遊戯王 KAMEN RIDER HELIOS   作:レルクス

1 / 2
第1話 Your name is……

 デュエルディスク。

 

 デッキを装填すれば、どこでも、立体映像のモンスターを出し合ってデュエルすることができる画期的なアイテムだ。

 

 ただ、ある時から、別の『身に着け方』をするようになったらしい。

 

 それがいつからなのかはわからない。

 

 おそらく、ずっと、遠い昔の話だ。

 

 腕に付けることが多いデュエルディスク。

 

 それを、腰に巻いて。

 

 デュエル、じゃない掛け声で、使っている人がいる。

 

「ねぇ歩佳(あゆか)。どう思う? レアカード当たったのに、ライダー専用だった」

 

 放課後の教室。

 

 覇気のない黒髪の少年、帯包遊陽(おびかねゆうひ)の耳に、愚痴が聞こえてきた。

 

 視線を向けると、一目で可憐な印象を受ける、金髪の巨乳美少女が、友人と話している。

 

 空閑歩佳(くがあゆか)。

 

 このクラス、いや、この学校……いや、この町で、もっとも有名な美少女デュエリストだ。

 

「うーん。確かにこれは……あ、そうだ、昨日、パックで引いたこれと交換する?」

「あ、そっちもレアカード……って、ライダー効果がない奴か。いいの?」

「うん。私のデッキには合わないし」

「ありがとう。このカードがあれば次のイベントでスコアが狙える」

「へぇ、何か狙ってるの?」

「もうちょっとスコアが貯まれば、『限定パック』の優先購入権が手に入るからね」

 

 カードを交換してお互いに機嫌がよくなっている。

 

 そんな様子を、同じ教室の中でありながら。

 

 どこか遠い場所のように、遊陽は聞き流していた。

 

 ★

 

「あ、食器用洗剤、買っておかないと」

 

 教室を出て、学校を出て、遊陽はそう呟いた。

 

 一人暮らしで、必要なものは全部、自分で買いそろえる必要がある。

 

「……スコア。か」

 

 自分のデュエルディスクを見る。

 いくつか操作をすると、そこには、『スコア:120』と表示された。

 

「確か、500あったら、一か月分の食器用洗剤が、毎月無料で貰える『特典』を使えるって、聞いたことあるけど」

 

 いつもの通学路。ではない。

 

 近道のためか、裏路地に入っていく。

 

「イベントで手に入れるなら本腰を入れる必要があるし、アンティなんて、望んでできるものじゃないからな」

 

 デュエルは嫌いじゃない。

 

 でも、別に、そこまで真剣にやってない。

 

 ただ、今の時代、多くの人が持っていて、みんな違うデッキを使っていて、コミュニケーションに使いやすいから、やってる。

 

「それに、スコア120だって、悪いわけじゃないしな。ひと月に一度、コンビニのおにぎりを貰えるし」

 

 ……口に出す必要のないことだ。

 

 スコアがあって、多くの特典を使える立場に、憧れはあるが遠い世界だと思っている。

 

 その程度のこと。

 

 ……これまでは、その程度のはずだった。

 

「ん? なんだこれ」

 

 一枚のカードが、歩く裏路地に落ちていた。

 

 拾ってみると、デュエルモンスターズのカード……のようなフレームだが、枠は灰色。俗にいう『トークンカード』のようなものだ。

 

 しかしそこには。

 

 紛れもなく、『プレミアムスコア1』と書かれている。

 

「えっ……ぷ、プレミアムって……」

 

 その時、遊陽のデュエルディスクが反応した。

 

『プレミアムスコアを受領しました』

「はっ?」

 

 デュエルディスクを確認する。

 間違いない、『プレミアムスコア』が、1だけ、入っている。

 

「ま、まだ、デュエルディスクにカードを入力してないのに、なんで……」

 

 入力していない。という以上、本来は入力しないとスコアが入らないのだろう。

 

 ただ、今回はそうではない。

 

 彼がカードに触れて、確認した瞬間、デュエルディスクに入ってきた。

 

「……はぁ、どうすれば……」

 

 裏路地をそのまま歩いて、少し、開けた場所に出た。

 

「おっ、プレミアムセンサーが動いてんじゃねえか。あ? なんだよこのガキ」

 

 喜色満面で、デュエルディスクを見ていた男が、遊陽を見て、訝し気な顔になった。

 

「こんなガキがプレミアムを持ってるだと?」

「あ、いや、その……」

「ハッ、ま、都市伝説として珍しくねえからな。裏路地にはプレミアムカードが落ちている。なんてよぉ、もしかしてそれを引いちまったか?」

「……」

「なんだ、図星かよ」

 

 ヘラヘラしている男。

 

 プレミアム、と言っている以上、スコア1であろうが、それは明確に価値がある。

 

 しかし、それを、『拾ったカードで手に入れた』という遊陽に対して、男は嫉妬する様子がない。

 

「まっ、さっそく、奪わせてもらうか」

「う、奪うって、アンティか? そんなのやるわけ……」

「うるせえ!」

 

 一枚のカードを取り出した。

 

 蜘蛛の怪人が描かれたカードを。

 

 次の瞬間、遊陽のデュエルディスクから音声が流れる。

 

『オールベットデュエルを開始します』

「はっ? オールベット?」

「知らねえのか? 『怪人カード』を使えば、オールベットデュエルを強制できるんだぜ? 裏路地を歩くときの常識だ」

「そんなの知るわけ……」

「取られたくなかったら構えろよ。通常スコアをどれだけ持ってるか知らねえが、このまま逃げたら強制的にスコアが俺のところに入るぜ?」

「……チッ」

 

 遊陽はデュエルディスクを構える。

 

 ……別に、捨てていいはずだ。スコア120なんて。

 捨てるのも惜しくはないはずだ。プレミアムスコアなんて。

 

 遊陽は、スコアシステムから、大きな恩恵を受けている立場ではない。

 

 怪人カード。

 

 どんなものなのかはともかく、別に逃げたっていいはずだ。

 

「なら、デュエルだ」

 

 ディスクが展開し、デッキがシャッフルされる。

 遊陽は、5枚引いた。

 

「ハッ、逃げるんなら話は速かったのによぉ」

 

 男はディスクを展開して、デッキをシャッフル。

 5枚引いた。

 

「一応聞いとくわ。なんで構えた?」

「知らん!」

「威勢だけは良いじゃねえか」

 

 お互いに、構える。

 

「「デュエル!」」

 

 遊陽 LP4000

 西雲 LP4000

 

「先攻は俺だ」

 

 怪人カードを持つ男、西雲の先攻。

 

「俺は手札から、『タンク・スパイダー』を召喚!」

 

 タンク・スパイダー ATK1800 ☆4

 

 フィールドに、機械仕掛けの蜘蛛が出現する。

 

「召喚、特殊召喚成功時、デッキから、『スパイダー・フュージョン』を手札に加える」

「融合……」

「このまま発動。俺はフィールドのタンク・スパイダーと、手札の『ドリル・スパイダー』で、融合!」

 

 手札から、糸を出す部分がドリルになった蜘蛛が現れて、機械仕掛けの蜘蛛と交わる。

 

「融合召喚! レベル7、『ヴァイオレット・スパイダー』!」

 

 ヴァイオレット・スパイダー ATK2400 ☆7

 

 出現したのは、大型の、紫の体毛を持つ蜘蛛。

 

「融合召喚成功時、相手の手札1枚を見ないで選んで、裏側で除外する」

「なに!?」

 

 蜘蛛が糸を出した。

 それが遊陽の手札一枚に直撃して、手札から消える。

 

「いきなり除外……」

「ククッ、俺はカードを1枚セットして、ターンエンドだ」

「……俺のターン。ドロー!」

 

 遊陽はカードをドロー。

 

「俺は手札から、『ハイドロキッズ・スプラ』を召喚!」

 

 遊陽のフィールドに出現したのは、青く、ちっちゃくて、子供っぽいモンスターだ。

 水鉄砲をかっこよく構えている。

 

 ハイドロキッズ・スプラ ATK1200 ☆4

 

「攻撃力1200かよ。てことはここから何か並べるのか?」

「その通りだ。スプラは召喚成功時、デッキから『ハイドロキッズ』モンスターを1枚、手札に加える。俺は『ハイドロキッズ・ジェット』を手札に、フィールドにハイドロキッズがいれば、コイツは手札から特殊召喚できる!」

 

 ハイドロキッズ・ジェット ATK1400 ☆4

 

 次に現れたのは、ジェットパックを背中に付けた子供だ。

 

「レベル4のモンスターが2体か」

「そうだ! 俺はレベル4のスプラとジェットで、オーバーレイ!」

 

 二人の子供が水色の光になって、飛んでいく。

 

 渦の中で交わって、光が炸裂した。

 

「行くぞ。ランク4! 『へリオ・スライサー』!」

 

 へリオ・スライサー ATK2500 ★4

 

 出現したのは、爆炎を纏う剣を握っている、一人の剣士だ。

 

「レベル4を使って攻撃力2500……お前のエースモンスターってわけか」

「その通りだ。ヘリオ・スライサーの永続効果で、素材一つにつき、攻撃力が100ポイントアップする!」

 

 ヘリオ・スライサー ATK2500→2700

 

「俺は続けて、手札の『ハイドロキッズ・マリン』を特殊召喚!」

 

 ハイドロキッズ・マリン ATK1100 ☆4

 

 次に、シュノーケルをかぶった子供が出現。

 

「あっ?」

「マリンは、自分フィールドに、『ハイドロキッズ』モンスターがいるか、エクシーズ素材になっていれば、手札から特殊召喚できる」

「へぇ」

「さらに、ハイドロキッズがエクシーズ素材になっているときに特殊召喚に成功した場合、デッキから、『ハイドロキッズ』魔法カード……『ハイドロキッズ・ショック』を手札に加える」

「追加効果でサーチまでついてんのかよ」

「まだだ。ハイドロキッズの共通効果で、自分フィールドの、ハイドロキッズを2体以上素材としているエクシーズモンスターを対象に、フィールドのハイドロキッズはそのモンスターのエクシーズ素材にできる!」

 

 マリンが飛び上がって、へリオ・スライサーの周囲で公転する光の弾になった。

 

 ヘリオ・スライサー ATK2700→2800

 

「で、どうすんだ?」

 

 ヴァイオレット・スパイダーとへリオ・スライサーなら、へリオ・スライサーの方が攻撃力が高い。

 

 それは分かり切ったことだが、西雲の余裕は崩れない。

 

「……へリオ・スライサーの効果発動! エクシーズ素材を3つ以上持っている場合、1ターンに1度、相手モンスター1体を破壊できる!」

「ハッ! なかなかいい感じに治安の悪い効果してるじゃねえか。罠カード『紫の蜘蛛の巣』を発動!」

 

 へリオ・スライサーが爆炎を纏う剣を振ったが、ヴァイオレット・スパイダーから放たれた糸で防がれる。

 

「自分フィールドに昆虫族融合モンスターがいるなら、相手モンスター1体の効果を無効に出来る」

「クソっ」

「さらに、ヴァイオレット・スパイダーがいるなら、そのモンスターの攻撃力を半分にする」

「なっ……」

 

 へリオ・スライサー ATK2800→2500→1250

 

「ヴァイオレット・スパイダーより攻撃力が下になった。これで――」

「いや、手札から魔法カード『ハイドロキッズ・ショック』を発動!」

「さっき手札に加えた魔法カード……」

「デッキからハイドロキッズ1体を、自分フィールドのエクシーズモンスター1体の素材にする。俺は、ハイドロキッズ・サーフを加える」

 

 サーフボードに乗った子供が出てきて、エクシーズ素材になる。

 へリオ・スライサーのエクシーズ素材が4つになった。

 

「へぇ……で、そこからどうするんだよ」

「その後、自分フィールドのエクシーズモンスター1体を、裏側守備表示にできる!」

「ほう……」

 

 へリオ・スライサーがセット状態になった。

 

「これでいける。手札から魔法カード『太陽の書』を発動! セット状態のへリオ・スライサーを攻撃表示に!」

「何!?」

 

 へリオ・スライサー ATK2500→2900 ★4

 

「破壊効果は名称ターン1だ。このターンはもう使えない。バトルだ! へリオ・スライサーで、ヴァイオレット・スパイダーを攻撃!」

 

 へリオ・スライサーが剣を振り上げて、ヴァイオレット・スパイダーに切りかかる。

 

 爆炎に切り裂かれて、ヴァイオレット・スパイダーは消え去った。

 

「チッ……」

 

 西雲 LP4000→3500

 

「俺はカードを1枚セット。ターンエンドだ」

「俺のターン。ドロー」

 

 西雲はカードを引いて、ニヤッと笑った。

 

「ククッ、ヴァイオレット・スパイダーを倒したのは良いが、残り手札は1枚か。セットカードが何なのかは知らんが、随分リソースを使ったなぁ。小僧」

「……」

「そして、残念だったな」

「えっ」

「魔法カード『紫の蜘蛛の糸』を発動。『ヴァイオレット・スパイダー』専用の蘇生カードだ!」

 

 ヴァイオレット・スパイダー ATK2400 ☆7

 

「こ、こんな簡単に……」

「続けて、墓地の『ドリル・スパイダー』を除外して、効果発動。自分フィールドに『ヴァイオレット・スパイダー』が存在する場合、墓地から昆虫族を1体手札に、俺は『タンク・スパイダー』を手札に加えて、通常召喚!」

 

 タンク・スパイダー ATK1800 ☆4

 

「効果発動。デッキから2枚目の『スパイダー・フュージョン』を手札に加える」

「また、融合カード……」

「このまま発動! フィールドのヴァイオレットとタンク、手札の『グランド・スパイダー』を融合!」

「なっ……」

 

 ヴァイオレット・スパイダーと、機械仕掛けの蜘蛛。さらにモンスターを追加して、渦の中へ。

 

「融合召喚。レベル8『蜘蛛の女王リージェンシュピンネ』!」

 

 蜘蛛の女王リージェンシュピンネ ATK3000 ☆8

 

 出現したのは、紫の体毛を持ちつつも、先ほどよりも大きな蜘蛛だ。

 

 生理的な恐怖を感じさせる巨体が、格別の存在感を放っている。

 

「コイツはヴァイオレット・スパイダーを素材として指定するモンスターだ。効果発動! 1ターンに1度、相手に1000ポイントのダメージを与える!」

「なんだと……ぐあっ!」

 

 遊陽 LP4000→3000

 

 糸の弾が飛んできて、遊陽の肩に直撃した。

 

「更なる効果、相手モンスター1体の効果を、永続的に無効にする!」

「なっ……」

 

 へリオ・スライサー ATK2900→2500

 

 糸が巻き付いて、攻撃力が元に戻った。

 

「まぁもっとも、さっきのテクニックで対応されちまうがな。バトルフェイズ! リージェンシュピンネで、へリオ・スライサーを攻撃!」

 

 リージェンシュピンネの巨体が、へリオ・スライサーに覆いかぶさってくる。

 

「ここだ! 罠発動、『ハイドロキッズ・コンビネーション』!」

「ここで罠だと……」

「自分フィールドの、ハイドロキッズを素材とするエクシーズモンスターが戦闘を行う場合、相手モンスターの攻撃力は、素材のハイドロキッズ1体につき、400ポイントダウンする!」

「何!?」

 

 蜘蛛の女王リージェンシュピンネ ATK3000→1400

 

「り、リージェンシュピンネの攻撃力が、1400に……」

「迎え撃て、へリオ・スライサー!」

 

 攻撃力は元に戻されても、その攻撃力は2500。

 

 飛び上がって、炎の剣を振りぬいた。

 

「ぐ、あああああああああああああっ!」

 

 西雲 LP3500→2400

 

 蜘蛛が消え去って、西雲にもダメージが入った。

 

「ぐっ、クソ、こんなはずじゃ……」

 

 西雲に残った手札は1枚。

 フィールドにカードはない。

 

 へリオ・スライサーの攻撃力は、リージェンシュピンネがいなくなっても攻撃力が2500のままだが、その数値は、彼のライフを上回っている。

 

「お、俺が、負ける? 馬鹿な。怪人デッキを使う俺が……」

 

 うろたえている。

 

 ここまで、ずっと、余裕を崩さなかった彼が、とても。

 

「……お前、一体、何に怯えてるんだ?」

「つ、使うつもりは……うあああああああああああっ!」

 

 デュエルディスクから光が溢れた。

 

「ぐっ、くそおっ!」

 

 デュエルディスクを腕から外そうとする。

 だが、頑丈なロックがかかったのか、離れない。

 

 彼のディスクに挿入された、『怪人カード』が、妖しく光っている。

 その光は、彼の腕に侵食し始めた。

 

「や、やめろ! ああああっ!」

「な、何が起こって……」

 

 カードから溢れた光が体に当たって、その部分が変色する。

 

「ふざけんな! か、怪人カードは、オールベットを強制するための、ただのツールに決まってんだろうが! 嫌だ、いやだあああああああああああっ!」

 

 変色した体が、とげとげしくなっていく。

 

「……お、お前、それ……都市伝説じゃ、なかったのかよ」

 

 足が生えた。

 

 複眼が現れる。

 

 その体は、人間と蜘蛛を無理矢理あわせたような、異形の姿となった。

 

「はぁ、はぁ……スコア……全部ぅ、俺のだああああああああっ!」

 

 蜘蛛怪人が、遊陽に向かって突撃した。

 

「なっ、ぐほっ!」

 

 怪人の蹴りが遊陽の腹に刺さった。

 ミシミシと音が鳴って、後ろに飛ばされる。

 

 そのまま地面を転がった。

 

「がっ、ぐっ、ど、どうして……」

「殺す。殺して、スコア、全部、俺のものだぁ」

 

 明らかに正気ではない。

 

 怪人が手を掲げると、糸が出てきて、遊陽の首を締めあげる。

 

「がっ、かはっ、くそぉ……」

 

 明らかな殺意が宿っている。

 

 この場で手加減して、遊陽を逃がすとは、思えない。

 

「しねぇ、しねぇ!」

「ぐっ、がっ……」

 

 ……その時だった。

 

 遊陽のデュエルディスクから、一枚のカードが飛び出て、宙に浮いた。

 

「あぁ?」

 

 驚いている間に、カードは燃え上がって、そのまま首を絞めている糸を焼き切った。

 

「ぐおおっ!」

「かはっ!」

 

 解放された遊陽は、地面に座り込んだ。

 

「はぁ、はぁ……えっ」

 

 目の前に来たカードを見て、目を疑った。

 

「な、なんだこのカード……」

 

 スーツを身にまとった、戦士の姿が映っている。

 

「な、なんだ、何が起こってんだ? ハハッ、関係ねぇ、殺して、奪うぅ」

「……もう、そんなこと、させるか」

 

 遊陽は腕に付けているデュエルディスクを外すと、腰に当てた。

 

 ベルトがディスクから飛び出て、一周して、腰に巻かれる。

 

『DUEL DRIVER』

 

 遊陽は、スイッチを一つ、押した。

 

『Your name is……』

 

 音声がベルトから響いている。

 

「はははっ……一体何やってんだ? お前がまさか、もってるわけ」

「さっきは、『デュエル』って言った。ここからは、こっちだ!」

 

 カードを掲げる。

 

「変身!」

 

 ディスクに挿入する。

 

『KAMEN RIDER HELIOS!』

 

 彼の名前を、ベルトは高らかに叫んだ。

 

「何!?」

 

 怪人が驚いている間に、ベルトから炎があふれ出す。

 

 それらがスーツになり、アーマーになり、遊陽の体に装着されていく。

 

 燃え上がるような赤いスーツが、形成されていく。

 

 その姿は。

 

 紛れもなく。

 

「俺は……仮面ライダー、ヘリオスだ!」

 

 全身から、炎が溢れた。

 

「ふ、ふざけんな!」

 

 怪人が走り出す。

 そのまま拳を突きだしたが、ヘリオスは片手で受け止めて、殴り返した。

 

「ぐおあっ」

 

 殴られた怪人が背中から倒れた。

 

「……ん? ドロー可能?」

 

 遊陽の視界に、『ドロー可能』と表示されている。

 

 遊陽はベルトのデッキからカードをドローする。

 すぐに、紙のカードが消えて、炎のカードとなって浮遊し始めた。

 

「……俺が持つ必要はないってことか」

「ば、バカにするなあああああああああっ!」

「!」

 

 突如、上空から、蜘蛛が降ってきた。

 

 蜘蛛の女王リージェンシュピンネ ATK3000 ☆8

 

「な、こ、コイツはさっき……」

「リージェンシュピンネの変身中効果により、墓地から蘇生できるんだよ!」

「そういうことか」

 

 リージェンシュピンネが糸を飛ばしてくる。

 

 ヘリオスは構えたが……そんな彼の前に、へリオ・スライサーが出てきて、その糸を焼き切った。

 

「おおっ……やるな。向こうの方が攻撃力高いのに」

 

 へリオ・スライサーはグッドサインを出して、そのまま切りかかっていく。

 

「ふ、ふざけやがってぇ……」

「別にふざけてないさ。手札から、『ハイドロキッズ・サイダー』を召喚!」

 

 ハイドロキッズ・サイダー ATK1000 ☆4

 

 飲料水と思われる缶を持った子供が出現。

 

『お、ユウヒ! 初めましてだな!』

「……お、お前、喋るの?」

『みんな喋るぜ! それはそれとして、今はコイツをぶっ倒すぞ』

「ああ。サイダーの召喚時効果で、へリオ・スライサーの素材になっているマリンを特殊召喚だ!」

 

 ハイドロキッズ・マリン ATK1100 ☆4

 へリオ・スライサー   ATK2900→2800

 

『よっしゃー!』

「ハイドロキッズを素材とするへリオ・スライサーが……ぶえっ!」

 

 ヘリオスの顔面にパンチが飛んできた。

 

「なによそ見してんだテメェ!」

「悪かったけどいきなり殴んな! マリンの効果でデッキからハイドロキッズ魔法……『ハイドロキッズ・ブースター』を手札に。サイダー。マリン、オーバーレイ!」

『『よっしゃあっ!』』

 

 2体が宙に飛んで、炸裂する。

 

「エクシーズ召喚! ランク4『プロミネンス・ソード』!」

 

 空から炎の剣が降ってきた。

 

 プロミネンス・ソード ATK2000 ★4

 

「よし」

 

 ヘリオスはプロミネンス・ソードを抜いた。

 

「なんだそりゃ。剣なんてまともに振ったことねえ奴が、カッコつけてんじゃねえ!」

 

 怪人が突っ込んでくる。

 拳に頑丈な糸を絡ませている。刃に拳が衝突しても、そのまま殴ってくるだろう。

 

「はっ!」

 

 その拳を避けて、胴体を切り裂いた。

 

「ぐあっ、な、なんだ今の太刀筋は!」

「へリオ・スライサーの変身中効果で、『剣術センス』を得られるんだ!」

「ちっ、抽象的過ぎること言いやがって」

「やかましい!」

 

 そのまま斬撃を叩き込んで、蹴りを入れて吹っ飛ばした。

 

「ぐおぁ……」

 

 ヘリオスは、変身したことで新たに出現したスイッチを押した。

 

『LETHAL PHASE』

 

 ヘリオスの足に、炎が集まり始めた。

 

「よし、へリオ・スライサー! これはお前が装備だ!」

 

 プロミネンス・ソードをへリオ・スライサーに投げ渡す。

 

 へリオ・スライサーは、もともと持っていた剣と、プロミネンス・ソードの二刀流に。

 

「行くぞ!」

 

 ヘリオスは飛び上がった。

 そのまま、足を怪人に向けて、一気に突っ込む。

 

「ふざけんなあああああああああああああっ!」

 

 怪人の体から糸があふれ出す。

 

 だが、ヘリオスの炎の足は、それらを焼きながら、彼に突っ込む。

 

 へリオ・スライサーも、リージェンシュピンネに向けて突撃した。

 

「おりゃあああああああああああああっ!」

 

 ヘリオスのキックが怪人に炸裂すると同時に。

 

 へリオ・スライサーの斬撃が、リージェンシュピンネに炸裂した。

 

「ぐ、ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

 怪人の体が吹き飛んで、空中で、爆発する。

 

 リージェンシュピンネも爆発した。

 

 ★

 

「……」

 

 西雲は、生きていた。

 

 爆発したと思ったが、地面にそのまま墜落すると、怪人カードから光が収まって、怪人になる力が出なくなったのだろう。

 

「……ふぅ」

 

 ヘリオスはベルトから、『仮面ライダーヘリオス』のカードを抜き取った。

 

 変身が解除されて、遊陽の姿に戻る。

 

「……俺の、勝ちか」

 

 デュエルディスクを見る。

 

『デュエルスコア。+21,300』

 

 間違いなく、そう、記されている。

 

「はっ、え、に、2万?」

 

 スコア120でコンビニのおにぎりが月一で無料とか、スコア500あれば食器用洗剤が貰えるとか。

 そんな話が吹き飛ぶほどのスコアが、一気に振り込まれた。

 

「こんなにスコアを持ってるこいつが求めたプレミアムポイントって、一体……」

 

 遊陽は空を見上げる。

 

「……俺は、どうすればいいんだ」

 

 西雲は言っていた。

 

 プレミアムセンサーが動いている。と。

 

 それは間違いなく。

 

 今後も、彼がプレミアムスコアを持っていることを知る者が現れて。

 

 彼が今後も、怪人から挑まれることを示していた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。