青峰大輝 in ブルーロック 作:AIで小説を上手く書きたい!
ピッチへ入ると、青峰はまっすぐ相手のゴールへ目を向けた。
キーパーは百点の試験と同じBLUE LOCK MANだった。その前には障害物のパネルの代わりに、自分たちを負かすつもりの三人がいる。
氷織が左足でボールを止めていた。
「始まる前に、あっち戻ったら?」
青峰はそのすぐ近くまで来ていた。氷織の足元からゴールまで、一度見通す。
「三人で俺の球取るつもりか」
「取れるなら取るよ」
「取れなかったら?」
氷織は顔を上げた。
「君が五つ取るより先に、こっちが五つ取る」
青峰は黙った。
自分が入れることは、相手も計算に入れていた。そのうえで、別の場所から取れば勝てると言っている。
ならば、自分が五つ入れる前に終わらせない。
青峰は氷織の前から離れ、中央へ戻った。
石狩が少し後ろにいた。七星は右。後ろから全体を見ている石狩が、青峰へ声を掛けた。
「俺が上がったら、誰か一人戻って」
「俺が行くっす」
七星が答えた。青峰は聞きながら、氷織から視線を外さなかった。
同じチームだった時には、氷織が蹴る瞬間に前へ走った。いまは、その左足がボールへ触れる前に取りに行く。
開始の合図が鳴った。
清羅が中央のボールを氷織へ下げた。
白いビブスの三人は、横一列には並んでいなかった。氷織が後ろ、黒名が右、清羅が左。青峰の側は、石狩が中央の後ろに残り、七星が黒名へついた。
青峰は氷織へ走った。
十一人の時よりピッチが狭い。ボールを出してから考えていれば、もう届く距離だった。
氷織は一度で黒名へ送った。
青峰は速度を緩めず、その返球が来る場所へ寄った。黒名は七星の寄る前に戻す。青峰が足を伸ばすより先に、氷織の左足が触れた。
清羅へ。
逆側だった。
青峰が振り向くと、石狩が中央から出ていた。清羅は左の外側で受け、その正面に石狩がいる。青峰からは十メートルほど離れていた。
清羅は待たなかった。
右足で外へ運び、石狩の身体をそちらへ向かせる。もう一度同じ方へ出ると見せ、内側へボールを引いた。
石狩の長い脚が伸びる。
清羅はその足の手前を通り、ゴールへ向いた。
青峰は中央へ戻っていた。清羅がもう一度運べば、横から足を出せる。だが清羅は、前に押し出した一球をそのまま撃った。
キーパーの手を越え、低いシュートが遠い隅へ入る。
〇対一。
青峰は足を止めた。
氷織はボールを二度受けた。最初も、返ってきた二度目も、一触で出している。青峰が近づくまで置かなかった。
「逃がすのだけは早えな」
青峰が言うと、氷織は顔を上げた。
「持ってたら取るって言うたやん」
「取るよ。次もな」
青峰はその横を通った。氷織は肩を避け、清羅へ手を上げる。
石狩が中央へ戻ってきた。
「外へ行かせたつもりだった」
「抜かれたろ」
青峰は短く言った。
石狩は言い返さず、清羅が切り返した場所を見る。足が長ければ、離れていても届く。それだけで前へ出たところを、その足の内側へ入られた。
七星がボールを置いた。
「次、どっちから行きます?」
「俺に入れろ」
青峰は氷織の前へ歩いた。相手はもう中央へ戻っていた。
パスを出す方で早いことは分かった。
今度は、守る方だった。
*
七星からのパスを、青峰は右足で受けた。
氷織が正面にいた。その三メートルほど後ろに清羅。黒名は七星から離れず、右の返球先を見ている。
青峰は氷織の右側へ、ゆっくりボールを運んだ。
氷織も横へ動く。すぐに足を出すつもりはない。ゴールへ近づく道を清羅のいる方へ狭め、二人で挟もうとしていた。
青峰は右足をボールの外へ回した。
中央へ切り返す向きになる。清羅が一歩前へ出た。氷織はその動きを見て、青峰の外側を閉じようとする。
青峰は、切り返さなかった。
足の外側で同じ右へ押し、氷織の脇へ身体を入れる。肩が触れるより先に、一歩で前へ出た。
清羅がそちらへ回った。
W戦では、落ちてくるボールへ先に足を出そうとしていた。いまは目の前のボールと青峰の動きを見比べ、抜ける先へ身体を置く。
青峰は、清羅の足が止まる前に近づいた。
一メートルも残らないところで、急に速度を落とす。
清羅の身体が前へ来た。青峰は左足を踏み、右足の内側でボールをその左脇へ通した。
清羅が右足を戻す。
青峰はボールとは反対の側から、清羅の肩を抜けた。
向こう側で追いつく。
ボールと身体が別々に来た。清羅はどちらも止めようとして、半歩遅れた。
キーパーが前へ出る。
青峰は右脚を大きく引かず、足先で近いポストの内側へ突いた。キーパーが膝を広げた時には、その横をボールが通り抜けている。
一対一。
青峰はゴールの横で止まった。
清羅は足を戻し、氷織も走ってきた。二人とも、撃つ前にはもう触れない場所にいた。
「二人で足りんのかよ」
青峰は氷織を見た。
「三人来てもいいぞ」
黒名が中央へ戻ってくる。
「その代わり、向こう二人空く」
「知ったことか。止めたいんだろ」
青峰は背を向けた。
氷織が清羅の近くへ寄った。二人は青峰を見たまま、短く話す。
「最初の一人を抜いてから考えてへん。清羅くんが来る方も、抜き始める前に見てた」
「近づいてから、止まった」
「うん。抜けた勢いのまま次も来る、とは限らへん」
黒名が二人を見た。
「足元、取れるか」
氷織はすぐには答えなかった。
青峰はシュートのためにボールを置き直さない。止まったと思って寄れば、その足をかわしてまた走る。持った後の隙を待っている間に、もう一度撃たれそうだった。
「入る前の方が、まだ触れる」
氷織が言った。
青峰は少し離れて、それを聞いていた。
黒名は自分を守る人数を増やすより、七星へ入るパスを残さない方を選んだ。清羅も氷織も、一人で止めると口にはしない。
ただ、誰も下を向いてはいなかった。
青峰はそのことを、もう一度確かめた。
一次選考で見た顔だった。黒名には二点取られた。清羅にも二点取られた。氷織は自分を呼んで、別の方へ撃った。
三人とも、自分へ点を返してきた顔だ。それぞれの足も撃ち方も覚えている。一対一ならどいつにも負ける気はしなかったが、ボールが別の相手へ渡るたび、追う方向を変えさせられていた。
その三人で、自分のいないところから試合を動かそうとしている。
青峰は一歩前へ出た。
名前を覚えた相手まで、いつもと同じ顔にして終わるのか。
その問いへ、自分で手を緩めて答えを変える気はなかった。
自分が持つ前の話へ移った。それなら、持てる場所を先に取るだけだった。
*
次の攻撃では、石狩が清羅のボールに触れた。
清羅が内へ切り返すところへ、前より短い歩幅で寄る。抜きに来たボールを横へ弾き、七星が拾った。
石狩はそのまま前へ走った。
「下!」
高く上げろとは言わなかった。ゴールの中央へ入った石狩へ、七星が低く折り返す。
青峰も前へ入った。
氷織がついてくる。青峰が近いポストへ走った分、石狩の前は空いた。
石狩の右足がボールを叩いた。
横から清羅が滑り込んだ。伸ばした足に当たり、シュートがゴールの右へ逸れる。
「くそっ」
石狩が声を上げた。
清羅はすぐ立ち上がり、コーナーに備えて戻った。七星が球を拾う。石狩は遠い側、青峰は中央へ残る。
黒名が七星の前へ寄った。
「近い方、俺が切る」
氷織は青峰についていた。清羅が石狩の手前へ立つ。
七星のコーナーは少し低かった。
石狩が踏み切る場所へ届く前に、清羅が斜め前へ跳ぶ。自分の頭の届く手前で触り、ゴールから外へ弾いた。
同じ場所で石狩より高く跳んだのではない。
長身の相手へボールが届く、その前で競り合いを終えた。
黒名がこぼれ球を拾った。青峰が追うより先に、氷織へ出る。
氷織は一度、深いところまで下がった。
青峰が寄る。
右に黒名、左に清羅。相手の二人が広がり、七星と石狩も別々の方へ動いた。
氷織は黒名へ出した。
青峰は返ってくる線へ入り、氷織の次の一触を狙った。
黒名がこちらを見る。
ボールは氷織へ戻らなかった。
前にいる清羅へ出る。
石狩が寄った時には、清羅は一度で横へ流していた。黒名が、出した後を走っている。七星の肩の外から、ゴールへ向かっていた。
青峰は向きを変えた。
氷織への返球を奪う場所と、黒名が受ける場所は違った。間には石狩も清羅もいる。二人の外を回る間に、黒名へボールが届いた。
黒名は前へ一度だけ置き、右足で撃つ。
キーパーの低く伸びた手を越し、遠い側へ入った。
一対二。
青峰は中央で止まった。
氷織は最初のパスを出した場所にいた。こちらを引きつけ、返ってくると思わせた。その後を黒名と清羅の二人だけで進めた。
「お前が戻してもらうんじゃねえのかよ」
青峰が言うと、氷織は黒名を見た。
「今は、あっちが前へ行けたから」
「自分で撃ちたくて行ったんだろ」
「君を抜くために、毎回僕が持つとは言うてへんよ」
青峰は口を閉じた。
氷織自身が前へ走ると思って追えば、黒名へ出す。そちらを追えば、清羅が空く。こちらと一対一を始める義理などないと言われたようで、青峰は舌打ちした。
だが、逃げているだけなら一点目で下がっていたはずだ。三人とも、次に撃つ場所を探している。そのボールを取って黙らせるまでは、ただの文句になる。
七星がボールを運んできた。
「次、右で持ちます」
「受けたらさっさと出せよ」
青峰は氷織の手前まで進んだ。右へ歩くと、氷織も距離を空けてついてくる。中央には清羅が残り、黒名は七星の方を見ていた。
青峰は、中央へ戻るふりをして足を止めた。氷織はつられず、まだ右側に残る。
「見てんじゃねえか」
「動くたびについていったら、逆へ出られるからな」
青峰は再開のボールへ目を向けた。七星へ渡る時に右へ走り、氷織が追わなければそのまま受ける。追うなら、今度は中央へ戻って前を取る。ボールを持つ前にも、一人外す機会はある。
石狩が近づいてきた。
「俺も前へ行く。高いのは呼ぶから」
「来るなら先に跳べよ。下に落ちたら俺が撃つ」
石狩は短く頷き、七星へ何かを伝えた。
青峰が右へ動けば、氷織がついてくる。清羅もそちらへ寄る。石狩はその逆側からゴールへ入り、七星に手を上げた。青峰も右からボールを呼んでいる。二人とも、先に自分へ入れさせるつもりだった。
青峰は氷織から顔を逸らした。
外の試合では、呼べば来た。五点も取れば、味方はもう走らなくなった。ここでは一点取ったくらいで誰も譲らず、三人になっても、自分だけで攻撃を終わらせようとしてくる。
だったら、自分が先に触る。相手を抜く前に味方と遠慮し合う気もなかった。
*
石狩が再開のボールを七星へ出し、前へ走った。
青峰はまず右へ走った。氷織が追うと、すぐに中央へ切り返す。清羅がそちらへ出て、氷織はゴール側へ戻った。二人が青峰を見た間に、石狩が逆のポストへ入った。
七星が右から上げた。
石狩が跳ぶ。氷織は無理に同じ高さへ上がらず、ゴール側へ身体を残していた。その前で石狩が首を振ったが、強く下へ叩ける角度ではない。
ボールは中央の手前へ落ちた。
青峰が拾いに行く。
清羅が先に足を伸ばし、右外へ蹴り出した。足元で収めれば青峰に触られるから、一度で遠ざけたのだ。
そこへ七星が走った。
クロスを上げた場所から、止まらず内側へ入っていた。黒名も追う。七星は左足でボールを引き、黒名の足先から離した。
青峰が手を上げた。
「こっち!」
七星が顔を向ける。清羅は青峰へ戻った。ここで渡れば、また二人で止めなければならない。
その分、七星の正面から清羅が離れた。
青峰は要求する手を下げなかった。
七星の左足が後ろへ引かれる。
こちらへ出す角度ではなかった。
低いシュートが、黒名の足が戻るより先に飛んだ。中央で着地した石狩が道を空ける。キーパーが伸びたが、遠いポストの内側を通る。
二対二。
青峰は手を下ろした。
七星が振り返る。入ったという顔をしていた。
「呼んでただろ」
「聞こえてたっす」
「で、無視か」
「自分で撃てると思ったんで」
青峰は七星を見た。
石狩への高い球が一本、こぼれたところを拾ってもう一本。それで七星は自分の一点まで取った。
清羅を背負った自分より、七星自身のシュートを選んだ。言うだけではなく、実際にゴールへ入れやがった。
「次、俺が先に取る」
青峰は中央へ戻った。
七星はまだ自分の得点を見ていた。青峰は逆側の、ボールを取りに行く黒名を目で追った。入ったから怒るのも違うが、入ったからといって自分の欲しかった一本が増えるわけでもない。
氷織は、そのやり取りを見ていた。
青峰に呼ばれても、七星は自分のシュートを選んだ。いまも青峰へ謝らず、ゴールへ入ったボールを見ている。一次選考で右からクロスを上げ続けていた時より、自分が撃つ場所を探していた。
次にボールを持てば、青峰はもっと早く取りに来るだろう。
その予感は、すぐに当たった。
再開の位置へ向かう前に、石狩が青峰へ近づいた。
「次、高いの俺が受ける」
「お前もかよ」
「俺だけまだ取ってない」
「それで俺の球減らすつもりか」
「七星から上がったら、俺の球だろ」
青峰は石狩を見た。
自分へ譲るつもりがないことを、この大きな男は毎回同じ調子で言う。言っただけで取れなければそれまでだ。だが、さっきも清羅が滑り込まなければ撃てていた。
青峰は先に顔を戻した。
「勝手にしろよ」
相手の再開を待つ位置へ立つ。
ボールを持った時に、誰へ出すかを譲り合う話ではない。自分が持つ前から、誰かが自分で終えようとしている。
だったら、人より先に取る。
青峰は氷織までの距離を測った。さっきは早く寄りすぎた。近づく青峰が見えていたから、氷織も受けたらすぐ出す準備ができていた。
今回は、その一歩をまだ出さなかった。
*
清羅から黒名、黒名から氷織へボールが渡った。
青峰は、今度は最初から走らなかった。
氷織までは三歩。黒名が右へ動き、七星がそちらへついていく。清羅は逆側へ少し下がった。
氷織は右を見た。
黒名へ出すなら、そのまま蹴れる。しかし七星は内側を閉じ、返球の道を残していない。氷織の足が、清羅のいる左へ向いた。
ボールが少し内側へ動いた。
青峰はそこへ出た。
初めから詰めれば、氷織は一度で出す。少しだけ待てば、出す先を選び直す。右と左のどちらを見るか、その切り替わりに入った。
右足がボールを捉えた。
氷織の左足は、蹴るはずだった場所を通り過ぎた。
青峰が前へ出る。
ゴールまで十五メートルほど。清羅は左から、黒名は右から戻った。氷織は奪われた場所から、中央を真っすぐ下がる。
青峰は右へボールを運んだ。
黒名が横へ寄る。そこへ行けば、清羅も追いつく。二人の足が届く場所へ入る手前で、青峰は足を止めた。
黒名だけが一歩進む。
青峰はその後ろを左へ通った。
清羅が正面へ来る。青峰は身体を左へ傾け、ボールを右足の外側で逆へ押した。
止まったはずの身体が、もう次の一歩で前にある。
清羅の足が出た時、青峰のボールはその向こうへ進んでいた。
氷織がゴールの前へ戻った。
左右へかわす二人より、真っすぐ戻った氷織の方が先に中央へ着いていた。キーパーも前へ出る。青峰の右足からゴールへ伸びる道を、二人が縦に塞いだ。
青峰は、氷織へ近づいた。
右へ行くと思わせるための一歩を出す。氷織がそちらへ足を開いた。
青峰はその間から撃った。
振りかぶる前に、足先でボールを突く。氷織の脚の間を通り、キーパーの脇へ抜ける。
三対二。
青峰はゴールの横へ抜けた。
氷織がまだ足を開いたまま立っていた。後ろから清羅と黒名が戻ってくる。
三人とも、ボールへ出た。
三人とも、その次にはもう青峰の後ろにいた。
「来る場所、分かってたん?」
氷織が尋ねた。
「置き直したろ」
青峰は奪った場所を指す。
「そこまで待ってたん?」
「お前がずっと同じ球出すと思ってねえよ」
氷織は口を閉じた。
一度で黒名へ返そうとしたが、七星が道を塞いでいた。だから氷織はボールを止め、清羅へ出そうとした。その持ち直しを青峰に狙われた。
清羅が氷織の横へ来た。
「前、もう少し行く」
「うん。次、止めへん」
氷織はそう答えた。
青峰は三対二の表示へ一度だけ目を向けた。
先に取った。
向こうが二つ取り返す間に、自分が二つ取れば終わる。氷織がどちらへ行きたいかを、もう一度聞く必要もなくなる。
そのつもりで、中央へ戻った。
*
氷織は、自分で前へ出る機会を待っていた。
黒名へ出して、清羅へ渡る。青峰がこちらを狙ううちに、二人がゴールへ近づく。それだけでも得点はできた。
だが、三人のうち一人だけがずっと後ろにいれば、青峰は戻ってくる場所を絞れる。
パスを一度で出し続けるだけでは足りなかった。
氷織は一度、自分が前へ入る形を試した。
黒名へ出して、斜め左へ走る。黒名が返せば、そのままゴールへ進める場所だった。
青峰が横を走ってきた。
氷織より先に、返球の入る場所へ身体を置く。黒名は蹴りかけた足を止め、清羅へ出した。
青峰はそのパスまで追わなかった。
氷織とボールの間に残る。清羅がこちらへ返しても、先に触れるつもりなのだ。
氷織はゴール側へ回り込もうとした。
青峰も同じだけ位置を変えた。
「来るんじゃねえのかよ」
青峰の声がすぐ近くにあった。
氷織は返事をせず、後ろへ下がった。清羅が自分で仕掛け、石狩に外へ押し出される。黒名へ戻したところで、ようやくもう一度ボールが来た。
走れば出してもらえる。
そういう約束だけでは、青峰の前を通れなかった。
氷織は黒名へ短く言った。
「僕が先に走っても、無理に返さんで。持てるなら、そのまま前へ」
「青峰が来る」
「来たら、僕から離れる」
黒名が頷いた。
目の前で氷織を待っている青峰を、ボールのある方へ向かわせる。そのうえで、戻るより先に逆側へ入る。
ただ足の速さを比べれば、どうにもならなかった。
氷織はそのことを、一本もボールを受けられなかった往復で知った。
再開の後、氷織は黒名へ送り、自分も前へ走った。
青峰がついてくる。
黒名から清羅へ出る。七星が内側へ戻り、石狩がゴール前を守った。清羅が撃とうとしたボールへ、石狩の脚が届く。
ボールが右の外へ出た。
黒名のキックインで再開する。
氷織はボールの近くへ下がった。青峰は少し離れ、氷織が受けた後の清羅へのパスも見ていた。
黒名が蹴った。
氷織は一触で清羅へ出した。
青峰がパスの線へ足を向けた。その横から、氷織はゴールの左側へ走った。
清羅は中央で受け、すぐに黒名へ戻した。
黒名はキックインの場所から前へ出ていた。青峰がそこへ寄る。ボールを持つ相手が一度でも止まれば奪える距離だった。
黒名は、青峰の足が届く前に清羅へ返した。
右から中央へ。
青峰が向きを変える。その時、氷織はもう左側を走っていた。二人の間には、ゴールを向いた清羅がいる。
清羅は右足で内へ入ろうとした。
七星が前へ出る。石狩も、その一歩後ろで脚を伸ばした。
「左!」
氷織が呼んだ。
清羅は前を見る。抜ける幅は、もう閉じていた。
右足の内側で横へ出す。
氷織の前へ、ボールが来た。
キーパーは清羅の方へ寄っていた。青峰は中央から戻ってくる。ゴールへ向けて一度止め直せば、追いつかれる。
氷織は左足をボールの横へ置いた。
右足を振る。
前へ出てくるキーパーの手の上へ、小さく浮かせた。
青峰の足が右側から来た。
ボールはもう浮いていた。
伸ばしたキーパーの手を越え、バーの下へ落ちる。
三対三。
氷織はゴールの前で止まった。息が切れていた。出してからここまで走り、戻されると思った場所では受けず、もう一度前へ出た。
青峰を一人で抜いたわけではない。
青峰が黒名の球を取りに出た間に、反対側へ入った。その一度を、自分で撃つところまでつないだ。
「前でも来るっつったろ」
青峰の声がした。
「来てたな。今」
氷織は顔を向けた。
「でも、先に撃てた」
青峰はゴールの中を見た。
青峰は返事をせず、ネットからボールを拾った。三人に散られて取られた一点だった。最後に氷織へ届くはずだった足が空を切ったことも、腹に残っている。
次にあの三人が同じことをできるか、試したくなった。いや、その前に自分が取る。青峰はボールを持ったまま中央へ戻った。
氷織はその背中を見送った。
あの人がいれば自分が撃たなくても勝てる。その考えから離れるために、わざわざ相手側へ来た。
思った通りに回ったわけではない。一度奪われ、そのまま三人とも抜かれた。それでも、まだ同点だった。
黒名が来た。
「前、空いた」
「うん。返してくれて助かった」
「次も走る」
清羅も中央へ戻っていた。
「次は抜く」
さっき石狩と七星に閉じられた場所を見て言った。氷織が一点取ったからといって、自分の次まで譲るつもりはないらしい。
氷織は頷き、青峰へ向き直った。
三人とも一つずつ取った。
あと二点。どちらが先かは、まだ決まっていなかった。
*
青峰は七星へボールを渡し、再開の位置へ置かせた。
氷織が一点取った。黒名も清羅も取った。それでも、自分が二つ取れば終わる。
「寄越せ」
青峰は中央から離れた。氷織が同じ方へ来る。
その向こうには清羅がいて、黒名もこちらを見た。三人の間を抜けた時の速さを、今度は最初から警戒している。
青峰は、その真正面で手を上げた。