どうも、う〜☆です!久し振りの投稿+新しい作品なのでこの作品も面白く感じて頂けると嬉しいです!
朝日が部屋のカーテンを柔らかく透かし、静かな朝の訪れを知らせていた。
木漏れ日がフローリングの上に優しく広がり、空気中に漂う微細なホコリをキラキラと黄金色に輝かせる。
その温かな光の輪の中で、畳んだ布団の端っこに置かれた小さな小さなベッド――それは元々、大きなぬいぐるみ用のミニチュア寝具だったのだが――から、もぞもぞと可愛らしい丸い影が動き出した。
「ふあ〜…」
小さなあくびがひとつ。
身の丈わずか30センチほどしかないその小さな存在は、目をこすりながら体を伸ばした。
頭の上にぴんと立った、ふさふさとした金色の狐耳。その耳がぴくぴくと揺れる。
名前は「
金色の美しい髪を肩までなびかせ、先が黒くなった立派で大きなふんわりとした狐の尻尾をゆらゆらと振っている。
服装は、黒い袖口と和風の装飾が施された白い小さな着物ドレスのような衣装。
身の丈は小さくても、その姿はどこからどう見ても立派な狐娘であった。
狐ちゃんは喋ることができる言葉がほんの少ししかない。
『ふわ!』
『ふあ!』
『んぴ!』
――基本的には、この3つの言葉と表情、そして全身を使った身振り手振りや声のトーン、伸ばしで感情を表現する。
言葉は少なくても、その瞳には溢れんばかりの元気と好奇心が宿っていた。
小さな足をトコトコと鳴らしながら、狐ちゃんはリビングへと向かう。
そこには、この家で一緒に暮らしている優しいお姉さん、「雪乃さん」がいた。
雪乃さんは、流れるような美しい銀白の髪を後ろで緩く三つ編みにまとめ、柔らかな印象を与える紫と白を基調とした和装を身に纏っている。
包み込むような温かな雰囲気を醸し出し、その胸元は豊かな女性らしい優しさに満ちていた。
雪乃がローテーブルの前で温かいお茶を淹れている姿を見つけると、狐ちゃんは両手を高く突き上げて、精いっぱいの大きな声を張り上げた。
「んぴ〜〜!」
「おはよう、狐ちゃん。今日も元気に起きられたわね」
雪乃は優しく目を細め、腰を落として狐ちゃんと同じ目線になると、その小さな頭を撫でてあげた。
「ふわぁ……!」
嬉しそうに目を細め、尻尾をパタパタと振り乱す狐ちゃん。
二人の間には、まるで長年連れ添った家族のような温かい空気が流れていたが、実は二人が出会ってからはまだそれほど長い時間が経っていない。
二人の出会いは、少し風変わりで、そして少しだけ切ないものだった。
◇
それは、しとしとと冷たい雨が降り続く、ある秋の日の夕方のことだった。
雪乃は仕事を終え、買い出しの袋を手に抱えながら、自宅へ続く通りを歩いていた。
雨足は強く、道行く人々はみな傘を深く差し、足早に立ち去っていく。
そんな薄暗い街角の路地裏、捨てられた粗大ごみの脇に、ポツンとひとつの小さく破れた段ボール箱が置かれていた。
箱の側面には、大雑把に墨のような黒い文字で『きつね』と書かれている。
街では有名な物流・配送サービス会社である『キツネ急便』。
その配達に使われた古い使い古しの箱だった。
普通なら、ただのゴミとして通り過ぎてしまうような光景だった。
しかし、雪乃の足がふと止まった。
段ボールの隙間から、冷たい雨に濡れて煤けてしまった、小さな金色の耳が見えたからだ。
「……あら?」
雪乃が近寄って箱の中を覗き込むと、そこにはボロボロになった小さな狐娘が膝を抱えて丸まっていた。
服も顔も泥や埃で黒く汚れ、雨の冷たさにブルブルと体を震わせている。
長い配達の旅の途中で迷子になってしまったのか、それとも悲しい事故でここに置き去りにされてしまったのかは分からない。
ただ、その小さな体は限界を迎えており、今にも消えてしまいそうだった。
雪乃がそっと影を落とすと、箱の中の小さな狐娘はゆっくりと重い瞼を持ち上げた。
煤で汚れた顔の中で、かすかに光る紫色の瞳。
言葉を発する気力すら残っていないようで、小さな唇をかすかに動かし、かすれた声で呟いた。
「……ふあ……」
その声を聞いた瞬間、雪乃の胸はギュッと締め付けられるような愛おしさと切なさに満たされた。
理由なんてどうでもよかった。
このまま見過ごすことなんて、雪乃には絶対にできなかった。
「寒かったでしょう……もう大丈夫ですよ」
雪乃は買い出し袋を腕にかけ、濡れるのも構わずに自分の着物の袖でそっと箱を覆い、小さな狐娘を箱ごと優しく抱き上げた。
冷え切った段ボール箱越しに伝わる、かすかな体温と小さな鼓動。
雪乃はそれを愛おしむように抱きしめ、急ぎ足で自分の家へと向かったのだった。
◇
部屋に着くと、雪乃はすぐに暖かいお湯を張り、泥だらけだった小さな体を優しく洗い流してあげた。
お湯につかると、狐娘は「ふわ〜……」と気持ちよさそうに息を吐き、少しずつ緊張をほぐしていった。
綺麗に体を拭き、毛並みを整えてあげると、煤の下から現れたのは、息をのむほど美しい金色の髪とふわふわの毛並みだった。
温かいミルクとお揚げの乗ったうどんを少しずつ食べさせると、狐娘のお腹から「くぅ〜」と可愛らしい音が鳴り、美味しそうにほおばった。
お腹がいっぱいになると、猛烈な眠気が襲ってきたようで、狐娘は雪乃の膝の上で何度も舟を漕ぎ始めた。
「フフ、可愛い…名前はあるの?」
雪乃が尋ねると、小さな狐娘はウトウトとしながら、一生懸命に自分の胸を指さした。
「ふわぁ ……んぴ!」
そして、部屋にあったキツネ急便の段ボール箱――『きつね』と書かれた文字を指さす。
「『きつね』……? あなた、狐ちゃんなのね」
「んぴ!」
誇らしげに胸を張る姿を見て、雪乃は優しく微笑んだ。
「そう、今日からあなたは『狐ちゃん』よ。ここで一緒に暮らし進めましょうね」
雪乃がそう語りかけると、狐ちゃんは安心したように大きなあくびをし、雪乃の膝の上に顔をうずめてスースーと眠りについたのだった。
◇
――そんな運命的な出会いから、数か月。
かつて冷たい雨のなかで震えていた小さな狐娘は、今ではすっかりこの家のアイドルであり、元気いっぱいの太陽のような存在になっていた。
「はい、狐ちゃん。今日の朝のごはんは、大好きな美味しいおいなりさんよ」
雪乃がローテーブルの上に、小さなお皿に盛られた一口サイズのおいなりさんを並べる。
狐ちゃんの体格に合わせて雪乃が手作りした特製のおいなりさんだ。
それを見た狐ちゃんの目がキラキラと輝く。
「ふわ! ふわぁ!!」
バンザイをするように両手を高く上げ、ピョンピョンと跳ね回る狐ちゃん。
「ふふ、喉を詰まらせないようにゆっくり食べてね」
「んぴぃ〜!…むぐむぐ」
小さなお手手で丁寧においなりさんを持ち上げ、口いっぱいに頬張る。
甘いお揚げの味が口の中に広がると、感動のあまり狐ちゃんの大きな尻尾がぶんぶんと扇風機のように回転した。
その姿を見守りながら、雪乃は自分のお茶を一口すすり、心からの幸せ噛み締める。
話せる言葉はほんの少しだけで身長はたったの30cm。
けれど、この小さな家族がもたらしてくれる温もりと笑顔は、どんな大きな言葉よりも深く、雪乃の心を満たしてくれるのだった。
「ねえ、狐ちゃん。今日は天気がいいから、ご飯のあとでお庭に遊びに行きましょうか」
おいなりさんを綺麗に食べ終え、満足そうにお腹をさすっていた狐ちゃんは、その言葉を聞くと勢いよく立ち上がった。
「んぴっ! ふわぁっ!」
両手を広げて大賛成の意を示す狐ちゃん。
今日も小さな家の中で、雪乃の優しさとたくさんの狐ちゃんの「んぴ!」と言う声があふれる、あたたかな一日が始まろうとしていた。
久し振りの投稿なので前の作品の書き方を忘れてしまったので新しい作品になりますが…前作を読んでくれていた方やそうでない方もよろしくお願いします!