青峰大輝 in ブルーロック 作:AIで小説を上手く書きたい!
石狩は、七星が右サイドで前を向いたのを見た。
自分は反対側のポストへ近づいている。前にはXのDFが一人。その相手は、さっきのクロスを先に弾いた男だった。
同じ失敗はしたくなかった。
先ほどは、届くと思ったところで跳んだ。だが七星のボールは頭の上を通り、落ち始めた自分より後から跳んだ相手に触られた。
高さがあっても、跳ぶ時を間違えれば取れない。
石狩はDFの背中から、半歩離れた。
七星が顔を上げる。
「奥!」
石狩は手を上げた。
クロスが来た。前の一本より高く、遠い。
DFは石狩を振り返り、身体を当てようとする。石狩はその腕の外へ出た。相手がボールへ向き直る。
まだ跳ばない。
DFが地面を蹴った。
石狩は、その後に跳んだ。
目の前で伸びた相手の頭を、自分の額が越える。ボールの下にはもう、相手の顔しかなかった。
ゴールが見えた。
キーパーは高いボールに合わせ、両手を上げている。
石狩は頭を振り、下へ叩きつけた。
ボールがキーパーの足元近くで跳ねる。腕を下ろすより先に、その脇を抜けてネットへ入った。
四対〇。
石狩は両足で着地した。
ボールがゴールの中にある。自分の額に当たったボールだった。
「よし」
声に出すと、もっと大きな声が右から来た。
「石狩さん!」
七星が走ってくる。
石狩は掌を上げた。七星も腕を伸ばしたが、届きそうになかったので、少し下げる。掌がぶつかった。
「今の高さでいい?」
「もう少し低くても届く。でも、さっきより奥でよかった」
「俺、DFに取られるかと思ったっす。先に跳んでたから」
「先に跳んだから、俺が上へ行けた」
石狩は相手のいた場所を見た。
最高点へ届く前にボールが来るよう、自分が待てばいい。相手が同時に跳んでも、自分には高さがある。
待てば、その高さを使える。
DFはゴールからボールを拾い、キーパーと何か話していた。石狩の頭の高さを手で示している。
「次も出して」
石狩が言うと、七星は頷いた。
「次、手前に入るのもできます?」
「できる。俺が呼ぶ」
中央へ戻る途中、青峰が氷織へ何か言っていた。
「俺、呼んだろ」
「聞こえてたよ」
「だったら、あそこ通せよ」
氷織は自分の出した方を指した。
「右が空いてた。石狩くんまで届くと思ったから、そっち使った」
「俺にも届いただろ」
石狩は足を止めた。
「今のは俺が入れた」
青峰が顔を向ける。
「見てたわ」
「じゃあ、それでいいだろ」
「次もそっちに出す話してねえんだよ」
氷織が二人の間を通った。再開のボールがもう中央へ運ばれている。
石狩は青峰より先に戻った。得点を認めてもらうために、彼の顔を見たわけではない。今度は自分のところへ来た。それを、四対〇という表示が示していた。
石狩はもう一度ゴールを見た。
青峰の三点とは別に、自分の一点が入っていた。
*
七星は右サイドへ戻った。
クロスを上げた場所を見る。そこから、反対のポストの前までボールが届いた。石狩が触り、点になった。
ただ運んだだけではない。自分が出したボールで、一点増えた。
嬉しかった。
次にゴール前へ入るなら、今度は自分で終わりたかった。
Xの再開を止め、Zがまた攻める。左サイドの味方がボールを運び、そのまま内側へ切り込んだ。青峰は中央で二人に見られている。石狩には、さっきより近くDFがついていた。
左の味方がシュートを撃つ。
七星はゴール前へ走った。キーパーが弾けば、自分にも触る機会がある。
同じ時、後ろにいたZの右DFも前へ上がっていた。右の空いた場所で、攻撃を受け直すつもりだったのだろう。
七星は気づくのが遅れた。
二人とも前へ出ていた。
シュートはDFに当たり、中盤へ戻る。
Xの選手が拾った。
「右、残れ!」
中央DFの声が響く。
七星は向きを変えた。
Zから見て右の外側が、空いていた。そこをXの左サイドの選手が走っている。ボールが前へ出る。
右DFが追った。七星も戻る。だが二人とも、走者の後ろにいた。
中央DFが、横へ出なければならなかった。
その正面へXの選手が運び、中央へ低く折り返す。
七星はゴール前を見た。
中央DFが空けた場所へ、Xのフォワードが走り込んでいた。
「中!」
叫んだ時には、もう右足が振られていた。
シュートがキーパーの右へ決まる。
四対一。
七星はゴールの手前で止まった。
得点したXの選手は、すぐにネットからボールを拾った。大きく喜ぶより先に、中央へ走っていく。
「まだ取れる! 今の、また外使え!」
声がすれ違った。
右DFが戻り、七星の横で息をつく。
「悪い。お前、まだ右にいると思った」
「俺も、後ろにいると思ってました」
互いの思い込みで、同じ場所が空いた。
キーパーが二人を見た。
「どっちか残ってくれ。真ん中の奴が外に行ったら、俺の前、誰もいなくなる」
七星は頷いた。
自分が戻れば、必ず防げたとは言えない。それでも、中央DFが最初からゴール前にいれば、Xのフォワードはあれほど自由には撃てなかった。
自分たちが空けたのは、右の一か所だけではなかった。
「次、俺が上がる時、声掛けます」
「俺も言う。返事なかったら待つ」
右DFが答える。
七星は中央へ戻った。青峰がボールを待っている。
「お前まで中にいたのかよ」
「こぼれたら撃とうと思って」
「こぼれたぞ。向こうにな」
七星は唇を結んだ。
「次は取ります」
青峰はそちらを一度見て、再開の位置へ向き直った。
*
青峰は、四対一の表示から目を離した。
失点より、再開の遅さに腹が立った。七星と右DFがまだ話している。中央にボールが置かれたのに、氷織が二人へ位置を示していた。
「おい。いつまでやってんだ」
「もう戻るっす」
七星が走る。氷織もこちらを向いた。
再開したZのボールは、一度後ろへ戻った。Xは前から二人を走らせ、中央へのパスを塞いだ。青峰の足元へ入れさせない。そのために中盤の選手が先に動いていた。
青峰は待たずに下がった。
背後のDFがついてくる。前線へ残っていれば、そいつの近くでもらえる。だが中盤が通せるのを待っていたら、またボールは横へ行く。
自分で取りに来た方が早かった。
「氷織」
呼ぶと、左へ開いた氷織が顔を上げる。
「そこまで下がるん?」
「いいから出せ」
速いパスが来た。
青峰へついていたDFが、背後から肩を寄せた。右からは中盤の一人も来る。受けたボールを止め、ゴールへ振り向くところを挟むつもりだった。
青峰は、ゴールへ背を向けたまま右足を出した。
足の内側にパスが触れる。止めず、そのまま左へ流す。後ろのDFがそちらへ腰を向けた時、青峰は逆の右側へ身体を回した。
ボールは相手の左、青峰は右。
二人の間をすり抜け、青峰は向こう側でボールへ追いついた。
「挟めって言っただろ!」
後ろから声がした。誰が誰に怒ったのか、青峰は確かめなかった。
ゴールまでは、まだ三十メートル近くあった。
右前からもう一人が来る。青峰は速度を落とし、相手が横へ並ぶ寸前にまた上げた。ボールを前へ押す幅も増やす。追ってくる相手の足は届かず、自分なら次の一歩で触れる位置だった。
その違いが、一歩ごとに広がった。
七星は右側を走っていた。さっき得点を決めたXのフォワードも戻っている。青峰の前には、最後のDFが一人残った。
映像を見たと言った男だった。
青峰は正面へ行った。
男は下がりながら膝を曲げる。外へ行かせれば、キーパーが出られる。中央へ切り返す瞬間だけは、自分の足が残るように構えていた。
青峰は右へボールを押した。
男が横へつく。前に出すぎない。青峰が急に止まっても、次の一歩で戻れるよう、間を一つ残していた。
「遅えよ」
青峰は、さらに右へ出た。
止まると思っていた男が、そこで追いつけなくなった。二歩目に力を残した分、一歩目の競走に負けたのだ。
ゴールの右側、エリアの中へ入る。
キーパーは近いポストから前へ出てきた。遠い側も、身体を横へ倒せば閉じられる。青峰が中へボールを戻すなら、DFが足を出せる。
青峰は右脚を引いた。
追ってきたDFの足が、横から伸びる。
その足がボールへ届く前に、青峰は足首を返した。大きく振り切るはずだった足が、途中から内側へ回る。ボールの外側を蹴り、走っている方向と違う、ゴールの遠い隅へ飛ばした。
キーパーが低く構えた腕の上を、ボールが越える。
遠い側のネットが鳴った。
五対一。
青峰はゴールラインの外で止まった。
DFは足を戻せず、片膝をついていた。キーパーは網へ入ったボールを見ている。誰もすぐには立ち上がらなかった。
七星が追いついた。
「そこから、上にも……」
言いかけた声が止まる。青峰はもう中央へ戻り始めていた。
「一緒に下がらなきゃよかったのかよ」
DFが言った。
「離れてたら、ここまで来るのもいらねえだろ」
青峰はボールを受けた辺りへ顎を向けた。
DFが下がったままなら、青峰はもっと速くゴールへ近づけた。寄れば横を抜かれ、離れれば加速される。次にどの距離で待てば止められるのか、男は答えを出せずにいた。
男は立ち上がった。
「全部入るみてえに言うなよ」
「止めてから言え」
青峰は振り返らなかった。
*
氷織は、青峰が自分の位置へ戻るのを待っていた。
「下がって受けた分、運ぶ距離は長うなったな」
「お前らが出さねえからだろ」
「出すところ、一回前で閉じられてたから」
「俺の前、空けるまで待つなよ」
氷織は少し黙った。
あのゴールで、青峰は前を空けて受けたわけではなかった。最初に二人、その先に一人、最後にDFとキーパー。ボールが来たところから全て自分で越えていった。
届くなら、それでいいと本気で言っている。
氷織がこれまで出していた相手とは、求めるボールが違った。
青峰が前を向くのを助ける。それだけなら既に間に合わない。背中に相手をつけたままでも、足元へ通せば前を向いてしまう。
七星が戻ってきた。
「あれ、相手が下がったままだったら、もっと遠くから撃つんすか」
「知らねえよ。来ただろ、今のは」
青峰が答えた。
氷織は青峰の背中を見た。相手が下がるなら遠くから撃ち、前へ来たらその横を抜く。先に蹴り方を決めて、味方に同じパスを要求する選手ではない。受けた後にも、守備者の動きに合わせて変えていた。
だから、三人で囲むだけでは足りなかった。
「七星くん。さっき、青峰くんが右に出た時、止まると思った?」
「一回、そう思ったっす」
「相手もそっち残してた。でもその分、追う最初の足が遅うなった」
七星はDFのいた場所へ顔を向けた。
「止まらなくても抜けるんすね」
「止まらへん方が早いなら、そうするんやろ」
青峰が手を上げた。
説明している間に、Xの再開が始まっていた。
氷織は位置を戻し、七星も右へ開いた。四点を取った青峰は、まだ次のボールを要求していた。
それを見て、Xの守備者がもう一人、中央へ寄った。
ボールが来る前から、相手の立つ場所が変わっていく。
七星はその空いた外側へ走った。青峰から譲ってもらえる場所ではない。自分が先に動けば、別の味方から受けられる場所だった。
右DFへ手を上げる。
「次、俺が出ます。取れたら右にください」
相手が頷いた。
*
五対一になっても、Xのフォワードは自分の得点を諦めなかった。
得点したフォワードは、何度も前で呼んだ。仲間が撃つたびにゴールへ入り、キーパーが弾けば真っ先に蹴ろうとする。味方とぶつかって怒鳴り合った後も、次のクロスへ二人とも飛び込んだ。
青峰は、その二人を見た。五対一だ。普通なら、これ以上取られないよう下がれと誰かが言う。それでもXの前線は、人数を減らす気がなかった。
一点多く取った方が、負けても残れる。
昨日までいたコートなら、終わったはずの点差だった。ここでは、まだ自分が一番多く取れると考えている奴が走っている。
青峰は中央への横パスを狙い、数歩前へ出た。なら、取られるところまで付き合ってやる。
個人の一点が、敗退後の通過に結びつく。
七星は、その規則を初めて相手の走り方で理解した。
Xが同じ左サイドへ展開する。
今度は七星が戻っていた。右DFがその後ろにいる。
「外、俺が行きます!」
七星が前へ出ると、相手は中央へパスを出そうとした。七星は左足を伸ばし、ボールを外へ弾いた。
奪い切れなかったが、速い攻撃は止まった。
右DFが親指を上げる。
「それでいい。中は残れた」
七星は息をつき、もう一度相手へ向いた。
その後もZには何度か機会があった。
石狩が手前のポストへ走り込み、七星のクロスを頭で捉える。今度は角度をつけすぎて外れた。石狩は七星へ手を上げ、自分のミスだと示した。
青峰へは、ボールが届かない時間が続いた。
Xは無理に奪いに来るのをやめ、青峰へ入るパスの手前へ人数を置いた。逆側が空けば、Zもそちらを使う。石狩へ高いボールが入り、左サイドの選手にも撃つ機会ができた。
青峰は中央のDFの背後から右へ走った。一人が追い、もう一人はゴール前に残る。右DFが蹴ったパスは、青峰の足元へ来る手前でXの中盤に引っ掛かった。
青峰はすぐに相手へ向かった。男は正面から迫る青峰を見て、ボールを左へ蹴り逃がす。青峰はそこまで追って、自陣へ戻すしかない位置へ追い込んだ。
自分の足元にあれば、取らせずに撃てる。
だったら、奪えるところまで近づけばいい。相手のバックパスを見て走りかけた時、味方の中盤がその途中へ足を出した。
奪った味方から、七星へパスが通る。七星は右から前へ運び、エリアの手前で左へ切り込んだ。
青峰が中央で手を出す。
七星は撃った。
前へ出たDFに当たり、ボールがゴールの横へ流れた。七星はそのまま追って、ラインの手前で触ろうとする。Xの選手が先に蹴り出した。
コーナーになる。
「出せよ、今の」
青峰が言った。
「左、空いたんで撃ったっす」
「当たったろ」
「足が来る前に撃つつもりだったんすよ」
七星はボールを取りに行った。青峰はそれ以上追わず、ゴール前へ入る。
次のクロスには、Xが三人で頭を出した。ボールがゴールから離れ、中央へ戻る。
青峰が拾った。
最初の一人を左へ抜き、二人目の外へボールを押す。エリアの手前まで来たところで、笛が鳴った。
時間だった。
青峰は、止めたボールを強く足裏で押さえた。目の前にいたDFが、そこでようやく腰を伸ばす。
「助かったな」
青峰が言うと、相手は目を逸らした。
試合終了の音が鳴った時、得点は五対一のままだった。
Zの選手たちが声を上げた。
初戦に勝った。
昨日まで名前も知らなかった十一人で、勝点を取った。
七星も近くの右DFと手を合わせた。キーパーが走ってきて、失点の時ほどではない声で文句を言う。
「次、二人でいなくなんなよ。本当に」
「すんません。でも後、止めたっす」
「後のはよかった」
七星は笑った。
その笑いが、得点者の表示を見たところで少し小さくなった。
青峰の前へ、Zのキーパーが来た。
「点は取るって言った通りだったな」
「お前は一個入れられたな」
「そこ言うかよ」
男は呆れた顔をしたが、離れなかった。
「俺、一個入れられた後、お前が前にいると思って守ったからな」
「だから何だよ」
「俺が捕った時は、前へ走ってくれ。今の試合、蹴ろうとしたらお前まで近くへ戻ってた」
キーパーは相手ゴールの方を指した。
「DFの後ろへ走ってくれりゃ、そこへ蹴る」
「届くんだろうな」
「届かせる。途中で止まって待たなくていい」
青峰は男の足元を見た。今日のロングキックは、石狩の頭へ二度届いていた。
「じゃ、捕ったらすぐ蹴れよ」
「お前もすぐ走れよ」
言い返され、青峰は鼻を鳴らした。自分が何もせずに待つ話なら、聞くつもりはなかった。だが、先に走ればあの二人より後ろで受けられる。そこからなら、次の一本を撃つまでが速い。
相手が戻っていった。青峰はもう一度得点表示を見た。
五対一の勝利は、十一人全員の成績になる。だが、自分が入れた点を数えればゼロの者が多かった。歓声が静まると、誰が次に撃つかという話が、あちこちでまた始まった。
七星はその画面を見上げた。
青峰大輝、四。
石狩幸雄、一。
自分の名前は、得点者の欄にはなかった。
*
石狩は画面を見上げていた。
七星が隣へ立つと、顔を向ける。
「さっきの、惜しかったね」
最後に左へ切り込んで撃った場面のことだと分かった。
「もうちょい早く蹴れてたら、前の人に当たらなかったと思うんすけど」
「俺も二本目、入れたかった」
石狩は画面へ戻った。
一点取っても、次を欲しがっている。
七星は自分の靴を見た。クロスを蹴った右足。相手のパスを止めた左足。今日、役に立たなかったわけではない。
それでも、一点欲しかった。
「次、俺もここに名前載せるっす」
言うと、後ろから声がした。
「取れば載んだろ」
青峰だった。
「知ってるっす。だから取るって言ってるんすよ」
青峰は返事を待たず、歩き出した。
途中で氷織の方へ顔を向ける。
「おい。三点目の後、右ばっか出してたな」
「右が空いてたからな」
「俺の足元にも出せただろ」
「途中で取られたら、青峰くんも撃てへんやん」
氷織はボトルの蓋を閉めた。
「石狩くんも入れたし」
「もう一本出せよ。俺も入れる」
青峰の返事は早かった。
七星は、画面の四という数字を見た。
四点取った相手が、まだ足りないと言っている。
自分が一度追いつけなかったからといって、次のボールが遅くなるわけではなかった。
*
夜、七星は練習場へ行った。
試合で使った右足のクロスを何本か蹴る。それから壁を相手に、左足での返球を始めた。
左でも、止められる。狙った場所へ蹴ることもできる。
問題は、相手が来た時だった。
鬼ごっこでは、左へ来たボールを右へ持ち替えた。その一触で、氷織が逃げた。今日の試合でも、左へ転がったボールを右足で拾おうとして、相手に先に入られた場面があった。
右で蹴る方が確かだから、置き直す。
置き直す間に、蹴る場所がなくなる。
七星は壁へ強めに出した。
戻ってくるボールを左で前へ運び、すぐに同じ足で蹴り返す。
狙いより右へ逸れた。
「……もう一回」
拾い直して、同じことをする。
今度は真ん中へ戻った。ただし、受けてから蹴るまでが遅い。さっきより上手くいったのは、ゆっくりやったからだった。
七星は距離を少し縮めた。返ってくるまでの時間が短くなる。
一度目は大きく跳ねた。
二度目は、蹴れる場所へ収まった。
左足で返す。
壁の印より低かったが、ボールは狙った方向へ飛んだ。
得点には、まだなっていない。
七星はそのボールを受け、もう一度蹴った。
*
青峰は試合の記録画面の前にいた。
自分の四という数字を確かめに来たわけではなかった。他の二チームの結果が追加され、次の対戦相手に印がついていた。
チームY。
青峰は表示を押した。短い得点映像が始まる。中央で出した選手が走り、味方からすぐに返ってきたボールをゴールへ入れた。
名前は黒名蘭世。
青峰が見たのはシュートより前だった。パスを出してから相手の背後へ移る、その一歩。前へ直線的に走るより、追ってくる側が向きを変えることの方が先に起きている。
青峰は映像を戻した。
「誰かおった?」
氷織の声がした。青峰は振り返らなかった。
「こいつ、出してすぐ動くな」
「黒名くん? 短いとこ、何回も走ってるね」
「返す奴、同じか」
氷織が画面へ近づく。青峰は自分の前に立たれないよう、半歩横へ退いた。
「この場面は同じ。次はまだ分からへん」
「そこで取れりゃ終わりだろ」
青峰が返し手を指した。
氷織は黒名の動きをもう一度見た。青峰はその手前で止めさせ、パスの出るところだけを二度再生した。次の相手から、どこでボールを奪ってそのまま撃つかを考えている。
「そこへ行ったら、こっちが空くで」
「分かってるよ」
「言うとくけど、僕、今日もわざと出さへんかったわけやないから」
青峰が顔を向けた。
「何の話だよ」
「三点取った後。中を通す前に、右なら先に進めた。それで右へ出した」
「俺、二人なら抜けただろ」
「四点目は抜いたな」
氷織はそこを否定しなかった。
「でも、間で取られる球は渡せへん。僕がもう少し早く受けられたら出す。先に外が空いてたら外も使う」
「勝手に決めんな」
「僕が持ってる間は、僕が蹴るんやから」
青峰は黙った。
昨夜から、氷織は大きな声を出していなかった。青峰に要求されれば、そこへ蹴ることもあった。だが相手を変えた時にも、謝るつもりはないらしい。
青峰が前線から下がった時には、氷織は迷わずパスを通してきた。
そのことを青峰は覚えていた。
「なら、もっと早く持てよ」
「そっちも、出せるとこで呼んでな」
青峰が舌打ちした。氷織はそれ以上話さず、画面から離れた。
青峰は黒名の映像をもう一度再生した。
今日の四点目なら、相手の顔まで思い出せる。青峰が切り返すのを待っていたDFが、脇を抜かれ、振り向くところまで浮かんだ。
それでも、もう一度あのDFとやりたいかといえば、そうでもなかった。最初に言われたほど、新しいことは起きなかった。
画面の中で、黒名がまた走る。
ボールが来る場所に自分が入れば、そいつはどうする。
青峰は再生を止めた。
次は黒名の返し手から奪う。受け身でボールを待って、その間に向こうだけが撃つ試合にはさせない。