青峰大輝 in ブルーロック   作:AIで小説を上手く書きたい!

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第006話 持ち替える暇はない

 黒名蘭世は、パスを出したあとに速くなる。

 

 七星は対戦相手の映像を見ながら、そう思った。

 

 ドリブルで何人も抜いているわけではない。近くの味方へ出し、その相手が受ける間に守備者の外へ走る。返ってきたボールを、また別の味方へ預ける。

 

 守る側がボールへ顔を向けた、その横を通っていく。

 

「ここ、止めてもらっていいっすか」

 

 画面が止まった。

 

 黒名はボールを持っていない。けれど、次に受ければシュートを打てる場所へ向かっていた。

 

「球だけ追ったら、後ろに回られるんすね」

 

 七星が言うと、隣の右DFが頷いた。

 

「俺が前に出る時は呼ぶ。お前も、抜かれたらすぐ言って」

「はい」

 

 前の試合では、二人で同時に上がった。

 

 今度は、二人とも同じボールへ釣られないようにする。

 

「でも取ったら、俺も前行くっす」

 

 七星は画面から目を離した。

 

「昨日、ゼロだったんで」

 

 椅子に浅く座っていた青峰が、こちらを見た。

 

「じゃ、早く取れよ」

「取ります」

 

 七星は答えた。

 

 画面の中では、再開された黒名がゴールを決めていた。

 

 青峰は立ち上がった。

 

「終わったら消しとけ」

 

「もう見ないんすか」

 

「見た」

 

 七星は、昨夜も青峰が同じ画面の前にいたことを思い出した。集まって説明を聞くより前に、自分で見ていたらしい。

 

「返す人のところに行くんすよね。氷織さんが言ってました」

 

「だったら、同じとこ来んなよ」

 

 青峰は扉へ向かった。

 

 七星は画面へ顔を戻す。誰が行けば残った相手を見られるか、右DFともう一度確かめた。

 

 青峰が取るために動くことと、全員が青峰の後を追うことは違う。あの人は自分が奪えると思った場所へ行く。その時に空く場所は、残った自分たちが見なければならなかった。

 

 右DFが先に言った。

 

「青峰が出たら、俺は中を残す」

 

 七星は頷いた。

 

*

 

 チームYとの試合で、先に点を取ったのはZだった。

 

 Yは最初から、青峰の前後へ一人ずつ置いた。X戦の映像を見たのだろう。青峰が後ろへ下がれば、近い方がついてくる。もう一人はエリアの手前に残り、抜けてくる方を待っていた。

 

 昨日と違うのは、近い方が足を出すのを待たないことだった。

 

 ボールを受けた瞬間、身体を寄せる。立って蹴るための姿勢をつくらせず、後ろの相手が先にボールへ触る。

 

「右肩、向けさせるな」

 

 相手の声が聞こえた。

 

 青峰は左側へ歩き、背中のDFもそちらへ引っ張った。ゴールへ向かうなら右へ回らなければならない。相手の狙う向きを、自分からつくった。

 

 氷織が左の中盤で受ける。前の相手がまだ中央へ戻りきっていなかった。

 

「出せ」

 

 青峰は声を張った。

 

 足元へ通せる道だけはある。その先の人数まで見て止めるな、と昨日言った。氷織の左足が振られた。

 

 氷織が中央へ出したボールを、青峰がエリアの手前で受ける。YのDFは一人が背後につき、もう一人が前から挟みに来た。

 

 前のDFが右足を伸ばす。

 

 青峰はその足の外へボールを逃がし、左へ回った。背中の相手が肩を当てる。身体が傾く。

 

 七星は、こぼれた時のためにゴールへ走った。

 

 ボールはこぼれなかった。

 

 青峰が倒れかけた身体を右足で支え、左足を振った。

 

 背後のDFは、自分が青峰の腰を押し出せたことを分かっていた。体勢は崩れた。次に右足を踏み直すまで、左脚は振れないはずだった。

 

 青峰はその右足を、前ではなく身体の外へ着いた。

 

 斜めに倒れる上半身を、一本の脚で受け止める。腰が低くなる分だけ、左足は芝の近くを速く通った。ゴールへ完全には向いていない。相手の肩も、まだ背中に触れている。

 

 それでも、シュートは低くゴールを横切った。

 

 キーパーの手の先を抜け、遠い隅へ入る。

 

 一対〇。

 

 七星は足を緩めた。

 

 X戦でも、振り向ききる前に撃った。今度は肩を当てられても、待たなかった。

 

「あれで止めたつもりになるな!」

 

 YのキーパーがDFへ叫んだ。

 

「球、足から離せ! 身体押しただけじゃ撃ってくる!」

 

 七星は青峰を見た。

 

 青峰はもう中央へ戻っている。自分がどう蹴ったかより、向こうでボールを受け取った黒名を見ていた。

 

 黒名は近くの味方を呼び、短く位置を直していた。

 

「近く。近く」

 

 男が頷き、黒名の斜め後ろへ立つ。

 

 映像で何度も返球していた相手だった。

 

 七星は黒名の前へ出た。

 

*

 

 黒名が中央からボールを受けた。

 

 七星は二メートルほど離れて構えた。簡単に外へ抜かれない距離。パスを出した後も、黒名を見失わないつもりだった。

 

 黒名が横の味方へ預ける。

 

 七星は、一度だけボールを見た。

 

 顔を戻すと、黒名が肩の横を走っていた。

 

「返して、返して」

 

 声がすぐ近くにある。

 

 七星は追った。だが黒名は、七星が向きを変える間にも前へ進んでいた。返球が足元へ届く。

 

 右DFが止めに出る。

 

 黒名は中央のフォワードへボールを渡し、そのまま右DFの外を走った。

 

 またパスが戻る。

 

 二度のパス交換で、二人の守備者が後ろに残された。

 

 七星が追いつく前に、黒名が右足で撃った。

 

 近い側のポストの内側へ、ボールが入る。

 

 一対一。

 

 七星はゴール前で止まった。

 

 黒名が味方と手を合わせ、最初に返球した男のところへ戻る。

 

「次もそこ」

「もうちょい前でも出せるぞ」

 

 二人の話が聞こえた。

 

 黒名はただ走っていただけではない。ボールを持った相手へ七星が注意を向ける、その時に抜けた。

 

「見失ったら先に言ってくれ」

 

 右DFが言う。

 

「俺があいつを見る。お前は返す奴の方に行けるから」

「……はい」

 

 言えばよかった。

 

 自分で追いつこうとした結果、右DFまでボールへ引き出され、二人とも後ろから追うことになった。

 

 次は声を出す。

 

 七星はそう決めて右へ戻った。

 

 青峰は反対側から黒名を見ていた。

 

 自分にボールを持たせず、向こうの十一人だけで一つ取った。パスを出した男がすぐに走り、受けた男は一度で返す。足元の速さでは、黒名より返す側の方が遅い。

 

 昨夜、画面を止めた場所を思い出す。

 

 いま追えば、返し手のところまで四、五歩だった。だが青峰がその間へ入ると、手前の選手がすぐにボールを外へ逃がした。

 

 黒名も見ている。

 

 青峰は走るのをやめた。

 

 取りに来ると分かっている時には返さない。だったら、取れないと思わせたところから入る。次の一球だけを待つつもりではなかった。青峰は二人の距離と、返す前に向ける足の角度を見た。

 

 黒名が同じ味方へ近づく。今度はボールを受けず、向こうへ抜けていった。

 

「ちっ」

 

 青峰は中央へ戻った。

 

 最初の一回だけで、全部が分かったことにはならなかった。

 

 しかし、次にZが攻めた時も、黒名の位置を気にしていた。

 

 ここで上がれば、取られた時にまた後ろから追う。

 

 その迷いで、走り出しが遅れた。

 

 前線では石狩が浮き球を受けていた。背後にDFがいて、振り向けない。石狩はヘディングで右へ落とした。

 

 七星が走った。

 

 間に合わなかった。

 

 出ていれば触れた場所へ、Yの選手が先に入る。

 

「七星!」

 

 石狩の声がした。

 

「すんません、今――」

「出す前に、そこにいてほしい」

 

 石狩はそれだけ言って、守備へ戻った。

 

 七星も追う。

 

 黒名を見ていなければ抜かれる。

 

 見ているだけでは、自分が前へ出られない。

 

 何をするにしても、相手が動いた後になっていた。

 

*

 

 二度目は、黒名の走る方を先に塞いだ。

 

 横へパスが出る。黒名が外へ向く。

 

 七星は、その前へ一歩出た。

 

 先ほど通られた場所へ身体を入れる。ここなら、戻ってくるボールにも触れる。

 

 黒名が止まった。

 

 七星だけが前へ出た。

 

 返球は、七星の後ろへ来る。

 

 黒名は半歩下がって受け、中央へ向き直った。

 

「後ろ、黒名!」

 

 七星は叫んだ。

 

 右DFが中央から出る。今度は声が間に合った。

 

 それでも、黒名は止まらなかった。

 

 中央のフォワードへ渡す。右DFがそちらを確かめる間に、今度は内側を走った。パスが返る。

 

 左足から放たれたシュートが、遠い隅へ決まった。

 

 一対二。

 

 青峰は、一対二になった表示を見た。

 

 二点目も、黒名だった。

 

 勝ち越されたことより先に、相手の得点数が頭に残った。一本しか撃っていない自分を、その間に二つで追い越した。

 

 黒名の使う場所は、自分から遠かった。狙って避けているというより、七星と右DFの間の方が通るから、そこへ走っている。

 

「おい」

 

 戻ってくる黒名へ声を掛けた。

 

「こっちも通ってみろよ」

 

「空いたらな」

 

 黒名は短く答えた。相手を選べと言われて、選び直すつもりはないらしい。

 

 青峰は黒名の横を通った。

 

 負けている側から、やり方へ文句を言っても仕方がない。向こうのボールがそこを通るなら、自分がそこへ行く。

 

 七星は、自分が先回りした場所を振り返った。

 

 誰もいない。

 

 映像と同じことをするはずだと決め、自分でそこへ走ったのだ。

 

 黒名は、空いた逆側を使った。

 

「今の、途中で止まるんすね」

 

 通り過ぎる黒名へ、七星は言っていた。

 

 黒名が顔を向ける。

 

「そっち、塞がれたから」

 

 七星のいた場所を指して、中央へ戻っていった。

 

 返す言葉がなかった。

 

 七星が返球の先へ走ったのを見て、黒名は一度止まった。七星が塞いだ道を使わず、逆へ走り直したのだ。先回りしたつもりで、自分の空けた方を使われた。

 

 七星は、自分の前に石狩が来たのに気づいた。

 

「次、胸で受ける。落とすまで、少し待てる」

「俺が遅れたんす。さっきの」

「だから次」

 

 石狩が自分の前を指す。

 

「そこに来て」

 

 七星は頷いた。

 

「行くっす」

 

 次の攻撃では、本当に走った。

 

 石狩が胸で落としたボールを受ける。ゴールは遠く、中央には青峰がいた。

 

 七星は一度止め、出しやすい位置へ動かした。

 

 青峰へ蹴る。

 

 その間へ、YのDFが入った。

 

「一個多いんだよ」

 

 青峰の声が来た。

 

 七星は奪われたボールを追った。

 

 受けた瞬間には、通っていた。

 

 自分で一触増やして、閉じさせた。

 

 鬼ごっこの時と同じだった。

 

*

 

 黒名がまた右へ預けた。

 

 七星はすぐには追わなかった。

 

 走る黒名と、ボールを持つ返し手。その両方が見える位置に残る。右DFが後ろから声を出した。

 

「黒名、俺が見る!」

 

 七星は返し手へ近づいた。

 

 相手は中央のフォワードを探す。そこへ氷織が寄っていた。中央へ出すパスの前に立ち、返し手を外へ向かせる。

 

 黒名へ戻すボールが出た。

 

 氷織が足を伸ばす。

 

 完全には止まらなかったが、方向が変わった。

 

 七星の左側へ、ボールが転がる。

 

 返し手も追った。

 

 七星は身体を入れ、左足で前へ押した。

 

 奪えた。

 

 Yのゴールまで走る。中央には青峰がいて、まだ二人のDFが近くに残っていた。もう一人が七星を止めに出てくる。

 

 ボールは左前にあった。

 

 右へ持ち替えれば、強く撃てる。

 

 だが、相手のDFはその右側へ寄ってきていた。七星が置き直せば、ちょうど脚が届く。

 

 ゴールまでは十数メートル。

 

 七星は右足を地面へ置いた。

 

 左で撃つ。

 

 強いシュートではなかった。それでも狙った遠い隅へ、ボールが低く走った。

 

 DFの脚が横を通る。キーパーが腰を落とし、手を伸ばす。

 

 その先へ、ボールが抜けた。

 

 ネットが揺れた。

 

 二対二。

 

 七星はまだゴールへ走っていた。

 

 ボールが網に当たって止まるのを見て、ようやく足を止めた。

 

「入った……」

 

 声が出た。

 

 もう一度、自分の左足を見る。

 

「よしっ!」

 

 拳を握る。向こうで右DFも手を上げていた。

 

 石狩が来る。

 

 七星は今度、自分から腕を伸ばした。掌が鳴った。

 

「俺、今、左で――」

「見てた」

 

 石狩が笑う。

 

 七星も笑った。言いたいことがいくつもあったのに、全部、今のゴールと同じ意味になる。

 

 氷織が少し遅れて来た。

 

「そのまま撃ったな」

「持ち替えたら、取られると思って」

「うん。間に合う前に撃ててた」

 

 七星はまたゴールを見た。

 

 左でもゴールの隅へ蹴る感覚は、ここへ来る前からあった。普段は右を選んでいただけで、左で止めたり蹴ったりすること自体は、七星には難しくなかった。

 

 ただ、相手に詰められると、左にあるボールまで右へ持ち替えてしまう。今日も、その一触の間に足を入れられた。左で蹴れると分かっていても、焦った時にはいつもの右を選んでいた。

 

 今の一本では、その一触を入れなかった。

 

 それで間に合った。

 

「おい、戻れ。次だろ」

 

 中央から青峰が呼ぶ。

 

 七星は大きく返事をした。

 

 戻る途中、YのDFが一人、こちらへ寄ってきた。さっきまで青峰の近くにいた男だった。

 

「そいつ、左もあるぞ」

 

 後ろから声が飛んだ。

 

 七星は顔を上げた。

 

 今度は自分も、止める相手として見られていた。

 

*

 

 青峰は、横から離れていったDFを見た。

 

 七星の方へつく。中央に残ったのは、一人になった。

 

 Yが再開する。

 

 青峰は黒名を直接追わず、いつも返球している男へ寄った。男は黒名へ身体を向け、ボールを受けようとしていた。

 

 次にどこへ返すかを、受ける前から決めている。

 

 青峰はその横へ入った。

 

 足元へ来たパスを、男が触る直前に奪う。

 

「おいっ!」

 

 背後で声が上がった。

 

 青峰は前へ運んだ。中央のDFが下がる。七星についた男は、横から戻ってくる途中だった。

 

 一人目の前で、少しだけ速度を落とす。

 

 相手の膝が曲がったところで、青峰はもう一度走った。

 

 その横を抜ける。

 

 キーパーが前へ出た。

 

 青峰は足を大きく引かず、右足の内側でボールを横へ送った。勢いよく飛び出したキーパーの脇を、低いシュートが通る。

 

 三対二。

 

 青峰はゴールの横で止まり、追ってきた返し手へ振り向いた。

 

「そこに返すなら、また取るぞ」

 

 相手が顔を歪める。

 

 黒名がその横から言った。

 

「次、別。別」

 

 中央の味方を指す。

 

 青峰は返し手から目を離さなかった。

 

「次もそいつに出したら取るぞ」

 

 次の攻撃で、実際に変えてきた。

 

 青峰が返し手へ寄ると、ボールは黒名へ戻らず、中央の三人目へ出た。青峰が向きを変える。その間に黒名が反対側を走り、三人目からパスを受けた。

 

 青峰の足は届かなかった。

 

「ちっ」

 

 黒名が前へ進む。

 

 七星が内側から追い、右DFが外を塞いだ。黒名が中央へ出したボールを、Zの守備役が触って氷織へ渡す。

 

 青峰はすぐに前を向いた。

 

 今のパスを追い続けるより、自分のボールを受ける方が早い。

 

「氷織!」

 

 声が届く。

 

 だが氷織が蹴ろうとしたところへ、Yの中盤が斜めから入った。

 

 青峰の足元へ伸びる線を、途中で塞ぐ。氷織は一度足を止め、七星へ出した。青峰は中央を指したまま、ボールが右へ行くのを見送った。

 

 七星は左で前へ運ぼうとする。その先を、今度はDFが閉じていた。右へ変えたところでボールに触られ、タッチラインを割る。

 

「最初の一回で寄越せよ」

 

 青峰が氷織へ言った。

 

「もう相手の足が入ってた。こっち側に」

 

 氷織は、自分のすぐ前を示した。青峰の近くではない。ボールが出ていく、その最初の場所だった。

 

 青峰は口を閉じた。

 

 Xと同じように足元へ入る前を狙われている。ただ、Yにはその後で黒名が走る。相手が奪っただけで終わるのを待っていられない。

 

 七星のスローインを、石狩が胸で受けた。背後の相手を押さえ、氷織へ落とす。そのボールを、横から来たYの中盤が外へ蹴った。

 

 青峰はゴール前から下がった。ついてくるDFを一度振り返り、その前を横切って中央へ向かう。相手の中盤が青峰へのパスを塞ぐために振り向いた。

 

 そいつの背中を取れば、氷織から直接受けられる。青峰は外へ開くふりをして、相手が向き直るのを待った。

 

 だが、七星のスローインはYへ渡った。黒名が走り出す。

 

 青峰は相手の返し手へ近づき、中央へ出す道を塞いだ。Yは逆側へ展開した。七星が内側から黒名を追い、右DFが前に立つ。シュートはDFの脚に当たり、ゴールの外へ出た。

 

*

 

 続くコーナーで、石狩が競り勝った。頭で弾いたボールをZのDFが拾い、左の氷織へ渡す。

 

 青峰は既に走り始めていた。氷織から離れるように前へ出て、マークのDFを下がらせる。そのDFが自分のゴールへ顔を向けた瞬間、青峰は急停止し、今度は氷織の方へ戻った。

 

 相手の中盤が、ボールと青峰を交互に見る。青峰はその背後から横へ抜け、氷織の八メートルほど前へ顔を出した。追ってくるDFは一歩遅れている。

 

「今!」

 

 氷織が一度で出した。

 

 背後のDFが肩を寄せる。その相手からボールを隠し、青峰は右足で左へ引いた。逆を向いたDFの脇を通り、ゴールを向く。

 

 目の前にもう一人。その右後ろに、三人目が戻ってきている。

 

 青峰は二人のいる中央へ進んだ。

 

 前のDFは飛び込まず、後ろの味方が着くのを待つ。青峰が身体を横へ向ければ、最初の失点と同じだ。足を振る場所へ先に入るため、距離を一つ保っていた。

 

 青峰は右へボールを押した。

 

 一人目が横へ動く。三人目も同じ側へ寄る。背後から追ってきたDFが、青峰の左肩へ手を掛けかけた。

 

 青峰は止まった。

 

 ボールだけでなく、腰の移動まで止まる。前の二人の足が、右へ向いたまま着いた。

 

 青峰は、その間へ左足を踏み込んだ。

 

 右足の裏でボールを引き、二人の間を通す。前にいたDFが閉じようとする。その膝が寄る前に、青峰の身体が横を抜けた。

 

「後ろ!」

 

 残った一人の声がした。

 

 追っていたDFが、青峰の肩へ身体を当てる。撃つ前に、ゴールから横へ追い出すつもりだった。

 

 青峰は押された方へ上体を傾けた。

 

 右足でボールを手前へ引く。その足をボールの横へ着き、低い位置で腰をひねった。上半身が戻るより先に、左脚を振る。

 

 体勢は整わないままだった。

 

 それでも足首の角度だけで、ボールの下を捉えた。

 

 近いポストの上へ、シュートが突き上がる。

 

 キーパーの手が遅れて上がった。その上でネットが鳴る。

 

 四対二。

 

 青峰は足を着き、押していたDFから離れた。

 

「どこ塞いでんだよ」

 

 キーパーは近いポストを振り返っていた。最初の失点は遠い側の低い球だった。同じように腰を落とし、今度は上を抜かれた。

 

 DFがキーパーへ何か言いかけ、自分の足元を見た。

 

 ボールには触れなかった。

 

 身体を押しても、青峰から蹴る機会を奪えなかった。

 

 中央へ戻ると、黒名が味方へまた位置を示していた。

 

 青峰はその指先を見た。

 

 今度は、どこへ出す。

 

 最後の攻撃でも、黒名は味方へ預けて右へ走った。青峰は返し手へ寄り、黒名へ戻すパスを狙う。男が逆へ蹴ったところで、氷織が足を出した。

 

 ボールがタッチラインを越え、終了の音が鳴った。

 

*

 

 青峰はラインの外まで転がったボールを拾った。

 

 近くに来た係へボールを渡す。その向こうで、黒名と何度もパスを交換していた男が、別のボールを拾っていた。

 

 男は受け、少し離れた黒名を見る。

 

「もう一本。外へ」

 

 黒名が言った。

 

「今?」

「一本だけ」

 

 男がパスを出す。

 

 黒名は返し、自分も外を走った。男の返球は、黒名より少し内側へ入る。黒名は止まって取った。

 

「もう少し先」

「そこまで行くなら、先に言えって」

 

 男は文句を言いながら、もう一度距離を取った。

 

 青峰はそれを見た。

 

 試合は終わっている。自分たちが勝った。

 

 黒名はまた走り、今度はさっきより前で返球を受けた。青峰に横から触られる前に追いつけるよう、味方に出してもらう位置を試していた。

 

 もう一本、短いパスの音がする。

 

 青峰はベンチへ戻った。

 

 七星が得点者の画面の前にいた。

 

 青峰大輝、三。

 

 七星虹郎、一。

 

 七星は画面を見て、自分の左足を見て、また画面を見ていた。

 

「いつまで見てんだよ」

 

 青峰が言うと、七星が振り向いた。

 

「あとちょっとっす」

「消えねえだろ」

「昨日、載ってなかったんで」

 

 隠そうともせず笑っていた。

 

 青峰はその顔を見て、先に出口へ向かった。

 

 次の相手はチームW。

 

 背後では、もう一度ボールが蹴られた。今度は二つの音が、途中で止まらずに続いた。

 

 青峰は一度振り向いてから、通路へ入った。

 

 四点目の後、守っていた三人は誰もすぐには話さなかった。二人で間を閉じ、その後ろから身体まで当てた。自分たちがやると決めたことは、ほとんどできていたからだろう。

 

 それでも入れた。

 

 青峰はその一球を思い出した。右足で引き、最後は左足で蹴った。次に左を塞がれたら、右で撃てばいい。受けた時の体勢など、あとから変えられる。

 

 通路の途中で、黒名が追いついてきた。

 

「あそこ、下がっただろ」

 

 青峰は顔を向けた。

 

「何が」

 

「四点目の前。受ける場所、変えた」

 

「球、来ねえからな」

 

「次、そこも見る」

 

 青峰は足を止めた。

 

「お前が来んのかよ」

 

「出す方を見る。持たれたら、そっちが速い」

 

 正面から抜くと約束する声ではなかった。黒名には、黒名の続ける方法がある。青峰を避けて終わるのではなく、青峰へ渡る前に自分のボールにするつもりだった。

 

 青峰は短く息を吐いた。

 

「じゃあ、取られる前に入れてやるよ」

 

 黒名は頷かず、そのまま別の通路へ入った。

 

 青峰も歩き出した。勝った後に、まだ次の話をしてくる相手は残っていた。

 

 負けた後に、次は自分が勝つつもりで話しかけてくる。桐皇で何度も見た、青峰から顔を逸らすDFとは違った。

 

 黒名が三点目を取る前に終わらせたことを、いまになって少し惜しく思った。だが、取らせてやる気はない。もう一度戦うなら、次はあの二点も取らせない。

 

 そのためなら、明日もこの施設にいる理由がある。

 

 青峰はもう、得点の画面を見ていなかった。

 

 

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