SOL学園設立予定地へとやって来た、シャーレの先生とヒナ。かつてのブラックマーケットとは全く異なる光景に唖然としていると、案内人のホークと出会った。今は彼女の運転するジープに乗り、セントラルタワーへと向かっている。
「……タワーに、私達のボスがいる」
“黒淵ユウって子だね”
「……そう。此処の子達が生き生きとしているのも、ボスのお陰」
ホークの声色には、ボス即ちユウへの信頼が感じ取れる。そこへヒナは純粋な疑問を口にした。
「マーケットガードを味方につけたと聞いたわ。どうやって?」
「……そこは無法地帯なりのやり方。最初はボスも説得していたけれど、頑なに拒否し続けた。だから周りの生徒も巻き込んで強行突破した。それで敗者は強者の側に着いた。……それだけ」
「(周りの生徒を、それも不良生徒を味方にするという事自体が、どれだけ難しい事か理解してるのかしら……?)」
“でも無理やり従わせられたら、マーケットガードの子達も嫌なんじゃない?”
「……そこからはボスの仕事。装備の質の向上とか、向こうが望む事と此方が要求する事を取引したって聞いている」
「その結果が、黒淵ユウの陣営に着く事って訳ね」
そう話している内に、敷地内の中央にそびえ立つビルタワーに到着した。先生とヒナがジープから降りると、ホークは言った。
「……さっき話したボスの事は、この学園が連邦生徒会に承認されて、初めてあの人の手柄になる。……失望させないで」
一瞬だけ見えた鋭い視線は、正確に先生を捉えていた。
元はスケバンだったであろう生徒が、タワーの受付カウンターにて先生の来訪をユウに伝えた。数分後、エレベーターから1人の生徒が降りてくる。
「ボスがお待ちです」
“ありがとう。ところで、君の名前は?”
「……ふふ。ホークの言った通り、純粋な方ですね。私のコードネームは『カンディル』。そう呼ばれ慣れてますので、先生方もそのようにお願いしますね」
ではこちらへ。そう言ったカンディルは2人に着いてくるように促すと、エレベーターに向かって歩き始めた。
そうしてエレベーターで上がり続けた3人は、重厚な扉の前に立っていた。カンディルがノックする。
「カンディルです。先生と、護衛の空崎ヒナをお連れしました」
『入れ』
執務室の中は、四字熟語で表すなら「質実剛健」と言える。重厚な椅子に腰掛けていたユウは先生とヒナの姿を見ると、ゆっくりと立ち上がった。
堂々としている。背筋はピンと真っ直ぐに、左目は2人を値踏みするように、しかし嘲る感情は含まずに捉えていた。室内に張り詰める緊張した空気の中、コツコツとユウの近付く足音だけが響く。そして不敵な笑みのまま、ユウは右手を差し出した。
「ようこそ、SOL学園設立予定地へ。歓迎しよう」
“うん、宜しくね”
先生はその右手を、握手という形で返した。
ソファに先生とヒナが並ぶように座り、それに対面するようにユウが座る。カンディルがコーヒーを淹れて、3人に提供する。コーヒーを一口飲んだユウは、本題に入った。
「さて。今回先生が来たのは、私が連邦生徒会に提出した承認申請書への返事……では無いな。大方、私の真意を聞くように生徒会の役員に頼まれたからだろう?」
“あはは。鋭いね”
「少し考えれば分かることだ。銃火器を持った無法者が突然統率され、組織化しているのだ。私ならば即座に警戒する」
再びコーヒーに口をつけるユウ。そしてカンディルに視線を向けて小さく頷いた。糸目なため傍から見るとよく分からないが、頷かれた本人は纏う空気がパァァと明るくなった。先生とヒナも、彼女の淹れたコーヒーに内心「美味しい」と思っていた。
だが、穏やかな空気も長く続かない。ヒナは口を開く。
「単刀直入に聞く。貴女は、学園を創って何をする気なの」
「何をする、か……」
空崎ヒナ。その名はゲヘナだけに限らず、外部でも知られている。その圧倒的な戦闘力、ヤンチャな気質の多いゲヘナ生を相手に容赦なく鎮圧する彼女の名は、畏怖が込められていた。
だがユウは、そんな彼女の射貫くような視線にすら不敵の笑みで返す。
「別にどうともしない」
「え……?」
「我々がゲヘナに、果ては連邦生徒会に牙を向けることを恐れている様だが、そんな事をして私に何のメリットがある?」
ユウは笑みを崩さずに立ち上がり、執務室の窓から街並みを見下ろす。
「……先生。君は確か、キヴォトスの外から来たと聞いている」
“よく知ってるね”
「私の配下には優秀な諜報員が居る、と言っておこう。……さて先生。君から見れば、銃撃戦が高頻度で起こるこのキヴォトスという世界は異質に見えるかもしれない」
ユウは振り返る。変わらず不敵な笑みのままだ。
「道路を戦車が走り、空は戦闘ヘリが飛ぶ……さながら戦争の最中だ。しかしだ。私の知る限り、このキヴォトスに於いて国家間、いや学園同士の大規模な戦争というものは過去の産物。銃撃戦などは、日常の中で起こる些細な喧騒として組み込まれているに過ぎない。……そう、今の世界は平和なのだ」
靴音を響かせてソファに戻るが、座ることはしない。自然とユウが2人を見下ろす形となった。
「しかしながら、平和な世においても光と影は存在する。……学籍を持ち生徒として生きていられる者と、社会で落ちぶれ不良となり路地裏で生きる者とで二分されている」
先生もヒナも、言葉を発せない。ユウの言葉が不思議なほどに耳に残る。
「SOL……正しい名は、
そう語り終えると、ユウはソファに座りコーヒーを飲んで一息吐いた。
「長く喋り過ぎたな。まぁ、この学園が正式な物と認可されれば、これからの生活が色々と楽になる。簡単に言えばそう言うことだ」
“不安という鎖……自由な生徒達……”
「(此処までハッキリとした物言いの人は初めてかもしれない。……だから数多の不良が、彼女の下についたのね)」
ヒナが彼女から感じ取ったのは、いわゆるカリスマと呼ばれる者。彼女は背筋を曲げず、常に堂々とした振る舞いで不敵な笑みを崩さない。生徒達が彼女の事をボスと呼び慕うのも分かる気がした。
先生とヒナが帰るその後ろ姿を、ユウは2人がタワーから出て行っても執務室の窓から見続けていた。背後に控えるカンディルが口を開く。
「連邦生徒会は承認するでしょうか」
「しないだろうな」
ユウは即答した。その視線は先生の後ろ姿を捉え続けている。
「連邦捜査部S.C.H.A.L.E……。その権限は凄まじいものがあるが、所詮は連邦生徒会の直轄組織。学園設立の決定権は、その役員共にある。そして彼が上から依頼されたのは、我々が連中の脅威になるかどうかの調査だけ。先生はせいぜい助言程度しか権限は無いだろう。良くて、仮認定するくらいだ。我々にはまだ実績が足りない」
ユウはニヤリと笑みを浮かべる。
「だがこれで良い。これで向こうに、『正式に手続きをして書面でやり取りする態度』を示すことが出来る。最初は半信半疑であっただろうが、彼の報告によってその警戒度を下げられるたろう。……さて、カンディル。広報担当が我々の傭兵事業をアピールしている筈だ。何か依頼は来ているか?」
「はい。早速、キヴォトスの三大校の1つから依頼が来ております。それも、トップ個人の名義です」
「ほう? 何処の誰だ?」
カンディルはタブレット端末を取り出すと、その依頼者の名前を読み上げた。
「ミレニアムサイエンススクール、セミナー代表の
プロット作成で一部AIを使ってると、作品のあらすじにて話しましたが、実を言いますと、もうだいぶプロットから逸れ始めてるんですよね。書きたい展開やユウに言わせたい台詞を書いていくと、どんどん逸れていくんです。