青峰大輝 in ブルーロック 作:AIで小説を上手く書きたい!
チームVも、ここまで三勝していた。
残り一試合。ZとVの二次選考進出は、既に決まっている。ほかの三チームが残りを全て勝っても、この二つには届かない。
丸刈りの中央DFが、画面の順位表を指した。
「引き分けだと、得失点差で向こうが一位。俺らが上に行くには勝つしかない」
「じゃ、勝つだろ」
青峰は答え、隣の画面を見た。
雪宮剣優が映っていた。
右からも左からも運ぶ。一人目を抜くと、次のDFが来る前に撃つ。派手に何人も抜く場面ばかりではない。ボールを持っていない時に外へ広がり、正面の相手が一人になる場所で受けていた。
「こいつ、両側に来るんだな」
Zの左DFが言う。
「七星と右だけで見ればいい、ってわけじゃないか」
右DFが頷く。
「こっち来たら、俺が前。七星は内側」
「中まで動いたら呼んでいいっすか。俺、全部ついてったら前に出られないんで」
「呼んで。中はこっちも出る」
青峰は雪宮の映像をもう一度見た。
抜かれたDFは、外へ行かせるつもりで身体を向けている。その外へ運び、相手がついてきたところで内側へ戻していた。
行かせてもらったように見せて、相手の足を動かしている。
青峰が映像を止めると、石狩が目の前へ立った。
「俺が前で呼んだら、高い球」
「俺から来ると思ってんのかよ」
石狩は青峰の顔を見た。
「持ってたら言う」
「自分で撃つわ」
「じゃあ、お前が持つ前に呼ぶ」
石狩は向こうへ歩き、七星へ声を掛けた。青峰は背中へ返事をせず、雪宮の映像をもう一度動かした。
中央DFが作戦盤を机へ置く。
「雪宮が逆へ動いた時の話、まだ終わってない」
青峰は立ち上がったまま、作戦盤へ目だけを向けた。
「早くしろよ」
「お前も聞くんだよ。前でどっち切るか」
青峰は腕を組んだ。
中央DFは、雪宮へすぐに出させないよう、ボールを持った相手の外側をまず塞ぐと言った。後ろが揃う時間をつくる。青峰が前から追う時も、逆側へ一気に出させない。
青峰は盤を見た。
「取れそうなら取るぞ」
「それは取ってくれ」
話が終わると、今度こそ先に練習場へ向かった。
向こうでは、Vの選手がボールを回していた。
雪宮は試合用のゴーグルを直し、中央の味方と何か話していた。ゴールの方を指し、相手が頷いてから、こちらへ顔を向ける。
青峰はその前で足を止めた。
「五点か」
雪宮が少し笑った。
「君は九点だね」
「今日も取んだろ」
「もちろん。君たちにも勝つ」
青峰は、その目を見た。
「やってみろよ」
雪宮は笑ったまま、自分の位置へ戻っていった。
*
雪宮は左のタッチライン近くへ開いた。
ボールは、まだ反対側にあった。Vの右サイドで短くつなぎ、中央へ戻す。Zの中盤がそちらへ寄る。
雪宮の前には、Zの右DFがいた。
七星は少し内側にいる。Vの中央の選手が、その背後へ走り込もうとしていた。七星が確かめ、ついていく。
今なら、一人だった。
雪宮は手を上げた。
「ここ」
中央からパスが届く。
右足で前へ運ぶと、Zの右DFが近づいてきた。中央へ入る道を塞ぎ、タッチライン沿いへ行かせようとしている。
雪宮は、外へ進んだ。
相手もついてくる。
もう一度、外へ運ぶ。
相手の腰がタッチラインの方へ向いた。
雪宮はそこで、右足の内側でボールを中央へ戻した。
DFの身体が、外へ残る。
雪宮は内側を抜けた。相手が正面にいても、身体をぶつけ合える近さまで自分から運び、速い切り返しで引き離す。広い場所を走るだけでなく、一対一から得点まで持ち込む力があった。
Zの中央DFが止めに出ようとしたが、その前にはVの走者がいた。こちらへ出れば、今度はその選手がゴール前で空く。
一歩、遅れた。
雪宮はその間に右足を振った。
遠いポストの下へ、ボールが走る。
キーパーの伸ばした手を抜け、ゴールへ入った。
〇対一。
雪宮は中央へ走っていた味方と手を合わせた。
「今の走り、助かった」
「空いたら、こっちにもくれよ」
「もちろん」
味方が笑った。
雪宮は戻りながら、抜いたDFを見た。七星と話している。二人で来るなら、受ける場所を変える必要があった。
青峰は中央で待っていた。
目は、雪宮から離れなかった。
*
青峰が受けようとすると、Vは二人を近づけた。
一人が背中につき、もう一人が青峰の右側へ立つ。さらに奥にもDFがいる。一人抜かれても、すぐにキーパーとの一対一にはならない形だった。
氷織からパスが入る。
青峰は右足の裏で止めた。
自分も止まる。
背中の相手が近づき、右の相手がボールを取ろうと足を出す。
その二人が足を着いたところで、青峰は動いた。
右足でボールを斜め前へ押し、二人の間へ身体をねじ込む。背中を押そうとした手が、肩の後ろへ滑る。
次の一歩では、もう前へ出ていた。
三人目が来る。
青峰はその脚が開くのを見た。
シュートを防ぐために前へ踏み出した足と、後ろに残った足。その間へ、ボールを通す。
キーパーは三人目の身体で、蹴り出しを見られなかった。
低いシュートがDFの股を抜けてから、ようやく身体を伸ばす。
間に合わなかった。
一対一。
青峰はゴールの横へ抜け、振り返った。
三人目のDFが、自分の脚の間を見ている。
「もうちょい閉じとけよ」
相手が顔を上げた。
青峰は相手の返事を待たず、中央へ戻る。
Vはその次から、青峰の近くへ四人を残した。
ゴールの前に三人、そこへ届くパスの手前に一人。青峰が右へ動くと、その手前の一人もそちらへ寄る。
氷織は中央への線を見て、七星へ展開した。
青峰が呼ぶ。
七星は中を見たが、そのまま右から走った。相手は青峰の方へ寄っていて、クロスを上げるところまでは出てこない。
七星が右からクロスを上げ、石狩が頭で捉えた。ただしボールはゴールへ近すぎた。石狩が叩く前に身体を伸ばしきり、強く下へ落とせない。
キーパーが両手で捕った。
「もう少し手前!」
石狩が七星へ言う。
「俺が前に出て跳べるところ」
七星が頷いた。
キーパーがボールを出す。
青峰は、さっき左にいた雪宮が、そこにいないのに気づいた。
*
雪宮は右へ移っていた。
Zの右DFと七星は、今度こそ二人で守ろうとしていた。なら、その二人の前でボールを受ける必要はない。
中央の後ろを通り、反対側へ出る。
Vの右サイドの味方が、前へ運んでいた。Zの左の中盤がそれを止めに出る。雪宮は、その外へ開いた。
「外、俺に」
パスが来る。
Zの左の中盤が向きを変え、雪宮へ寄った。その後ろの左DFは、中央を守っていた位置から横へ動くところだった。
また、一人ずつだった。
雪宮は中央へ入るように身体を向けた。
目の前の相手が内側へ寄る。
雪宮はボールを右へ出した。相手の身体とタッチラインの間へ通し、その外を走る。
左DFが来る前に、シュートを打てる場所へ出た。
今度は、近いポストへ撃った。
キーパーは遠い隅も防ごうと、ゴール中央へ戻りかけていた。足を止め、腕を脇へ下ろす。
その前に、ボールがネットを叩いた。
一対二。
雪宮は息を吐き、パスを出した味方へ手を上げた。
「間に合った」
「呼ぶの、ぎりぎりだよ」
「次、もう少し早く」
手を合わせる。
Zの左DFが中盤の選手へ話しかけていた。雪宮をどこから見るかを、指で示している。
雪宮はその横を通った。
受けてから抜くところだけを止められても、まだ受ける場所を変えられる。
次は、その移動ごと追ってくるかもしれない。
中央で青峰と目が合った。
雪宮は笑った。青峰はその顔を見たまま、再開のボールを指した。
「今、前にいろよ」
「君を守れって?」
「そこから見てろって言ってんだ」
雪宮の笑みが少し薄くなった。
まだ二点だった。
*
青峰は、VのDFの背中から一度離れた。
氷織が中央より左で受ける。青峰への低いパスの前には、Vの中盤が一人立っていた。奥に並んだ守備者も、青峰が足元へ収めてから抜きに来る方へ構えている。
青峰は手を下げず、その列の右端へ動いた。
「上、寄越せ」
氷織が顔を上げた。
足元への道は閉じられている。だが青峰が右へ動いた分、DFの肩の前へ落とせる空間ができていた。追う相手が背後についていても、ボールを先に触れる側は青峰だった。
氷織は右足を置き、左足を振った。
今度のパスは浮いていた。
胸より高い。青峰は半身になり、右肩の前へ落ちてくるボールを見た。左側からDFが肩を当ててくる。
青峰は跳んだ。
相手の肩が下から当たり、身体が右へ傾いた。
着地して立て直せば、奥にいるDFが前を塞ぐ。ボールを止めても同じだ。
青峰は空中で腰をひねった。
身体の右側へ上げた足で、落ちてきたボールを横から叩く。
シュートがゴールへ飛んだ。
まだ、青峰の足は地面についていない。
キーパーが遠い側へ跳ぶ。その手を越え、上のネットが大きく揺れた。
二対二。
青峰は左足で着き、続けて右足を踏んだ。前へ一歩流れた身体を止め、ゴールを見る。
青峰はすぐに雪宮を見た。
肩を当てたDFが、同じ場所へ着地する。
「あれで、撃つのかよ」
「着くまで待つわけねえだろ」
相手は、着地した後を止めるつもりだった。青峰は、その前に終わらせた。
氷織が少し離れたところで手を上げる。青峰はその手より先に、中央へ運ばれるボールへ目を戻した。
中央へ戻る途中、雪宮が来た。
「二点ずつだね」
「まだ来んだろ」
「もちろん」
雪宮の息も、最初より上がっていた。
前半は二対二で終わった。
*
ベンチで水を飲んでいると、左DFが中央DFへ言った。
「後半、俺が雪宮につく。逆へ動いても、そのまま追う」
「左、空くぞ」
「あいつがいない側は、中盤に少し下がってもらう。右へ来たら、右のお前は中央寄りにいてくれ」
右DFが頷いた。
担当を場所で渡し合うと、受ける瞬間に一人になる。その一人を抜かれ、助けに行く前に撃たれていた。
だったら、受ける前から離れずについていく。
青峰は話を聞きながら、向こうのベンチを見た。雪宮も仲間と話している。何を言っているかまでは聞こえなかった。
隣では、石狩が七星へクロスの位置を確かめていた。
「ゴールへ近づけるより、俺の前に落として」
「DFより手前でもいいんすね」
「俺が前へ入る」
七星が頷く。
青峰は立ち上がった。
「俺んとこ入れる前に、二回も三回も止めんな」
氷織が顔を上げる。
「最初に君が動いた方、閉じられてたやろ」
「二回目まで同じとこいねえだろうが」
声が少し強くなった。七星が二人を見る。
氷織は盤を指した。
「ここの人を一回動かしたい。僕が受ける時、青峰くんがその背中に入ったら、低い球も通せる」
青峰はそこを見た。
「さっさとやれよ」
「君も動くんやで」
「やってんだろ」
青峰は先にピッチへ戻った。
自分で撃つために受ける。それを味方と話すだけでも、こんなに時間が掛かる。雪宮のいる方へ目を向けると、相手ももう立っていた。
点を取った後に、まだ次を取る話をしている。
青峰は顔を逸らし、後半の始まる場所へ歩いた。
*
後半、最初に前へ出たのはVだった。
中央から雪宮のいる左へ送ろうとしたパスを、Zの守備役が途中で止める。こぼれたボールへ氷織が入り、一触で右へ出した。
七星が受ける。
青峰は中央から、二人のDFの間へ走った。相手の左DFもそちらへ少し寄る。ボールを持った七星には、前へ進む余地があった。
「中!」
青峰が呼んだ。
七星は中央を見た。青峰に二人、奥へ三人目。通せる線がないわけではなかった。だが逆のポストには、石狩がDFの前へ出ようとしていた。
七星は前半に言われた場所へ、クロスを上げた。
ゴールに近すぎない、石狩が前へ出て跳べる場所。
石狩はDFの背中で待たず、その前へ走り込んだ。
DFも跳ぶ。
石狩はもっと高いところで頭を前へ振った。ボールがキーパーの手前で跳ね、下ろした手の外を抜ける。
三対二。
青峰は近いポストで足を止めた。
自分を見ていたDFも、ゴールの中を振り返っていた。石狩の前へ出れば青峰が空く。そのまま残った結果、逆側で石狩に先に跳ばれた。
石狩が着地して、七星へ手を上げた。
「次も、今のとこ」
「はい!」
青峰は二人の横を通った。
「俺の方も見とけよ」
「見てたっす。石狩さんが先に入れそうだったんで」
七星は言い切った。自分が誰へ出したかを、青峰の機嫌に合わせて言い直すつもりはなかったらしい。
青峰は鼻を鳴らし、中央へ戻った。
勝ち越した。だが、次の一点まで他人へ譲る理由にはならない。
*
雪宮は左へ動いた。
Zの左DFだった選手が、ついてくる。
右へ渡れば、そこまで来た。前半のように、誰がつくかを確かめる隙間がない。
雪宮は一度中央へ寄り、味方の位置を見た。
Zは守備の位置を動かしている。雪宮を追う一人が外へ行っても、その後ろには別のDFが残る。七星も、中央の走者を見ながら戻っていた。
受ける場所を変えるだけでは、最初の一人は消えなかった。
雪宮は左へ出て、パスを呼んだ。
ボールを受け、正面のDFを見る。
相手は飛び込まない。
外へ行けばついてくる。中へ入れば、中央の味方の方へ追い込める。雪宮が先に方向を決めるのを待っていた。
雪宮は、ゆっくり外へボールを動かした。
相手も横へずれる。
もう一度、外へ。
急に切り返すとは思っているはずだ。だからこそ、すぐには戻さなかった。
もう一歩、そのまま進む。
DFが外側の足へ体重を掛けた。
雪宮はそこで、ボールを内側へ切り返した。
相手は動きを見た。それでも、踏んだ足から体重を戻すのに時間が要る。
その横を、雪宮が抜ける。
中央のDFが出てくる前に、右足を振った。
シュートはキーパーの頭より高いところへ飛んだ。キーパーが上へ伸びる。その手前でボールが沈み、指先の下を抜けてゴールへ入った。
雪宮のジャイロシュートだった。Zのキーパーは着地してから、自分の手とゴールを見比べた。最初に見えた高さへ手を出したのに、ボールはそこへ来なかった。
三対三。
雪宮は一度拳を握った。
胸が大きく上下する。今の相手は、簡単には外へついてこなかった。三歩かけて、ようやく足を動かせた。
それでも抜いた。
味方が肩を叩く。
「追いついた!」
「次も出して。俺が行く」
雪宮は中央へ戻り始めた。
青峰が向こうから来る。
「お前、三点か」
青峰の目が、少し細くなっていた。
「まだ来るんだろ?」
雪宮は足を緩めた。
「次も俺が取る」
息は切れていたが、最後まで言った。
青峰は再開のボールを足元へ引き寄せた。
「四点目まで取れると思ってんじゃねえぞ」
雪宮は先へ走った。
次の一点を取れば、今度はこちらが前へ出る。
*
残り時間は、四分を切っていた。
青峰は中央で手を上げた。
VのDFがすぐに寄る。右へ動けば一人がついてきて、奥の二人も同じ方へ少しずつずれた。
氷織が受ける位置も、前半より後ろだった。
「くそ」
引き分けなら、Zは二位で通過する。
既に残れるからそれで構わない。そんなつもりで、ここへ立ってはいなかった。
青峰は、九という自分の得点数を見た時には、まだ雪宮の顔を知らなかった。今日だけで三つ取った。抜ける場所を選び直し、相手が変わっても同じように撃った。
その相手より、自分の点が一つ少ない。
それが気に食わなかった。
次のボールは自分が取る。青峰はDFの肩へ寄り、その前へ入る機会を待った。
氷織から左へ出たパスを、Vの中盤が触った。
雪宮が走り出す。
青峰はすぐに下がった。
二歩、三歩。ボールを奪った選手が雪宮へ出そうとする、その前へ入る。
相手の足が止まった。
横にもZの選手がいる。Vは一度、後ろへ戻した。
青峰はそこまで追わず、中央に残った。左の味方が後ろの受け手へ詰める。慌てて中央へ出たボールを、Zの中央DFが奪った。
氷織へ渡る。
青峰は前へ走った。
相手も戻る。中央のDFは二人。一人は青峰について走り、もう一人はその数メートル奥でゴールを守ろうとしていた。
氷織は右へ出した。
七星が受ける。Vの中盤が横から寄る。その一人が動いた瞬間、青峰は中央のDFから離れ、右斜め前へ走った。
「七星!」
七星が顔を上げた。今度はクロスを待たない。自分へ来る相手の内側を通して、青峰の進む先へ蹴った。
青峰が右足で受ける。
ゴールまで十八メートル。中央より右。正面に一人、左後ろからもう一人。追ってきた中盤の選手も右側から戻る。
青峰は、正面の相手へ向かった。
相手は下がった。二対二の時と同じように身体を寄せるだけでは撃たれる。だからボールへ足を出す距離を残し、奥の味方と横に並ぼうとしていた。
青峰は速度を上げた。
右へ出る。
正面のDFがついてきた瞬間、足裏でボールを止めた。肩だけは前へ残し、左足で内へ押し直す。
DFの身体が右へ流れた。
その背後へ青峰が入る。左から戻ってきた二人目が、足を伸ばした。
青峰はボールを少し浮かせた。
膝まで上げる必要はない。芝へ滑ってきた靴の上を、ボール一個分だけ越せばいい。その先へ自分の足を置き、着いた一歩で前へ押し出す。
二人目の背中も後ろへ消えた。
キーパーがゴールを離れる。
青峰は右脚を引いた。その前へ、もう一本の足が来た。
雪宮だった。
相手ゴールへ走っていたところから、中央を戻ってきていた。青峰が二人目を越した後へ滑り込み、右足で撃つ道を閉じた。
青峰の右足が、振りかけた途中で止まった。
ボールの横へ下ろす。
雪宮の足は、青峰が蹴るはずだった場所へ伸びている。ボールをその場に残していれば、すぐに触られる。
青峰は下ろした右足の裏で、ボールを左へ引いた。
身体も同じ方へ倒れる。
キーパーが両手を広げていた。前へ出てきた勢いを使い、青峰の足元へ飛び込む。正面から左足を振れば、その手に当たる距離だった。
青峰は左脚を横から回した。
足の内側で強く蹴るのではなく、外側でボールの下を弾く。振り幅は、シューズ一足分もなかった。
ボールが、キーパーの肩の上へ浮いた。
伸ばした指の先を越え、ゴールへ落ちる。
四対三。
青峰は左足を着き、倒れかけた身体を前への一歩で起こした。
ネットの底でボールが跳ねた。
雪宮が片膝をついたまま、ゴールを見ていた。最後の右足へ届けば、シュートを止められる。そこまでは実際に間に合ったのだ。
青峰は、その足から顔へ視線を上げた。
「見えたかよ」
雪宮が顔を向ける。
「……最後の方はね」
「最初から来いよ。次は」
雪宮が立ち上がろうとして、すぐにゴールを振り返った。青峰の口元が、この試合で初めてはっきりと緩んだ。
右で終わると思った一球を、左へ変えた。ゴールへ向かっていた雪宮が、こちらまで戻ってきた。三点を取った相手が、自分の四点目のためだけではなく、青峰の足元を取りに来た。
その上から入れた。
雪宮が戻ってこなければ、右で撃って終わっていた。あいつが来たから、もう一度かわし、その上から入れた。
今度も来るなら、また抜く。さっきと違う方から来ても、最後には自分が入れる。青峰は、立ち上がった雪宮からしばらく目を離せなかった。
今のボールの浮き方は、明日になっても覚えていると思った。
七星が走ってきた。
「今の、右で撃つんだと思ってました」
「来ただろ、足」
「見て変えたんすか」
青峰は返事をせず、中央へ向かった。まだ時間が残っている。入れた一球の話をするより、次の相手の攻撃を止める方が先だった。
氷織が七星の隣へ来た。
「右足を止めさせても、まだ左で撃てる。キーパーが出たら、その上を越す。あれを全部、蹴る直前に変えてるんや」
七星は、雪宮が滑り込んだ場所を見た。普通なら、そこまで戻れば一度はシュートを止められる。青峰はボールを引いた瞬間に、もう次の撃ち方を選んでいた。
雪宮が立ち上がった。
青峰を見たまま、ゴールの中のボールを拾う。
試合はまだ終わっていなかった。
*
Vはすぐに雪宮へ渡そうとした。
ついていたDFが先に足を出し、ボールをタッチラインへ逃がす。スローインからもう一度入ったボールには、右DFも横から寄った。
雪宮は止まらなかった。
一度触られたボールを追い、中央へ動かす。その先へ、Zの中央DFが出てきた。
大きく蹴り出される。
青峰は落ちる場所へ下がった。
Vの中盤と競り、相手の肩の外から先に足を出す。ボールを身体の前へ落とし、そのまま持った。
相手が寄る。
中央へ突っ込めば、もう一人いる。
青峰はそちらへ運んだ。近い方が足を出す。外へボールをかわし、次の一人へ向かう。
「まだ行くのかよ!」
追ってくる声がした。
青峰は止まらなかった。横へ開いた七星の声も聞こえたが、そこへ出すために持っているわけではない。次を抜けば、自分が撃てる。
二人目の脇へ出たところで、終了の音が鳴った。
青峰はもう一歩進み、ボールを止めた。目の前のDFが肩から力を抜く。
「ちっ」
四対三の数字が、動かなくなった。
*
青峰は両手を腰へ当てた。
息がすぐには戻らない。額の汗を手の甲で払うと、雪宮がこちらへ来た。
相手も息を切らしていた。
「四つ目、間に合わなかった」
雪宮が言う。
「取らせねえよ」
青峰は答えた。
雪宮が少し笑う。
「次は先に、君を止める」
「来いよ」
雪宮は手を上げかけたが、青峰は先に歩き出した。
「負けた後に言うこと、覚えとけよ」
「覚えてる。君が忘れてもね」
青峰は一度だけ振り返った。雪宮は視線を外さなかった。
三点ずつ取った。
試合は四対三で勝った。
雪宮の三点を見ていたから、自分の三点で満足する気にはならなかった。それでも、最後の一点を入れた時の感触は残っていた。
もう一度、あの続きをやりたかった。
画面に最終順位が出た。
一位、チームZ。四勝、勝点十二。十六得点、八失点。
二位、チームV。三勝一敗、勝点九。十五得点、八失点。
Zの得点者は、青峰十二、石狩二、七星一、氷織一。
雪宮の欄には、八とあった。
下には、敗退したチームからの個人通過者が並んでいた。黒名蘭世、五得点。清羅刃、四得点。Xのフォワード、三得点。
最後の写真は、初戦で一点を返し、すぐにボールを拾って走った男だった。
青峰はその三人の顔を見た。
あの試合で負けても、まだ先へ来る。
七星が横からボトルを差し出した。
「全勝っすね」
「見りゃ分かる」
「言いたくなるんすよ。こういうのは」
青峰はボトルを受け取り、順位表から目を離した。
全勝。十二点。
外でやっていた試合と、勝ったという結果は同じだった。
だが、雪宮が伸ばした足を避けた時のことは残っている。黒名が次も出す場所を見ると言った声も、清羅が高いところへ足を出すと言った顔も。
それで足りたと思う気はなかった。
もう少し先へ行けば、あれより速い足が来るかもしれない。
入る前は、三百人も呼べば一人くらいはいるかもしれない、と思った。それでまた外れたら、絵心に文句を言って帰るつもりだった。
今は、雪宮との次を誰かに取られる方が腹立たしい。青峰を抜こうとしない黒名にも、自分の球を取りに来た清羅にも、もう一度勝つつもりがある。氷織は味方のまま、こちらから一本を奪っていった。
雪宮は三点取っても終わらなかった。氷織は青峰へ出せる場所から、自分で撃った。ここで勝って残れば、次も誰かが取り返しにくるかもしれない。集めただけの三百人だったはずが、いまは会って試したい顔が浮かんだ。
青峰は空になったボトルを七星へ返した。次の案内が出るまで休んでいろと言われても、もう部屋へ戻る気になれなかった。
*
着替えて指定された通路へ進むと、一人ずつ入る扉が並んでいた。
画面に絵心が映る。
「一次選考は終了。次は、一人で百点を取れ」
七星が顔を上げた。
供給されるボールを処理し、目の前のゴールへ入れる。仲間の得点は足されない。各自の扉から入って、中の指示に従う。
説明が終わると、それぞれの入口が示された。
石狩が自分の扉へ向かう。氷織は青峰の二つ向こうにいた。七星が近くを通り、一度立ち止まる。
「じゃあ、行ってくるっす」
「俺も行くんだよ」
「そっすね」
七星は笑い、自分の扉へ進んだ。
青峰も認証を済ませた。
扉が開く。
中にはゴールがあった。
青峰はバッグを入口の脇へ置き、前へ歩いた。壁にはいくつもの供給口がある。まだボールは出てきていない。
自分の足で、百点。
青峰はゴールを見た。
背後で、扉が閉まった。