白髪赤目巨乳に腰ヘコ夜這いされながらも閉鎖空間から脱出するために推理する話 作:ぽぶきち
俺は起きた。
まず、見えたのは白い髪。
視界の右側にあった。
次に、肌。
視界の下にあった。肩だ。
俺は、誰かに全裸で抱きしめられていた。
「おい、」
あたりを観察する。
どこか無骨な部屋。
白い長髪の少女が、素っ裸で俺の上にうつ伏せで乗っている。
感触的に、俺も裸だ。
「起きろ。」
「ん、ぅ………………」
俺を肉敷布団にして安らかに眠りこけていたその少女は、俺の声で目を覚ました。
「あ────あなたは?」
「…………?」
そして、何もわからないといった様子で俺のことを見た。
美人、だと思う。
なんとなくそう思った。
「ひとまず起きろ。重い。」
「えっ……?
────あ、ぁあっ!? す、すいません!!」
少女が飛び起きる。
俺はやっと体を起こす。
ずっと同じ体勢だったためか体が少し痛い。
「質問が4つある。いいか?」
「…………は、はい……」
側に置いてあったらしい服を着た少女に、俺は問う。
「お前は誰だ」
「わかりません」
「ここはどこだ」
「……わかりません」
「……俺は、誰だ」
「……それも、わかりません」
「…………俺とお前は、なんで全裸だった」
「…………わかりません……」
四つを問うた。
すべて答えが不明だった。
どうなっている。
俺は、誰だ?
男だ。それはわかる。
若い。おそらくは17歳程度。
目の前の女も同年代ほどだ。
知識はある。
歴史の知識も。
浮かんでくる歴史の知識の途切れからすると、おそらくはいまは2000年代。
が、これまでの俺の来歴がわからない。
「お前も、今起きた?」
「はい」
「気づいたら、知らない男のうえに乗っていたと?」
「それは……信じてもらえないかもしれませんが、本当に心当たりがないんです」
彼女の言葉を信じるなら、
俺も、彼女も記憶喪失ということになる。
二人の人間が、同時に記憶喪失?
そのようなことが有り得るのだろうか?
しかし、彼女が俺に向けている不安げな瞳が嘘だとは思えない。
何かを巻き込む側の人間の表情ではなかった。
…………いや、人物の雰囲気だけで判断するのは愚策だな。
「服には?」
「服……?」
「お前が着ている服に、何か情報がないか?」
少女の服装を見る。
古典的だ。
サラシ。
白い法被。
ふんどし。
儀礼的なもので着られるような、いわゆる
見たところそれらしい情報はない。
服は、この場で用意されたものであって俺たちがもともと着ていたものではなさそうだ。
「あ、あの…………」
少女が口を開いた。
「なんだ」
「その、貴方様も服を、着ていただけないでしょうか…………?」
頬を赤らめちらちらとこちらの下半身に視線を飛ばしながら、
少女は言いづらそうにそう願った。
脇に置かれていた衣服をあさり、男性用のものを見つける。
それを身にまとう。
「お前は、何か心当たりはないのか? 記憶ではなく、知識として、こういった状況に。」
「こういった状況……?」
「俺はこうだから、与えられた情報が少なければ、持っている知識も少ない。だから、お前が頼りだ」
そう言うと、
彼女は目を閉じた。
なにやらむつかしく考え込んでいるようで、
しかし突如として目を見開く。
「あ、ありますが…………」
「あるのか」
「ですが、少し、その…………」
「良い。言ってみろ」
座り込み、膝の上に手を置いてもじもじとしながら、
少女は語った。
「私の、読んだことのある作品にですね…………」
「作品? 小説か?」
「いや、その」
「漫画?」
「漫画ではあるのですが…………」
「?」
ともかく読んだ漫画がどうしたというのだろう。
「似たようなシチュエーションの漫画を読んだことがあります」
「なるほど」
「密室。閉じ込められた異性。出る方法は────────
えっちなことをすること。」
「は?」
「えっちをしないと出られない部屋」
えっちなこと。
紛らわしく言っているが、いわゆる性行為のことだろう。
なぜそれで出られる。
そういう話なのか?
監視者がいて、人口増大のために各二人組の行為を確認し、終わったもののみ解放していると言ったような設定なのか?
「もし、同じ論理なら、私と貴方様がえっちなことをすれば………………」
少女は壁と扉を指さした。
「あそこから出られるかも」
どこか期待したような眼差しを向けてくる少女に対し、
俺は、
「いや、さすがに鵜呑みにできない」
「あ…………」
「俺はお前のことを全く知らないしな」
知らない人間とそういう行為に及ぶのはどんな人間でも抵抗があるものだろう。
「…………その、落ち込むな。」
「…………はい。」
周囲を確認する。
シャワルームらしきものとトイレルームらしきものが一つずつ。
クローゼットのようなものが二つ。
トレイみたいなものも置いてある。
小ぶりなベッドが二つある。
天井のライトはあるが、スイッチは見つからない。
俺たちが起きたとき、すでにライトは点いていた。
誰かが遠隔で点けているのか?
辺りの壁を探る。
軽く叩くが、固い。破れるようなものではなかった。
一応、周囲の壁を確認している。
どこかに破れやすい壁がないかを確かめる。
ない、
ないが、
俺は、少女がさきほど指さした扉の前にまで来ていた。
そして、
──────。
ドアノブが回った。
「おい、鍵はかかってないぞ」
「え、そんな」
「やはりここは、『えっちなことをしないと出られない部屋』ではない」
「ちょ、大きな声で言わないで…………」
ノブを回して、
扉を押す。
重かったが、それでも扉は開いた。
その先には、円卓のある部屋があった。
部屋の形も円だ。
その円卓に、
誰かが座っていた。
一人ではない。二人だ。
男女。
俺たちと同じくらいの年代の男女が席についていた。
他には誰もいない。
俺達男女二人と、あいつら男女二人。
合計四人。
座っている男のほうが、俺を見て、
「やぁ、」
と声をかける。
眼鏡をかけている。
「驚いたよ。今になって人が出てくるなんて、やっと僕たちも外に出られるのかい?」
「………………たぶん、同じ状況だな」
「えー、もしかして、君たちも?」
「俺も彼女も記憶喪失。自分の名前もここがどこかもわからない」
「…………僕たちと条件はいっしょってことか」
男は思案した。
「僕たちはちょうど一日前からここにいた。自分たちが何者なのかも、ここがどこなのかもわからない」
その男女の服装も、俺たちと同じだ。
「僕たちは向こうの扉から出てきた」
と、背後を指さす。
近くの家具をしっかりと認識しないと位置関係がわからなくなりそうだ。
それくらい、彼らの出てきた扉と俺達の出てきた扉は似通っていた。
「この部屋は、」
「円形みたいだ。そして、四方にそれぞれ一つずつ、合計四つの扉がある」
「…………」
俺は着用している袴を握りながら、瞑目し、
男の正面の席に座った。
「右か、左か。どちらかが出口か」
「たぶんね」
「ということは、開かなかったんだな」
「うん。おそらくぜんぶ、この大部屋からは開けられないようになっている」
俺は試しに右側の扉に向かった。
ノブはあるが、回してもびくともしない。
かなり丈夫な作りだ。壊すのも難しいだろう。
俺たちがやってきた部屋は普通に開いた。
やはり鍵の問題か。
大部屋を見回す。
冷蔵庫らしきものがある。
横にはキッチンらしき場所。
ご丁寧にディスポーザーのようなものまであった。
もしかすればあれを開ければ外への入口があったり…………、いや、さすがにバカバカしいな。
俺たち四人が記憶喪失という時点で、相当にバカバカしいが。
「………………」
バカバカしいから、嘘だとしよう。
実は俺以外の三人はグルで、記憶喪失と偽って俺をこの部屋に拘束しようとしている。
だとしたら、なぜ?
力付くで言うことを聞かせればいいのに、それをしないのはなぜだ。
そもそも、俺に何をしてほしい?
労働力としての期待はしていないだろう。
何か情報がほしいのか?
俺の記憶が戻るのを、待っている?
じゃあなんで口裏を合わせたように記憶喪失だと嘘をついた?
俺たちがいた部屋の壁は厚かった。叩いて確認したからわかる。
俺たちの声が向こうに聞こえている可能性は低い。
この部屋には換気扇があって、ちょっとばかり鳴っている。
無音であれば俺たちの目覚めた直後の会話から俺が記憶喪失であることを察することもできただろうが、ここでは無理だ。
わからない。
結論が出ない。
「お腹減ってないかい?」
向かいの男が俺たちにそう尋ねた。
「冷蔵庫には、1ヶ月分以上の食料が入っていた。何か食べるといい」
「…………」
正直、腹は減っている。
ぺこぺこだ。
だがやはり信用できない。
が、信用できないということを悟られるのも拙い。
「念のため、私が毒見しますよ?」
隣の少女がそう言った。
俺が頷くと、向かいに座っている男女が立ち上がって、キッチンに向かう。
少し待って出てきたのは、カレーだった。
香ばしい香辛料の匂いに、喉が鳴った。
「で、では、私が…………」
隣の少女が、目の前の食事にスプーンを差す。
カトラリーなどもきちんと用意しているのか。
確か、この少女とともに目覚めた向こうの部屋────便宜的に個室と呼ぼう──には、トイレやシャワールームらしきものもあった。
少なくとも文明的だ。
「おいしいです」
一口食べた少女が、俺に向き直ってそう言った。
おそるおそる、俺もカレーを口にする。
口内にじんと広がる味。
もしかしたら、俺は長らくこのようなものを口にしていなかったのかもしれない。
即効性でないだけで、遅効性の毒が入っているかもしれない。
少女の膳と俺の膳には別個に毒が入れられているかもしれない。
そんなことを考えても、食欲には抗えなかった。
空きっ腹をスパイスの効いた中辛のカレーで満たす。
俺は、脇目も振らずカレーをかっこんだ。
‐‐‐
夜になった。
どうやら、夜間になると自動で灯りが消えるようだ。
無論、
灯りの消えた大部屋ですることなどない。
俺たちも、彼らも、自分たちがやってきた個室に戻った。
男女を同じ部屋に入れるというのは少しばかり変じゃないだろうか。
俺たちをここに追いやった者が存在するとすれば、ずいぶんと歪曲した趣味をしているらしい。
「ふっ……ふっ……」
俺と同室の彼女は、耐えるように息を吐いていた。
まぁ、男といっしょにいればそうなるだろう。
「安心しろ。」
俺は、とりあえずそう言葉をこぼして、
布団に入った。
‐‐‐
翌朝、
俺たちが個室から出ると、
昨日と同じように、彼ら二人も大部屋に出ていた。
そして、
そして、
「なんだよ、ここ………………」
さらに二人、
俺たちの個室のある位置から見て右側から、
扉を開いて現れた。
三組目だ。