白髪赤目巨乳に腰ヘコ夜這いされながらも閉鎖空間から脱出するために推理する話 作:ぽぶきち
今日はお開きになった。
最後まで、ボロを出すやつはいなかった。
本当にこのなかに犯人がいないなら、
この状況を作り出したものの目的は何だ?
何らかの方法で観察しているなら、男性が死んだという状況を見逃さないはずだ。
少なくとも、八人のうち誰かが連絡役なのではないだろうか?
密室に閉じ込められた八人の男女。
一日目からいた、クラブ、ハル。
二日目に目覚めた、俺ことダイヤと、ナツ。
三日目に現れた、ハートと、アキ。
四日目に死体のある部屋で起きた、スペードと、フユ。
全員が記憶喪失。
冷蔵庫からでてきた死体。
出口のない部屋。
八人で一ヶ月分ほどはある冷蔵庫。
夕方になって灯りがなくなり、俺たちは個室に向かった。
暗闇で、水の流れる音が続いている。
それぞれが、それぞれの個室に鍵をかけていることだろう。
知らない女子と同じ部屋なんて、普通の男子なら嫌がるものだが、みな受け入れている。今日が目覚めた初日であるスペードさえ、微妙な顔をしながらも仕方ないと受け入れた。
「あ、あの、浴びてきました…………」
浴室で湯浴みを済ませたナツの体の輪郭が、暗がりにうっすらと浮かび上がった。
なぜ報告するのだろうか?
俺はすでに浴び終わってベッドについている。
「そうか」
「…………」
「早く寝ろ」
「はい…………」
俺はベッドに寝転がった。
ナツも、自分のベッドに向かった。
瞼が重くなる。
四人に増えて、一気に警戒すべき対象が増えた。
それに、なんといっても死体だ。
あれをみてもどこか冷静でいる自分が少しばかり変に思う。
似たようなものを、以前にも見たことがあるのか?
この状況もだが、
俺という存在そのものが謎だ。
俺は何者で、なぜここにいるのか。
────ざっ、
誰かが、俺のベッドに近づいてくるのがわかった。
無論、誰なのかはわかっているし、気配も一致している。
「ダイヤ、さま…………」
ナツだ。
我慢できないと言った様子で、俺のシーツに潜り込んだ。
「すいません、すいません、すいませんっ……」
言いながら、俺の鎖骨にキスを落とす。
ため息を吐きつつ、頭を撫でた。
「同じ部屋に男子がいるんだ。そうなるのも……仕方ない」
「本当に、もうしわけっ……」
「気にしてない、生理現象なんだろ?」
ナツの頬に触れる。
熱い。
女性というものは、ケダモノだと、多くの男子は知識として覚えるようだ。
社会的地位を失うことがわかっていながらも、一度だけの快楽を求めて男性を襲う女性の数は、年々増加していたはずだ。
俺は、襟に手をかけてくるナツを、受け入れた。
‐‐‐
「ぅ……すぅ……す…………」
目が覚める。
個室のライトが点いていた。
自動点灯型のようだ。
それにより、
俺の視界は明瞭になっていた。
目の前に、眠るナツの顔がある。
純朴そうな顔だ。
昨日の獣のような様子とは全く異なっていた。
体が鈍く痛む。
鎖骨を見ると、皮下出血ができていた。キスマーク、というのだったか。
まだらのようになってしまったその首元を隠そうにも、服は剥がされて向こうに投げ捨てられていた。
ふいに、風のような涼しさを感じる。
この部屋は換気が非常に行き届いていた。
おそらく個室に洗濯物を干してもよく乾くだろう。
浴室で水洗いしたものを干せば、それなりの洗濯にはなるはずだ。
「ん、ぅ…………?」
ナツが、薄目を開ける。
そして、俺と目があった。
少しずつ、その目が見開かれる。
俺は、ナツを引き寄せた。
ナツほどではないにしろ、俺も寝起きだ。若干思考がぼやけている。
「ナツ、」
「……」
「寒くないか?」
シーツを引っ張って、ナツの肩にかけた。
一枚だけだと少し寒いが、互いの体温を分け合えばちょうどいい。
「~~~~~ッッッッ♡♡♡♡♡」
ナツが、赤面して俺の胸元に顔を埋めた。
俺の腰に腕を回して、しがみついてくる。
俺はどうして、ナツに好感のようなものを抱いているのだろうか。
なんとなくだが、
俺には大事な人がいた気がする。
そんな気がするのだ。いくばくかの寂寥感とともに、脳裏をおぼつかない影がかすめる。
それが、ナツなのかもしれない。
「ダイヤさま……」
「ん」
「その、」
「気持ちよかったか?」
「……はい、それに、」
「なんだ」
「幸せ、です……」
腕のなかのナツが、こちらを見上げてそう言った。
その顔を見たから、というわけではないが。
俺は、しばらくそのまま二人で温もりをわかちあった。
起きたのは体感で数十分後だ。
‐‐‐
二人でシャワーを浴びてから、
着替え、
大部屋に出た。
大部屋の円卓を、すでに六人が囲んでいた。
「ずいぶん遅いお出ましだな」
「寝心地がよくてな」
ハートの皮肉に軽く返して、席につく。
すでに朝食が並べられていた。
「あ、もしかして、気になるかな? 作っているとこもみたいなら、作り直すけど……」
「いや、いい」
おそらくは、クラブや他の女子たちが用意してくれたものなのだろう。
パスタだ。
ありがたく頂くことにする。
ナツが一応俺の料理の毒見をするようだった。
それだと量がナツに偏ってしまうので、ナツの分をいくらか俺に分けるかたちになった。
俺は、料理とともに、違和感を口にした。
「なんで、そんな神妙な顔をしているんだ」
「死体と閉鎖空間、それだけで十分だろ」
「でも、昨日の夜はそんな顔していなかった。一人ならまだしも、全員が通夜みたいな表情をしているのはおかしい」
男子のクラブも、ハートも、スペードも。
女子のハルも、アキも、フユも。
みんな思い詰めているような顔をしていた。
「これだよ」
クラブが、手帳らしきものを渡してくる。
革の手帳。
いったいどこから?
「お前の部屋にあったものか?」
「いや、スペードの部屋から見つかったんだ。ベッドの下に落ちていたのを、スペードが昨日調べて発見した」
「なるほどな」
俺も当日は自分の部屋をナツとともにくまなく調べた。
スペードの行為には納得できる。
手帳を手に取ると、どうやら誰かのメモが書かれているようだった。
メモだけだ。
一つのメモだけ。
それしかない。
最初のページに、こう書かれているだけ。
『呪い。忘却させる呪い、心を彁化する呪い、言葉を彁化する呪い、結界を生み出す呪い』
震えるような文字で、そう書かれている。
「俺の持つ知識では、意味が通らないものがある。他の奴らは読めたのか?」
「読めなかったよ」
「読めねぇ」
「読めないな」
手帳の他のページには、何も書かれていなかった。
「読める部分の……忘却させる、結界、
俺たちの状況に、マッチしすぎているな」
「僕もそう思う。」
「スペード、これは本当に、自分で見つけたのか。何らかの方法で書いたのではなく」
「そう言って、信じてくれるのかね」
スペードは、食べ終わったパスタの器にフォークをおいてそう問い返した。
「メモは太いペンで書かれて滲んでもいたけど、インクは乾いていた。慌てて書いたものなら、もっとわかりやすいんじゃないかな」
「だが、俺たちの使っている個室は換気がしっかりしている。乾かすこともできると思うが」
「まぁ、そうだね」
だとしても、ペンがどこにあるかを見つけないとスペードに疑ってかかることも出来ないか。
「ハっ……」
ハートが、前髪をかきあげて笑った。
やはり昨日よりも髪型が崩れている。
「俺たちは、呪いで記憶を失ったってことかよ? 意味わかんねェ」
「そうだね。でも、僕たちの知識にある限りでは記憶除去手術なんてものも眉唾だったはずだ。
実際に僕たちが記憶を失っているとしたら、こういう理外で、超自然的で、物理法則を無視したようなものがあるかもしれない」
「…………アァ……?」
ハートが、クラブを睨みつけた。
これまでのものとは少し違う。
「お前、物理法則を無視した、っつったか?」
「? それが、どうかしたのかい?」
「物理法則を無視することなんて、ねェんだよ」
ハートが、手慰みか、肘をコンパスの軸のように固定して、つー、と机に指で放物線をなぞった。
「魔法があっても、超能力があっても、それは物理法則の新しい側面であり、無視なんてのはそもそもの定義として成立しない表現なンだよ。法則はそこにあって、解釈の仕方が変わるだけだ。二度とそんな言い方をするんじゃねェ」
「…………なるほど。」
険悪なムードになりそうなのを防ごうとしてか、クラブの横の女子、ハルがあわあわとしていた。
だが、クラブはむしろキラキラとした瞳をハートに向けていた。
「君は、科学に詳しいのかな?」
「そんなもんオレが知るかよ。記憶喪失なんだから」
「でも、そんなことを言う人は初めてだよ。僕はいま、興奮している」
「やめろ気持ちワリぃ」
もしかして、
意外とこの二人は相性がいいのかもしれない。