青峰大輝 in ブルーロック 作:AIで小説を上手く書きたい!
封筒の差出人は、日本フットボール連合だった。
青峰は机の上に中身を広げた。指定された日時と集合場所。その下に、全国から選ばれた三百人の高校生フォワードを集める、とある。
三百人。
数字のところでもう一度目が止まり、青峰は次の紙をめくった。
持ち物。参加に必要な手続き。施設への行き方。
肝心の、誰が来るのかは書いていなかった。
「大ちゃーん、入るよ」
返事をする前に、部屋の扉が開いた。
桃井さつきが顔を出す。片手には自分の携帯があった。
「この前貸した充電器、返して。今日使うから」
「机の……どっか」
「どっかって」
青峰がベッドの脇を探り、黒いコードを引っ張り出した。
「それ、イヤホン。白い方だってば」
「分かってる。これの下」
白い充電器を渡すと、桃井は一度端子を確かめてからバッグへしまった。机の書類に目を留める。
「何、それ。連合から?」
「選考会」
「見てもいい?」
青峰は表の紙を渡した。
桃井は立ったまま読み始めた。すぐに茶化したり、感想を言ったりはしなかった。募集の文面から集合場所へ目を移し、二枚目も読む。
「泊まりなんだ」
「らしいな」
「三百人、全員フォワード?」
青峰は頷いた。
桃井が紙を置く。
「行くの?」
「普通の合宿なら行かねえ」
「普通かどうか、これじゃ分からなくない?」
青峰は返事をせず、案内の一行を指で押さえた。
世界一のストライカーを生み出すための、特別強化計画。
青峰は紙を机へ戻した。
「どうせ、知ってる連中だろ」
全国、強化、選抜。名前だけなら、いくらでも変えられた。知らないユニフォームに身を包んだ相手でも、何度か抜くうちに同じ顔になる。
桃井が書類の端を押さえた。
「まだ誰が来るか分からないんでしょ」
「分かんねえから見てたんだよ」
「行くか聞いただけなのに、私に怒んないでよ」
青峰はベッドへ腰を下ろした。
窓の外では、部活帰りの生徒が話していた。遅い時間まで走らされたのだと、一人が文句を言っている。その声が遠くなるまで、青峰は黙っていた。
桐皇で最後に出た練習試合も、夕方まで続いていた。
来る相手は強いと聞いていた。去年の選手権に出ていて、守備の中心は世代別の候補にも呼ばれている。青峰は相手の名前を覚えないまま、試合の開始には間に合った。
相手の監督が、彼を知っていた。
キックオフ前に、長身のDFをこちらへ向けて何か話す。その選手は頷き、足元から青峰の顔まで見てきた。青峰は視線を返した。
一点目には九分掛かった。
ボールが来なかった八分と少しを、青峰はその時間のほとんどとして覚えていた。相手は中央へ通す線を閉じ、桐皇の中盤を外へ追い出した。青峰が一度自陣へ下がって受けると、長身のDFはセンターラインまではついてこなかった。
青峰はそこから持っていった。
正面の二人を抜き、エリアの手前で例のDFと向き合う。足を出さずに追ってくる相手へ、ボールを一歩近づけた。右肩が触れるところまで寄ってから、逆の足で左へ出る。
相手はついてきた。
青峰が次の一歩を速めると、そこで離れた。
二点目は、三人目に挟まれる前に撃った。三点目には、腕を掴まれた。振りほどくより先に、転びかけた身体から足だけを出して入れた。
審判が得点を認め、DFへ警告を出す。
青峰は、その男がこちらを見るのを待った。
男は審判を見ていた。
後半の途中、桐皇の先輩から声が飛んだ。
「青峰、一回落とせ! 中、変える!」
青峰はボールを持ったまま、三人のいる中央へ入った。
左から来た足を越し、正面の相手を止め、背後から寄ってくる一人より先に撃った。ゴールの右上へ入る。ベンチから歓声が上がった。
味方の先輩だけが、首を横に振った。
「今、俺が空いてた」
「だから何だよ。入ったろ」
「一本くらい使えって言ってんだ」
「お前に出して、どうなんだよ」
先輩が言葉に詰まったのを、青峰は覚えている。
言い方が悪かったことくらい、今でも分かる。だが、その試合で違う選択をするつもりはなかった。パスを出せば、自分が撃てるボールを手放す。相手を抜けば、もうゴールへ届く。そちらを選ぶ理由を、誰かに説明してもらう必要はなかった。
試合が終わる前に、相手のDFが交代した。
タッチラインの向こうへ歩く背中を見た。こちらを見る気配はなかった。代わりに入ってきた選手も、ベンチへ何度も顔を向けた。
また、終わっていた。
笛より先に終わる。自分のゴールが増えるほど、そうなるのが早くなった。
その次の練習を休んだ時には、先輩が呼びに来た。
「試合だけ出りゃいいと思ってんのか」
「出なくていいなら、そうするけど」
「そういう話してねえだろ」
腹を立てられても、青峰の方には返す話がなかった。昨日より速く走って、誰に追いつかせないつもりなのか。シュートをもう一本入れられるようになって、何が変わるのか。
口にすればまた怒るだろうと思い、何も言わなかった。
桐皇の練習場へ行かなくなった。試合の誘いも断り、そのうち、知らない男たちの集まるコートで蹴る方が増えた。
チームを離れたところで、強い相手が見つかる保証はない。それでも、初めて見る相手なら一度は試したくなった。同じ練習場で、今日も自分が全部入れると思いながら靴を履くよりはよかった。
昨日のコートで会った四番は、最後までゴールを守った。
それでも六点入った。一本、線の手前で掻き出された。もう一度と言う前に、相手は靴を履き替えていた。
「……昨日は、何対何だったの」
桃井の声で、青峰は机へ目を戻した。
「六対一」
「全部、大ちゃん?」
「ああ」
桃井は点差に驚かなかった。小さい頃から、試合の後に同じ質問をしてきた。その答えのどこを聞けばいいのかも、もう分かっている。
「それで、今日は?」
「何が」
「六点目のあとも、ちゃんと守ってきた?」
青峰はすぐには答えなかった。
抜かれた後も走る男がいた。青峰を抜く代わりに、ワンツーで別の守備者を崩す男もいた。彼らなりに試合をしていた。それを、やめていると決めつけるほどではない。
だが、止めてほしいと頼んでいるわけでもなかった。
最初から止められる奴に会いたかった。
「別に」
そう答えると、桃井の眉が動いた。
「じゃあ、どうして書類、ずっと見てるの」
「机にあるからだろ」
「持ち物の裏まで読んでたじゃない」
青峰は机の紙を引き寄せた。桃井の指が乗ったままだった。
「離せよ」
「大ちゃんさ。行きたいなら、行きたいって言えばいいのに」
「分かったように言うな」
思ったより強い声が出た。
桃井の手が止まる。すぐに引っ込めるのではなく、青峰を見たまま紙の端から指を離した。
「分からないから聞いてるんだよ」
部屋の外で、食器の触れ合う音がした。
青峰は返事をしなかった。桃井も笑って流さなかった。
彼女が試合を見に来なくなった時期があった。部の用事が重なり、青峰の方も試合の予定を伝えなくなっていた。一度会うと、何でも今まで通り知っている気で話しかけられる。苛立ったのは、そのせいもあった。
行って、また退屈な試合をして帰る。その可能性を自分で考えるのはよくても、桃井に期待していると指摘されるのは腹が立った。
それでも書類を捨てずにいるのだから、否定しきれなかった。
「……三百人、来るんだろ」
「うん」
「一人くらいいるかもしれねえって、それだけだよ」
桃井は書類を見た。
「大ちゃんを止められる人?」
「ああ。口だけじゃなくてな」
勝てると言い、追いつくと言い、その場しのぎではなく実際に届く相手。それを抜いてもう一度撃つ。その後にも次がある試合。
昔は、それを特別なことだと思っていなかった。
「だったら、名前を見てからじゃ分からないかもね」
桃井が言った。
「聞いたことない名前でも、上手い人はいるから」
「分かってるよ」
「分かってるなら、最初からそう返して」
青峰はベッドから立ち上がった。桃井の肩越しに、連合の印刷した一行が見えた。
世界一のストライカー。
自分より上がいるとは書いていない。それをつくると書いてある。今いる相手を集めるだけとは、少し違う言い方だった。
どこまで本気なのかは、まだ分からなかった。
「昨日の、最後の一本は止められた」
青峰が言うと、桃井が顔を上げた。
「キーパーに?」
「抜いた奴が戻ってきた。頭で、線の前から出しやがった」
「じゃあ、抜いた後のことも考えないとね」
「次は入れる」
桃井の表情が少し和らぎかけた。青峰が睨むと、彼女も眉を寄せる。
「何。私、何も言ってないよ」
「いちいち嬉しそうにすんな」
「して悪い?」
青峰は答えず、バッグを引っ張り出した。
桃井の携帯が鳴った。待ち合わせの相手からだったらしい。画面を見て、すぐに短く返事をする。ここで話が片づくまで付き合うために来たのではない。そのことに、青峰は今になって気づいた。
「もう行く。充電器、今度は自分で持ってきてね」
「返しただろ」
「取りに来たんです」
桃井は扉を開けた。青峰は、閉まる前に呼んだ。
「さつき」
「何?」
「書類。そこ」
机の端から落ちかけた一枚を指す。桃井が戻して、こちらへ向けた。
「参加するなら、名前、忘れないで」
「ガキじゃねえんだから」
「この前、借りた充電器も忘れてたでしょ」
扉が閉まった。
青峰はその音の後で、さっき怒鳴るほどのことでもなかったと思った。思ったが、追っていって言い直すほど素直にもなれなかった。
机へ戻り、名前を書く欄を見た。
*
青峰はもう一度、参加の案内を読んだ。
三百人全員が、選ばれたフォワード。
強い守備者を集めた企画ではない。それは分かっていた。ただ、点を取ることだけで競わせるなら、六点を取られてから一つ返して満足していた連中とは違う。
誰かが、自分より多く取るつもりで来る。
それが口だけかどうか、同じピッチに立てば分かる。邪魔な規則を並べられたら、その中でも自分が決めればいい。
招待の文面を読んでも、気分が晴れたわけではなかった。今度こそなどと考えれば、また同じだった時に腹が立つ。それでも、行かなければ今日の続きしかなかった。
外れなら外れで、集めた奴の顔くらい見て帰る。
青峰は参加の紙を、残す方へ分けた。
青峰は携帯で経路を調べた。集合時間に間に合う電車が出る。一度画面を閉じかけて、前の便も開いた。
こちらなら三十分ほど早く着く。
早く行ったところで、早く試合が始まるわけではない。それでも、参加者がいれば見られる。ボールを蹴れる場所があるかもしれない。
一本早い方を保存した。
バッグに靴と着替えを入れたあと、参加欄へ名前を書く。所属の欄ではペンが一度止まった。
未所属。
そう書き、紙を畳んだ。
携帯の画面には、さっきの経路がまだ残っていた。青峰は目覚ましを設定し、桃井へ短く送った。
『行ってくる』
少しして返事が来た。
『いってらっしゃい! 帰ったら試合の話、聞かせてね』
青峰はその文を読み、携帯を伏せた。
返事の文を打ちかけ、消した。代わりに、さっき調べた集合場所をもう一度確かめた。
*
当日は、予定した電車に乗れた。
集合より三十分ほど早く受付に着き、青峰は施設へ入った。
既に何十人も来ていた。
壁際でストレッチをする選手。書類を読み返す選手。知り合い同士で話す声もあったが、すぐ近くを別の参加者が通ると、どちらからともなく口を閉じる。
青峰が受付へ向かう途中、備品の籠からボールが一つ転がり出た。
近くにいた選手が、片足で止める。
勢いのついたボールが、靴からほとんど離れなかった。男は書類を係へ渡しながら、そのまま足元で向きを変え、籠のそばへ蹴り返した。
青峰は足を止めた。
上手い奴ならできる。それだけなら珍しくない。
ただ、本人は一度も足元を確かめなかった。
「青峰?」
反対側から声が掛かった。
赤いジャージの男が近づいてくる。顔には見覚えがあった。
「本当に来たんだな。最近、名前見ないから」
「お前、どこのだっけ」
「帝光の時、二回当たったぞ」
学校名を聞いて、青峰は思い出した。雨の試合だった。ゴール前がぬかるみ、遠くから撃ったボールがキーパーの手前で大きく跳ねた。
「ああ。お前、右にいた奴か」
「そう。二回ともお前の相手」
男は苦笑し、青峰の書類を見た。
「今、桐皇じゃないのか」
「未所属」
「……サッカー、やめたのかと思ってた」
青峰は受付へ紙を渡した。
「やめてねえよ」
言ってから、さっきボールを止めた選手を探した。もう通路の奥へ入っていくところだった。
赤いジャージの男も同じ方を見る。
「知ってる奴?」
「いや」
「結構来てるぞ。全国出た奴も、名前聞いたことない奴も」
参加証を受け取った青峰が、顔を上げた。
「お前は?」
「俺?」
「二回負けたまんまで来たわけじゃねえだろ」
男の表情から笑いが消えた。
「……当たったら分かる」
青峰は男の顔を見直した。
「じゃ、残っとけよ」
通路へ入ると、先に歩いていた男の姿は、ほかの参加者に紛れて見えなくなった。
青峰は歩く速さを少し上げた。
*
集会場にいたのは、ユニフォームの違う選手ばかりだった。
同じ服で来た者同士も、三百人の中では小さな集まりにすぎない。青峰は壁際に立ち、壇上へ上がった痩せた男を見た。
「絵心甚八。この計画で、お前らを選ぶ人間だ」
男はマイクの高さを直し、顔を上げた。
「日本がワールドカップを獲るために、世界一のストライカーをつくる。お前らは、その候補として呼ばれた」
話し声が少し下がった。
合宿をすれば全員が同じだけ上手くなる。そんな説明ではなかった。絵心は、ここでは自分のゴールによって生き残れと言った。
前にいた選手が声を上げる。
「チームで勝つために、点を取るんじゃないんですか」
「お前の代わりに誰が取っても勝てるなら、なぜお前を代表に呼ぶ必要がある?」
問い返され、男が口を閉じた。
青峰は壇上を見た。
自分が撃てる時に自分で撃つ。それだけのことを、ここではわざわざ教えるらしい。味方のために一本譲れと言われ続けた身には、妙な話だった。
だが、集まった連中が本当に全員そうするなら、試合は変わる。青峰が点を取っても、隣の奴は次の一本を欲しがる。三点離しても、向こうの奴は自分で四点取るつもりで来る。
絵心は選手たちを見渡し、この施設では競技も生活も計画に従うこと、最後まで残れるのはごく一部であることを告げた。
そして、脱落者は日本代表になる資格を失うと言った。
ざわめきが戻った。
「そんなの、今までの実績はどうなるんだよ」
「学校の試合は?」
「説明、何も書いてなかったじゃん」
青峰の近くでも、声が重なった。
絵心は待った。反論に一つずつ返事をせず、奥の扉を指す。
「受けるなら進め。嫌なら、ここから帰れる」
扉が開いた。
すぐには、全員が動かなかった。
青峰もその場で、出てきたばかりの条件を考えた。負けたら代表にはなれない。勝てば、ここにいる連中より先へ行ける。
失うものがないわけではない。
ただ、今のまま外にいても、昨日と同じような試合を探すだけだった。
青峰はバッグを肩へ掛け直した。
「青峰、お前も行くのか」
赤いジャージの男が、少し後ろにいた。
「もう代表候補みたいなもんだろ。わざわざ、ここで落とされる条件まで呑まなくても」
「今、どこの代表でもねえよ」
青峰は前を向いた。
扉へ走る一人の背中を、別の選手が追い越した。遅れていた者も歩き始める。さっきまで帰るか迷っていた顔が、前の人間を抜く時には変わっていた。
「それに、俺が落ちるつもりで来たと思ってんのか」
男の返事を待たず、扉へ向かった。
誰がいるかは、まだ分からない。
それでも、もう一度本気で止めに来る相手を、ここで探す。
いたら、その上から点を取る。
前を歩く選手の肩を抜け、青峰は通路へ入った。
*
携帯を預け、支給された服へ着替えて案内の部屋へ行くと、既に何人かが集まっていた。
広い部屋ではない。周囲は壁で囲まれ、ゴールも、外へ出るタッチラインもない。片側に荷物が寄せられ、その前に十二人分の場所が空いている。
青峰のシャツには、三〇〇という数字があった。
「それ、順位っすかね」
ヘアバンドをつけた少年が話しかけてきた。自分の胸の数字と、青峰のものを見比べている。
「知らねえ」
「俺、七星虹郎っす。よろしくお願いします」
「青峰」
七星が目を見開いた。
「青峰って、帝光の?」
「今は違う」
「いや、そうっすよね。でも、何で三百……」
青峰は胸の数字を引っ張って見た。
自分より上に二百九十九人いる、ということらしい。
「全員、本当に上ならいいけどな」
七星が返事を迷っていると、横から静かな声がした。
「まだ、一回も試合してへんのにな」
水色の髪の少年だった。壁際に立ち、部屋の四隅を順に見ている。
「氷織羊。よろしく」
青峰が頷くと、反対側でも一人がこちらを見た。
背が高かった。青峰よりさらに頭の位置が上にある。壁に肩を預けていたが、立ち直ると、その大きさがよく分かった。
「石狩幸雄」
名乗った声は、特に大きくなかった。
七星が何か話し始めようとしたところで、壁の画面が点いた。
絵心だった。
「まず一人、ここで落とす」
部屋が静かになる。
「ボールを使った鬼ごっこだ。ボールに当たった奴が次の鬼。制限時間は百三十六秒。ゼロになった時、鬼だった人間が脱落する」
床にボールが一つ出てきた。
手で扱うのは禁止。壁に当たって跳ね返ったボールも有効。普通の試合のように外へ出して時間を止めることはできない。
青峰はボールへ足を向けた。
「最初の鬼は、順位が一番下の青峰大輝」
近くにいた二人が、同時に離れた。
青峰は足裏でボールを止め、顔を上げた。
七星は既に石狩の後ろへ回っていた。氷織は壁に背をつけず、少し前で立ち止まる。胸に二九一をつけた男が、部屋の反対側まで下がった。
誰かが時計を見上げる。
百三十六。
「開始」
数字が減った。
青峰はすぐには蹴らなかった。
さっきまで騒いでいた男たちが、自分から離れていく。
青峰は、胸の三〇〇を見下ろした。数字で何を言われても構わなかった。だが、呼びつけて最初にやることが、逃げる相手へボールを当てる遊びだというのは気に食わない。
その顔が画面に映っていたらしい。絵心の口が動いた。
「不満か、最下位」
「試合、いつだよ」
「ここを通ったら教えてやる」
青峰は目を細めた。
誰でもいいなら、とっくに蹴っていた。近くにいた男の足は揃っていたし、奥の一人は壁まで下がりきっていた。あれでは横へ逃げても、跳ね返りが来る。
当てて終わりにするなら、すぐ済む。
大柄な石狩だけは、他の選手とぶつからないように位置を変えていた。七星をどかし、こちらを見る。氷織も、壁へ下がりきらずに止まっていた。
その二人へ、青峰はボールを持って近づいた。
後ろで、誰かが息を呑む。青峰はそちらを見なかった。
目の前に、初めて見る十一人がいる。
誰なら、当てたあとに取り返しに来る。
石狩が七星から離れ、大きく足を開いた。青峰は、その左足が床へ下りるのを見た。