青峰大輝 in ブルーロック 作:AIで小説を上手く書きたい!
黒名蘭世は、パスを出したあとに速くなる。
七星は対戦相手の映像を見ながら、そう思った。
ドリブルで何人も抜いているわけではない。近くの味方へ出し、その相手が受ける間に守備者の外へ走る。返ってきたボールを、また別の味方へ預ける。
守る側がボールへ顔を向けた、その横を通っていく。
「ここ、止めてもらっていいっすか」
画面が止まった。
黒名はボールを持っていない。けれど、次に受ければシュートを打てる場所へ向かっていた。
「球だけ追ったら、後ろに回られるんすね」
七星が言うと、隣の右DFが頷いた。
「俺が前に出る時は呼ぶ。お前も、抜かれたらすぐ言って」
「はい」
前の試合では、二人で同時に上がった。
今度は、二人とも同じボールへ釣られないようにする。
「でも取ったら、俺も前行くっす」
七星は画面から目を離した。
「昨日、ゼロだったんで」
椅子に浅く座っていた青峰が、こちらを見た。
「じゃ、早く取れよ」
「取ります」
七星は答えた。
画面の中では、再開された黒名がゴールを決めていた。
青峰は立ち上がった。
「終わったら消しとけ」
「もう見ないんすか」
「見た」
七星は、昨夜も青峰が同じ画面の前にいたことを思い出した。集まって説明を聞くより前に、自分で見ていたらしい。
「返す人のところに行くんすよね。氷織さんが言ってました」
「だったら、同じとこ来んなよ」
青峰は扉へ向かった。
七星は画面へ顔を戻す。誰が行けば残った相手を見られるか、右DFともう一度確かめた。
青峰が取るために動くことと、全員が青峰の後を追うことは違う。あの人は自分が奪えると思った場所へ行く。その時に空く場所は、残った自分たちが見なければならなかった。
右DFが先に言った。
「青峰が出たら、俺は中を残す」
七星は頷いた。
*
チームYとの試合で、先に点を取ったのはZだった。
Yは最初から、青峰の前後へ一人ずつ置いた。X戦の映像を見たのだろう。青峰が後ろへ下がれば、近い方がついてくる。もう一人はエリアの手前に残り、抜けてくる方を待っていた。
昨日と違うのは、近い方が足を出すのを待たないことだった。
ボールを受けた瞬間、身体を寄せる。立って蹴るための姿勢をつくらせず、後ろの相手が先にボールへ触る。
「右肩、向けさせるな」
相手の声が聞こえた。
青峰は左側へ歩き、背中のDFもそちらへ引っ張った。ゴールへ向かうなら右へ回らなければならない。相手の狙う向きを、自分からつくった。
氷織が左の中盤で受ける。前の相手がまだ中央へ戻りきっていなかった。
「出せ」
青峰は声を張った。
足元へ通せる道だけはある。その先の人数まで見て止めるな、と昨日言った。氷織の左足が振られた。
氷織が中央へ出したボールを、青峰がエリアの手前で受ける。YのDFは一人が背後につき、もう一人が前から挟みに来た。
前のDFが右足を伸ばす。
青峰はその足の外へボールを逃がし、左へ回った。背中の相手が肩を当てる。身体が傾く。
七星は、こぼれた時のためにゴールへ走った。
ボールはこぼれなかった。
青峰が倒れかけた身体を右足で支え、左足を振った。
背後のDFは、自分が青峰の腰を押し出せたことを分かっていた。体勢は崩れた。次に右足を踏み直すまで、左脚は振れないはずだった。
青峰はその右足を、前ではなく身体の外へ着いた。
斜めに倒れる上半身を、一本の脚で受け止める。腰が低くなる分だけ、左足は芝の近くを速く通った。ゴールへ完全には向いていない。相手の肩も、まだ背中に触れている。
それでも、シュートは低くゴールを横切った。
キーパーの手の先を抜け、遠い隅へ入る。
一対〇。
七星は足を緩めた。
X戦でも、振り向ききる前に撃った。今度は肩を当てられても、待たなかった。
「あれで止めたつもりになるな!」
YのキーパーがDFへ叫んだ。
「球、足から離せ! 身体押しただけじゃ撃ってくる!」
七星は青峰を見た。
青峰はもう中央へ戻っている。自分がどう蹴ったかより、向こうでボールを受け取った黒名を見ていた。
黒名は近くの味方を呼び、短く位置を直していた。
「近く。近く」
男が頷き、黒名の斜め後ろへ立つ。
映像で何度も返球していた相手だった。
七星は黒名の前へ出た。
*
黒名が中央からボールを受けた。
七星は二メートルほど離れて構えた。簡単に外へ抜かれない距離。パスを出した後も、黒名を見失わないつもりだった。
黒名が横の味方へ預ける。
七星は、一度だけボールを見た。
顔を戻すと、黒名が肩の横を走っていた。
「返して、返して」
声がすぐ近くにある。
七星は追った。だが黒名は、七星が向きを変える間にも前へ進んでいた。返球が足元へ届く。
右DFが止めに出る。
黒名は中央のフォワードへボールを渡し、そのまま右DFの外を走った。
またパスが戻る。
二度のパス交換で、二人の守備者が後ろに残された。
七星が追いつく前に、黒名が右足で撃った。
近い側のポストの内側へ、ボールが入る。
一対一。
七星はゴール前で止まった。
黒名が味方と手を合わせ、最初に返球した男のところへ戻る。
「次もそこ」
「もうちょい前でも出せるぞ」
二人の話が聞こえた。
黒名はただ走っていただけではない。ボールを持った相手へ七星が注意を向ける、その時に抜けた。
「見失ったら先に言ってくれ」
右DFが言う。
「俺があいつを見る。お前は返す奴の方に行けるから」
「……はい」
言えばよかった。
自分で追いつこうとした結果、右DFまでボールへ引き出され、二人とも後ろから追うことになった。
次は声を出す。
七星はそう決めて右へ戻った。
青峰は反対側から黒名を見ていた。
自分にボールを持たせず、向こうの十一人だけで一つ取った。パスを出した男がすぐに走り、受けた男は一度で返す。足元の速さでは、黒名より返す側の方が遅い。
昨夜、画面を止めた場所を思い出す。
いま追えば、返し手のところまで四、五歩だった。だが青峰がその間へ入ると、手前の選手がすぐにボールを外へ逃がした。
黒名も見ている。
青峰は走るのをやめた。
取りに来ると分かっている時には返さない。だったら、取れないと思わせたところから入る。次の一球だけを待つつもりではなかった。青峰は二人の距離と、返す前に向ける足の角度を見た。
黒名が同じ味方へ近づく。今度はボールを受けず、向こうへ抜けていった。
「ちっ」
青峰は中央へ戻った。
最初の一回だけで、全部が分かったことにはならなかった。
しかし、次にZが攻めた時も、黒名の位置を気にしていた。
ここで上がれば、取られた時にまた後ろから追う。
その迷いで、走り出しが遅れた。
前線では石狩が浮き球を受けていた。背後にDFがいて、振り向けない。石狩はヘディングで右へ落とした。
七星が走った。
間に合わなかった。
出ていれば触れた場所へ、Yの選手が先に入る。
「七星!」
石狩の声がした。
「すんません、今――」
「出す前に、そこにいてほしい」
石狩はそれだけ言って、守備へ戻った。
七星も追う。
黒名を見ていなければ抜かれる。
見ているだけでは、自分が前へ出られない。
何をするにしても、相手が動いた後になっていた。
*
二度目は、黒名の走る方を先に塞いだ。
横へパスが出る。黒名が外へ向く。
七星は、その前へ一歩出た。
先ほど通られた場所へ身体を入れる。ここなら、戻ってくるボールにも触れる。
黒名が止まった。
七星だけが前へ出た。
返球は、七星の後ろへ来る。
黒名は半歩下がって受け、中央へ向き直った。
「後ろ、黒名!」
七星は叫んだ。
右DFが中央から出る。今度は声が間に合った。
それでも、黒名は止まらなかった。
中央のフォワードへ渡す。右DFがそちらを確かめる間に、今度は内側を走った。パスが返る。
左足から放たれたシュートが、遠い隅へ決まった。
一対二。
青峰は、一対二になった表示を見た。
二点目も、黒名だった。
勝ち越されたことより先に、相手の得点数が頭に残った。一本しか撃っていない自分を、その間に二つで追い越した。
黒名の使う場所は、自分から遠かった。狙って避けているというより、七星と右DFの間の方が通るから、そこへ走っている。
「おい」
戻ってくる黒名へ声を掛けた。
「こっちも通ってみろよ」
「空いたらな」
黒名は短く答えた。相手を選べと言われて、選び直すつもりはないらしい。
青峰は黒名の横を通った。
負けている側から、やり方へ文句を言っても仕方がない。向こうのボールがそこを通るなら、自分がそこへ行く。
七星は、自分が先回りした場所を振り返った。
誰もいない。
映像と同じことをするはずだと決め、自分でそこへ走ったのだ。
黒名は、空いた逆側を使った。
「今の、途中で止まるんすね」
通り過ぎる黒名へ、七星は言っていた。
黒名が顔を向ける。
「そっち、塞がれたから」
七星のいた場所を指して、中央へ戻っていった。
返す言葉がなかった。
七星が返球の先へ走ったのを見て、黒名は一度止まった。七星が塞いだ道を使わず、逆へ走り直したのだ。先回りしたつもりで、自分の空けた方を使われた。
七星は、自分の前に石狩が来たのに気づいた。
「次、胸で受ける。落とすまで、少し待てる」
「俺が遅れたんす。さっきの」
「だから次」
石狩が自分の前を指す。
「そこに来て」
七星は頷いた。
「行くっす」
次の攻撃では、本当に走った。
石狩が胸で落としたボールを受ける。ゴールは遠く、中央には青峰がいた。
七星は一度止め、出しやすい位置へ動かした。
青峰へ蹴る。
その間へ、YのDFが入った。
「一個多いんだよ」
青峰の声が来た。
七星は奪われたボールを追った。
受けた瞬間には、通っていた。
自分で一触増やして、閉じさせた。
鬼ごっこの時と同じだった。
*
黒名がまた右へ預けた。
七星はすぐには追わなかった。
走る黒名と、ボールを持つ返し手。その両方が見える位置に残る。右DFが後ろから声を出した。
「黒名、俺が見る!」
七星は返し手へ近づいた。
相手は中央のフォワードを探す。そこへ氷織が寄っていた。中央へ出すパスの前に立ち、返し手を外へ向かせる。
黒名へ戻すボールが出た。
氷織が足を伸ばす。
完全には止まらなかったが、方向が変わった。
七星の左側へ、ボールが転がる。
返し手も追った。
七星は身体を入れ、左足で前へ押した。
奪えた。
Yのゴールまで走る。中央には青峰がいて、まだ二人のDFが近くに残っていた。もう一人が七星を止めに出てくる。
ボールは左前にあった。
右へ持ち替えれば、強く撃てる。
だが、相手のDFはその右側へ寄ってきていた。七星が置き直せば、ちょうど脚が届く。
ゴールまでは十数メートル。
七星は右足を地面へ置いた。
左で撃つ。
強いシュートではなかった。それでも狙った遠い隅へ、ボールが低く走った。
DFの脚が横を通る。キーパーが腰を落とし、手を伸ばす。
その先へ、ボールが抜けた。
ネットが揺れた。
二対二。
七星はまだゴールへ走っていた。
ボールが網に当たって止まるのを見て、ようやく足を止めた。
「入った……」
声が出た。
もう一度、自分の左足を見る。
「よしっ!」
拳を握る。向こうで右DFも手を上げていた。
石狩が来る。
七星は今度、自分から腕を伸ばした。掌が鳴った。
「俺、今、左で――」
「見てた」
石狩が笑う。
七星も笑った。言いたいことがいくつもあったのに、全部、今のゴールと同じ意味になる。
氷織が少し遅れて来た。
「そのまま撃ったな」
「持ち替えたら、取られると思って」
「うん。間に合う前に撃ててた」
七星はまたゴールを見た。
左でもゴールの隅へ蹴る感覚は、ここへ来る前からあった。普段は右を選んでいただけで、左で止めたり蹴ったりすること自体は、七星には難しくなかった。
ただ、相手に詰められると、左にあるボールまで右へ持ち替えてしまう。今日も、その一触の間に足を入れられた。左で蹴れると分かっていても、焦った時にはいつもの右を選んでいた。
今の一本では、その一触を入れなかった。
それで間に合った。
「おい、戻れ。次だろ」
中央から青峰が呼ぶ。
七星は大きく返事をした。
戻る途中、YのDFが一人、こちらへ寄ってきた。さっきまで青峰の近くにいた男だった。
「そいつ、左もあるぞ」
後ろから声が飛んだ。
七星は顔を上げた。
今度は自分も、止める相手として見られていた。
*
青峰は、横から離れていったDFを見た。
七星の方へつく。中央に残ったのは、一人になった。
Yが再開する。
青峰は黒名を直接追わず、いつも返球している男へ寄った。男は黒名へ身体を向け、ボールを受けようとしていた。
次にどこへ返すかを、受ける前から決めている。
青峰はその横へ入った。
足元へ来たパスを、男が触る直前に奪う。
「おいっ!」
背後で声が上がった。
青峰は前へ運んだ。中央のDFが下がる。七星についた男は、横から戻ってくる途中だった。
一人目の前で、少しだけ速度を落とす。
相手の膝が曲がったところで、青峰はもう一度走った。
その横を抜ける。
キーパーが前へ出た。
青峰は足を大きく引かず、右足の内側でボールを横へ送った。勢いよく飛び出したキーパーの脇を、低いシュートが通る。
三対二。
青峰はゴールの横で止まり、追ってきた返し手へ振り向いた。
「そこに返すなら、また取るぞ」
相手が顔を歪める。
黒名がその横から言った。
「次、別。別」
中央の味方を指す。
青峰は返し手から目を離さなかった。
「次もそいつに出したら取るぞ」
次の攻撃で、実際に変えてきた。
青峰が返し手へ寄ると、ボールは黒名へ戻らず、中央の三人目へ出た。青峰が向きを変える。その間に黒名が反対側を走り、三人目からパスを受けた。
青峰の足は届かなかった。
「ちっ」
黒名が前へ進む。
七星が内側から追い、右DFが外を塞いだ。黒名が中央へ出したボールを、Zの守備役が触って氷織へ渡す。
青峰はすぐに前を向いた。
今のパスを追い続けるより、自分のボールを受ける方が早い。
「氷織!」
声が届く。
だが氷織が蹴ろうとしたところへ、Yの中盤が斜めから入った。
青峰の足元へ伸びる線を、途中で塞ぐ。氷織は一度足を止め、七星へ出した。青峰は中央を指したまま、ボールが右へ行くのを見送った。
七星は左で前へ運ぼうとする。その先を、今度はDFが閉じていた。右へ変えたところでボールに触られ、タッチラインを割る。
「最初の一回で寄越せよ」
青峰が氷織へ言った。
「もう相手の足が入ってた。こっち側に」
氷織は、自分のすぐ前を示した。青峰の近くではない。ボールが出ていく、その最初の場所だった。
青峰は口を閉じた。
Xと同じように足元へ入る前を狙われている。ただ、Yにはその後で黒名が走る。相手が奪っただけで終わるのを待っていられない。
七星のスローインを、石狩が胸で受けた。背後の相手を押さえ、氷織へ落とす。そのボールを、横から来たYの中盤が外へ蹴った。
青峰はゴール前から下がった。ついてくるDFを一度振り返り、その前を横切って中央へ向かう。相手の中盤が青峰へのパスを塞ぐために振り向いた。
そいつの背中を取れば、氷織から直接受けられる。青峰は外へ開くふりをして、相手が向き直るのを待った。
だが、七星のスローインはYへ渡った。黒名が走り出す。
青峰は相手の返し手へ近づき、中央へ出す道を塞いだ。Yは逆側へ展開した。七星が内側から黒名を追い、右DFが前に立つ。シュートはDFの脚に当たり、ゴールの外へ出た。
*
続くコーナーで、石狩が競り勝った。頭で弾いたボールをZのDFが拾い、左の氷織へ渡す。
青峰は既に走り始めていた。氷織から離れるように前へ出て、マークのDFを下がらせる。そのDFが自分のゴールへ顔を向けた瞬間、青峰は急停止し、今度は氷織の方へ戻った。
相手の中盤が、ボールと青峰を交互に見る。青峰はその背後から横へ抜け、氷織の八メートルほど前へ顔を出した。追ってくるDFは一歩遅れている。
「今!」
氷織が一度で出した。
背後のDFが肩を寄せる。その相手からボールを隠し、青峰は右足で左へ引いた。逆を向いたDFの脇を通り、ゴールを向く。
目の前にもう一人。その右後ろに、三人目が戻ってきている。
青峰は二人のいる中央へ進んだ。
前のDFは飛び込まず、後ろの味方が着くのを待つ。青峰が身体を横へ向ければ、最初の失点と同じだ。足を振る場所へ先に入るため、距離を一つ保っていた。
青峰は右へボールを押した。
一人目が横へ動く。三人目も同じ側へ寄る。背後から追ってきたDFが、青峰の左肩へ手を掛けかけた。
青峰は止まった。
ボールだけでなく、腰の移動まで止まる。前の二人の足が、右へ向いたまま着いた。
青峰は、その間へ左足を踏み込んだ。
右足の裏でボールを引き、二人の間を通す。前にいたDFが閉じようとする。その膝が寄る前に、青峰の身体が横を抜けた。
「後ろ!」
残った一人の声がした。
追っていたDFが、青峰の肩へ身体を当てる。撃つ前に、ゴールから横へ追い出すつもりだった。
青峰は押された方へ上体を傾けた。
右足でボールを手前へ引く。その足をボールの横へ着き、低い位置で腰をひねった。上半身が戻るより先に、左脚を振る。
体勢は整わないままだった。
それでも足首の角度だけで、ボールの下を捉えた。
近いポストの上へ、シュートが突き上がる。
キーパーの手が遅れて上がった。その上でネットが鳴る。
四対二。
青峰は足を着き、押していたDFから離れた。
「どこ塞いでんだよ」
キーパーは近いポストを振り返っていた。最初の失点は遠い側の低い球だった。同じように腰を落とし、今度は上を抜かれた。
DFがキーパーへ何か言いかけ、自分の足元を見た。
ボールには触れなかった。
身体を押しても、青峰から蹴る機会を奪えなかった。
中央へ戻ると、黒名が味方へまた位置を示していた。
青峰はその指先を見た。
今度は、どこへ出す。
最後の攻撃でも、黒名は味方へ預けて右へ走った。青峰は返し手へ寄り、黒名へ戻すパスを狙う。男が逆へ蹴ったところで、氷織が足を出した。
ボールがタッチラインを越え、終了の音が鳴った。
*
青峰はラインの外まで転がったボールを拾った。
近くに来た係へボールを渡す。その向こうで、黒名と何度もパスを交換していた男が、別のボールを拾っていた。
男は受け、少し離れた黒名を見る。
「もう一本。外へ」
黒名が言った。
「今?」
「一本だけ」
男がパスを出す。
黒名は返し、自分も外を走った。男の返球は、黒名より少し内側へ入る。黒名は止まって取った。
「もう少し先」
「そこまで行くなら、先に言えって」
男は文句を言いながら、もう一度距離を取った。
青峰はそれを見た。
試合は終わっている。自分たちが勝った。
黒名はまた走り、今度はさっきより前で返球を受けた。青峰に横から触られる前に追いつけるよう、味方に出してもらう位置を試していた。
もう一本、短いパスの音がする。
青峰はベンチへ戻った。
七星が得点者の画面の前にいた。
青峰大輝、三。
七星虹郎、一。
七星は画面を見て、自分の左足を見て、また画面を見ていた。
「いつまで見てんだよ」
青峰が言うと、七星が振り向いた。
「あとちょっとっす」
「消えねえだろ」
「昨日、載ってなかったんで」
隠そうともせず笑っていた。
青峰はその顔を見て、先に出口へ向かった。
次の相手はチームW。
背後では、もう一度ボールが蹴られた。今度は二つの音が、途中で止まらずに続いた。
青峰は一度振り向いてから、通路へ入った。
四点目の後、守っていた三人は誰もすぐには話さなかった。二人で間を閉じ、その後ろから身体まで当てた。自分たちがやると決めたことは、ほとんどできていたからだろう。
それでも入れた。
青峰はその一球を思い出した。右足で引き、最後は左足で蹴った。次に左を塞がれたら、右で撃てばいい。受けた時の体勢など、あとから変えられる。
通路の途中で、黒名が追いついてきた。
「あそこ、下がっただろ」
青峰は顔を向けた。
「何が」
「四点目の前。受ける場所、変えた」
「球、来ねえからな」
「次、そこも見る」
青峰は足を止めた。
「お前が来んのかよ」
「出す方を見る。持たれたら、そっちが速い」
正面から抜くと約束する声ではなかった。黒名には、黒名の続ける方法がある。青峰を避けて終わるのではなく、青峰へ渡る前に自分のボールにするつもりだった。
青峰は短く息を吐いた。
「じゃあ、取られる前に入れてやるよ」
黒名は頷かず、そのまま別の通路へ入った。
青峰も歩き出した。勝った後に、まだ次の話をしてくる相手は残っていた。
負けた後に、次は自分が勝つつもりで話しかけてくる。桐皇で何度も見た、青峰から顔を逸らすDFとは違った。
黒名が三点目を取る前に終わらせたことを、いまになって少し惜しく思った。だが、取らせてやる気はない。もう一度戦うなら、次はあの二点も取らせない。
そのためなら、明日もこの施設にいる理由がある。
青峰はもう、得点の画面を見ていなかった。