青峰大輝 in ブルーロック   作:AIで小説を上手く書きたい!

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第011話 氷織をよこせ

 七星から青峰へ、速いパスが入った。

 

 氷織はすぐ後ろについた。清羅が前を塞ぐ。黒名は七星の近くから、石狩へ出る線も見ている。

 

 青峰は右足でボールを左へ押した。

 

 清羅が寄る。青峰はその前で止まり、足裏で右へ引く。氷織の足が背後から来たが、ボールはもう反対側へ動いていた。

 

 清羅が追い直した。

 

 青峰は、清羅の右脇へ進んだ。相手が足を広げる前に、左足でボールを通す。清羅が振り向き、氷織も後ろから戻る。

 

 黒名がゴール前へ下がった。

 

 青峰はその外側へボールを押し、右脚を振った。

 

 黒名が足を出す。同時に、後ろから追った氷織がボールの右側へ滑り込んだ。

 

 青峰は蹴る寸前で左へ引いた。

 

 だが氷織は、その一触先まで足を伸ばしていた。青峰の左足が当たるのと、氷織の靴先が当たるのが重なった。

 

 ボールが高く跳ね、ゴールの右へ出る。

 

 コーナーだった。

 

 青峰は足を下ろし、芝に座った氷織を見た。

 

「右だけじゃねえって分かったかよ」

 

「分かったから、左まで出したんやろ」

 

 氷織は息を切らして立った。

 

 奪ったわけではなかった。清羅が一度抜かれ、黒名が正面へ戻り、その足をかわすために青峰が引いたところへ、ようやく届いた。

 

 次もその位置へ出せる保証はない。

 

 青峰は、ラインの外へ転がったボールを見た。

 

 V戦で雪宮が止めに来たのは、最初の右足だった。氷織はその次の左足へ来た。清羅と黒名に二度足を使わされた上で、三人目が最後まで追った。

 

 腹が立った。入るつもりで蹴ったのだから、当然だった。だが、外へ出されたボールを拾いに行く七星を見ながら、もう一度やる場所を探していた。試合の残り時間を眺める気にはならなかった。

 

「次もそこまで来いよ。今度は入れる」

 

 青峰は氷織へ言い、ゴール前へ走った。

 

 氷織もついていく。息を整えるために立ち止まれば、青峰はその間にマークを外すつもりだった。

 

「触れた」

 

 黒名が短く言った。

 

「うん。でも次、同じ左へ引くとは限らへん」

 

 氷織は答えた。三人で追い、ようやく一球外へ出した。右から撃つと見せて左へ引く、その動きを今度も待っていたら、青峰は最初の右足で決めるかもしれない。

 

 清羅が中央へ戻る。青峰は三人の顔を順に見て、右側へ動いた。

 

 七星がコーナーの位置へボールを置いた。

 

 青峰の近くに氷織、奥へ清羅。黒名は石狩の前を見ていた。高い球を上げられれば、自分の身長ではそのまま競れない。

 

 石狩は一度、ゴールから離れた。黒名がついてくる。さっきのコーナーでは、清羅にボールの手前へ入られた。今度も同じ場所に立って高い球を待てば、相手のやることは変わらない。

 

 石狩は七星の近くまで下がり、足元を指した。

 

 七星が頷く。

 

 まず低いパスを受けて、ついてくる相手をゴール前から出す。戻したら、今度はこちらが先に走る。七星が顔を上げる頃には、クロスへ入れる位置を取っておきたかった。

 

 七星は短く石狩へ出した。

 

 石狩はエリアの外まで一度下がっていた。足元に来た球を右足で止める。黒名が寄ると、身体を入れてボールを隠した。

 

「七星!」

 

 石狩は右へ返し、自分はゴールへ走った。

 

 黒名は七星の方へ出た。清羅が石狩へ向かい、氷織が青峰を見続ける。一瞬で、守る相手が変わった。

 

 七星が低く蹴る。

 

 石狩の足元へ来た。清羅は後ろから寄り、石狩が振り向く方を閉じる。

 

 石狩は振り向かず、もう一度七星へ落とした。

 

 そのまま身体を反転させ、清羅の外側をゴールへ進む。

 

 青峰は中央で手を上げた。

 

 七星から青峰へ通る道にも、ボール一つ分の幅ができていた。氷織がその間へ足を向ける。

 

 七星は、その頭上を越すクロスを上げた。

 

 石狩が前へ出る。

 

 清羅は一度下がってから、前へ回ろうとした。さっきのコーナーと同じ、落ちる手前を先に触るつもりだった。

 

 だが今回は、石狩の方が先に走っている。

 

 石狩は相手の前へ出て、跳んだ。

 

 清羅の頭が、その下で止まる。キーパーが両手を上げた。

 

 石狩は下へ叩きつけた。

 

 ボールは足元で強く弾み、下ろされる手の外からゴールへ入った。

 

 四対三。

 

 青峰はゴールの手前で止まった。

 

 こぼれたら自分が蹴る位置まで入っていた。だが、ボールはキーパーに触られず、網の中へ行った。

 

 石狩が着地して拳を握る。

 

「よし!」

 

 七星が走ってきた。

 

「前、入れましたね!」

 

「二回返したから、ついてくる方が変わった」

 

 石狩が清羅を見た。

 

 石狩は七星とのパス交換を二度繰り返した。二度目を返してすぐ前へ走ったため、清羅が追い始めた時には、石狩の身体が既に前にあった。

 

 同じ場所で跳ぶだけなら、高くても手前から触られる。先に走って前へ入ったことで、今度は石狩が頭の届く高さで受けられた。

 

「次も、あの辺に」

 

 石狩が七星へ言う。

 

「次は俺が取る」

 

 青峰の声が割って入った。

 

 石狩は顔を向けた。

 

「さっき、下にいたな」

 

「落ちてくりゃ蹴ってた」

 

「落とさなかった」

 

 青峰は返事をせず、中央へ戻った。

 

 七星に一本、石狩に一本。三対三の同点から、自分が終わらせるつもりだったのに、先に四へ変えられた。

 

 勝ち越したことを喜ぶ前に、その数字が目に入った。

 

 相手はあと二つ、自分たちはあと一つ。

 

 今度のボールまで待ってやる気はなかった。

 

*

 

 再開のボールを受けた氷織へ、青峰が寄った。氷織は一度で、右サイドの清羅へ送る。七星がその前に出た。

 

 黒名は反対側から中央へ走り、石狩がついていく。青峰は氷織から離れ、清羅とゴールの間へ下がった。

 

 清羅は右のタッチライン沿いへ運んだ。七星が半歩内側から並ぶ。外へ押し出されすぎなければ、中央へ切り返す足には届く距離だ。

 

「中、出せる」

 

 黒名が呼んだ。

 

 清羅は出さずに、もう一歩進んだ。右へ運べば線を越える。七星を抜くには、ここから内側へ切り返さなければならなかった。

 

 青峰はその先へ入った。二人の競り合いへ飛び込めば、清羅から黒名へ通される。内側にいれば、清羅が七星を抜いても自分が前に立てるし、七星が触ればこぼれ球を拾える。

 

 清羅の右足が、ボールを内へ引いた。

 

 七星が左足を伸ばした。二人の肩がぶつかり、ボールが靴の間から弾き出される。

 

 ボールは青峰の少し左へ転がった。

 

 青峰は清羅より先に踏み出した。二人がまだ身体をぶつけ合っている間に、ボールの前へ入る。

 

 左足でボールを受ける。

 

 氷織が戻ってきた。清羅はまだ七星の横、黒名は前へ走った後だった。ゴールとの間に残ったのは、氷織とキーパー。

 

 青峰は正面へ進んだ。

 

 氷織が腰を落とす。左右どちらへ引いても届くよう、前の一球より足を狭くしていた。

 

 青峰は右へ肩を向けた。

 

 氷織は大きくつられず、半歩だけ横へ出た。左へ引かれても届く距離を残す。その足が地面へ着く前に、青峰の左足がボールを前へ押した。

 

 氷織の脚の間を抜ける。

 

 氷織は足を閉じかけた。だが右へ踏み出した途中だったため、両足を揃えるよりボールの方が速かった。青峰は氷織の右脇を抜け、その先で追いついた。

 

 キーパーが前へ出る。

 

 青峰は左へ運ぶふりをして、右足の外側で右隅へ撃った。大きく振らず、走る一歩の途中で蹴る。キーパーが両手を下ろすより先に、シュートが脇を抜けた。

 

 ネットが揺れた。

 

 五対三。

 

 終了の音が、網の揺れる音へ重なった。

 

 氷織がゴールを見た。黒名は戻る途中で止まり、清羅も七星から身体を離す。

 

 青峰は蹴った右足を着いた。

 

「終わりだ」

 

 氷織がこちらを向いた。

 

「右へ来ると思ったら、真ん中に通したな」

 

「待ってたら分かるとでも思ったかよ」

 

 青峰は氷織の前を通り、出口へ向かった。

 

 七星が追ってくる。

 

「そこ、いつ入ったんすか」

 

「お前が清羅の前に出た時」

 

「こぼれるの、分かったんすか」

 

「抜かれたら、そいつから取るつもりだったわ」

 

 七星は、さっき清羅と競った右サイドを振り返った。青峰はそこでボールを待っていたのではない。清羅が内側へ抜ける場所を塞ぎ、こぼれた瞬間には自分の攻撃へ変えていた。

 

 足元へ届いてから、試合が終わるまで数秒だった。

 

 石狩が横へ来た。

 

「俺も一つ取った」

 

「俺、三つ」

 

 青峰が答えた。

 

「分かってる。でも五つ全部じゃない」

 

 青峰は石狩を見た。

 

 石狩は笑っていなかった。負けないために必要な一本を、自分が入れたと言っている。

 

 それも事実だった。

 

「次も欲しけりゃ先に取れよ」

 

 青峰は先へ歩いた。

 

 自分が入れるより先に誰かが入れても、勝った事実は減らない。それでも次まで任せる気にはならない。

 

 黒名が少し離れたところで清羅へ話しかけていた。

 

「最後、俺に出せた」

 

「抜けると思った」

 

「青峰、そっちにいた」

 

 清羅は青峰を見た。

 

 七星を抜けば終わりではなかった。内側には青峰がいて、外にはタッチラインが迫っていた。清羅が内へ切り返したところで七星も足を出し、その先のボールを青峰に取られた。

 

 青峰は氷織へ目を向けた。

 

 味方だった時には、パスの速さを受ける側から知っていた。今日、取りに行く側へ回ってみて分かった。氷織は顔を上げてから出し先を探すことが少ない。受ける前に見て、一度で送る。そこへ詰めても間に合わないから、置き直す一回を狙った。

 

 あの速さで自分の走る先へ来れば、もっと早く撃てる。

 

 青峰は、さっき黒名の足元へ届いたパスを思い出した。あれが自分へ来れば、清羅が戻る前に撃てる。氷織を獲った後に試す攻撃まで、もう頭に浮かんでいた。

 

*

 

 選ぶ三人の顔が、画面に並んだ。

 

「氷織をよこせ」

 

 青峰が先に言う。石狩も頷いた。

 

「俺も氷織。七星が持てない時でも、頭へ上げられる人が欲しい」

 

「俺は、黒名さんとも組んでみたかったっす」

 

 七星は黒名を見た。

 

「俺がパスを出してすぐ前へ走ったら、そこへ返してもらえる。あのワンツーを、追う側じゃなく、走り抜ける側でやってみたいんで」

 

「氷織でも出せんだろ」

 

 青峰は画面を指した。

 

「こいつの球を追ってただろ、今日。止めずに出してたの、どっちだよ」

 

 七星は少し考えた。氷織は黒名の走る先だけでなく、逆側へ出た清羅にも一度で通していた。

 

「……氷織さん。俺が前へ行った時も、見ててください」

 

「先に走ってな。通せるところにおったら出す」

 

 七星は頷いた。自分に優先して出すという約束ではない。それでも、前へ出た後の一本は求められる。

 

 三人は氷織を選んだ。

 

 氷織の名前がこちらへ移る。黒名と清羅は二人組の段階へ戻る表示になった。

 

 青峰は氷織を呼んだ。

 

「来いよ。次は俺が、さっきの黒名のとこへ入る」

 

「僕が自分で撃つんは、変わらへんで」

 

「取り消せなんて言ってねえだろ。俺が走ったら見ろって言ってんだよ」

 

「見る。遅かったら別のとこへ出す」

 

「遅れねえよ」

 

 氷織はバッグを拾い、黒名と清羅へ向き直った。

 

「負けたな。もう一本、撃ちたかったわ」

 

「次は五つ取る」

 

 黒名が答えた。清羅はもう、二人用の通路を見ていた。

 

「行くぞ」

 

 二人は並んで歩き出した。青峰もその背中を見た。負けて一人を失っても、まだ次へ行くつもりらしい。

 

 氷織がこちらへ来ると、石狩が四人の部屋への案内を確かめた。

 

 青峰は、別の通路へ入る黒名たちをもう一度見た。

 

 選ばれた氷織は上へ進み、残った二人は下へ戻る。一緒に組んだ相手でも、負ければ分かれる。鬼ごっこで一人が出ていった時より、今の方が顔をよく覚えていた。

 

 清羅が入口で振り返った。

 

「最後、次は取らせない」

 

 青峰は足を止めた。

 

「内側、見えてなかっただろ」

 

「次は見る」

 

「見ても俺が取るわ」

 

 清羅はそれ以上言わず、黒名の後を追った。

 

 青峰は、二人の扉が閉まるのを見た。選ばなかった方にも続きがある。だが二人が勝てなければ、今の言い合いはそのまま終わる。

 

 勝って来い、とわざわざ声を掛ける気にはならなかった。自分がもう一度取る相手くらい、自分で残ってくればいい。

 

 氷織は隣で、同じ扉を見ていた。

 

「行くぞ」

 

 青峰が言うと、氷織は顔を戻した。

 

「分かってる」

 

 声は静かだった。氷織は最後にもう一度、黒名と清羅の出ていった扉を見た。自分で選んだ三人で負け、その二人を残して別のチームへ移る。バッグを持ち直す手に、力が入っていた。

 

 青峰は先に歩いた。氷織の機嫌を取りながら使うつもりはなかったし、向こうも勝たせてもらう顔でついてきてはいなかった。

 

*

 

 四人組で対戦する部屋へ移ると、空いている練習用のコートがあった。

 

 石狩が相手の一覧を確かめる。雪宮の名前はなかった。青峰は一度だけ画面を見て、練習場のボールを足元へ寄せた。

 

「氷織、蹴れ」

 

「いま?」

 

「さっきの、一度で出してたやつだよ」

 

 氷織はバッグを壁際へ置いた。

 

「一度で出したら、全部同じ球になるわけやないで」

 

「分かってる。持ちゃ分かんだろ」

 

 青峰は練習のボールを氷織へ渡し、先にコートへ入った。

 

 七星が靴を脱ぎかけるのをやめる。

 

「俺も入るっす。今度、取る方やります」

 

 石狩も来た。ゴールは一つ使い、氷織が後ろから出す。七星がパスを遮り、石狩がゴール前で青峰を守る。その配置だけ決めると、青峰はすぐ前へ動いた。

 

 石狩は青峰の右肩についてきた。七星は氷織との間に立つ。青峰が中央へ呼んでも、七星はその道から退かなかった。

 

「出せよ」

 

 青峰が言った。

 

 氷織は蹴らず、右へ一歩運んだ。

 

 七星も横へ寄る。青峰は石狩を背負ったまま、二人の位置を見た。ここから前へ走るだけなら、七星はパスを切る場所を変えずに済む。

 

 青峰は急に氷織へ近づいた。

 

 七星の背後を通り、その右側へ出る。石狩がついてきた瞬間に、青峰はもう一度向きを変えた。今度はゴールへ走る。

 

 氷織の左足が動いた。

 

 パスは七星の脇を通り、石狩の左肩の向こうへ転がった。青峰は石狩の右側から抜け、前へ回って触る。

 

 石狩が腕を広げた時には、青峰はもうゴールへ向いていた。

 

 右足で撃つ。

 

 低いボールがゴールの隅へ入った。

 

 七星は氷織の蹴った場所を見た。

 

「いま、青峰さんに出す道、塞いでたつもりだったんすけど」

 

「下がってきた時に、七星くんの横へ出たやろ。そこへ出せると思ったら、もう前へ走ってた」

 

「……俺が振り向いたとこっすか」

 

「うん。青峰くんが後ろにおる間は、足元へ通せへんかった」

 

 青峰はネットからボールを出した。

 

 自分が下がり、石狩を引き出してから前へ走った。氷織はその切り返しを見て蹴った。呼んだ場所へ遅れて転がす球ではなかった。

 

「今のでいい。もう一本」

 

 青峰は言った。

 

 氷織は、受ける場所へ戻りながら答える。

 

「同じ動きやったら、七星くんも次は見てるで」

 

「じゃあ変えるわ」

 

 次は下がらなかった。石狩の外側へ近づき、ゴールへ向かう道を肩で塞がれる寸前に止まる。石狩が急停止したところで、逆の内側へ踏み込んだ。

 

 氷織は低く通した。

 

 七星が足を伸ばす。触れかけた球が少し跳ねたが、青峰は浮いた分だけ右足を上げ、そのまま前へ持っていった。

 

 石狩はゴールとの間へ戻った。

 

 青峰は右へ抜けるように腰を向け、相手が脚を開いた瞬間に左足で撃った。ボールは石狩の足の横を通る。

 

 ゴールへ入った音がした。

 

「ちょっと待ってくれ。今の、もう一回守りたい」

 

 石狩が言った。

 

 青峰は振り返った。

 

「何変えんだよ」

 

「先に横へ行かない。お前が触ってから動く」

 

「それで間に合うと思ってんなら、やってみろよ」

 

 青峰はボールを拾った。石狩が戻るまで、ゴールの脇で待つ。

 

 自分が入れた後に、相手からもう一回と言われる。その一言で、青峰は次も同じ右側から近づいてやるつもりになった。待つと決めた相手が、どこまで足を出さずにいられるか。

 

 だが七星が、氷織の前へ割って入った。

 

「俺も前、やるっす。青峰さんばっか二本取ってるし」

 

「先に取れっつったろ」

 

「今、交代しなかったら取れないじゃないっすか」

 

 七星は青峰の返事を待たず、石狩の前へ入った。氷織がこちらを見ている。

 

「青峰くんは、パスを切る方。さっき七星くんがおったところや」

 

 青峰は舌打ちしたが、コートを出なかった。

 

 七星の代わりに氷織の前へ立つ。今度は、同じ四人の中でもボールを奪う側だった。

 

 氷織が右へ運ぶ。

 

 青峰はその足へすぐには出ず、七星へ通す向きを見た。七星は石狩の前から右へ走る。パスをそこへ出させれば、横から触れる。

 

 氷織は蹴りかけた左足を止めた。

 

 青峰が一歩詰める。その瞬間、氷織は足の外側で左へボールを動かした。石狩の前で七星も止まり、逆へ走り直す。

 

 青峰の左足が、低いパスに触れた。

 

 ボールが横へ逸れ、石狩の足元へ転がった。

 

「取った」

 

 青峰が言うと、氷織は首を振った。

 

「触っただけ。まだ石狩くんの球や」

 

 石狩はパスを足元で止めた。

 

「取った側で次、攻める?」

 

「一回ずつ戻すん、面倒やな。交代しよか」

 

 氷織がゴール前へ走り、七星も守る側へ回った。石狩が青峰へ短く出す。青峰は受ける前に身体を開き、七星の正面へ向かった。

 

 七星は腰を落とした。

 

 右へ出てくると見て、先に足を置く。青峰はその手前で止まり、逆の左へ出た。七星は向き直ったが、前へ運んだボールにはもう触れない。

 

 氷織が中央へ戻る。

 

 青峰はその外へ出ず、足先で低く撃った。氷織の靴に当たり、ボールが右へ跳ねる。

 

 青峰は自分で追った。

 

 氷織より先に追いつき、角度のない場所からもう一度撃つ。ネットの横側が内へ揺れた。

 

「一本触ったくらいで終わらねえよ」

 

 青峰は氷織を振り返った。

 

 試合で外へ出された一球と違い、今度はボールが残っていた。止められた後にも追い続ければ、まだ自分が撃てる。

 

 氷織はゴールを見た。

 

「うん。次は外へ出すわ」

 

「次も入れる」

 

 七星が二人の横へ来た。

 

「もう一回、同じ組で。今度は青峰さんが止まっても、先へ行かないようにするっす」

 

 青峰はボールを持ったまま七星を見た。

 

 止まる方を待てば、そのまま抜ける。それくらいは、七星も今日見たはずだった。だが、両方に間に合わせようとしてみるつもりらしい。

 

 青峰は石狩へボールを渡し、再開する場所へ戻った。

 

 氷織は青峰が呼んでも、七星の方が先へ行けばそちらへ通す。石狩は次こそ止めようと、青峰から一歩離れて立ち直った。獲って連れてきた氷織も、同じ三人で勝った二人も、練習では好きに動いていた。青峰は三人を見て、次のボールを呼んだ。

 

 次の一本も入れた。その次は、氷織が先にボールを外へ蹴り出した。

 

 青峰は舌打ちし、球を拾った。誰かが出した残り時間の案内より、もう一回やるかと尋ねた石狩の声の方を先に聞いた。

 

 少しして、七星が腹を押さえた。

 

「……飯、行きません? 俺、百本やって試合して、そのまんまなんすけど」

 

 石狩も時計を見る。

 

 青峰はもう一度やると言いかけ、空腹を思い出した。球を籠へ戻し、壁際のバッグを拾った。

 

*

 

 食堂へ向かう前に、青峰はもう一度相手の一覧を見た。

 

 雪宮はまだいなかった。

 

「待ってるんやね」

 

 氷織が言う。

 

「三人で終わる奴かよ」

 

「分からへん。誰と組んだか、まだ知らんし」

 

「来たらやる」

 

 青峰は画面を閉じた。

 

 七星が横へ来た。

 

「俺も、次は一本くらい止めたいっす。一次では、三点取られたんで」

 

「俺も三点取られてんだよ」

 

 青峰が答える。雪宮と同じ三点で終わったことは、まだ気に入らなかった。勝ったからもう会わなくていいとは思わない。

 

 氷織が相手の一覧へ目を向けた。

 

「先に五人にしたい組もおると思う。雪宮くんを待ってる間に、そっちは進むよ」

 

「それが何だよ」

 

 青峰は画面から目を離した。

 

「通れりゃ誰でもいいなら、最初の二人と組んでたわ」

 

「僕、来いって言われた時は断ったけどな」

 

「だから勝って取っただろ」

 

 氷織はそこで口を閉じた。

 

 青峰にとって、勝って通過するのは初めからやるつもりのことだった。それだけを早く済ませて、一度撃ち合った相手との続きまで捨てる理由がない。

 

 雪宮が自分より先に四点目を取るつもりで来るなら、今度こそその前に終わらせる。守りに戻ってきた足も、もう一度抜く。青峰の頭には、通過を告げる画面より、その相手がいた。

 

 石狩が聞いた。

 

「来なかったら、どうする」

 

「明日の朝まで見て、いなきゃ別の奴だ」

 

 雪宮が必ず勝つと決まっているわけではない。他のチームが来れば、その顔も見る。だが、続きができるかもしれないのに、いま一番先に戦える相手で済ませる気はなかった。

 

 相手のことなど覚えずに勝っていた頃には、誰が来ようが同じだった。

 

 今は、雪宮が四人になって来るのを待っている。

 

 青峰は先に食堂へ入った。後ろで七星が石狩に、さっきのクロスを食後に見直したいと話している。氷織はそれを聞き、自分も見ると言った。

 

 四人が同じテーブルへ向かう。青峰は壁に近い席へ座り、向かいの椅子へ足を出しかけた。

 

「そこ、座る」

 

 石狩に言われ、足を下ろした。

 

 もう一度、雪宮の顔を思い浮かべた。

 

 三点で済むと思って来るなよ。

 

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