青峰大輝 in ブルーロック 作:AIで小説を上手く書きたい!
ジュリアン・ロキが、同じコートを歩いていた。
青峰は入口で足を止めた。映像なら何度も見た。相手が横へ並ぶ前にボールを蹴り出し、その相手より先に追いつく。走ると分かっていても止められない、十七歳のフランス代表。
いまは、数メートル向こうにいる。
あの足が自分を追ってくる。自分が持っているボールを、本気で奪いにくる。
「青峰さん、イヤホン」
七星に声を掛けられ、青峰は支給された翻訳用のイヤホンを耳へ入れた。さっきまで意味の分からなかった会話が、日本語で聞こえる。
「で、今日は外へ出られるの? オイラ、ハラジュクに行きたいんだけど」
「俺は飯だ。終わったらすぐ行くぞ」
パブロ・カバソスの横で、アダム・ブレイクが首を回した。ダダ・シウバが笑い、まだ始まってもいないコートを指す。
「お前はいつもそれだな。五点取ってから考えろよ」
「だから早く始めろって言ってんだ」
五対五、五点先取。キーパーは両側ともBLUE LOCK MAN。通路で確認した条件を、青峰はもう一度頭に置いた。向こうが五本入れる前に、こちらが五本取る。
七星は五人の顔を順に見ていた。
「ほんとにいる……」
「見てりゃ点くれんのかよ」
青峰が横を通ると、七星は口を閉じた。石狩はその隣で、ダダの脚を見ている。自分とそう変わらない体格の選手が、どこから跳ぶのか測っているようだった。
ダダも石狩に気づいた。
「おお、デカいのいるじゃねえか」
「上で来たら、俺が行く」
石狩が答えると、ダダは目を細めた。
「その背で負けたら言い訳できねえぞ」
「負けに来たんじゃない」
「ガハハ、そうかよ!」
ダダは石狩を一度見上げ、仲間の方へ戻った。石狩は七星へ顔を寄せる。
「上げられたら、俺に」
「はい。俺も前、見ます」
青峰の前では、レオナルド・ルナがボールを足裏で止めていた。こちらを迎えるような笑顔だった。
「君たちの試合、少し見せてもらったよ。ずいぶん元気がいいね」
「じゃあ話は早えな。始めようぜ」
「せっかちだなあ。もう少し楽しめばいいのに。世界の選手と一緒の写真が撮れる機会なんて、そうないだろ?」
七星が黙った。烏はルナの足元から目を上げた。
青峰はルナのすぐ前へ出た。
「写真撮りに呼んだんなら、絵心に言っとけ。俺は帰る」
「おや。本当に勝つつもりなんだ」
「負けたら写真にでもしてやるよ。お前が抜かれたとこな」
ルナは声を立てて笑った。
「いいね。撮れたら俺にも見せてよ」
「ルナさん、もういいでしょう」
ロキが二人の間へ歩いてきた。
「準備、できてますよね。そろそろ始めましょう」
「ほら、怒られた」
ルナがボールを中央へ転がした。ロキは青峰へ手を差し出した。
「よろしくお願いします」
青峰が握ると、ロキは短く頷いた。近くで見ても、自分よりずっと年上の顔には見えない。だが、周りの四人の誰も、こいつを付き添いの子供として扱っていなかった。
「動画、見たぜ。ずいぶん速えんだな」
「ありがとうございます」
「俺にも、あの速さで来いよ」
ロキの視線が青峰へ戻った。
「ええ。ボールを持ったら、取りに行きます」
「持つまで待たなくてもいいぜ」
青峰は手を離し、先に中央へ向かった。
褒めて終わる気も、速さを見せてもらって帰る気もない。自分より一つ上のこいつが世界でやれているなら、ここで抜いて、先に入れる。その時、どんな顔をするのか。
口の中が乾いた。舌で唇を濡らす。試合前に、こんなに早くボールが欲しくなるのは久しぶりだった。
「青峰」
烏が呼んだ。
「最初、どこおるつもりや」
「ルナの前。取れたら、そいつの横へ出る」
「ついてきたら?」
「俺に入れろ。そっからは抜く」
烏は相手の五人へ目を向けた。ルナとブレイクが中央に離れて立ち、カバソスはその後ろ。右にロキ、左にはダダがいる。
「ほな、入る前にこっちが取られんようにせんとな」
烏が氷織へ声を掛けた。二人が後ろに残り、七星が右へ開く。石狩はダダから離れすぎない位置へ戻った。
青峰は相手の陣内を見た。
五人とも、有名だからここに立っているわけではない。この五人の前でも自分は抜けるのか。頭の中で何度やったところで、答えは出ない。
ロキが七星の向こうへ移った。一歩で進む距離を、つい目で追った。
早く来い。
青峰が中央へ踏み出しかけると、カバソスがボールを踏んだまま言った。
「まだだよ。せっかく来たんだから、最初から反則しないでね」
「とっとと蹴れよ」
「じゃあ、ちゃんとついてきてね」
カバソスは笑わずに返した。青峰は腰を落とした。開始の音が鳴るまで、もう相手から目を離さなかった。
*
カバソスの足から、球が後ろへ転がった。ブレイクが受け、左へ出す。ルナは止めるふりをして足の内側で押し、カバソスへ戻した。青峰はルナへ寄った。球はもうない。カバソスが顔を上げ、右にいるロキへ一度目を向けた。七星が半歩、そちらへ動いた。
カバソスは横へ蹴った。ブレイクへ戻る球だった。烏が入った。正面から追っていたのではなかった。カバソスの身体の外へ出て、横へ出る球に靴先を差し込む。球が少し浮いた。
「氷織!」
氷織の右足が、それを落とさず前へ通した。青峰はルナの横へ走っていた。氷織が蹴った瞬間には、ルナもこちらへ向き直る。出した足が、球の前へ入ってくる。青峰はその外へ先に触れた。右足の外側で、小さく押す。ルナの靴は内側を通った。肩が隣に来る。青峰は顔を上げた。
ブレイクが正面にいた。
大きな身体が横へ動き、青峰の右側を塞ぐ。青峰はそのまま進んで肩を当てた。重かった。押し抜こうとした上体が、逆に左へ傾く。
青峰は踏ん張って身体を起こさなかった。
ボールを左足で斜め前へ押し、ブレイクの身体から離す。自分も傾いたままそちらへ出る。ブレイクが伸ばした右足の外を、ボールが通った。
ゴールまで十数メートル。中央のキーパーが、青峰の正面へ寄る。
右から速い足音が来た。
ロキだった。外に開いていた位置から、もう中央へ戻ってきている。次にボールを置き直せば、撃つ前に追いつかれる。
青峰は右足を身体の外へ踏み、倒れるのを止めた。
その一歩を軸に、左脚を横から振った。
上体はまだ斜めだった。ゴールへ真っすぐ向いてもいない。それでも、蹴る瞬間の左足だけで遠い隅を狙う。
シュートはキーパーの反対へ飛んだ。
ネットが揺れる。
一対〇。
ロキがゴール前へ戻ってきた。青峰が蹴った場所から、ほんの数歩だった。
青峰はその足を見た。さっきまでは右の外にいた。ブレイクを越す時にちらりと見えただけで、次にはもうここへいる。
それでも一本目は、自分が入れた。
「遅かったな」
ロキがこちらを向く。息は乱れていなかった。
「間に合うと思ったんですけど。そこで撃てるんですね」
「次は来いよ。見てるだけじゃ止まんねえぞ」
ロキは返事をする前に、右へ開いていた場所を見た。それから中央へ歩いた。さっきの位置までは戻らなかった。七星が青峰へ走ってきた。
「取った! 世界から取ったっすよ!」
「騒いでねえで戻れ。次、向こうから来んぞ」
青峰は七星の横を通った。まだ一点だ。自分が入れた後にあいつらがどうするか、その方を見たかった。
背中から拍手が聞こえた。振り向くと、ルナだった。
「うまいね。日本に置いておくのはもったいない」
「置いとく気かよ。抜かれたくせに」
「だから、次は止めるよ」
ルナは言い終わる前にボールへ向いた。ブレイクも顔をしかめただけで、最初にぶつかった場所へ戻っていく。青峰に決められたことを、仲間へ笑ってごまかす奴はいなかった。
青峰は二人の間へ目を向けた。そこが次にはどう狭くなるのか、早く試したかった。
氷織が近づいてくる。
「右へ走ったの見えたから、止めずに出したで」
「次もあれでいい。足元へ下げんなよ」
青峰はそう答え、烏の方を見た。烏はもう中央へ戻っている。カバソスの横パスを奪ってから、青峰が撃つまで十秒も掛かっていなかった。
世界の選手でも、ボールを離したところは取れる。そこへ自分が走れば撃てる。最初の一本で、それは確かめた。
青峰は中央に戻ったロキを見た。今度は最初から内側にいる。青峰がルナを抜けば、すぐに走ってこられる距離だった。
ロキが再開のボールを受け取った。青峰はすぐに前へ出た。
ルナがブレイクへ何か言った。青峰にはその声も聞こえた。
「押しても、倒れながら撃つね」
「次は蹴る前に取る。あんな倒れ方、二度も見せられるかよ」
失点を不運で片づけず、次にどこを塞ぐかの話をしている。青峰は二人へ一度目を向け、またロキを見た。
一点取れば、顔は変わると思っていた。驚くか、腹を立てるか。どちらでも、その次に本気で来ればよかった。
ルナもブレイクも、自分たちが負けるところまでは考えていないらしい。既に次の攻撃へ動き、青峰のいる側へボールを入れようとしている。
青峰は前へ出た。さっきの一本で足りないなら、もう一本入れる。その時にも同じ顔をしていられるか、見てやりたかった。
*
再開の球が、ロキに入った。七星が前に立った。腰を落とし、球とロキの身体を一緒に追おうとしている。青峰はその後ろから中央へ寄った。ルナが、氷織と烏の間にいた。近すぎるほどでも、遠すぎるほどでもなかった。ロキへ行けば届かないが、ルナへ残ればロキが走るところは空く。
ロキが左へ踏み込む。七星がそちらへ寄った瞬間、ボールを右へ押し出して走った。七星が向きを変えた時には、もう横を抜けていた。
七星が追う間にも、ロキはさらに前へ進んだ。最初の二歩で抜いてからも、速さが落ちない。氷織が右へ寄り、烏もロキの前へ回る。二人がそちらを追う分、中央にいるルナとの間が空いた。
青峰は一度、ロキへ出る距離を測った。ここから真横へ走れば、身体の横には行ける。球へ足を出せるかは、その次だった。ルナが歩幅を変えた。こちらが一歩右へ寄った分、斜め後ろへ出た。ゴールは青峰の背後にある。そこへ真っ直ぐ走る代わりに、ロキから球が戻るところへ身体を開いていた。青峰は中央へ足を戻した。どちらへ行っても間に合わない位置に留まる気はなかった。ルナへ来るなら、そこで取る。
ロキの速さを追っていた目を、球へ戻した。ロキは右足で球を外へ置いた。そのまま撃てる角度だった。石狩がゴールの前から出る。青峰はルナとの間を狭めようと、左足を踏んだ。ロキの足から、球が後ろへ出た。
走っている速さとは逆だった。斜め後ろ、ルナの足元。ロキはその先で歩幅を縮め、外へ流れた。氷織と烏の身体は、まだ前へ行っていた。青峰はルナへ向いた。ルナが右足を球の前へ置いた。止める姿勢だった。
青峰はルナへ一気に近づいた。ボールが止まる瞬間に触れば、そのまま相手ゴールへ行ける。
ルナは、青峰の足が届く直前に右足で横へ流した。
青峰は空振りした足をすぐ戻した。追いつく速さはある。だが、青峰が向きを変える間に、ルナはもう次の左足を振っていた。
石狩が横から伸ばした脚の脇を、シュートが抜ける。
近いポストの上で、ネットが揺れた。
一対一。
青峰は奥歯を噛みしめた。
ロキを追って戻った氷織と烏は、まだ右側にいた。最初に抜かれた七星が中央まで戻り、ようやく五人の位置が揃う。
一人に抜かれた穴を塞ぐために二人が動き、その間に別の一人へ撃たれた。青峰が自分の相手だけを見るなら、ロキは右からそのまま撃てる。ルナへ寄ればいい、と初めから決めて済む攻撃ではなかった。
足が速いというだけで、相手全員の立つ場所を変える。
青峰が国内の試合でやっていたことを、今度は自分たちがされた。しかも空いたところには、パスを待って見物する男が立っているのではない。ルナは一度触って青峰を外し、すぐに自分で撃った。
全員、自分の一点にするつもりで動いている。
青峰はゴールからルナへ目を戻した。
分かっていたのに、取れなかった。
ルナまで詰めたのに、横へ流されたボールへ触れなかった。その苛立ちがまだ身体に残っている。だが、自分が得点すれば相手が黙り込んでいた頃と違い、次のキックオフが待ち遠しかった。
球をよこせ。次は俺が行く。
ゴールの中からボールが戻るまでが、長かった。
ロキの走る先を塞ぎ、次にルナへ戻す球を狙った。そこまでは見えていた。届く距離にも入った。それでもルナは、青峰が奪いに来る速さまで使って、逆へ一度で流した。
寄るのが速ければ取れる相手ではない。
ルナは蹴った左足を下ろし、青峰を見る。
次はその右足で触る瞬間まで追う。青峰は相手の靴から目を離せなかった。自分なら戻れると思って踏み込んだ、その次を先に撃たれたことが気に入らなかった。
ルナがこちらへ歩いてきた。青峰はその足元を見ていた。右で横へ流した後、左で撃つまでに、一度も蹴りやすい位置へ直していない。次に奪うなら、右で触るところへ間に合わせる。
「惜しかったね。足は長いんだから、もう少し頭も使えば届いたかも」
「次はその足、出す前に取る」
「困ったな。じゃあ、また違う方へ行こうかな」
笑った顔は、試合前と同じだった。ルナは立ち止まらず、青峰の横を通った。青峰はその背中を見てから、ロキを見た。さっきの走りを終え、今は中央へ戻っている。ルナが片手を向けると、ロキは短く掌を合わせた。七星が、自分の靴先を見ていた。氷織がその横へ来る。
「最初、身体はこっちに来たんすよ」
七星が右手で示した。
「でも、球は反対で。向き直ったら、もう……」
「僕も、抜けた先で間に合うと思った。そこで追いつけへんかった」
氷織は言って、ゴールから戻ってくる球を見た。烏は二人の前を通り、中央へ向かった。
「追いかける方、全員で同じとこ行ったな」
「じゃあ、次は残る?」
「どこで渡すか見てからや。今の位置で残っても、俺はどっちにも届かへん」
烏は自分の足で芝を二度踏んだ。短く、同じ場所だった。青峰はその脇へ行き、球を受け取った。
「話してんなら、次こっちよこせ」
「走るなら、俺が持つ方も見とけよ。前へ出るだけやと、ロキに間へ入られるで」
「来る前に受ける。出す方が遅れんなよ」
青峰が顎で示した先に、ロキがいた。七星が中央から右へ出ていった。まだ少し呼吸が速い。石狩は左に開くダダを見て、手を一度上げた。青峰は球を足元へ落とした。さっきのロキは、球を持って二歩で七星を越えた。そのあとも二人の戻る足を追い越していた。自分の横から走り始めたら、どこで並ぶのか。
ゴールの前へ戻るロキが、一度こちらを見た。青峰は球を烏の前へ転がした。
*
青峰が前へ出ると、烏から氷織へ球が回った。ルナがその間を狭めにくる。氷織は足の甲を球の下へ入れ、低く浮かせた。青峰は胸を開いた。球が当たり、身体の前へ落ちる。
ロキが来た。
さっきより近いところからだった。青峰は球が落ちる場所へ右足を出しかけ、左肩を前に入れた。ロキの足がそこへ向いた瞬間、右足の外側で球を逆へ触る。
抜けた。
青峰は左足で芝を強く蹴った。ロキの肩が後ろへ下がる。球は自分の前にあった。もう一歩出れば、そのままゴールへ向かえる。隣に、足音が来た。ロキの膝が前へ出た。青峰が外した方の足は、もう地面から離れていた。二度目に踏んだ足で身体が運ばれ、ロキの肩が青峰の前へ戻る。青峰は目を見開いた。
「……来るじゃねえか」
青峰の声が弾んだ。
抜いたはずだった。身体もボールも先に出した。それを、こいつは追い直して、当たり前のように自分の前へ戻ってきた。
帝光で、桐皇で、誰の足もそこまでは来なかった。もう追わなくていいという声ばかり聞いた。いま横にいる男は何も言わない。青峰が次に触るボールへ、また脚を伸ばす。
その足を、抜き返したい。
青峰はボールを引いた。息を吸うより先に、次の動きが浮かんでいた。
ロキは答えず、ボールを取りに来た。青峰は右の爪先でその外へ運ぶ。ロキは短く踏み直し、青峰が進む方へ脚を伸ばした。追いかけて戻ったばかりなのに、もう次の突破まで塞いでくる。
青峰は左肩を寄せたまま、ボールを右へ引いた。ロキの足がついてくる。
もう一度抜くには、大きく前へ出さなければならない。そこへ蹴れば、ロキと走り合いになる。
青峰は外へ置くふりをし、その場から右足で撃った。
ロキも止まった。前へ伸ばした靴先に、ボールが当たる。
完全には止まらなかったが、シュートは右のタッチライン際へ逸れた。
「ちっ!」
青峰はすぐに追った。だが、その先には右へ走っていた七星がいた。七星が先にボールへ追いつき、ゴールへ顔を上げる。
石狩が遠いポストへ入っていた。
青峰は中央へ戻った。七星から来れば撃つ。石狩へ上がれば、弾かれた球を取る。ロキは青峰の動きについてきて、二人はゴールの手前へ並んだ。
七星の右脚が振られた。高く上がった。石狩が前へ出た。ダダがすぐ横にいた。先に球を見たのは石狩だった。踏み切った長い身体が上がり、額が球へ向かう。
届いた。
石狩が先に触った。青峰はゴールの方へ向いた。頭を振り切れれば、下へ叩ける高さだった。ダダの肩が、石狩の横にあった。跳ぶ前から並んでいた身体が、空中でも離れない。石狩が首を振ろうとすると、胸の向きが少し後ろへ戻された。額に当たった球は、ゴールの方へ伸びなかった。
手前の中央へ落ちた。ブレイクがそこにいた。青峰は向きを変えた。石狩が着地する。その膝が曲がり、次の一歩が出る前に、ブレイクは落ちる球を右の前へ運んでいた。氷織が寄った。
ブレイクは球を遠くへ逃がさなかった。氷織の肩へ自分の肩を合わせ、その外へ右足を進めた。氷織の身体がずれた。足は球の近くに出ていた。それでも、肩が後ろへ流された分だけ、靴先が届かなかった。ブレイクが前へ運ぶ。青峰は後ろから追い、中央へ戻る道を縮めた。七星も反対から走った。石狩の足音は、まだその後ろだった。
烏が正面へ回った。ブレイクは烏の足を見た。右へ置いた球を一度小さく内へ寄せ、相手が脚を出すより先に、右脚を引いた。撃った。強い音がした。
ゴールキーパーの手が球に当たった。弾かれた球は前へ戻らず、そのままゴールの内側へ跳ねた。
一対二。
青峰はゴールの少し手前で止まった。ブレイクの背中が近かった。腕を伸ばせば触れそうなところまで来ていたが、球を蹴る足には届いていなかった。石狩が遅れて戻ってきた。自分が跳んだ場所を見た。そこから、球が落ちた中央を見る。ダダがゆっくり歩いていた。
「頭は先、当たったんだけどな」
石狩が言った。悔しさを押し込めた声でも、青峰には聞こえた。ダダも聞こえたらしく、こちらへ手を大きく上げた。
「先に当てたくらいで終わりかよ。ゴールはそっちだろ!」
石狩の眉が寄った。
「次はゴールへ飛ばす」
「やってみろよ!」
ダダは笑っていた。石狩は笑わず、長い脚を一度前へ振った。着地したあとの足を戻しているように見えた。ブレイクが青峰の横を通った。
「上で遊んでる間も、下は空くんだよ」
「次、その球も取るわ」
「俺が先に触ったら、また同じだ」
ブレイクは足元へ落ちてきた球を止め、青峰へ蹴った。弱くはなかった。青峰は右足で受け、足首を返して中央へ運んだ。氷織は肩を一度さすり、烏へ何か言った。烏が右側を指す。七星は石狩に近づいた。
「もう少し奥でしたか、今の」
「高さはよかった。首、振る前に戻された」
「じゃあ、次は――」
「もう一回上げて。今度は、先に胸向ける」
七星は頷いた。石狩は自分の胸に掌を当て、次に跳ぶ向きへ肩を回した。青峰はその前へ球を転がした。
「上がったら、ゴールに入れろよ。俺がそこまで行く前に」
「入れるつもりで跳んだ」
「じゃあ、次入れろ」
石狩は一度青峰を見た。怒ったような目だった。そのあと、青峰へ球を返した。
「お前も、途中で止められるなよ。下が空くから」
「止まってねえわ。抜いたあと戻ってきたんだよ」
「だったら、戻られる前に入れろ」
青峰は石狩を睨み、返ってきた球を靴の裏で押さえた。石狩はもうダダの方へ向き直っている。頭に当たったことだけで帰るつもりはなさそうだった。青峰は球を中央に置き、ゴールの方を見た。ロキが来ていた。青峰のシュートを弾いたあと、ボールを追い続けてはいなかった。その後ろで位置を直し、今はまた、青峰へすぐ届くところにいる。
青峰は右足を球の上へ置いた。
「今の、抜かれたの分かってたか」
「抜かれたよ。でも、撃つ前に戻れた」
「だったら、今度は戻る前に終わらせる」
ロキは青峰の右足を見て、少しだけ腰を落とした。
「だったら、次は受ける前に取るよ」
青峰はロキの目を見た。
「やってみろよ」
青峰はボールから足を下ろした。ロキは離れなかった。
勝てるかどうか、まだ分からない。
その思いが浮かんでも、青峰は目を逸らさなかった。負けるつもりは毛ほどもない。だが、次を入れた後まで分かりきっている試合でもなかった。ロキがどこへ来るのか。そこを抜いたら、今度は誰が出てくるのか。考えるほど、脚を止めていられなくなる。
「烏。さっさと始めろ」
呼びつけた声に、烏が眉を寄せた。
「急かすなや。君、負けとる時もそれなんか」
「ああ? だから早くやんだろ」
青峰はゴールを見た。先に五点。そこへ届くまで、こいつらは相手をしてくれる。
あと四本、自分が入れる。それを考えるだけで、腹の奥が熱くなった。