んでいた。

 

 四番はそれに気づいた。青峰は、その男へ目を戻した。

 

 分かったなら、次はどうする。

 

 四番の膝が曲がる。青峰も、踵を浮かせた。

 

*

 

 橙の一点は、その後すぐに入った。

 

 四番が自陣でボールを受けた時、青峰はまだ前にいた。横パスを奪えば、もう一度ゴールへ行ける。四番と隣の男の間へ寄る。

 

 四番はその横を通さず、前へ出した。

 

 橙の長袖の男が、青の守備者を背負って受ける。四番はパスを出した場所に止まらず、青峰の脇を走り抜けていった。

 

「戻せ!」

 

 長袖の男が一度四番へ返し、自分もゴールへ走る。青の守備者が四番を止めに出た、その背後へ。

 

 四番はボールを止めなかった。

 

 守備者の横を抜けるパスが、長袖の男へ戻る。キーパーと一対一。男は右隅へ蹴り込んだ。

 

 三対一。

 

「よしっ! 今の、もう一回やろう!」

 

 長袖の男が四番へ駆け寄る。

 

「お前に一回戻せば、俺、あいつの後ろへ走れる」

「先に走れよ。止まって待たれたら出せないからな」

「分かった、分かった!」

 

 二人の掌が鳴った。

 

 青のゴールから、世話役の声が飛ぶ。

 

「青峰! そっちの四番、置いてくんな!」

 

 青峰は振り向いた。

 

「横、取れると思った」

「取れなかったら戻れ。二人来たら守れねえって」

 

 青峰は舌打ちした。自分が先回りした横パスは、結局一度も出なかった。四番は青峰を抜こうとせず、ボールを預けて走ったのだ。

 

 中央へ戻ってきた四番と目が合う。

 

「今度はそっちかよ」

「一人でお前を抜けると思うほど、若くないんで」

「大して変わんねえだろ」

「十六と一緒にすんな」

 

 四番は笑い、青峰の正面へ立った。

 

 青峰は四番の前で立ち止まった。

 

「次、止めろよ」

「そのつもりでやってるよ」

 

 世話役が再開のボールを左の味方へ入れる。青峰は中央から走り出した。

 

 四番がついてくる。味方がパスを蹴る前に、青峰は右へ寄った。四番も動く。その足が地面についたところで、今度は中央へ走る。

 

 青の左側にいた男が、空いた場所へ出した。

 

 青峰は止めずに撃った。

 

 キーパーの左を、ボールが抜ける。

 

 四対一。

 

 四番がまだ走っている横で、青峰はゴールから身体を返した。

 

「強く蹴りすぎたと思ったんだけどな」

 

 パスを出した男が、短髪の男へ言った。

 

「前に蹴っとけば追いつくんだな、こいつ」

 

 青峰は聞き流した。

 

 中央へ戻る四番の息が、さっきより荒い。横についた別の守備者も、膝へ手をついていた。

 

 五点目の前に、四番が味方を呼び寄せた。

 

「追いつこうとすんな。あいつがこっちへ来るまで待つ」

 

「待ったら撃つだろ」

 

「前と後ろ、同時に抜かれなきゃいい。俺が前。お前は二メートル後ろ。止まっても一緒に止まるな」

 

 青峰は、聞こえるところに立っていた。

 

 四番は大学まで競技として蹴っていたと、受付の男が言っていた。今も休日には地域のリーグに出ている。さっきから他の選手が迷うより先に位置を変え、味方へ次の相手を指していた。初めて組む者同士で、誰を動かせばいいかは分かっている。

 

 青峰が抜いた場所を埋めるのも、四番が一番早かった。

 

 だから最初から、そこへ行っている。

 

「聞こえてんぞ」

 

「聞かれて困ること言ってないだろ」

 

 四番が正面へ戻った。

 

 青峰は右手を上げた。味方のパスが足元に入る。ゴールは正面、まだ十五メートルほど先。四番が二メートル前、その後ろにもう一人。短髪の男は右を走ったが、四番はそちらを見なかった。

 

 青峰は左へボールを転がした。

 

 四番も動く。抜きに来たと決めつけて足は伸ばさない。青峰の胸が前へ出ても、腰を低くしたまま距離を保った。

 

 青峰は一度、足を止めた。

 

 四番は止まり、後ろの男は少し下がる。前の一人が置き去りになっても、次は追いつける距離だった。

 

 青峰は、その場から撃つように右脚を引いた。

 

「撃つぞ!」

 

 後ろの男が身体を正面へ向ける。四番だけは、まだ飛び込まなかった。振り足を見てからでも、ボールの前へ足を出すつもりだったのだろう。

 

 青峰は右足をボールの外へ下ろした。

 

 蹴らずに跨ぎ、その足で地面を押す。同時に左足で右前へボールを運んだ。止まっていた身体が、四番の左脇へ出た。

 

 四番が右足を踏み直す。

 

 青峰は、もう次の守備者の前へ来ていた。

 

 二メートルあった。

 

 四番が追い直すには足りず、後ろの男が迎えに出るにも足りない。男は構えたまま、青峰の一歩目を待ってしまった。

 

 その一歩で、左を抜かれた。

 

 キーパーは前へ出かけて止まった。青峰が右脚を大きく引かないことには、もう気づいていた。近い側を閉じ、次の一触で来るシュートに備える。

 

 青峰は、足の外側で遠い隅へ撃った。

 

 準備していた方向と逆だった。キーパーの膝が芝につく頃には、ボールがネットの底を転がっている。

 

 五対一。

 

 後ろから来ていた四番が、ゴール前で止まった。抜かれた男に何か言おうとし、先に息を吸った。

 

「間、空けすぎた?」

 

 男が聞く。

 

「いや」

 

 四番は首を振った。

 

「あれ以上近かったら、一回で二人とも抜かれてる」

 

「じゃあ、今のどうすりゃよかったんだよ」

 

 青峰も、その答えを待った。

 

 四番は何も言わず、ネットからボールを拾った。

 

 身体はまだ動いた。呼吸も苦しくない。三十分のために力を残しておく必要などなかった。なのに、いちばん走った五点目でさえ、相手に届かれる前に片がついてしまう。

 

 青峰は、キーパーが顔を背けるのを見た。

 

 そこで自分まで満足した顔をすれば、今日もこれで終わりだった。

 

「楽だなあ、お前いると」

 

 短髪の男が戻ってきた。

 

「俺、渡しただけじゃん」

 

 青峰は何も答えなかった。

 

 ボールが来ることは、当然欲しかった。自分がいれば入る。そこまで分かっているなら、余計なところへ出されるより早く寄越した方がいい。

 

 だが、男はまだゴールから十メートルも離れたところで走るのをやめていた。入ったのを見て止まったのではない。青峰が持った時には、もう休んでいた。

 

 次の攻撃も同じだった。短髪の男からボールが来る。右を上がれるのに、その場で止まる。

 

「行っていいぞ」

 

 その声へ、青峰は目を向けた。

 

「お前が決めんな」

 

「何を?」

 

 青峰は説明せず、相手ゴールへ顔を戻した。

 

 これから自分が点を取ることを、蹴る前から済んだものとして扱う。相手までそうなれば、またボールを運ぶだけになる。

 

 後ろから来る足音が、一つ減っていた。

 

*

 

 四番は、まだ青峰の前へ来た。

 

 残りは五分を切っている。五対一。今度は肩を見ず、ボールと青峰の軸足を交互に見た。

 

 青峰は右へ運びかけた。

 

 四番が寄る。青峰は止まり、左へ切り返そうとする。

 

 その瞬間、四番の爪先がボールに触れた。

 

 青峰の左足が地面についた、その直後だった。身体を支えている足は、すぐには引けない。右足で内側へ運ぼうとする前に、四番が横から蹴り出したのだ。

 

 ボールがタッチラインへ転がる。

 

「よし!」

 

 四番が追った。

 

 青峰は左足を踏み直した。

 

 左足を軸に身体を回し、逃げるボールへ右足を伸ばす。ラインを越える寸前、靴の外側でコートの中へ引っ掛けた。

 

 四番は、その先に足を出した。

 

 青峰はもう一度蹴った。

 

 身体はまだ四番へ半分背を向けている。振りかぶる間もない。引き戻したばかりのボールを、右足の甲で斜め前へ弾く。

 

 四番の伸ばした足の横を抜け、シュートがゴールへ向かった。

 

 キーパーは一歩前に出ていた。四番が奪ったと思い、味方からのパスを受けるために。

 

 その脇を、ボールが通り過ぎる。

 

 六対一。

 

 青峰は足を着き、四番を振り返った。

 

「今の、見てたのか」

「……お前、左足ついたら右で戻すから」

 

 四番が息を切らして答える。

 

「一回止まるの、待った」

 

「それで?」

 

「それで、とは」

 

「取ったあと、どこに持ってくつもりだったんだよ」

 

 四番は、青峰が戻したボールの跡を見た。

 

「まず外に出して、やり直そうと思った」

 

「入ったぞ」

 

 青峰がゴールを示す。四番の顔が険しくなった。

 

「見てたよ」

 

 その声で、青峰はようやく相手の顔を見た。

 

 同じ入り方を三度見せた。相手が軸足を狙っているのも分かった。それでも、触られる寸前で引く必要は感じなかった。蹴り出された先へ追いつける。実際に追いつき、もう一人が来る前に撃った。

 

 そこまでは、いつもと同じだった。

 

 四番はボールに触れた瞬間だけ、取れると思って前へ出ていた。ゴールの後より、その一歩の方がまだ青峰の頭に残っている。

 

「次、最後まで来いよ」

 

 ボールに触ったところで止まらず、取り切るまで食らいついてこい。そこまで来れば、こっちも今より速く動ける。

 

 青峰は四番が起き上がるのを待った。

 

 四番は両手を膝へつき、首を振った。

 

「次は二人で行く。一対一でついてったら、俺、もう足もたん」

 

 再開しても、四番は自分から青峰へ仕掛けなかった。近づかれる前に横へ出し、味方が詰まれば受け直す。青峰がボールを持つと、もう一人と並んで中央を閉じた。

 

 四番は前の二人へ声を掛け続けていた。まず青峰の次のシュートを止め、奪ったら空いている方へ蹴る。一対一で抜き返すより、その方がもう一点取れると判断したらしい。

 

 青峰が欲しかったのは、さっきの一対一の続きだった。

 

 青峰は、下がった四番へ向かってそのまま運んだ。

 

 前に出てきたもう一人を右へ抜く。四番が寄る前に、さらにボールを縦へ押した。二人の身体を追い越し、ゴールラインへ近づく。

 

 キーパーが正面から滑り込んできた。

 

 青峰は左足でボールを持ち上げた。伸びた腕の上を越え、ゴールへ落ちる。だが四番が最後まで走っていた。逆のポスト前で跳び、横からボールを頭で外へ出す。

 

 ゴールのすぐ横で、四番が膝をついた。

 

「よし……!」

 

 青峰は振り向いた。抜いた相手が、まだそこまで戻っていた。

 

 その次のコーナーも、四番はゴール前から離れなかった。青峰が寄ると他の男を呼び、短髪の男へのパスに先に頭を出した。青峰に向かって一対一を始めるつもりはない。点を取らせないためなら、味方の後ろまで走る。

 

 青峰は舌打ちした。

 

 守るなら前へ来いと、勝手に思っていた。四番には四番の、今の一球を出した手応えがあるのだろう。すぐに立って前へ声を飛ばす顔には、六失点のまま終えていいという様子はなかった。

 

 ならば次は、その後ろに立つ暇も与えず撃つ。

 

 青峰が要求するより先に、相手のキーパーが長く蹴り出した。

 

 残り二分。

 

 橙の長袖の男が、自陣から走り出した。四番とのパス交換で前へ進み、青の守備者の右へ抜ける。角度は狭かったが、そこで撃った。

 

 世話役が足で防ぎ、ボールが外へ出る。

 

「俺に戻せば、正面空いてたぞ」

 

 四番が、ゴール前を指した。

 

「悪い。もう一本、自分で入れたかった」

「じゃ、次は入れろよ」

 

 長袖の男が手を上げた。

 

 青峰は二人を見てから、自分の味方へ顔を戻した。短髪の男は壁の時計を見ていた。

 

「もういいだろ、六対一だし。無理して追わなくても」

 

 同じ声が、さっきは次に入れると言っていた。

 

 青峰は何も言わず、前へ歩いた。

 

 そのまま、試合は終わった。

 

*

 

 ビブスを脱ぐと、世話役が手を差し出してきた。

 

「はい、お疲れ。次は最初から来い」

「一分だろ」

「その話、もうした」

 

 青峰は丸めたビブスを渡し、ベンチへ座った。

 

 短髪の男が、少し離れたところで世話役に話していた。

 

「次、組み分け変えてよ。あいついると、こっちが全然蹴らなくなる」

 

「自分で持っていきゃいいだろ」

 

「分かってるけど、空いてたら出しちゃうじゃん。あっち行っても止められそうだけどさ」

 

 青峰は、横へ置いたボールに足を載せた。

 

 青峰が空いていれば、味方はボールを出す。来れば自分で入れる。それで味方が蹴れなくなると言われても、わざと外してやるつもりはなかった。欲しければ、自分より先にボールへ来ればいい。

 

 それでも組み分けを変える時、毎回自分の名前だけが先に出る。

 

 小学生の頃には、それが嬉しかった。こっちへ来いと言い合われ、勝ったチームが次の相手を迎える。知らない年上に身体ごと止められ、もう一回とボールを拾ってきた。

 

 勝ち続ければ、そのうち強い奴が来た。

 

 今は、勝ち続けるほど時間が余った。

 

「四番」

 

 青峰は呼んだ。男が靴を履き替える手を止める。

 

「最後の、もう一回やるか」

 

「試合終わっただろ」

 

「一本」

 

「明日朝早いんだ。今日は無理」

 

 断った相手は、言い訳を足さなかった。バッグを持ち、長袖の男と連れ立って出口へ向かう。

 

 青峰は立ったまま見送った。

 

 帰る相手に、まだやれるだろうと声を掛けかけた。

 

 やめた。

 

 四番にとっては、空いた時間にやる三十分の試合だ。青峰のために仕事を休むわけがない。分かっていても、靴を脱ぎたくならなかった。六点も取ったのに、走り足りない。ようやく一本止められたところで、また相手がいなくなる。

 

 さっきゴールから出されたボールを、足裏で押し戻した。

 

 世話役が近づいてきた。

 

「あいつ、仕事の合間に来てんだよ」

 

「聞いた」

 

「お前と違って、明日も試合探して回れるわけじゃない」

 

「俺が暇みてえに言うな」

 

「暇だから来たんだろ」

 

 青峰は言い返さず、ベンチへ腰を下ろした。

 

 明日の予定は何もなかった。

 

 ベンチへ戻ると、世話役がビブスを数えながら言った。

 

「そうだ。昔の登録先に、日本フットボール連合から連絡来たって。お前んちにも書類送ったらしいぞ」

「何の」

「そこまでは知らん。郵便ちゃんと見ろって伝言」

「先に聞いとけよ」

「俺はお前の事務員じゃないんだよ」

 

 世話役が青峰の肩をビブスで叩いた。

 

 青峰はそれを払い、空いたコートへ目を戻した。四番が立っていた場所には、もう誰もいない。濡れた芝に、靴の跡だけが残っている。

 

「球、一個」

「まだ蹴る?」

「すぐ返す」

「二分。片付け終わったら照明落とすからな」

 

 青峰は籠からボールを取り、コートへ戻った。

 

 タッチラインの少し内側へ置く。さっき四番に触られた時と同じ場所だ。右へ蹴り出し、回り込みながら右足を伸ばす。

 

 ボールはラインを越えた。

 

 自分で蹴ったものでは、転がり方が違った。四番はもう少し横から触った。こっちが切り返す、その直前だった。

 

 青峰は拾い直した。

 

 今度は蹴り出す向きを変え、左足を踏む。右足の外側で引っ掛け、そのままゴールへ蹴った。

 

 ボールが無人のゴールに入った。

 

 七点目。

 

 追いつけた。足にも、さっきと似た感触があった。

 

 だが四番の足は来ない。キーパーも前へ出ない。入ると分かったまま、ボールがネットに届くのを見ていた。

 

 もう一度蹴れば、また入るだろう。

 

「終わりだぞー」

 

 入口側の照明が消えた。

 

 青峰はボールを取り、受付へ戻った。世話役が籠を差し出す。

 

「入った?」

「入った」

「そりゃよかった」

 

 ボールが籠の中の一つとぶつかって、止まる。

 

 青峰はバッグを肩へ掛けた。

 

「さっきの四番、いつもここ来んの」

「月に二、三回かな。仕事の都合つく時だけ」

「……ふうん」

 

 外へ出ると、雨はすっかり上がっていた。

 

 青峰はポケットの携帯を出した。誰かへ電話するでもなく、画面をつける。明日の予定は何も入っていない。

 

 家に届いているという書類のことを、そこでようやく思い出した。

 

 

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