SOLの名のもとに   作:G大佐

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今回からオリジナル生徒(転生者)が、名前だけでも複数出ます。


生徒達の忠誠

 かつてブラックマーケットと呼ばれた地は、1人の生徒が率いる集団によって制圧された。治安維持組織であるマーケットガードは敗北、その集団の傘下に下ることになる。無論、その情報は即座に区域内を駆け巡り、小規模ではあるものの複数の犯罪グループや不良集団が、混乱の最中を狙って活動しようとした。

 しかし、それも瞬く間に制圧された。何故なら、傘下に下った元マーケットガードは、ユウの采配によって再び治安維持の任に就いたからである。新名「アント隊」……蟻の中でも獰猛な、軍隊アリになぞらえて再編成された。しかも、ユウをボスと慕う1人の生徒が徹底的に鍛え上げた、謂わば強化版マーケットガードである。

 ブラックマーケット中央区画に存在するタワー。通称セントラルタワー。その執務室でユウは報告を受けていた。

 

「アント隊が再び不良集団を制圧したぜ、ボス。説得を試みたが反抗的な奴らが多く、匿名でヴァルキューレへ送ったそうだ」

「ご苦労だ、『マンティス』。君のゲリラ戦法の指導が活かされた結果だ」

「キヒャヒャッ! 武器の扱い方は身体に染み付いてんだ。後は戦法を覚えちまえば化ける連中だったぜ、蟻ん子(アント隊)の奴ら」

 

 トップであるユウにタメ口ながらも、そこに嘲りは一切ない。金髪とギザ歯が特徴的な、マンティスと呼ばれた生徒はこれまた特徴的な笑い声を上げる。そこへ執務室の扉をノックする音が聞こえた。

 

「失礼します。区画整備の報告です」

「『カンディル』か。入れ」

 

 入室してきたのは、目を閉じてるのかと疑うほどの糸目で銀髪の生徒。ワンピースやドレスを纏えば薄幸美人に見えるが、彼女がいま身に着けているのはオリーブドラブのミリタリージャケットを改造したものである。ピラニア以上に恐れられる魚の名を冠する生徒の喋り方は、名前とは正反対の丁寧な物であった。

 

「今回の戦闘で倒壊した建物は、一般生徒達が建て直して使用しています。現状の不満は聞かれていません。旧ブラックマーケット時代から商いをしていた者たちも、退去を警戒されていただけに、マーケットの敷地内で営業できる事に対して好意的です。区画整備の関係上、店の場所を移されるという点に関しては批判的でしたが」

「構わん。その様な批判が来るのは想定内だ。暴動を起こすほどの不満ではあるまい?」

「はい」

 

 ユウは重厚な椅子から立ち上がると、窓からその街並みを眺める。

 

「他の者達はどうしている」

「『エレファント』の奴は、傭兵に立候補した生徒達を鍛えてる。『アウル』は開発局に閉じ籠もってるし、『セイルフィッシュ』は早速他の自治区に向かって情報収集してる。『ホーク』は自慢の視力を活用して、狙撃ポイントで要所要所を監視してるぜ』

 

 マンティスがつらつらと述べた生き物達の名前。彼女らはみな、ユウに忠誠を誓う生徒達である。それもただの生徒ではない。

 

「……ボス。やはり前(・)世(・)と同じように、傭兵組織を?」

 

 カンディルが尋ねる。振り返ったユウは苦笑している。

 

「前世とは少し違うな。この学園都市キヴォトスにおいて、学校とは『国』だ。此処に集まっている者達は皆、学籍(国籍)を失った生徒達。故に他の自治区で何かしら活動やサービスを受けようにも受けられず、路頭に迷った挙句に此処へ流れ着く」

 

 それは我々も同じだ、とユウは続けた。

 

「……だからこそ私は、この地に確固たる足場を築く。その目的の達成条件として、連邦生徒会に正式に学園として認められなければならない。まぁ我々の前世は兵士だ。銃器で戦うことしか出来ない以上、傭兵事業を扱う学園として立ち上げるつもりだよ」

 

 ユウは今なお苦笑したままだ。

 

「元スケバン達は私のことを『救世主』だのと呼んでいるが、私はそう呼ばれる為に手を出したのではない。私の戦力として、私の目標達成の為に力を貸してもらっているだけだ。そして力を貸してもらっている以上あらゆる手を尽くし、その約束を果たすのが私の役目だと思っている」

 

 彼女の苦笑は、自分は救世主ではないと自虐する笑みだ。だがマンティスとカンディルが彼女に向ける目は違う。前世と変わらぬ、忠誠だ。

 2人の脳裏に浮かぶは、キヴォトスに転生してからユウと再会した時の事。

 

 

『どうやら我々は、地獄へ回り道をしなけれならないらしい』

 

『諸君。前世にて私の為に命を散らした戦友よ』

 

『今しばし、私の歩みに付き合ってくれないだろうか』

 

 

「(キヒャヒャッ! ボスが救世主かどうか決めるのはアンタじゃねえ。アタシ等だぜ)」

「(前世のあなたは、失望の底にいた我々をすくい上げてくださった。あなたがどう思おうとも、私たちからすれば充分に救世主なんです)」

 

 その様な思いを胸に秘め、持ち場に戻れというユウの指示に、2人は敬礼で返すのだった。

 

 

 

 

 

「先生、私です。七神リンです。少しお時間よろしいでしょうか。……ありがとうございます。実は、ある学園の事を調べてもらいたいのです。いえ、学園……は正確ではないかもしれません。学園に『なるかもしれない』場所なのです。その名前は――」

 

 

――SOL(エスオーエル)学園

 

 

 

 




〜SOL学園設定〜
特徴∶傭兵事業に積極的に取り組んでいる。
生徒達∶元ブラックマーケットである為に気性の荒い者が多いが、転生者達に徹底的に指導された。現在は戦闘で破壊された建物の復旧や、傭兵への立候補、元マーケットガード「アント隊」への入隊等で活動している者が多い。

施設等
・セントラルタワー
 ユウの命令は主に此処から発信される。警備が厚く、ネットワークセキュリティも強固。

・商業エリア
 言うなれば購買部の拡大版。点在していた店を1つの区画にまとめた状態となっている、学園の物流・経済の中枢を担っている。某ペロロ好きなトリニティ生の姿も確認されている。

・演習エリア
 傭兵やアント隊の訓練場所。転生者であるエレファント、マンティス、カンディル、名前のみ登場したホークが主な教官。実戦さながらの緊張感で訓練は実施される。

・開発局
 名前のみ登場したアウルが局長となっている技術部門。武器、レーション等の携行食料、戦車やヘリなどの大型兵器の発明を行なっている。
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