遊戯王 KAMEN RIDER HELIOS   作:レルクス

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第11話 ソーラーVSネスト

 金曜日の昼休み。

 

 屋上で、遊陽はベンチに座っておにぎりを食べていた。

 

 隣では、渇明が高そうな焼肉弁当を食べている。

 

「……そういえば、見ましたよ。デュエルの動画」

「ん?」

 

 話を始めたのは遊陽。

 

「塔野建設の群堂炎示。仮面ライダーネストですね。デュエルしてる映像」

「……誰かがスマホで撮ってたのか。SNSにあったのか?」

「そうです。スターターデッキで、ライダーに勝ったところが映ってて……」

「映ってて、なんだ?」

「なんか、師匠みたいだなって思いました」

「そうか? 俺としては、ああいう子供は自分を主人公だと思って調子に乗るもんだからな。自分が馬鹿にしたスターターデッキに負けたら、それは『主人公の挫折』じゃなくて『三下の屈辱』になる。そういうのを勉強するべきだと思って、お仕置きしただけだ」

「……主人公。ですか」

「アイツがライダーカードを手に入れたのは三か月前らしい。そこから、企業対抗戦にも出て、三戦やって負けなしだそうだ」

「めっちゃ、才能ありますね」

「ああ。実際、生活水準だって大きく上がったはずだ。そりゃ、自分のことを主人公だと思っても不思議じゃないし、そういう顔をしてたよ」

「俺もそう思いました」

「そういうヤツに、グリーディを使って勝っても、『そういう経験』としてアイツの中で物語を作っちまうからな」

「そういうものですか?」

「アイツはそういうヤツだ」

 

 いくつもの分岐が考えられる中で、理屈を一本通しただけでは、単なるレトリックだ。

 

 ただし、渇明の中で、炎示という少年の中にある『主人公としての感覚』が見えていた。ということなのだろう。

 

「それで、飛ぶ鳥に無視されるような経験を積ませたと」

「まぁそんなところだ」

 

 遊陽はちょっと考えた。

 

「挫折は与えてませんけど、『恥』を自覚させてますよね。しかも、それを説教じゃなくてデュエルでやってますし、特に何も言わず去るって……」

「……なんだ?」

「『弟子を取らないタイプの師匠』って感じでは? 師匠キャラの中でもカッコイイ奴ですよ」

「……クソがよぉ」

 

 渇明は天を仰いだ。

 

 遊陽からそういうことを指摘されるとは思っていなかったのだろう。

 

「というか、最初から恥を自覚させるためにやってると思ってたんですけど、渇明さんの中では違ってたんですね」

「んー。まぁ、そうだな。ぶっちゃけアイツにそこまで興味があったわけじゃない。どっちかっていうと、レコックスのスターターを馬鹿にすることに、ちょっと思うところがあっただけだ」

「そう、ですか……」

 

 渇明が自分のグリーディデッキ以外に、何か思い入れがあるという話を聞くのは初めてだ。

 

 遊陽としては気になるが、渇明からは『これ以上は話さん』というオーラを感じる。

 

「で、他にも、まだ話したいことがあるみたいだな」

「あ、はい。これなんですけど……」

 

 デッキから、1枚のカードを見せる。

 

 ★

 

 プロミネンス・グランドゾーン

 フィールド魔法

 このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 ①:自分フィールドの戦士族Xモンスターの攻撃力は、装備している「プロミネンス」Xモンスターカード1枚につき、600ポイントアップする。

 ②:自分フィールドの戦士族Xモンスター1体を対象にして発動できる。自分フィールドの「プロミネンス」Xモンスターを任意の数、装備させる。

 ③:変身中、自分フィールドに「プロミネンスオリオン」Xモンスターカードが3種類以上存在する場合、自分フィールドのカードは戦闘・効果で破壊されず、自分は戦闘でダメージを受けない。

 

 ★

 

「……ブレイブゾーンの亜種か」

「はい」

「プロミネンスオリオン。なんてカードは聞いたことねえな」

「このカードを開発したところも、プロミネンスオリオンの製造はできなかったそうです」

「で、これがどうした?」

「デッキに入れるべきか迷ってるんです」

「なんで入れようと思ったんだ? ブレイブゾーンなら、2種類以上装備で相手のチェーンを許さない破壊効果と、3種類以上装備で、自分フィールドのカードが破壊されない耐性を得られる。発動時に装備させる効果と、強化値が600ポイントで同じなら、入れる意味ねえだろ」

「……なんか、入れた方がいい気がして」

「だったら入れろよ」

「いや、でも……事故ったらどうしようかと思って」

「……」

 

 渇明は少し考えた。

 

「ああ、なるほど、俺とデュエルするときはいつだって全力で挑みたいから、手札事故でいつもよりくらいつけなくなるのは嫌なのか」

「そうです」

 

 遊陽はお茶を飲んで……。

 

「事故ってなくても俺に勝てないのに何言ってんのかって話ではあるな」

「ブフッ!」

 

 屋上の床に向かってお茶を吹き出した。

 

「そんなに吹き出すか?」

「いきなりひどいこと言いすぎでしょ」

「さっきのお返しだ」

「師匠って言われるとそんなに嫌だったんですか?」

「そういうことだ」

 

 頷く渇明に遊陽はため息をつくと、グランドゾーンのカードをデッキに入れた。

 

「で、もう一個はなんだ?」

「話題が三つって言いましたっけ?」

「言ってないな。で、なんだ?」

「……昨日、カメレオン怪人を、歩佳さんが倒してたんです」

「ニュースでやってたな」

 

 遊陽が夜に安アパートに戻ったときには速報で流れていたことだ。

 

 渇明も知る機会は十分にある。

 

「怪人と戦ってるときに、レベル8のシンクロモンスターを出せるタイミングがあったんです」

「ほう、レベル8ねぇ」

「ただ、歩佳さんのお父さんと、空閑ソーラーの取引先の人が車で通りかかって……まぁ、シンクロモンスターは出てきたんですけど、なんか……」

「本来は違うモンスターを出そうとしてたんじゃないかってことか?」

「そうです」

「何でそう思ったんだ?」

「最初、なんか……俺が、ヘリオ・スライサーを出すときみたいな、そんな雰囲気を感じたんです」

「エースモンスターってわけか」

 

 ランク4とレベル8。

 エクシーズとシンクロ。

 

 全く違うが、『エースモンスターを出すときの雰囲気』というのは、デュエリストは、なんとなく感じ取れるものだ。

 

「はい。でも、雑誌では、歩佳さん、エースモンスターはいないって」

「……エースがいたとしても、そう答えるってケースはゼロじゃない」

「え?」

 

 遊陽の口からとぼけた声が漏れた。

 

「仮面ライダーは怪人とも戦うんだ。何がエースなのかが確定してるってことは、怪人側もそれを前提に戦えるってことだからな」

「あっ……」

「怪人討伐のニュースは基本的に、誰が倒したのか、被害はどうだったのか、怪人がどんな奴で、放置してたらどんな被害が出ていたのか。そればっかりになるし、『どんなカードを使ってどうやって倒したのか』は報道されない。怪人が対策を立ててきたら終わりだ」

 

 遊陽はニュースを見ていて、どこか、『災害』に関するニュースだ。という印象を持った。

 

 実際には災害でも何でもなく、『怪人カード』を持っている人間であり、雑誌やテレビで歩佳の戦術が赤裸々に語られていたら、実際に怪人と戦う時に情報アドバンテージが違いすぎる。

 

「……あの、渇明さんって……」

「怪人が『そういう生物』じゃなくて、『怪人カードを使ってる人間』って話だろ。俺が知らないと思ったのか?」

「いや、まぁ、その……渇明さんってライダーじゃないのに、なんでそこまで知ってるんですか?」

 

 ライダーでなければ、怪人に対抗できない。

 

 そう考える遊陽からすると、そこまでライダーについても詳しいのは、少し気になる。

 

「別に知る方法なんていくらでもある。話を戻すが……言い換えると、怪人を倒す時って言うのは、どんな方法で倒そうが報道されないってことだ」

「倒し方が報道されないってことは……」

「本当のデュエルが出来るってことでもある。エースを出そうとして、『取引先』が通りかかったから、『会社のライダーとして見せるべきモンスター』に変えた。そんなところだろ」

「……」

「まぁ、非常に珍しくはあるが」

「えっ?」

 

 怪人にバレないためにエースを隠すのがゼロではない。

 

 そういった上で。

 

 渇明は、今回のケースは珍しいという。

 

「エースモンスターがバレることそのものは何の問題もない。『エースモンスターを使ってできる戦術の限界』を知られることの方が問題だ」

「個体の情報じゃなくて戦術の幅ってことですか?」

「そうだ。ライダーを抱える企業って言うのは、そのライダーのエースがどんなモンスターで、その戦術を拡張するためにはどうすればいいかを考えてるところが多い。『エースモンスターそのものを隠す』っていうのは珍しいな」

「なんで、そんなことを……」

「それは知らん」

「そうですか……」

「で、なんでそんなに気になるんだ?」

 

 渇明から聞かれて、遊陽は少し考える。

 

「……エースモンスターを出せないデュエルって、楽しくないじゃないですか。デュエリストにとって、一番素朴な欲求のはず」

「素朴、ねぇ……」

 

 その時、チャイムがなった。

 

「……そろそろ昼休みも終わりか。戻るぞ」

「はい」

 

 ★

 

 放課後。

 

 空閑ソーラー本社の応接室にて。

 

「私は空閑歩佳。よろしくね!」

「花宮青葉。よろしく」

「群堂炎示です。よろしくお願いします」

 

 歩佳、青葉、炎示の三人で話していた。

 

「塔野建設で活躍してる仮面ライダーだよね。直接話すのは初めてだけど、なんか……クソガキって感じがする!」

「それが初対面の相手に言うことか!?」

「炎示君。諦めるか覚悟を決めるといい。歩佳のこういうところは、どうにもならないから」

 

 初対面でいきなりクソガキ呼ばわりする歩佳に炎示は若干キレたが、青葉は諦めた様子で言った。

 

「まぁ、お父さんと久木専務が会議中だからね。私たちライダーは親睦を深めておくべきだからね!」

「……ライダー歴は俺の方が短いとはいえ、塔野建設の方が大手なのに、遠慮ねえな」

 

 空閑ソーラーと塔野建設では、塔野建設の方が規模が大きい。

 

 この部分に関しては、内容はともかくとして、『空閑ソーラーの社長』と『塔野建設の専務』が会議で話している。というバランスを考えると、見えてくる力関係ではある。

 

 とはいえ、ネームバリューという意味では『仮面ライダーソーラー』が強いため、規模に差があるとは言え、塔野建設も多少は関係構築で考慮しているといった形か。

 

 ……言い換えると、炎示は企業対抗戦で、空閑ソーラーよりも責任が大きい戦いで勝っているということになる。

 

 才能があるのは間違いない。

 

「遠慮ない理由なんてシンプルだよ! 私、遠くから見る分には可愛いからね!」

「……至近距離で言われた俺はどうすればいいんだ?」

「無視しとけば?」

「ふっふっふ、可愛い私を無視できるならやってみるがいい!」

「……」

 

 炎示は歩佳から目を離して、ため息をつきつつスマホを弄り始めた。

 

「……チックショオオオオオオオオオオオ!」

「うるさい」

 

 敗北感を味わった歩佳に青葉はツッコんだ。

 

「それはそれとして、私と歩佳から目を放してスマホを弄り出すというのも珍しい」

 

 歩佳は長い金髪で巨乳を持つ朗らかな美少女だ。

 青葉も群青色のショートボブで、保護欲を刺激する妹系ダウナー美少女である。

 

 この二人から目を放してスマホを弄り出すというのも、なかなか珍しい。

 

「性欲がないとか?」

「あるわ! いくらなんでも失礼すぎんだろ!? 彼女がいるだけだよ!」

「えー! 付き合ってる人いるの!? いつから!?」

「昨日」

「なぬぅ!? 私がレールガンをぶっ放してるときに彼女作ってたの!?」

「そっちの事情なんぞ知らんわ!」

「ごもっとも」

 

 青葉は頷いた。

 

「……一昨日。渇明さんとデュエルして負けたんだよ。でも、まぁ、カッコよかったからって、クラスメイトが告白してくれて、付き合うことになった」

「おお……かわいい子? 写真ある? いっでぇ!」

 

 歩佳の脳天に手刀が叩き込まれた。

 

「踏み込みすぎ」

「ごめんなさい。真面目にやります……」

「……」

 

 どつき漫才にちょっと引いてる炎示であった。

 

「まぁ、気を取り直して……炎示君ってライダーになってどれくらいなの?」

「三か月」

「ほうほう……私は二年くらいやってるからね! すごいでしょう!」

「……ってことは、俺と同じで、中学二年の時にライダーカードを手に入れたのか」

「そういうこと! なんなら、お姉さんが特訓してあげるよ!」

「誰がお姉さんだ!」

「本社の地下には頑丈なデュエルスペースがあるんだよ! というわけでレッツゴー!」

「あ、お、おい、放せって!」

「あー、炎示君。諦めて。私は諦めた」

「ちょ、おい! え、マジで誰も助けてくれねえんだけど!? おーい!」

 

 ★

 

「フフフ……さあ炎示君。私とデュエルだ!」

「……とりあえずボコっとくか」

 

 本社地下のデュエルスペースにて。

 

 歩佳と炎示は、デュエルディスクを腰に装着した。

 

『『DUEL DRIVER』』

 

 二人の腰をベルトが一周して固定される。

 スイッチを押した。

 

『『Your name is……』』

 

 二人とも、ライダーカードを構える。

 

「「変身!」」

 

『KAMEN RIDER SOLAR!』

『KAMEN RIDER NEST!』

 

 二人のベルトから、それぞれ、光と羽があふれ出す。

 

 それぞれがアーマーを形成して、二人に装着されて、仮面ライダーになった。

 

「さあ、不思議な宝石でバチッとする魔法を使っちゃうよ!」

「……なんか考えておくか」

 

 二人がデッキからカードをドローすると、手から消えて、5枚のホログラムになった。

 

「さーて、まずは一気に武器まで揃えないとね」

「『ライズレギオン・マイグレーション』を発動。デッキから『ライズレギオン・ホーク』を2体。『ライズレギオン・ファルコ』を3体墓地に送って、ホークとファルコを特殊召喚!」

 

 ライズレギオン・ファルコ ATK1700 ☆4

 ライズレギオン・ホーク  ATK1700 ☆4

 

「そのまま2体でオーバーレイ! 『ライズレギオン・デュアフレイム』!」

 

 ライズレギオン・デュアフレイム ATK2200 ★4

 

 炎示の両手に、羽の意匠がある双剣が出現。

 そのまま、歩佳に向かって突撃した。

 

「うおっ、はやっ!」

 

 歩佳は驚きつつも、カードを1枚使う。

 

「永続魔法『サンライズ・パルスガン』発動!」

 

 右手に、結晶から削り出したような銃が出現。

 

 それを、炎示に向けて放つ。

 

 次々と電撃弾が銃口から放たれるが、炎示は双剣で叩き落していく。

 

「ほう……」

「もらった!」

 

 炎示が急接近する。

 しかし……。

 

「『サンライズ・バリケード』を特殊召喚!」

 

 二人の間に、バリケードが出現。

 角柱が突き刺さって、そこから電気の網が周囲に広がった。

 

 サンライズ・バリケード DEF1300 ☆1

 

「バリケードの効果でデッキからフィールド魔法、『サンライズ・クリスタルヤード』を手札に! 発動! レベルが上がるよ」

 

 サンライズ・バリケード ☆1→2

 

「チッ、邪魔すぎるな……」

「フフフッ、どうする? こうなったら、遠距離武器を持ってる私は有利だよ!」

 

 次々と引き金を引く。

 

 炎示は双剣で電撃弾を叩き落すが、防戦一方だ。

 

「ぐっ……デュアフレイムの効果で、素材を1つ使って、『ライズレギオン』魔法を手札に加えられる。俺は、『ライズレギオン・トリオ』を手札に加えて、発動! 変身中なら、デッキからライズレギオンを3枚墓地に送れる。俺はスワロウを3枚墓地に送って、墓地から1体を特殊召喚!」

 

 ライズレギオン・スワロウ ATK1500 ☆4

 

『ピッ! ピピッ!』

「トリオを除外して効果発動! フィールドにいるライズレギオンと同名を墓地から蘇生できる。スワロウをもう1体特殊召喚!」

 

 ライズレギオン・スワロウ ATK1500 ☆4

 

「へぇ……え、実質、1枚でモンスター2体出してない?」

「変身効果なら珍しくねえだろ」

「そりゃそうだ!」

「2体でオーバーレイ! エクシーズ召喚! 『ライズレギオン・ファイヤーバード』!」

 

 ライズレギオン・ファイヤーバード ATK2600 ★4

 

「ほう、強そうなモンスターが出てきたねぇ」

「ファイヤーバードの変身効果で、ライズレギオンの戦闘力は上がる!」

「戦闘力……あっ」

 

 炎示はデュアフレイムをバリケードの角柱部分に叩きつける。

 

 明らかにヒビが入った。

 

「そうか! その双剣も『ライズレギオン』モンスターか!」

「このままいけば――」

「クリスタルヤードの効果でデッキから『サンライズ・コンストラクション』を手札に、発動してフェンスを手札に加えて特殊召喚!」

 

 サンライズ・フェンス DEF1900 ☆3

 

「うおっ、また、壁が……」

「デッキから『サンライズ・コースト』を手札に。そのまま発動!」

 

 サンライズ・バリケード ☆2→3

 サンライズ・フェンス  ☆3→4

 

「そして手札から、チューナーモンスター、『サンライズ・アサルトバリア』を召喚!」

 

 サンライズ・アサルトバリア ATK1000 ☆1

 

「ち、チューナー……」

「私はレベル3のバリケードと、レベル4のフェンスに、レベル1のアサルトバリアをチューニング……シンクロ召喚! 『サンライズ・コンバークル』!」

 

 頭に宝石をつけた小さなウサギが、歩佳のフィールドに出現。

 

 サンライズ・コンバークル ATK2600 ☆8

 

「よっしゃあ! 行くよコンちゃん!」

「な、なんだこのウサギは……」

 

 炎示が驚いている間に、コンバークルは変形して、パルスガンの銃口に接続される。

 

「う、ウサギが……」

「イッツ・ショー・タイム!」

 

 引き金を引く。

 

 電撃弾が銃口から放たれて、空中で分裂した。

 

「ぐっ……」

 

 後ろに跳んで回避しようとして……分裂した弾が、全て、炎示を追尾して追ってきた。

 

「うわっ!」

 

 何発か被弾して、炎示は膝をつく。

 

「お……ドロー!」

 

 歩佳はカードをドローした。

 

「ぐっ、ぶ、分裂した弾が追尾してくるっておかしいだろ!」

「コンちゃんが撃てる弾はめちゃくちゃ自由度が高いからねぇ」

「だ、だが、モンスターはそいつだけだ! ファイヤーバード、行くぞ!」

『ピイイッ!』

 

 ファイヤーバードも歩佳に突撃する。

 

 燃え上がる火の鳥だが……。

 

「せいっ!」

 

 後ろに飛びながら、引き金を引く。

 

 それだけで、電撃弾が空中にばらまかれて、ファイヤーバードは進めなくなった。

 

 代わりに炎示が前に出て、弾を切り裂きつつ進む。

 

「その剣、強すぎでしょ」

「ファイヤーバードによる戦闘力向上だ!」

「それだけでは納得できな……ぐえっ」

 

 炎示の蹴りが、歩佳の脇腹に突き刺さった。

 

 歩佳が吹っ飛んで、背中が地面につく。

 

「よし、ドロー! デュアフレイムの効果で、素材を使って、『ライズレギオン・スタンプ』を手札に。これで……墓地から、ファルコとホークを特殊召喚! 手札から、カナリーを通常召喚だ!」

 

 ライズレギオン・ファルコ ATK1700 ☆4

 ライズレギオン・ホーク  ATK1700 ☆4

 ライズレギオン・カナリー ATK1000 ☆4

 

「うえっ……」

「3体で、オーバーレイ! 現れろ。『ライズレギオン・ネストバード』!」

 

 暖かい炎を纏った鳥が、炎示のフィールドに出現。

 

 ライズレギオン・ネストバード ATK2500 ★4

 

「おおっ、ライダー名が含まれてるってことは、エースモンスターかな?」

「その通りだ! ネストバードの効果発動! 墓地のライズレギオンは、ファルコ、ホーク、スワロウの三種類だ! 1500ダウンさせる!」

 

 サンライズ・コンバークル ATK2600→1100

 

「うわっ、コンちゃんがビビった!?」

 

 炎示はベルトのスイッチを押す。

 

『LETHAL PHASE』

 

 炎示の右足に、炎の羽が集まり始めた。

 

「……フフッ」

 

 歩佳もスイッチを押した。

 

『LETHAL PHASE』

 

 歩佳の右足が、光り輝く。

 

「……全然、フィールドが整ってない。今なら、行ける!」

 

 炎示はジャンプして、足を向けて、突っ込んだ。

 

「甘いね」

 

 歩佳もジャンプして、足を構えた。

 

 二人のライダーキックが、空中で衝突する。

 

「うおおおおおおおおおおっ!」

 

 炎示は気合を入れる。

 

「残念。この勝負、お姉さんの勝ちだ!」

 

 突如、周囲から電撃弾が集まってきた。

 

「なっ、い、今までどこに……」

「透明にして隠してたのさ!」

「無法すぎんだろ!」

 

 電撃弾が歩佳の右足に来た。

 

 ダメージを与えるためではなく、キックの威力を増強するための雷撃弾。

 

 それらが集まるたびに、勢いが強くなる。

 

「ぐっ、うおっ、うわああああああああああああああああああああっ!」

 

 そのままキックで競り勝って、歩佳は地面に着地し、炎示は墜落した。

 

 ★

 

「まだまだだねぇ。炎示君。バリケードとフェンス、2体だけのレベルを上げてアサルトバリアでコンちゃんを出す。怪人で私がよくやってる定番ムーブにすら競り負けちゃうとは」

「ぐ、ぐぎぎ……」

 

 どこに出しても腹立つドヤ顔で炎示を煽る歩佳。

 

 煽られた炎示は歯ぎしりするが、負けたのは事実である。

 

「……ま、負けたよ。直ぐに再戦しても簡単には勝てそうにない経験の差も感じた。でも、俺だってもっと強くなるからな!」

「まっ、精々頑張るんだよ少年。いでっ!」

 

 歩佳の脳天に手刀が叩き込まれた。

 

「煽りすぎ」

「ごめんなさい。真面目にやります……」

 

 青葉が呆れながらツッコんだので、歩佳はちょっと大人しくなった。

 

「ていうか、戦ってて思ったんだけど」

「何かな? 私の胸がスーツ越しでも大きいとか!?」

 

 大きな胸を張って自慢する歩佳だが。

 炎示は無視することにした。

 

「なんか、ずっと、嬉しそうにデュエルするんだなって思って」

「えっ?」

「バリケード、フェンス、2枚のフィールド魔法……全部、この会社が作ったんだろ?」

「そうだけど……」

「なんか、凄く嬉しそうに戦ってるし、コンバークルを出してるときは楽しそうだけど、なんか……うーん……まぁいいや」

「いいの!?」

「語彙力ないんだから仕方ないだろ!」

「開き直るんじゃない!」

「……」

 

 青葉は見ていて疲れてきた。

 その時、地下室の扉が開いた。

 

 入ってきたのは久木だ。

 

「炎示君。ここにいたんですね」

「あ、久木さん」

「会議は終わりました。そろそろ帰りますよ」

「分かりました。歩佳さん。それじゃ」

「うん。また来るんだよ! お姉さんが特訓してあげるからね!」

「誰がお姉さんだ」

 

 炎示は手をプラプラ振って、久木に付いて帰っていった。

 

 地下室の扉が閉まって、久木と炎示が見えなくなり……。

 

「はぁ、ねえ、青葉ちゃん」

「何?」

「……炎示君は一体、何が言いたかったんだろうね。みんなが作ってくれたカードを活躍させると嬉しくなるし、コンちゃんを出してるときは楽しい。それ以外に、何があるんだろ」

 

 いつもの朗らかな笑顔ではなく、ちょっと無表情に近い雰囲気で、歩佳はそういった。

 

 ただ、すぐにニッと笑う。

 

「ちょっとお腹すいちゃったから、先に食堂に行ってるね!」

「わかった。私もすぐに行く」

 

 歩佳は走って、地下室を出ていった。

 

 そうして、見えなくなったあたりで……。

 

「コンちゃんが、楽しそうじゃない。か」

 

 別に返答は求めていないが。

 

 青葉は、そう、呟いた。

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