魔法少女ノ結婚式
蓮見レイアは氷上メルルに連れられ、牢屋敷のある一室に連れられていた。
その部屋には既に二人の少女が『タキシード』の服を着てくつろいでいた。
「チッ……オメーもこっちかよ蓮見」
「おや、新郎役が三人もいるのかい?アリサくんに、シェリーくんまで?」
「えっと、あはは。こう、シュッとした服はなんだか落ち着きませんね?」
「いやいや!シェリーくん!とても似合っているとも!特に最近の探偵やスパイではスーツは基本とも言えるからね」
「今回はタキシードですけど、確かに今風の探偵はスーツも着こなしていますね!」
「橘はそれでいいのかよ……」
「アリサちゃんはドレスの方が着たかったですか?」
「ア゙ァ゙ン゙?」
「ひょわっ!いつもより怒気が凄いです!!」
ガチャリ
「おや……?ヒロくんじゃあないか!君の結婚式と呼ばれて来たのに気がつけば私もタキシードになっていてね!(ヒロが無視して横を通り過ぎていく)」
「なぜ新郎役が四人も?ユキ、どういう事だ?」
困惑した表情を浮かべながらもさっさと着替えるヒロはネクタイピンのように着いている万年筆に話しかける。
「あ、そこにユキさんがいるんですか?お久しぶりでーす!シェリーちゃんですよー!」
「これ計画したのが月代なんだからそりゃ知ってるだろうよ」
「え〜アリサちゃん冷たーい、やっぱりドレスの方が良かったんですか?」
「よぉし、ぶっ殺す、橘そこに直れ」
「ひゃ、ひゃー!ま、待ってください!そこは、そこはハンナさんを信じてください!!」
「あ?なんでここで遠野が出てくるんだよ」
「私、ハンナさんにドレスが着たかった〜って言ってみたら『じゃあ着させてあげますわ』って言ってたんです!もしかしたらお色直しの時にドレスが用意されてるのかも?って思ってるんですよ〜」
「…………ふん」
アリサは顔を赤らめながらそっぽを向いた
他の三人は同じことを思ったようだった。
ゴーン……ゴーン……
あの時に何度も聞いた鐘の音が聞こえる。
同時に四人の部屋の扉が開いた。
アリサ、シェリー、レイア、ヒロ
それぞれ表情は違うが、同様に緊張しているのが伺える。
「お待ちしてました、さて新郎さん。おじさんが案内しちゃうぞ〜」
「ミリアくん!君のスーツ姿は想像以上だね!」
「おわ、レイアちゃんってこんなにイケメンだったっけ……」
「ふふ、私は前から変わってないさ、つまり前も今も変わらず、キミの瞳を奪ってしまったようだね?」
「お、おぉぉ、おじさんじゃなかったら耐えれなかったよ」
「佐伯のそのメンタルはどうなってんだ?」
◇
「ふふ、おじさんがバージンロードでお見送りできるなんてねぇ、感慨深いよ」
「……ミリアがいいならいいんだが、少女の本懐なら花嫁では?」
「えー?うーん、いや、やっぱりおじさんはこっち側がいいな………少なくともヒロちゃんとシェリーちゃんと進むなら、うん、このポジションは譲れないよ」
ヒロとシェリーはミリアに見送られ、メルルの待つ祭壇へと立った。
ここに来て多少の冷静さを取り戻したヒロは周りを見渡す。
祭壇はあの、私たちが裁判を繰り広げた中央に壁を用意して作られておりかなり広い。
先程からかなり珍しく、ガチガチに緊張しているシェリーは黙りこくっているが、二組で愛の誓いを行っても余裕がある。
『愛の、誓い……私が?エマと?』
顔が赤くなるのを感じたが、あれもこれもネクタイピン見たくしているユキの仕業と考えると冷静さを保つことができた。
なんだかニヤニヤしている気もするし、どうにかやり返すことはできないものか……
メルルの姿をしたナノカの姉も一回目は心底驚いたが三回目となれば予測できていた。
まぁ神父役にはうってつけだな。
そして私たちに拍手を送ってくれている
ミリア、ノア、アンアン、ココ、ナノカ
加えて牢屋敷で療養している先輩魔法使い達
マーゴがいないのは新婦側ということだろうか
声が聞こえた気がしたんだが……もしやこの管楽器みたいな音ってマーゴの声の録音じゃないか?
話では聞いていたし、ユキの企画の度にここに来ていたため見かけることはあったが、彼女達もこのような催しに参加できるくらいには回復しているらしい。
ざっと見回したところで、扉が開く
視界の端でビクリと反応したシェリーが見えた、そして固まって、震えが止まり、笑顔になったのも。
私の視界もまるでレイアの魔法を使われたように釘付けとなっていた。
「『桜羽……エマ……』」
彼女はウエディングドレスを来ていた
彼女の髪と似たように、白を基調としながら、その裾は淡いピンクが広がっている。
エマのためのドレス。その言葉がこれ以上ないくらいに当てはまった。
もはや神聖さすら感じてしまう姿に思わず目を逸らす。そこでエスコートしていたマーゴとハンナにも気がついた。
ハンナのドレスは『お嬢様』という表現が合っていた。牢屋敷の頃のあの服装を豪華に、艶やかに、それでいてウエディングドレスとして相応しく
この場にいる少女達はみな思ったことだろう
「あの服を私も着たい」と
私も一瞬想像したが、きっと服に着られてしまうだろう。
レース越しにでもわかる、ハンナのあの振る舞い、あれがあって完成するあのドレスは
正しくハンナお嬢様のためのドレスだ。
そんな少女らに目を奪われているうちに、私、シェリー、それぞれの前に新婦が並んだ
少し拗ねているのか頬をうっすら膨らませ、私の万年筆を見ているエマ
可愛らしい仕草で、気を引こうとしているのはあまりにわかりやすい
「エマ」
私が声をかけるとゆっくりと顔をあげる
レース越しにでも、その顔が赤くなったのがわかった。
「ヒロ……ちゃん」
メルルの問いかけが始まっているが私たちの視線は互いしか見えていない
問いかけの後、エマのレースを上げて、誓いの……
……ーー誓いますか?」
メルルの新郎への問いかけが終わった
「はいーー」
「いいえ!」
「…えっ!?シェリーさん!?」
隣からやかましい声が聞こえてきた
「私!橘シェリーは!死んでも!ハンナさんを愛すると誓います!!絶対に!!」
そう宣言するとハンナを力いっぱいに抱きしめるシェリー
「………もう、シェリーさんったら」
ハンナは抱き上げられており、見ようによっては抱えあげられている。
メルルは無視して新婦への問いかけを進めており、ハンナもシェリーも幸せそうなので止める気はない。
先程がっしりと抱きしめられていたが、痛くはなかったのだろうかと疑問ではあるが、それは野暮というものだろう。
「……ーー誓いますか?」
「うん、誓うょ……ー」
「ちょっとまったぁぁあ!!!」「ちょっとまてやー!!」
エマの誓いが言い終わるその時、扉が力強く開け放たれ、聞き馴染みのある声の乱入者が現れた
……心做しか万年筆が震えている気がする
「二階堂、悪いが桜羽はウチが貰う」
「ふふっ、ではエマくんには悪いがヒロくんは私が貰うよ!」
アリサとレイアだ
「おいおい、アリサはともかくレイアは」
ドレスじゃないじゃないか
そう言おうとした瞬間、しゅるりと金の糸が宙を舞い
レイアの衣装が変わった
タキシードに折りたたまれていた、隠れていたドレス部分が姿を表す。
スタイリッシュさも感じさせるそのドレスにフリフリを感じさせる部分は少ない、しかし細い部分から見えるレイアのスタイルがそのドレスを完成させていた。
…………レイアだからこそ似合うドレス
いや、レイアしか着こなせないドレスだ
正直、見惚れた。あれは誰も彼もを魅了するだろう。
現に目の前のエマも視線を奪われている。
『……エマっ』
「では、誓いのキスを」
メルルがそう告げた
この状況でか!?とメルルを見ると「テヘっ」とイタズラに成功した顔をしている。
「きききっ、キス!?」
エマが錯乱している
誰かが言ったか錯乱羽…
「うむっ!?」
ぐるぐる目となったエマにキスされた
「「わっ」」
「あっ!?二階堂テメー!」
「ヒロくん!?そんなっ!!」
観客が色めきアリサとレイアが声をあげる
『なんで私が悪いみたいに!!』
「あはは!エマさん!ヒロさん!私たちと一緒に行きますか!?」
バージンロードの向こう、いつの間にかドレス姿になっていたシェリーが出入口を開けていた
ミリアとマーゴも観客たちの出入口を塞ぎ、飛び出しが起きないようにしている。
初めからそういう予定だったのだろう、アンアンがドヤ顔をしているのも見えているしな。
「エマ!私と来い!」
「きゃんっ!」
エマをお姫様抱っこで抱え、走り始める
「ふふ、とんだ結婚式だな」
「ヒロちゃん……あはは!そうだね!」
ハンナ達に追いつき、私達は共に牢屋敷から抜け出した。
(fin)
◇◇◇(蛇足)
ちょっと待って!(カットイン)
「ヒロちゃんのドレス姿を見てないよ!」
セーフハウスの前まで走ったところでハンナに案内され私達はサラマンダーの間へ入った。
扉の音が向こうで聞こえたため、ノームの間にシェリーとハンナが入ったのだろう。
サラマンダーの間に残された紙によると、宴会場準備までここで待っててね、とのことだ。
お色直し用の衣装も準備してあるのであの展開から全員それぞれの場所が用意されているのだろう。
本当に、本当に準備がいいな。
エマも入れ知恵されていたのだろう「葉っぱがついてるよヒロちゃん」なんていいながらタキシードの綻びにも見える黒い玉を引っ張ろうと狙っている。
「エマ、正しい話をしよう」(カットイン)
「ふぇ?」
葉っぱがついているだなんて嘘が下手だ
タキシードの圧縮された部分は着る時にお見通しだったし、エマを汚さないように細心の注意を払って運んだんだ。葉っぱなんてつくはずがない。
この綻びか?
私は胸元近くの綻びを手で探り当てる
エマの視線からしても当たりだろう
それを、引き抜く
「あっ、それは違うほ……」
『え?』
引き抜いたのは爪楊枝くらいの小さな棒だった
それはあの時手にした火かき棒のようで……
私の意識は鮮烈な赤で染められた。
◇◇男装したヒロ、純白のドレスを着たエマ、人気の無いセーフハウス、最も苛烈な記憶を思い出させるトリガー、何も起きないはずもなく◇◇
「す、凄かった、ヒロちゃん」
「私は自責の念で潰れそうだ」
「潰れそうならボクが一緒に支えてあげるよ!」
もう一回潰す気か?
タキシードからドレスチェンジするギミックをあんなに自信満々に使うなんて、次こそは正解を選べたが……
「まぁいい、着替えて宴会場に向かおう」
「あ」
エマが言いずらそうに視線を外す。
「……こんなに散らかっていたか?」
なんというか、地震でもあったかのような
私達は断じて暴れて無い
私もエマも用意されていたフォーマルドレスに着替えたところで、異変に気がつく。
窓の景色が変わっていた。
晴れ晴れとした空に虹がかかっていたのだ
私は慌てて外に出る。
するとそこはもう、宴会場だった
「お、二階堂やっと来たか
遠野が根性見せてたからな、さっさと食おーぜ」
こちらもフォーマルドレスに身を包んだアリサが手に皿を持ちながら歩いていた。
そんなアリサの声に気がついたのか、私の仲間達がのんびりと集まって来た
「えっとね、ハンナちゃんとシェリーちゃんがゲストハウスごと動かしてるのが、ボクは見えたから……」
むしろなんで私は気が付かなかったのか、そういえば一度もエマから目を離さなかったような……
「ボ、ボクにむ、夢中だったのかな、なんて」
「桜羽……エマ……!」
私は君のことが未来永劫……ーー!
◇◇◇
『大魔女ユキよ、ナノカの幻視も使って文字に起こしたぞ、これで満足か?』
「ふふふ、さすが文豪を自称するだけはありますね、濃密なエマヒロ、ご馳走様でした。よく出来ましたね。」
『満足したなら構わないが、わがはいとしては記録書記みたいな物書きじゃなくてもっと熱い展開をだな……』
「次は何をしようかしら……メルル?メルルはいますか?」
「は、はいっ……ユキ、さんっ」
「ふふ、エマとヒロがどうやったら水着になるか一緒に考えてください」
「はい!大魔女様のためならいくらでも!!……あっ!」
「ふふふ、惜しかったですね。大丈夫ですよ、時間は沢山ありますから。」
カラフルな牢屋敷の庭で白い少女達の明るい会話がいつまでも続くのだった。
皆さんの推しはどなたでしょうか?
筆者はメルルです。裁判を手伝ってくれるメルルを好きになり、一周目ラストで嫌いになり、最後のヒロに儀礼剣持ってこいとパシられたり、長年の願いを叶えたりしたところとかで好きになった。自分にとっては本当に珍しい形の推しです。
なのでトップバッターは大魔女に振り回されるメルルにしました。
幽霊設定、便利ですね。
これから色々と漁ってきますが、またインスピレーション沸きましたら筆をとるかもしれません。
便利な大魔女設定で書けたので広げ放題ですからね!三次小節とか気にせず皆さんも使い倒して書いてもいいですよ!書け!よませろ!この設定、所詮2次ssだから許可とか必要ないし!
皆さんの推しはどなたでしょうか、コメントお待ちしております。
出来ればどのシーンで好きになった。とかも。求むインスピレーション。
長文送られてきたら「お前は小説家になれ」と返しますね。