青峰大輝 in ブルーロック 作:AIで小説を上手く書きたい!
翌朝、一次選考の説明が始まった。十一人全員がフォワードだった。
それなのに、十一人で一つのチームをつくれという。
氷織羊は画面の説明を聞きながら、昨日ボールを当て合っていた相手を見回した。
一次選考は、同じ棟の五チームによる総当たり戦。上位二チームが全員通過する。残りの三チームは敗退。ただし、敗退したチームでも、最も多く得点した一人だけは先へ進める。
勝てば、十一人で残れる。
負けても、自分が一番取れば残れる。
「じゃあ、俺、前に行く」
説明が終わる前に、一人が言った。
「俺だって前でやりてえよ」
「全員だろ、そんなの」
「キーパーはどうすんだ」
声が重なる。
氷織は壁へ視線を戻した。四試合で何点取れるか。今までいたチームなら、自分が誰へ出すかを考えればよかった。ここでは、出した相手の得点だけが増える。
それでも、いきなり十一人でゴール前へ並ぶわけにはいかなかった。
「順番にしゃべろう」
丸刈りの選手が、皆の前へ出た。
「まず後ろ。経験ある奴、いる?」
何人かが手を上げる。昔少しやった、という声もあった。
青峰は荷物の横に座っていた。話が始まってから、自分の靴の裏を確かめている。そこから口だけ出した。
「俺、前」
「それ、みんな言ってるから」
丸刈りの男が答えた。
青峰は顔を上げる。
「なら、球出せよ。誰が入れるかやりゃいいだろ」
すぐに返事をしたのは石狩だった。
「やる」
石狩は昨夜から、誰より高い場所へボールを入れられる選手を探していた。自分の武器なら、他の十人にも見える。説明するより競った方が早かった。
立ち上がると、部屋の皆が少し顔を上げた。
「俺も前がいい。高い球なら、俺に出して」
氷織は石狩の頭の高さを見た。ゴールの前へこの選手が立てば、出せるボールは増える。
青峰も立ち上がった。
「取れるなら取れよ」
「取る」
二人が先に練習場へ向かう。丸刈りの男がため息をつき、残った者へ手を振った。
「一回蹴ろう。口だけじゃ決まらん」
氷織も、その後に続いた。
*
練習場では、最初に二組へ分かれた。
昨夜、青峰と口論した男が反対側へ回った。
「一人で取れるんだろ。こっち三人つけても文句言うなよ」
「二人余るぞ。お前らの前」
「取られてから言え」
青峰がゴールを見た。キーパー役は別の男だったが、そこへ至るまでの広さは変わらない。三人が同じ場所へ立つわけでもない。
氷織がボールを持つと、青峰は中央から右へ歩いた。三人の守備役の顔がそちらへ向く。そのうち一人が足を止めた瞬間に、逆の左へ出て手を上げた。
パスが入った瞬間、二人が寄った。三人目はその背後。青峰が回れば前に立ち、シュートへ足を出すつもりらしかった。
青峰は受けたボールを、右へ一つ運んだ。
最初の男がついていく。青峰はその足の前へ左足を置き、身体を入れ替えた。接触を待っていた二人目は、先に仲間の肩を避けなければならなかった。
青峰は一人目を壁にするように回り込み、前へ出た。
三人目が腰を落とす。その目の前から、青峰は左足で撃った。
ボールが脚の外を通る。キーパーが飛びついてから、ネットが揺れた。
男は振り返った。残った二人も、誰のせいだったかをすぐには言えなかった。
青峰は三人の間を通り、ボールを拾った。
「その次、ねえのかよ」
口論した男が青峰を睨んだ。
青峰は次のボールを待った。抜かれてもまた前へ来るなら、まだ話は終わっていなかった。
少人数で短く試合をし、組み替える。守る側も代われば、パスを出す相手も代わった。
その後も、青峰は三度ゴール前へ出て三度決めた。
氷織が足元へ出した一球目は、近づいてきた相手をかわして。二球目は、少し強すぎたパスに追いついて。その時はもう角度がなかったのに、キーパー役の足元を抜いた。
三球目には、氷織も一つ試した。
青峰に守備者がついている。前へ蹴るだけでは、その相手も走って追いつける。
そこで、青峰の足元より少し後ろへ出した。
青峰は一度下がって受けた。守備者も前へ出る。その勢いを使い、ボールを止めたふりで相手の横へ流した。
身体がすれ違う。
次の足で追いつき、そのままシュート。
ゴールが決まってから、青峰が振り向いた。
「今の、もっと強くていい」
「後ろに出したんは、分かってた?」
「あいつ、前に来たろ。あれでいい」
氷織は頷いた。
前へ走らせるだけでなく、少し下がらせてもいい。青峰が戻れば、守備者も前へ出る。その相手が向きを変える前に、青峰はもう脇を抜けていた。氷織のパスを後ろで受けた一歩が、そのまま突破のきっかけになる。
出しやすい。
そう思った直後に、遠い側から石狩が呼んだ。
「こっちも見て」
守備者の後ろで、手が上がっている。
次の攻撃では、そこへ浮かせた。
石狩が跳ぶ。前にいる相手も跳んだが、額の位置が届かない。石狩はボールを下へ叩き、キーパーの脇へ入れた。
着地して、すぐに氷織を見る。
「もう少し高くてもいい」
「今ので届くんやったら、そうやな」
青峰が横を通った。
「次、こっち」
「空いた方に出すで」
「じゃあ俺だろ」
氷織は返事の代わりに、七星へパスを出した。
七星は右の外側で受けた。前を向いて運び、近づいてきた相手の内側へボールを通す。今度は自分でゴールを狙った。
シュートはキーパーに止められた。
「もうちょい左か……」
七星が悔しそうに言う。
「折り返したら入れたぞ」
青峰がゴール前から声を掛けた。
「俺も入ると思ったんすよ」
「入ってねえだろ」
「次っす、次」
七星はボールを拾い、すぐに外へ戻った。
氷織は、そこへもう一度出した。
青峰がこっちを見たが、呼び直してはこなかった。七星の相手が外へ寄ったところで、その背後へ走っている。
今度は七星が中へ折り返した。
青峰が決めた。
「今のなら来る前に撃てるっすね」
七星が、自分を止めようとした相手を示した。
「次は先に止める」
その相手が言い返す。
氷織は二人を見た。
青峰へ出すと、たいてい決まる。
それでも、ほかの者が自分で撃つのをやめたわけではなかった。
氷織は、自分の足元を見た。
昨夜、青峰へ「明日」と答えた時には、まず試すつもりだった。少し強いパスを出して、相手が追いつけるかを見る。そうして相手に合わせる速さを決める。
まだ、その上限が見つからない。
出しやすいと思ったはずなのに、出す前に考えることが増えていた。届くだけなら大抵届く。その後で、青峰が相手へどちらの足を向けて受けるか。そこで自分のパスの良し悪しが変わる。
氷織が蹴る前に、青峰が呼んだ。
「おい、また遅えぞ」
「前の人、今動いてたから」
「動く前でも出せよ。こっちで抜く」
氷織はボールを少し横へ置いた。守備者が道を空けるのを待たず、青峰が先に触れる足元へ通す。そこから抜けるかどうかは、受ける本人が決める。
青峰が、その背後へ出た。
受ける場所を相手に空けてもらうのではない。出たボールへ先に入って、自分の場所にしてしまう。
氷織はその走りを見ながら、少しだけ強く蹴りすぎたと思った自分の判断を引っ込めた。
*
初戦までに決めた形は、前に二人、中盤に五人、後ろに三人だった。
最前線は青峰と石狩。七星が中盤の右端、氷織は中央より左でボールを受ける。中盤にはもう一人を守備寄りに残し、三人のDFの前を守らせる。
後ろの真ん中には、話をまとめていた丸刈りの男が入った。
「俺が声出す。分かんなくなったら一回戻せ」
キーパーを引き受けた選手が、その後ろから尋ねた。
「勝てば、俺がノーゴールでも全員残れるんだよな」
「上位二つなら」
「だったら、勝てよ。ここやって、負けたからお前だけ残るとか嫌だからな」
男は青峰を見た。
青峰もそちらを見返す。
「勝つだろ」
「勝ってから言え」
キーパーはグローブをつけ直した。
氷織は、自分の位置へ歩いた。試合でどうなるかはまだ分からない。守備の声を聞いた経験と、自分で周囲を動かす経験は違う。
全員がそれを、本番でやることになる。
食事の時にも、話は続いた。
右のDFが七星に、前へ出たあと誰について戻るかを確かめる。七星は頷きながら、自分もゴール前へ入っていいかと聞いた。
「俺が上がる時は、お前が残ってくれれば」
「先に言ってください。俺も行ってたら戻れないんで」
氷織の向かいでは、石狩が青峰に話しかけていた。
「真ん中、ずっといる?」
「空いてりゃ行く」
「俺も中に入りたい」
「来いよ。邪魔なとこいんなよ」
「そっちも」
青峰が顔を上げた。
石狩はそのまま食べている。氷織は笑いそうになり、先に水を飲んだ。
全員を綺麗に並べれば済む話でもなかった。
*
チームXとの試合が始まる前、相手の中央DFが青峰へ声を掛けた。
「こっち、映像は見てるからな」
青峰は顔を向けた。
「何の」
「帝光。桐皇も。知らないと思って同じことすんなよ」
「お前、それ見て止めたことあんの」
相手は目を細めた。
ハーフラインを挟んで、チームXの選手が散った。前に三人、中盤にも三人、後ろに四人。青峰の近くに立つ二人は、こちらが右へ歩くと目配せをした。
見たことがある、と最初に言われた。
青峰はゴールへ目を向けた。相手が本当に映像を覚えているなら、その続きから始められる。こちらが速いと分かるまで、二回も三回も待つ必要はない。
開始を告げる笛が鳴った。
青峰は相手のキックオフを前で待った。中央から後ろへパスが出る。受けたDFが顔を上げ、左右を探す。
青峰は正面へ走った。
相手は隣へ出そうと身体を開く。その横パスの前へ、青峰が入った。
「おい、逆!」
Xの声が背後で上がる。
もう遅かった。
青峰は奪ったボールを前へ運んだ。ゴールまでは、正面のDFと、その後ろの一人。二人目は中央を守り、一人目が青峰を外へ追い出そうとしてくる。
青峰は一度、速度を落とした。
一人目が足を出す。
その外へボールを押し、もう一度加速した。
相手の脚は、青峰がさっきまでいた場所を通る。二人目が右側へ回り込む。青峰は切り返さず、そのまま外を走った。
追ってきた肩が近づく前に、ボールへ追いつく。
キーパーは中央寄りに構えていた。青峰が遠い隅へ撃つのに備え、身体を横へ倒しかける。
青峰は近い隅へ蹴った。
ボールがキーパーの脇を抜け、ネットを打つ。
一対〇。
開始直後だった。
「まだ俺、一回も触ってないっす!」
七星が追いついてきた。青峰は相手のゴールを見たままだった。
「さっさと戻れ。次、向こうだろ」
七星の手が途中で下がる。青峰は触れずに通り過ぎた。
昨夜、明日になればと考えていた。試合が始まり、相手を二人抜き、シュートが決まった。
それだけだった。
開始したばかりの時計を見る。まだ一試合、ほとんど丸ごと残っている。
映像を見たと言った男は、二人目として来た方だった。青峰が目を向けると、顔を逸らさなかった。
青峰は目を逸らさず、相手の返事を待った。ここでも一本抜いただけで終わりなら、招待状の大げさな文句は何だったのか。
XのDFは、その場で話していた。
「今の、先に足出すから」
「出さなきゃそのまま来るだろ!」
青峰は横を通り、二人の顔を見た。
次は足を出さずに守るらしい。
それも抜く。抜かれた後でまた別の方法を持ってくるかは、そいつら次第だ。青峰は再開のボールへ寄った。
*
Xはすぐに攻め返してきた。
前にいる選手へ長いボールを入れ、ゴール前で競らせる。Zの守備者も、本来は自分がそこへ走り込む側だった。誰が先に出るか、一度声が重なった。
石狩が戻った。
相手より高く跳び、ヘディングで外へ出す。
「後ろ、俺が行く!」
中央DFが言い直す。次のボールには自分で出て、石狩を前へ戻した。
青峰の周りには二人残っていた。
一人は背中につき、もう一人はゴールとの間を空けない。青峰が下がっても、同じ距離を保つ。
「こっちばっか見てていいのかよ」
「お前が行かなきゃ、それでいい」
近い方のDFが答えた。
青峰は右手を上げた。
氷織が中盤でボールを受ける。目の前の相手を横パスで動かし、返ってきたところで前を向いた。
青峰は一度左へ寄り、急に中央へ戻った。
氷織から速いパスが入る。
青峰はゴールへ背を向けて受けた。後ろのDFが身体を寄せる。もう一人は正面、つまり青峰が振り向いた先で待っていた。
右へ回れば二人目に止められる。
青峰は右へ肩を向け、ボールだけを左へ動かした。
背中のDFが右へ踏む。その脇へ腰を入れ、半回転した。
正面のDFも、左へ寄ってくる。
青峰は最後まで回りきらなかった。
左足で、横にあるボールを撃った。
ゴールへ向けて身体を整える、その一歩がない。正面のDFがシュートを防ごうと脚を広げた時には、ボールは既にその横を抜けていた。
遠い側のネットが揺れる。
二対〇。
背中についていたDFが、青峰とゴールを交互に見る。
「今ので撃つのかよ……」
青峰は着いた左足で身体を起こした。
「その向きじゃ撃てねえとでも思ったかよ」
相手が歯を食いしばる。
「振り向かせてねえんだぞ」
後ろにいたDFが、前の男へ言った。
「分かってる。分かってるけど、あれが来るなら……」
二人目は言い切らなかった。
氷織は、ゴールへ身体を向けきる前に飛んだシュートを思い返した。二人で挟んでも、蹴り足さえボールへ届けば撃たれる。青峰には、守備が整う前に無理な体勢からでも決める力があった。
氷織の近くにいるXの選手も、それを聞いていた。言い返す代わりに、こちらとの距離を一歩縮める。
パスを入れるところから潰すしかない。
青峰の二点で、相手の守る範囲が前へ広がった。
少し後ろで、七星が氷織へ何か言っていた。青峰には聞こえなかったが、二人とも今の場所を見ていた。
*
「振り向く途中で、もう撃ってましたよね」
七星が言った。
氷織は、青峰がシュートを打った位置を見た。
「最後までゴール向いたら、前の人が間に合うからな」
「あれで、あっちの隅まで飛ぶんすね……」
七星は自分の左足を小さく動かしかけ、試合が再開したので走って戻った。
氷織も自陣へ下がる。
Xのフォワードは、中央で何度もボールを呼んでいた。
「後ろばっか見んな! こっち、二人余ってる!」
青峰を二人で見ている分、前へ出てくる人数は少ない。それでも、Zが全員で低く守っているわけではなかった。七星は右の高い位置にいて、石狩も相手のDFの近くに残っている。
Xが左へ通した。中盤の男が氷織の横を走る。氷織は正面から寄り、内側へ入れないようにした。
相手は外へ出した。
Zの右DFが前へ出る。その背後を、中央で呼んでいたフォワードが斜めに走った。パスは足元でなく、その進路へ入る。
「真ん中!」
氷織が叫んだ。
丸刈りのDFが横へ寄る。相手はシュートのふりをして一度ボールを止め、内側へずらした。近い側のコースは閉じられたが、遠い側にはまだ蹴れる幅があった。
右足が振られる。
Zのキーパーは下がらず、両足を開いた。腰の下を抜こうとしたシュートが脛に当たり、エリアの外へ跳ねる。
「拾え!」
中央の守備寄りの選手が蹴り出した。
ボールはタッチラインの外へ出た。Xのフォワードは両手で頭を押さえた後、すぐにキーパーを見た。止められた理由を確かめるように、近い側のポストへ目を移す。
青峰はハーフラインの近くから、その攻撃を見ていた。
相手は、こちらに二点取られたからといって、自分のシュートをやめてはいない。だが青峰が立っている側へボールを入れる時だけは、出し手が何度も顔を上げる。
次のスローインも、青峰から遠い方へ出た。
「そこにいるだけで変わんのかよ」
近くのDFが吐き捨てるように言った。
青峰は答えず、取りに行ける距離まで一歩近づいた。相手のパスが、また後ろへ戻った。
Xの動きが変わった。
今度は氷織へ一人ついてきた。青峰へ出す前に止めるつもりだ。氷織が中央で受けようとすると、前へ回り込んでパスの線を切る。
後ろから来たボールを、氷織は一度戻した。
「前」
青峰の声がする。
そこまで、今は通らない。
Zの中央DFが右へ展開した。七星が受け、前へ運ぶ。青峰へついていた二人のうち、一人がそちらへ寄った。
逆のゴールポスト付近で、石狩が手を上げる。
七星はクロスを上げた。
石狩は跳んだが、少し早かった。落ち始めたところへ、前にいたXのDFが頭を入れる。ボールはゴールの前方へ大きく弾かれた。
氷織は、そこへ向かう青峰を見た。
青峰は最初、ゴールに近い側へ走っていた。ところがXのDFが石狩の前へ入った瞬間、急に足を止め、後ろへ下がったのだ。
その場所へ、クリアされたボールが落ちてくる。
ついていたDFは、まだゴールの方へ走っていた。
青峰はボールを地面に落とさず、右足で叩いた。
シュートがゴールの右上へ飛ぶ。
青峰についていたDFは、慌てて身体を反転させていた。青峰の足は、もう肩の高さまで振り抜かれている。追いついて身体を入れようにも、蹴る前のボールがそこにない。
キーパーから見れば、石狩との競り合いは一度防ぎきったはずだった。クリアされたボールを目で追い、誰が拾うかを確かめようとする。その途中で、青峰が跳び出してきた。
ゴールへ向かうボールへ、視線を戻す。
さっきまで逆を向いていた身体では、踏み切りが半歩遅れた。
キーパーが跳び、伸ばした手の先でネットが膨らんだ。
三対〇。
「何であそこに……」
氷織についていたXの選手が、思わず口にした。
氷織は青峰を見る。
跳ね返ってから追ったのではない。クリアするDFの身体が、ゴールの外へ向いていた。石狩が触れないと分かった時には、もうその先へ下がっていた。
速いから拾えた、だけでは説明できない得点だった。
石狩が青峰へ近づく。
「今の、俺が先に触りたかった」
「触ってから言えよ」
「次は触る」
青峰は石狩より先に中央へ戻った。
氷織はその二人を見てから、右へ戻る七星へ声を掛けた。
「今のクロス、もう一本出せる?」
「出せるっす。次、もうちょい奥にします」
七星は石狩を見た。
石狩も頷いた。
*
三点を取ってから、Zのパスが一度途切れた。
右の内側にいた味方が、二人に囲まれた青峰へ出そうとして奪われた。次の攻撃では、左サイドで持った選手が中央へ戻し、青峰へ渡せる場所を探しているうちに詰められた。
氷織も、いつも通りには受けられない。
Xは青峰に二人を残し、さらに一人を、さっきボレーを打った場所へ置いた。青峰の近くで奪うより、シュートを打つ場所を先に埋めるつもりらしい。
「無理なら外使おう」
氷織が味方へ言う。
「でも、入ればあいつが何とかするだろ」
右の内側の選手が答えた。
氷織は否定せず、前を見た。
実際、三点とも決めた。二人ついても、身体が横を向いていても入れた。頼りたくなるのは分かる。
だが、ボールが届かなければ始まらない。
それに、青峰を止める人数を増やした分、Xは別の場所を空けていた。
七星の前だ。
右へ出れば、クロスを上げるところまで進める。逆のポストへは石狩が入れる。そこまで相手が戻れば、青峰の周りも変わる。
青峰は前から、氷織の動きを見ていた。
こちらについている二人は離れない。その二人の間に入れば、ボールが来た時にはどちらかの足を越さなければならない。それは構わない。
来る前の球まで奪われるのが面倒だった。
右の内側にいた味方へ手を出すと、そちらもこちらを見ていた。だが足元のボールは一度後ろへ動き、青峰のところへ届く前に相手が寄ってくる。
「見てねえで出せよ!」
声が出た。
味方の男が苛立った顔を向ける。
「そこ、三人いんだろ!」
「見りゃ分かるわ」
青峰はその三人の間を抜けて下がろうとした。背後のDFが追う。青峰が身体を入れ替えると、相手の手がビブスを掴みかけ、離れた。
動き直せばマークは外れた。だが、そのたびに呼び直しているうちに別の相手が戻ってくる。青峰は氷織を睨んだ。今、空けた時に出せ。
氷織が左へ動く。
氷織が受けられるなら、後ろまで取りに行く必要はない。青峰は下がるふりでDFを二歩引き出すと、急に向きを変え、その背後へ走った。前へ出ていたもう一人も、慌てて中央へ戻る。
最初のDFに追いつかれる前に、青峰は氷織へ右手を上げた。そこへ来れば、ゴールへ向いたまま勝負できる。
氷織は自分についていた選手から一度離れ、左のタッチライン寄りでボールを受けた。相手が追ってくる。前へ運ぶふりをして止まり、身体を中央へ向けた。
「パスよこせ!」
青峰が呼ぶ。
正面には二人。奥にはもう一人。
氷織は、右へ長いパスを通した。
七星が動き出す。
Xの左側を守る選手は、青峰へ寄っていたところから走らなければならない。七星はその相手より先にボールへ追いつき、前を向いた。
青峰は舌打ちし、右へ出たボールを追ってゴール前へ入った。自分を追う二人のDFより先に、七星からのクロスへ触るつもりだった。
氷織は、その青峰より奥を指した。
石狩が手を上げている。
今度は、最初からそちらが狙いだった。