土曜日の午後。
「では、定例会議を始めます」
空閑ソーラーの四階にある会議室。
長机には資料やカードが並び、神妙な顔つきの社員たちが座っている。
ホワイトボードの前に立っているのは、カード開発部の部長を務める里中良悟。
「歩佳さんが常備するデッキをどうするか。丁寧に考えていきましょう」
空閑ソーラーの専属ライダーである『仮面ライダーソーラー』。
空閑歩佳が変身し、空閑ソーラーの『法人スコア』を守り、怪人が出現すればそれを討伐している。
ただ、デュエルモンスターズは日々進化しており、しかしデッキに入れられるカード枚数は限られている。
そんな中でも、多くの相手に勝つ必要がある歩佳のために、大人がしっかりデッキを構築しているのだ。
「……ねえ、歩佳」
「どうしたの青葉ちゃん」
「重要な会議だと思うけど、私って入って大丈夫なの?」
「友達だから大丈夫!」
「一回、セキュリティというものを叩き込んだ方がいいような……いや覚えられないか」
で、歩佳は当然として、青葉もここにいた。
「大丈夫です。一般デュエリストの目線も必要ですから」
「そう、ですか……」
多角的なところから意見を取り入れることが重要なのは青葉も重々承知しているが、だからといって完全に外部の目線を入れるのはどうなのか。
まぁ、部長が良いと言っているのだから、青葉が遠慮する必要はない。
「加えて、青葉さんは歩佳さんのご友人ですからね。歩佳さんが私たちに相談しにくいことであっても、青葉さんには相談できることもあるでしょう。今日の朝に資料を作り直して、開示する情報の重要度も調整してます」
「そ、そこまで準備してくれてるなら……」
良悟が優秀過ぎてちょっとビビっている青葉であった。
「さて、まず基本コンセプトですが……動きに癖はありますが、基本はシンプルです。サンライズの柵を並べて、フィールド魔法を発動して全体のレベルを上げて、高レベルのシンクロモンスターにつなげていく」
良悟がホワイトボードに基本情報を書いていく。
「怪人戦においてはスピード感も必要ですから、基本的には柵を2体と、アサルトバリアを使い、1体のシンクロモンスターを狙うことになります」
「だよね。怪人との戦いが長くなったら、周囲への被害も大きくなるし、さっさと片付けるためにそうしてるよ」
ライダーとして格闘戦を行う際、歩佳は『バリケード』と『フェンス』のレベルを調整しつつ、そこにレベル1チューナーである『アサルトバリア』をチューニングしてレベル8を狙う。
企業対抗戦なら会社の技術力を見せるために大型シンクロを並べることもあるが、怪人戦において重要なのは『被害を少なくすること』だ。
「怪人討伐の報道においては、どのような怪人なのか、そして『被害状況』も掲載されます。ここで『被害ゼロ』で怪人を倒すのは非常に大きい」
「そうですよね!」
「怪人討伐報道の後は株価もちょっと上がってます」
「青葉ちゃん。株価って何?」
「お前企業の評判を守る気あんのか?」
青葉からストレートなツッコミが飛んできた。
「えー……戦術に関しては、『サンライズ・パルスガン』を最速で準備しつつ、怪人の動きを牽制、そこから高レベルシンクロにつなげる形になっています」
「あの、柵を破壊されてシンクロを阻害されたら、どうするんですか?」
「そのために、これまでの歩佳さんの動きを阻害せず、直感的に扱える構築にしています。格闘戦においては、『相手に膝か背中を地面につかせる』ことで、『ドローフェイズ』に移行できますが、柵を展開してその後ろから銃撃する歩佳さんからダウンを取るのは至難の業。リソース勝負に持ち込めば、怪人戦において非常に有利になります」
「おお……」
相手のダウンを取れたら自分のドローフェイズになる。
当然、エンドフェイズを経由してからドローフェイズになるため、『1ターンに1度』もリセットされる。
非常にダウンを取ることは大きいが、柵があればそれも難しくなる。
「加えて、仮面ライダーのマスク部分には、格闘を行いつつもカード展開を補助する専用UIがあります。『遊戯省』の公式発表では、これは仮面ライダーには備わっていて、怪人は持っていないもの。手癖で直感的に扱えるデッキ構築にするのは、怪人よりもカード展開を高速で行う意味もあります」
「……デッキを変えたばかりのライダーが怪人に負けた。みたいなニュースってみたことあるけど、あれってそれで起こるんだ」
「そういうことです……青葉さん。ニッチなニュースをご存じですね」
「青葉ちゃんは食べた栄養がちゃんと頭に入ってるからね! づあっ!」
脇腹に手刀が叩き込まれた。
「だから私が貧乳だと言いたいのか。もういっぺん入れるぞオイ」
「ごめんなさい。真面目にやります……」
脇腹を抑えつつ謝る歩佳。
「話を戻して」
良悟は無視した。
「普段、歩佳さんがデュエルディスクに入れるデッキに関しては、あくまでも怪人戦を想定しています。他ライダーと戦うことはほぼ考えません」
「え、そうなの?」
青葉が首を傾げた。
「ええ、企業対抗戦は、どんなライダーが来るのかが事前情報で分かります。それに合わせた構築にする必要がありますし、負けてもスコアが全て取られることはありません。ただ、怪人は負けたらスコアを食われます。そっちの方が被害があまりにも大きい、優先順位はそちらの方が圧倒的に上です」
良悟はそう言って……視線を社員の一人に向けた。
「
犀川、と呼ばれた三十代半ばの男は、流れが気になるようだ。
「あの、ライダー相手を想定したカードを普段入れないのは、少し、疑問が……」
「犀川さん。少し前に怪人に襲われて、スコアを食われたのでしょう? ライダーに遭遇するより、怪人に遭遇する確率の方が高いんです。それを身をもって知ったはずでは?」
「あ、はい……」
「街中でライダーに遭遇したとして、そこで法人スコアをかけたデュエルをするはずもない。企業対抗戦の日程が決まり次第考えるべきこと」
「ですが……」
「最初に言いましたよね。『歩佳さんが常備するデッキをどうするか』と。それが定例会議の役割です」
「……」
良悟の雰囲気だが、あまり声量は変わっていないものの、かなり威圧的だ。
言っていることに間違いはない。
会議のコンセプトがはっきりしているため、そこからズレた発言をすれば、話が散らかる。
ただ……良悟の視線は、時々、歩佳に向いていた。
(……歩佳がいるから声量は抑えてるのか。いなかったらどうなっているのやら)
青葉は内心でそんなことを思っていたが、口には出さなかった。
「では、デッキの弱点にも触れておきましょう」
「むっ? デッキの弱点?」
「ええ、とはいえ、動きが個性的なシンクロデッキですから、歩佳さんの理想も、その崩し方もはっきりしています」
いくつか、ホワイトボードに書いていく。
「チューナーの破壊。フィールド魔法の発動封殺は基本として……」
慣れた手つきで書いていく。
「フィールド魔法でレベルを上げる都合上、モンスターを裏側守備表示にされるだけでも、反転召喚した時はレベルが戻ってしまいます」
「そうだね! あれはめっちゃウザい!」
「やかましいわ」
青葉から冷たいツッコミが飛んできた。
「とはいえ、怪人側も、妨害を無限に出来るわけではない。怪人は『デュエルUI』がないため、デッキ構築がグッドスタッフになりがちです。しかも、相手を妨害するより、怪人としての個性を出してくるカードが多い。対策カードを多くする必要はありません。『サンライズ』カードの中で解決札をいくつかピン刺しして、怪人からの妨害が来ても展開を押し通すことが重要です」
サラサラとホワイトボードに書いていく。
「……あの」
「なんですか?」
青葉が手を上げた。
「良悟さん。字、めっちゃ綺麗ですね」
「硬筆六段です」
「はっ!?」
「こういうのは幼いころに叩き込んでおいた方がいいので、高校の時に取りました。最近は当時よりは汚いですよ」
「……」
青葉は『なんなんだコイツ!?』となってきたようだ。
「さて、解決用の札としてはこれらが――」
良悟は、部外者である青葉からの質問にも的確で、歩佳が怪人を相手にするときに何を入れるべきなのか、全てに理屈がある。
何より、『歩佳の手癖と直感』という、本来なら言語化が難しいことすらもデッキ構築に取り入れて、新たに投入するカードや抜くカードにも理屈がある。
少しでも理屈が通っていない部下には威圧的だが。
……ただし。
(コンバークルが、話題に出てこない。怪人戦の話をしてるのに)
構築の練度は非常に高い。
カード開発の腕も確かで、それがデッキにおいてどういう意義を持っているのかを正確に把握している。
とはいえ、青葉から見て、良悟からは『歩佳に評価してもらいたい』といったオーラが漏れ出ている。
だが、歩佳のエースモンスターである、頭に宝石が付いた子ウサギ、『サンライズ・コンバークル』が、全く話題に出てこない。
「……あの、いいですか」
「ええ」
「サンライズ・コンバークルって、どうするんですか?」
「おお、コンちゃん!」
青葉の質問に対し、社員は少し苦い顔になり、良悟は表情が変わらない。
「カード開発部長であり、デッキ構築にも責任がある立場としては、『扱いきれないカード』を前提にしません」
「えっ」
「ライダーとして戦えば、カードは実体化する。ただ、内部データが分かり切っていないカードの長所を伸ばすことは考えません。メインデッキで、妨害を踏み越えて、やりたいことを押し通す構築にしています」
「ほ、ほう……」
「同じレベル8なら、レールガンナーでも戦えるように組んでいます。シンクロ兵器たちは、空閑ソーラーが開発したカードで、内部データも全てわかっていますから」
「……そうですか」
「青葉ちゃん。大丈夫! デッキはしっかりしてるし、ちゃんと活躍できるからね!」
「……そう」
青葉は、それ以上は指摘しなかった。
★
その日の夜。
水面市の工業地区にて。
ネジを作っている工場、『溝口製鉄』の扉を開ける男がいた。
空閑ソーラー社員で、昼に、デッキ構築会議にも出席していた犀川である。
「……お、犀川か。久しいな」
「社長、お久しぶりです」
五十代半ばの男が、事務室で書類を作っていた。
犀川が入ってきたのを見て、ソファにお茶のペットボトルを用意している。
「空閑ソーラーに転職して、どうだ?」
「……まぁ、散々ですね」
「技術力を買われて転職したのに散々とは、人間関係か?」
「ええ、上司がねぇ。実力は確かなんですけど、叱るときの声が大きいんですよ」
「ほう」
「しかも、社長令嬢の前では声量を抑えてるのに、いないところではクッソデカいんですよねぇ。今日も昼に会議があって、その後に呼び出されて散々怒鳴られたし」
「それは災難だったな」
「しかも、裏路地で他の怪人を狩ってたら、見たことねえライダーに遭遇して、オールベット仕掛けたらスコア全損ですよ」
「見たこともないライダー?」
「ええ、『仮面ライダーヘリオス』……プレミアムスコア持ちです」
「ほう……それはなかなか。ん? 仮面ライダー相手に、ウィード怪人で挑んだのか?」
「ああいや、会社から買い与えられた奴じゃなくて、自分でディーラーから買ったやつです」
犀川は、『ライノ怪人』の怪人カードを見せた。
「自分で中級怪人カードを買ったのか。高かっただろ」
「ええ、まぁ……」
出されたお茶を飲んでいる。
その時、横のドアが開いた。
入ってきたのは……ウィード怪人だ。
重そうな箱を軽々抱えて、事務室に入ってきた。
「あ、社長、これどこに……って、犀川さんじゃないですか! お久しぶりです」
「……いや、誰かわかんねえって」
「
「ああ、久しぶり」
「機会があればまた飲みにいきましょうよ。あ、社長、これ置いておきますね」
「おお、すまんな」
「いえいえ、50キロの箱も、ウィード怪人なら軽々運べますからね。それでは」
浜下。というらしいウィード怪人は、事務室を出ていった。
「……で、今日は近況報告だけか?」
「いや、これを見せに来たんです」
茶封筒を鞄から取り出した。
社長、
「……これは、仮面ライダーソーラーのデッキレシピか」
「ええ。一枚一枚、採用理由が書いてますよ」
「ふむ、そうだな。しかも採用理由のほとんどが『空閑歩佳の手癖や直観』を前提としたものだ。格闘戦もこなすライダーにとって、これほどの裏方はいないといえる」
「でしょ?」
「……それで、これで私にどうしてほしいんだ?」
「まぁ……端的に言えば、『ウゼェ上司の失態』が見たくなったんですよ」
「なるほど」
資料を机に置いた。
「自分で倒すという方法はとらないのか? その会議にいたんだろう?」
「歩佳さんは、ライダーとしての才能は本物ですよ。中級怪人じゃ勝てない。社長は『上位怪人』のカードを持ってますからね」
「なるほど、だから私のところに持ってきたのか」
溝口は少し考えて……。
「法人スコア。基本的には社長か、専属ライダーが持っている。空閑ソーラーなら、仮面ライダーソーラーが管理しているはずか」
「ええ、オールベットで挑んで勝てば、根こそぎですよ」
「確かにそれは美味しいな。お前は良いのか? 自分の会社の評判に傷がつくぞ?」
「……まぁ、規模縮小で追い出されそうになったら、ここに転がり込みますよ」
「随分、お前も悪くなったな」
「社長ほどじゃありませんよ」
「そうか」
溝口はフフッと笑った。
「……あ、そうそう、この前、息子がデュエルイベントに参加して、物販でボックスを買ってきてな」
「ああ、あの坊ちゃんが」
「何パックか剥いていくか?」
そういって、溝口はボックスを取り出した。
会社のロゴは『エクスポーズ・フェイス』となっている。
「……まぁ、何パックか。貰います」
二人で、ボックスを開けて、パックを剥いた。
「……俺のデッキには入らねえな」
「まぁ、私のデッキにも……お、これは面白いカードだな」
「何のカードですか?」
「これだ」
1枚のカードを犀川に見せる。
「……いや、意味わかんないカードですね」
「そうだろう? まぁ、私が元からデッキに入れているカードで使いこなせるからな」
溝口は椅子から立ち上がった。
「ライダーのお嬢さんを相手にする前に、裏路地に行って肩慣らししてくるよ。お前も適当に帰るんだぞ」
「……そうさせてもらいます」
溝口が執務室を出て行ったのを見て、犀川は、パックを剥いた。
「……社員への福利厚生じゃねえよな。俺が剥いていいのかコレ」
気になったのは、それだけであった。
★
「九月の夜の風は冷えるなぁ」
デュエルディスクを付けた溝口は、水面市の裏路地を歩いていた。
この町の裏路地は、怪人が怪人を狩り、スコアを奪い合っている。
そういう、『怪人ゲーム』の参加者たちが集まっている。
「……おいおい、おっさんが一人で何の用だよ」
「リンチにしてやろうぜ!」
「後悔しろよオイ!」
怪人が、三人。
スパイダー、ライノ、カメレオン。
ヘリオスやソーラーが倒したことがある怪人たちだ。
ただ、ライノの中身は犀川ではないし、スパイダーの中身も、ヘリオスが倒した西雲ではない。
怪人カードは、基本的に、一点物はない。
同じ怪人カードでも練度によって強さは変わるため、『倒したことがある怪人だからと言って次も勝てるとは限らない』のが、怪人ゲームの面白いところでもある。
「フフフッ、威勢のいい獲物は嫌いじゃない」
デュエルディスクに、怪人カードを入力し、起動する。
溝口の体に、いくつかのパーツが重なるようにして装着される。
そして、そのパーツたちを束ねるように、一本の大きなネジが胸元に止まって、交差するパーツが固定された。
「ね、ネジ怪人だと……」
「上級だと!?」
「チッ、こっちは三人だ! やるぞ!」
全員の傍に、カードが5枚ずつ出現した。
「フフッ、中級2体を同時に相手するのは、ライダーでもキツイと聞いたことがあるが……」
溝口は、突進してきたライノ怪人の角を、左手で止めた。
「ぐっ、う、動かねぇ……なら、これだ! 『バッファロー』を召喚して、召喚時に同名を出せる!」
ランページ・バッファロー ATK1900 ☆4
ランページ・バッファロー ATK1900 ☆4
「お前ら、背後から突進しろ!」
バッファロー2頭が、溝口に向かって突撃する。
「ふむ……フンッ!」
「おわあああっ!」
ライノ怪人を持ち上げて、そのままバッファローに向かって投げた。
突進してきたバッファローたちに直撃し、そのままバッファローごと吹っ飛ばす。
「ダウン。1枚ドローと……」
「舐めんな! 『タンク・スパイダー』を召喚して『スパイダー・フュージョン』を手札に! そのまま発動! フィールドと手札のタンク・スパイダーを1体ずつ素材として、融合! 『ヴァイオレット・スパイダー』!」
ヴァイオレット・スパイダー ATK2400 ☆7
「紫の蜘蛛か……」
「テメェの手札を1枚。裏側除外だ!」
「ほう……ん?」
溝口の真上で、空間が揺らいだ。
「『ステルス・ブースター』を使ってたのか」
上から襲ってきたカメレオンの腕を掴むと、そのまま、ヴァイオレット・スパイダーにぶん投げる。
「ぐおおっ! な、何で分かった!?」
「経験豊富なのでね」
ヴァイオレット・スパイダーが、糸を伸ばしてくる。
溝口は糸を掴むと、引っ張って……後ろから突進してきたバッファローに叩きつけた。
「ぐっ……」
「なんだ。どっちもモンスターを突撃させてきて……もう怖くなったか?」
「チッ、ふざけんじゃねえぞジジイ! 『ステルス大作戦』を発動。デッキからカメレオンを2体、『パープル・カメレオン』を2体特殊召喚!」
パープル・カメレオン ATK1000 ☆5
パープル・カメレオン ATK1000 ☆5
「2体でオーバーレイ! 『パープルラッシュ・カメレオン』!」
パープルラッシュ・カメレオン ATK2600 ★5
「ほう……」
「だったら俺も! チューナーモンスター、『ランページ・ボア』を召喚! 『ランページ・ストライク』を手札に!」
ランページ・ボア ATK100 ☆1
「さらに、レベル4のバッファロー2体にチューニング! シンクロ召喚! 『ランページ・マンモス』!」
ランページ・マンモス ATK3200 ☆9
「……ふむ、『ヴァイオレット・スパイダー』、『パープルラッシュ・カメレオン』、『ランページ・マンモス』……中級デッキのエースが揃ったか」
「どうだジジイ。これで……」
溝口は、手札1枚に触れた。
「やれやれ、威勢だけは良いな」
「何?」
「私の、エースモンスターを見せてやろう。手札のこのモンスターは、変身中ならば、デッキから『激流葬』を1枚、このターン発動可能な状態でセットすることをコストに……リリースなしで召喚できる」
「んなっ……」
「現れろ。『
螺芯兵スクリュード ATK2700 ☆8
出現したのは、右腕がパイルバンカーになっている二足歩行のロボットだ。
「そして、スクリュードの召喚に反応し、『激流葬』を発動。フィールドのモンスターをすべて破壊する!」
「「「うああああああっ!」」」
蜘蛛も、マンモスも、カメレオンも。
全て、激流に流されて消えた。
「な、なんで、そのモンスターは……」
「効果破壊耐性くらい持っているに決まってるだろう。頑丈なネジは、激流になど負けんよ。さて、スクリュード、装備だ」
スクリュードが頷くと、右腕のパイルバンカーを残して消滅する。
そのパイルバンカーが、溝口の右腕に装着された。
「も、モンスターを、直接装備だと……」
「ふむ、手札を1枚伏せておくか。さてと」
次の瞬間、彼の体は、スパイダーの目の前にいた。
「なっ……」
「ほれ」
パイルバンカーが、スパイダーの胸元に炸裂した。
「ごあああああああああああっ!」
「フフッ、ダウン。1枚ドロー……ん?」
「おらあああああああああああっ!」
ライノ怪人が、突進してきた。
そしてその後ろには、ランページ・マンモスがいる。
「むっ、『死者蘇生』でも使ったか? 確かマンモスがいると突進力が……」
「それだけじゃねえ! 『ランページ・ストライク』発動! 俺に触れたら、ダウンは免れねえぞ!」
「武器で止めれば……いや」
パイルバンカー、起動準備完了。
ライノ怪人の角に、それが炸裂した。
「がっ……」
そのまま、前のめりに倒れた。
「ダウン。1ドロー……さて、カメレオン君はどこかな? まあどのみちオールベットだ。突っ込んで来ようと逃げようと変わらんがね」
「ぐっ、くそ……『ステルス・リボーン』を発動。『パープルラッシュ・カメレオン』を蘇生!」
パープルラッシュ・カメレオン ATK2600 ★5
「おらああああああああああっ!」
「……見えない状態で同時攻撃か。カメレオンの特殊召喚に対して、伏せていた『激流葬』を発動」
モンスターは、見えない。
だが、激流は、溝口の正面を流していった。
「モンスターが正面、なら怪人は……」
振り向きながら、パイルバンカーを構える。
「なっ……」
「背後からと相場は決まっている」
胸元に、パイルバンカーが炸裂した。
「ごっ、がっ、ああああ……」
そのまま倒れた。
三人とも、怪人化が解除される。
表と違って……彼らの体は、怪人の姿は投影されない。
「まぁ、肩慣らしには十分か。パックで当てた面白いカードを使うまでもないとは、何ともつまらんが、中級怪人ならこんなものだろう」
溝口はオールベットで三人から得たスコアを確認する。
「ふむ、こんなものか。ああ、そうだ」
溝口も怪人化を解除する。
ポケットからメモ帳を取り出して……。
「ライダーのスコアがオールベットでなくなれば、株価の暴落は免れない。証券会社に行って、空売りの手続きをしておかないとな。明日は日曜か。開いてないから月曜にでも行くとしよう」
メモ帳を閉じて、溝口は裏路地を後にした。