青峰大輝 in ブルーロック 作:AIで小説を上手く書きたい!
画面の四人は、知らない顔だった。そのうちの一人が食堂の入口に現れ、七星たちのテーブルを見つけるなり手を上げた。画面と本人を交互に見ていた石狩が、持っていたスプーンを置く。
「もう決まってるか、相手」
「いや」
青峰の返事に、相手の口元が緩んだ。
「だったら、うちとやらないか。そっちはさっき上がった組だろ。こっちも四人揃ったところだ」
七星は膝に載せた手を握った。さっきまで走っていた脚が、椅子の下で重かった。それでも、次に勝てば五人になる。青峰は壁の画面へもう一度目をやった。他の三人は、廊下で仲間を待っているらしかった。
「まだいいわ」
「まだ、って?」
「やりてえ奴がいる。お前らじゃねえ」
相手の眉が上がる。七星が口を開きかけたところで、その男は食堂の奥にも四人組がいるのを見つけた。
「あっそ。じゃあ、先行くから」
青峰の返事は待たなかった。奥のテーブルへ歩いていき、同じ話を始める。その声を聞きながら、七星は途中まで浮かせた腰を下ろした。
「雪宮さんたち、来ますかね」
「知らねえ」
「来なかったら?」
「朝まで待つって言ったろ。いなきゃ別の奴とやる」
氷織が空の皿を重ねた。
「七星くん、今の人らとやりたかったん?」
「早く勝てたらとは、思ったっす。でも……」
勝てるかどうかも分からないのに、早く勝つ、と言ってしまった。七星は言い直そうとして、食堂を出ていく二組を見た。話はもうまとまったらしい。相手が誰でもいいわけではないが、誰ならいい、とすぐにも言えない。
「一次で、俺、あの人に抜かれたままなんすよね」
言うと、青峰がこちらを向いた。
「だったら待ってりゃいいだろ」
「はい。俺も、待ちます」
七星は残った水を飲んだ。再戦するなら、自分もあの一対一を止めたい。そのために今は、息を整えておく。
四人用の待合へ移ると、青峰はまた一覧を開いた。
対戦相手を決めた二組が、試合の通路へ進んでいった。隣のベンチでは、別の四人組がまだ相手を探している。
「待ってたら、勝てそうな組いなくなるぞ」
その声に、七星は画面へ目を向けた。青峰は一覧を変えなかった。
青峰は時計を見た。
待つのは嫌いだった。だが知らない四人と先に試合をして、待っていた相手と行き違う方が、もっと気に食わなかった。
雪宮は次も来ると言った。
それなら、来るところに自分がいてやる。
氷織が少し離れて座った。七星はその隣へ来た。
「次、氷織さんが前に入ったら、俺が一回戻るっす。でも取ったら、俺も行きます」
「うん。僕が持った時に、戻ってきてくれたら早う出せる」
青峰はそちらへ顔を向けた。
「戻す先だけ先に決めんなよ。前見ろ」
「見ます。だから、呼んでください」
七星が答える。
青峰は画面へ戻った。
前にいる相手へ出すために、中盤で持ち直す。それが何度も続くなら、自分で下がって取る。だが、氷織が戻って受け、そのままこちらへ出せるなら一往復減る。
七星が前へ行く時にも、同じように来るだろう。
今から全て決めるつもりはなかった。誰が向こう側にいるかで、通る場所は変わる。
また一覧を開いた時、四人の新しい顔が出た。
青峰は手を止めた。
雪宮がいた。
その前に知らない二人の顔が並び、もう一人は一次選考を得点で抜けた男だった。青峰が候補を開こうとした時、入口から声がした。
「まだおったんや。急いで損したわ」
前髪の一部を立てた男が、片手を腰に置いていた。その横を、白と緑の髪の男が欠伸を噛み殺しながら通る。後ろには、眼鏡を掛けた雪宮がいた。もう一人は一次で別のチームにいたフォワードで、七星は施設の記録映像で得点を見たことがあった。青峰が立った。
「遅え」
「お前らに呼ばれて走ってきたわけやないで」
先頭の男が笑う。氷織も椅子から立ち上がった。
「烏くん」
「なんや氷織。そっち入ったんか」
「さっきね」
七星が氷織を見ると、氷織は靴の爪先を床に一度打ちつけた。
「前のユースで一緒やったんよ。烏旅人くん」
青峰は既に雪宮の前へ出ていた。
「今度は何本撃つんだ」
「君が数え切れるうちは、足りないかな」
雪宮の笑い方は、一次の時と変わらなかった。七星はその横から伸びてきた手に気づいて、一歩退いた。
「ちゅーす。乙夜影汰。そっち、登録やる?」
白い髪の一部を緑に染めた男が、端末を指した。七星は名前を聞き返そうとしたが、乙夜はもう通路の方を見ていた。
「俺、やります」
*
黒いビブスを着た四人が、反対の入口から出てきた。烏は靴底を擦りながら、一人ずつ見た。青峰は真っ直ぐこちらへ来る。石狩は頭上の設備に目をやってから、ゴールの幅を確かめていた。七星はビブスの裾を引き、顔を上げる。最後に出てきた氷織は、右と左を一度ずつ見た。
「氷織。そいつに出したら、球、戻ってけえへんやろ」
「戻らへんよ。自分で撃つからな」
「ほな、お前が撃つ時は、そいつに持たせる前か」
氷織は答えなかった。烏には一度見ただけでも伝わるらしい。青峰が口を挟んだ。
「話終わったか。そいつが取られたの、見に来ただけじゃねえだろ」
「取り返してほしいんか?」
「欲しけりゃ勝ってみろよ」
烏は笑ったまま、青峰の横を見た。乙夜が七星の外側を通っていた。まだ試合前なのに、七星は半歩だけその動きに合わせた。球は中央にある。乙夜が急に止まると、七星の爪先も止まった。よく見ようとはしている。烏は先ほど確認した映像を思い出した。左で撃っていた。こぼれ球だけではなく、その前の試合にも左の得点があった。左でも蹴れることは、映像で確かめてあった。
ただ、七星は相手が寄ると、すぐにパスを出すつもりだった球を止め直すことがある。クロスの前にも、必ず一度顔を上げる。烏が狙うのは左足そのものではなく、その迷う時間だった。
乙夜がこちらを振り返った。
「あんまり真面目に見てくれると、照れるんだけど」
「お前の話ちゃうわ」
「俺の方は見てたよ」
七星に聞こえる声だった。七星は答えず、乙夜と中央の球が一緒に見えるところへ動いた。雪宮は青峰の正面で軽く脚を振っていた。こちらを手伝う気配はない。そこを自分でやりたいなら、まずはやらせればいい。
「おい。さっきみたいに、外ばっか使うなよ」
残る一人が烏の肩を叩いた。一次を個人の得点で通過した男で、次の試合のことを話していた時も、自分が受ける位置の話が最初に出た。
「俺、前で待つからな」
「待つだけやったら、あのデカいんの陰から一生出てこられへんで」
「外すよ。それ見て出せって言ってる」
「ほな、見つけられるとこ来いや」
男が不満そうに鼻を鳴らし、石狩の方へ歩いた。背丈を見上げてから、斜め前へ位置を変える。石狩もついていった。五点先取。勝てば相手から一人を選ぶ。場内の短い確認音のあと、中央の球のそばにその男が立った。烏は後ろへ下がり、右の乙夜へ顎を向ける。乙夜は見ていなかった。七星の前を歩きながら、既に距離を測っていた。烏は左へ開く雪宮を確かめた。
青峰がどれだけ速いか。どこまで一人で来るか。それを確かめるために、最初から正面へ球を預けてやることはない。
*
烏が中央のパスを受けた。青峰が真正面から詰めてくる。
右サイドでは、乙夜が七星の方へ数歩下がった。短いパスを足元で受ける動きに見えた。七星も一歩前へ出る。
烏が右へ蹴る構えをした。
七星の目がボールへ向く。その瞬間、乙夜は進む向きを変え、七星の背後へ斜めに走った。ボールを持たないまま、見張っていた相手の視界から抜けたのだ。
青峰の足が烏へ迫った。
烏は足裏で半歩引き、すぐ右へ蹴った。青峰の爪先が掠める、その外をボールが通る。
七星が振り返った時には、乙夜はもうゴールへ向いて受けていた。
中央には白のフォワードが入り、石狩を引きつけていた。左の雪宮へは氷織がついている。乙夜へ出られるのは、追いかける七星だけだった。
七星は全力で戻り、乙夜の左肩へ並びかけた。
乙夜が中央を見る。折り返すと思い、七星は内側へ脚を出した。乙夜は出さずにボールを右へ押し、その一歩で七星を離した。
角度は狭い。それでも、近いポストとキーパーの間が見えていた。
乙夜は右足で低く撃った。
ボールがネットへ入った。
〇対一。
烏は青峰の横から身体を離した。奪われる前に出したつもりでも、さっきの二歩目は近かった。青峰はゴールを見たあと、烏の足元へ一度目を落とした。
「逃げ足いいな、お前」
「まだこっちで持っといてほしかったんか。すまんなあ」
七星はゴールの前から乙夜を見ていた。乙夜は走って戻らず、軽い足取りで近づいた。
「ちゃんと追ってきたじゃん」
「……追いつくつもりだったっす」
「ん。だから、もう一回やった」
乙夜は七星の返事を待たず、烏に掌を向けた。烏が低い位置で合わせると、そのまま肩を寄せてきた。
「次、半歩前でもいいよ。あっちの足、届かないから」
「一本取っただけで注文増やすなや」
「取れたんだから増えるでしょ」
雪宮が二人の間を通った。
「次は左へ出してね。氷織くんをこっちまで引っ張ったんだから、今度は俺が撃ちたい」
「見とったで。ほな次、自分で仕事してや」
烏は黒の再開を待つ位置まで下がった。七星が球を中央へ運んでいた。乙夜を見て、烏を見て、もう一度乙夜を見る。烏を見た間にも乙夜は動き、七星が顔を戻した時には、もう違う場所にいた。
「七星くん」
呼ぶと、七星の顔が上がった。
「一回球を見せたら、そっち向いて足止まる。今んとこ、凡やな」
「……俺のところ、ってことっすか」
「せや。嫌やったら止めてみ」
七星の口が閉じた。球を置く手が、一度だけ強く押し込まれた。烏はその手ではなく、立ち上がったあとの足を見ていた。
*
七星は氷織へ球を転がした。止めてから考えたら遅い。そう思って出した球に、氷織は一度しか触れなかった。前へ走る青峰の右側へ、そのまま通した。雪宮が前に出た。青峰の進路とゴールを結ぶ線に、先に身体が入る。一次で何度も見た形だった。青峰は足元に球を収めたまま、雪宮の右足へ近づいた。
七星も右へ走った。
青峰の正面には雪宮、その五メートルほど後ろに烏。雪宮が内側を閉じ、外へ出てきたボールを烏が狙う形だった。
青峰は雪宮の右へ近づいた。
雪宮は間を一つ残す。急に止まっても戻れるよう、前へ出す足を小さくしていた。
青峰は、速度を上げた。
一歩、二歩。同じ方向へ進む。
雪宮が追う。止まる方へ残していた重心を前へ移し、肩を並べに来た。
そこで青峰が止まった。
雪宮の足が、半歩前へ出る。
青峰はその背中側へボールを引き、中央へ入った。
烏がいた。
もう青峰の次の一歩を見ている。雪宮を抜いたところへ飛び込まず、ボールが離れる先を待っていた。
青峰はその正面へ進んだ。
烏の腕が横へ開く。青峰とボールの間に入れる向きへ腰を寄せた。接触した後で、球だけを自分の側へ置くつもりだった。
青峰は、触れる直前に右へボールを押した。
身体は左へ傾いたままだった。
烏の視線が一度下がる。身体より先にボールが出た。そこへ足を出せば触れる。
青峰の左足が芝を強く踏んだ。
傾いていた身体が、ボールの出た方へ戻る。烏の足が伸びるより先に、右肩がその脇を抜けた。
七星には、青峰が一度ボールから離れたように見えた。
離れても、相手が触る前に戻れる。
普通なら取られる幅を、青峰は自分の一歩の中へ入れていた。
キーパーが前へ出た。
青峰は右脚を引かず、足の外側で遠い下へ撃った。烏が振り向き、雪宮が追いつく前に、ボールはネットへ入った。
一対一。
「よしっ」
七星の声は、遅れて出た。青峰が振り返った。烏の開いていた腕が下がっていた。
「俺がボール離すとこ、待ってたんだろ」
「あの置き方で追いつくんか。非凡やな、お前」
「それで取れるんなら苦労しねえよ」
青峰は烏の返事を待たず、中央へ戻った。
七星はその後ろを走った。相手二人を抜いた、という結果だけなら見えていた。だが烏の前でボールが離れた時、自分なら次の一歩を出すより先に取られている。
氷織が七星の近くへ来た。
「左へ身体を倒したまま、右へボールを置いた。普通ならあれ、身体が追いつかへん。でも青峰くんは、左脚一本で逆へ踏み直せた」
七星は頷いた。烏が不用意に足を出しただけではなかった。届くはずのボールへ、青峰の身体が先に戻ってきたのだ。
雪宮が烏の肩を指で突いた。
「俺を抜かせてから取るつもりだった?」
「抜かせたつもりはないで。止めてくれたら助かったわ」
「へえ。後ろの君も助けてくれなかったけど」
「お互い様やな」
雪宮がゴーグルの位置を直した。笑ってはいたが、次に青峰を見た時には、手はもう下りていた。
「じゃあ、一本取り返してくるよ」
「頼むわ。今ので仕事終わりやと思わんといてな」
二人は別の方へ開いた。七星は息を吐いた。青峰が二人を抜いて取った。それは分かった。けれど、烏がそこで止められなかったからといって、さっき言われたことが消えたわけではない。乙夜は再開する仲間の方を見ながら、七星の右側に立った。七星がそちらへ身体を向けると、今度は烏がその外に出た。
どっちも見ようとして、首が動く。
「七星くん、少し中」
氷織の声で、一歩戻った。
「そこなら、僕が右の球に出られる」
「はい」
烏は青峰の前で受けようとはしていなかった。
青峰が一歩寄ると、受ける場所を後ろへ変える。雪宮に任せる時も、青峰へ向けては持たせなかった。
青峰は烏の動きを見た。
来る前に出す。こちらが出られない側では、自分で持つ。
最初から、青峰と勝負をする場所を選んでいる。
「お前、こっちで一回持てよ」
青峰が言うと、烏は目だけを向けた。
「取られる場所で持って、何の得あんねん」
「さっき止めに来たろ」
「そっちは取れる思うたからや。次も同じことするとは限らへんで」
青峰は舌打ちした。
強いから正面へ来る。負けたら同じところへ来てやり直す。そういう相手ばかりではないことくらい、もう知っている。
この男は、自分と競らずに勝つ方を遠慮なく選ぶ。
青峰は烏を見たまま、七星から離れる方へ動いた。烏がそこについてこなければ、パスを受けて自分で運ぶ。ついてくれば、七星へ寄る人数を減らせる。
正面から来いと言うだけでは、烏は来ない。ならば、こいつが無視できない場所まで自分が行く。
*
白のフォワードは、再開で出したあとすぐに前へ走った。
「一回、こっち!」
烏から戻った球を、石狩を背負って受ける。右足で止めたまま肩をぶつけ、左へ振り向いた。石狩の長い脚が伸びる。球が横へ弾かれた。
「くそ、次はもうちょい強く出せ!」
男は転ばず、石狩の前へ戻った。石狩もゴールへ退き切らず、その動きを追う。烏がこぼれ球を拾った。青峰が追った。烏は今度は持ち続けなかった。右の乙夜へ渡す。七星が寄ろうとすると、氷織が先にそちらへ出ていた。乙夜が球を返す。七星は中央へ戻った。烏は返ってきた球を右で受け、左へ身体を開いた。
雪宮がいた。七星は慌てて走り出した。青峰は烏の前。氷織は乙夜の方にいて、石狩は中央の男から離れられていない。雪宮へ届いた球が、右足の内側で止まった。七星は中へ入られる方を先に塞いだ。ゴールの正面を渡さず、外へ。自分より速い相手に、ただ真正面から足を出してはいけない。一次で追いつけなかった距離を、今はなるべく作らせたくなかった。
雪宮が外へ速く運んだ。七星も左へ走り、肩から離れないようについていく。これなら、まだゴールから遠ざけられる。石狩が戻るまで外へ追い込むつもりだった。
雪宮が急に歩幅を縮めた。右足でボールを引き、中央へ切り返す。外へ走っていた七星は、すぐには止まれなかった。振り向いて足を出した時には、雪宮の身体がボールとの間に入っていた。球を突こうとすれば、その脚を蹴ってしまう。七星は伸ばしかけた足を引いた。
「石狩さん!」
声を上げた時には、雪宮の右脚が引かれていた。中央のフォワードが前へ出た。石狩はその背後から左へ寄ろうとしていた。氷織も戻っている。けれど雪宮の足元まで届く者はいない。ペナルティーエリアの左角から、低い球が斜めに走った。遠い下へ、入った。
一対二。
七星は右足を下ろした。外へ追い込めたと思っていた。だが雪宮は、七星がついてきたところで急に遅くなり、その勢いを利用して逆へ抜けた。速さについていくだけでは、切り返しに間に合わない。雪宮はもう中央へ戻り、青峰を見ていた。
「まず一本」
言った相手は青峰だった。
「数えるの、飽きてない?」
「あと何本でも撃ってみろよ。こっち五本で終わるけどな」
「それ、俺たちも同じなんだよね」
雪宮は笑って、烏から来た手に掌を当てた。烏は二本の指を軽く上げた。得点の表示を見た七星は、乙夜の一つと雪宮の一つの間で、さっきまで同じ男から球が出ていたことを思い返した。氷織が隣に来た。
「僕が乙夜くんへ出た時、雪宮くんまで空いた。石狩くんは中の人を見てたから、あそこ、七星くん一人になる」
「俺、もっと早く行った方がよかったっすか」
「僕が乙夜くんを追いすぎた。次は石狩くんに中の人を任せて、早めに戻る。七星くんは、抜かれそうな時に呼んで」
七星は頷き、再開のボールを見た。氷織がその右前を指す。
「攻める時も、外で待つだけやと、乙夜くんに寄られる。次は僕の近くで受けてみて。そのまま蹴れる足元へ出すから」
「上げる前に、止め直さないで済むようにっすね」
「うん。青峰くんと石狩くんは、もう前に行ってる」
七星は氷織の右斜め前へ動いた。乙夜から少し離れ、氷織のパスが届いたら、そのままクロスを蹴れる場所だった。
青峰が中央から声を上げた。
「いつまでそっち見てんだ。こっちの番だぞ」
七星が顔を上げると、烏と目が合った。氷織の近くへ立ち直したところも、相手に見られていた。受ける場所を変えたなら、烏もそこへ来る。七星はさらに半歩、氷織へ寄った。
*
石狩が再開のボールを氷織へ出し、前へ走った。青峰も中央から右へ動く。烏が氷織との間に入った。背を氷織へ向け切らず、青峰と球の両方を見ている。氷織は左へ開きかけ、そこで右足を返した。七星へ、球が来た。さっき足先で示されたところまで、七星は入っていた。右へ運べる。けれど、乙夜もこちらへ向きを変えている。止めて、見て、蹴る。その全部をやっている間に、前に立たれる。
中央で石狩の手が上がった。七星は球を右の前へ置いた。乙夜が一歩近づく。もう蹴った。右足の甲に当たった球が、高く上がった。自分のすぐ横を乙夜が通った。伸びてきた脚は、球があった場所を掠めた。
「石狩さん!」
前にいた白のフォワードが跳んだ。石狩は、まだ地面にいた。七星は一瞬、遅れたのかと思った。けれど石狩は前へ半歩進み、その足で高く上がった。先に跳んだ男の肩が、もう少し下にあった。石狩の額に球が当たった。
下へ。ブルーロックマンの手より低い場所で弾み、球がゴールへ跳ね込んだ。石狩は両足で着き、前へ流れる身体を一歩で止めた。
二対二。
「っしゃ!」
石狩が両腕を広げた。七星は走っていって、その右手に飛びつくように掌を当てた。
「届いた! 今の、早かったすか!」
「ちょうどいい。あいつ先に上がったから、待てた」
「俺、乙夜さんが来たんで、もう上げるしかなくて」
「それでいいって。次も俺が先に頭出す」
石狩の手が七星の肩に下りた。重さで少し膝が曲がる。七星が笑うと、石狩も歯を見せた。白のフォワードが後ろで舌打ちした。
「烏。あれ、競れって言ったろ」
「競れとは言うたけど、あいつより先に下りろとは言うてへん」
「分かってるよ。次は合わせる」
男は石狩の方を見た。視線が合うと、石狩が顎を上げた。
「次も上からいくからな」
「それしかねえなら、次は取る」
七星は肩を揺すられたまま、少し息を吸った。これで同点だった。二度、こっちから球を出して取れる。青峰だけへ渡さなくても、ゴールへ届く。青峰が中央から声を掛けた。
「戻れ。まだ二本だ」
「分かってるって」
石狩が歩き出す。その背の向こうで、烏は七星を見ていた。白の再開で、フォワードはまた前へ出た。雪宮から受けた球を今度は足元に置き過ぎず、石狩の外へ運ぶ。石狩は跳ばなかった。長い脚を横へ出し、撃とうとした球を弾いた。氷織が拾い、七星へ出した。右足で止めた時、乙夜がもう前にいた。
さっきより近い。七星は右脚を引き、石狩を見た。白の男が石狩の肩に並んでいる。烏は中央からこちらへ寄り、低く出す線を塞いでいた。同じ高さへ、早く。七星は右足を振った。
乙夜の靴先より上を球が越える。石狩が跳んだ。今度は白の男もすぐ横で上がった。石狩が頭を振り、球は額の端で大きく向きを変えた。ゴールの方へは行かなかった。タッチラインを越え、壁の手前で跳ねた。白のキックインを示す音が鳴った。
「悪い、外側だった」
石狩が着地して言った。七星は首を振り、球を取りにいく乙夜を見た。右から上げる時、乙夜に当てないように脚の角度を変えていた。さっきと同じ球を上げたつもりで、同じではなかった。左なら、足元は空いていた。そこへ置き直す間に、烏はどこまで来ただろう。七星が後ろへ下がると、烏も同じだけ歩いた。乙夜が球をラインの上に置く。
「ええ球上がったな、さっきのは」
烏の声が近かった。
「……もう一本、上げるっすよ」
「ほな、それまで俺の相手しててや」
烏は七星と球の間へ入った。七星は右へ回ろうとし、途中で止まった。背中を向けた烏の肩の向こうに、乙夜の靴が見える。今度は自分から前へ出ないと触れない。表示は二対二だった。乙夜が球の後ろへ足を置いた。七星は膝を曲げ、烏の背中から半歩だけ距離を取った。