遊戯王 KAMEN RIDER HELIOS   作:レルクス

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第13話 ソーラーVSネジ怪人

 月曜日の昼休み。

 

 歩佳は青葉と話していた。

 

「ねえ、青葉ちゃん」

「どうしたの?」

「私、ちょっと株について勉強してるんだよ」

「ほう……」

 

 土曜日、デッキ構築の会議で、『歩佳が怪人に勝つと報道後に空閑ソーラーの株がちょっと上がっている』と言った話の時に『株価って何?』といっていた。

 

 ただ、会社の評判において株価は間違いなく重要である。

 

 社長令嬢であり、これからも会社のために戦い、そして継いでいくことを考えるなら、勉強することはたくさんあるのだ。

 

「それで、空売りって、何?」

「……」

 

 本を読んでもわからなかったのか? と思う反面、青葉としても、『初心者の直感に反する』ことは理解している。

 

「……構造の話より、例え話の方がいいかな」

「助かる!」

 

 本を読んでもわからなかったのだ。構造についてあれこれ言っても仕方がないだろう。

 

「まず、私は『一週間後に返す』と約束して、歩佳からレアカードを1枚貸してもらう」

「ふむふむ」

「で、私はそれを中古店に売る。それはもう嬉しそうな表情で」

「人のものを何だと思ってるの!? ていうかその笑顔の情報っている!?」

 

 借りたものを持って中古店という話に歩佳は驚愕した。

 

 そして何故、嬉しそうに持っていくのか。

 

「で、1万円ゲット」

「そこそこのレアカードだね!?」

「しかし次の日に発売されたパックの中には、そのレアカードの天敵としか思えないカードが封入されていた」

「うごごごご」

「そして別のパックでは、そのレアカードが再録されている」

「ぐげげげげ……」

 

 天敵の登場とカードの再録。

 

 どちらも、カードの価値を低くする要因としては、よく知られた話だ。

 

「その結果、そのレアカードの値段は下がる」

「まぁ、下がるよね」

「その時点で、値下がりしたそのレアカードを5000円で買い戻す」

「おっ?」

「私は買い戻したレアカードを歩佳に返却する」

「と、いうことは?」

「私は、『来週に返す』という信用と、『そのカードが値下がりする』という予測だけで、5000円の儲けが出た。これが空売りのざっくりとした構造」

「……」

 

 歩佳は数秒、停止した。

 そして……。

 

「人の心あるんか!?」

「知らんな」

 

 青葉はぶった切った。

 

「で、土曜日に良悟さんが言ってたでしょ? 歩佳が怪人を倒したら空閑ソーラーの株価が上がったって」

「そうだね」

「逆も起こりうる……というかこの業界だと珍しくないこととして、専属ライダーが怪人に負けたら、その会社の株価は下がる」

「そうだね」

「要するに、歩佳が怪人に負けると思ってる人がいて、空閑ソーラーの株を空売りして、歩佳が実際に負けたら、その人はウハウハになる」

「青葉ちゃんって本当に私の友達なの!?」

「友達」

「お、おぅ……」

 

 即答されてちょっと気圧された歩佳。

 

「というか……株って、借りれるんだね! そしてそれを売っていいんだ!」

「1株ごとに一切の違いがないから、証券会社にいけば借りられる」

「てことは、証券会社が株をめっちゃ抱えてるってこと?」

「それもあるけど、株を多数持ってる人が、余ってる分を証券会社に貸して、証券会社から手数料を貰ってる」

「なぬぅ!? そこでもお金が発生してるの!?」

「その通り」

「……なんか、こう、直感に反する!」

「金融は初歩を超えたらこんなものだよ」

 

 青葉は弁当の唐揚げを頬張った。

 

「……ちなみに、これで歩佳が怪人に勝った場合」

「おっ……え、どうなるの?」

「さっきのレアカードの例でいうと、売った次の日のパックに、そのカードとめっちゃ相性がいいカードが封入されていて、価格が上がる」

「そうなったら金額は上がるね」

「私がそのカードを買い戻そうと思った時に、15000円を払う必要が出てきた。それを買い戻そうとすると5000円も損する」

「なるほど!」

「何嬉しそうにしてんだボケ」

 

 人の不幸は蜜の味。ではないが、そこに儲けを出そうとする人間は、当てが外れると大損するのだ。

 

「まぁ、カードの価値はそんな単純に変動するものじゃないけど、例え話としてはこんなものでしょ」

「ふーむ……要するに、専属ライダーを雇いましたって会社があっても、ライダーが弱そうだったら空売りされるってことだね」

「そういうこともある」

 

 青葉は群堂炎示……仮面ライダーネストを思い出した。

 

 あのクソガキ感。ライダーになったばかりのころは相当、調子に乗っていた可能性がある。

 もちろん、『負ければいい』と『負けるかも』は別なので、そこで空売りするかどうかは直結しないが、『炎示を弱そうだと思った人』が空売りで自爆した可能性はある。

 

 株の売買なので自己責任ではあるが。

 

「そこで怪人とか、企業対抗戦で他のライダーに勝ったら『ざまぁみやがれ!』ってなるんだね!」

「めちゃくちゃ空売りという概念が嫌いになったのはわかったけど、淘汰されていない以上は残る理由がある。ということで、そこも勉強しておくように」

「うごっ……」

 

 明確に釘を刺された歩佳であった。

 

 ★

 

 放課後。

 

「んああああっ……授業終わり!」

 

 授業が終わって、歩佳は両手を上げて伸びをした。

 

 それだけで、歩佳の大きな胸が少し揺れる。

 

 周囲の男子生徒の視線が、ちょっと揺れた。

 

 ……なんとも罪深い少女ではあるが、これまでの言動を振り返ると、歩佳は『自分が可愛くてスタイルが良いこと』は自覚しているし、人をからかう時には利用するのだ。

 

 それでいいのか。社長令嬢。

 

「青葉ちゃん。ちょっと買い食いしよう!」

「どこに?」

「『スパイシー・ホイール』ってキッチンカーがあるんだよ。ピザとかハンバーガーとか、唐揚げが売ってる」

「あ、知ってる。来てたんだ。行く」

「おお、いつもより乗り気だね……」

 

 というわけで、その『スパイシー・ホイール』というキッチンカーがある場所に、二人で向かうことに。

 

「そういえば、渇明さんが名前に出してたような……行ってみるか」

 

 遊陽も行ってみることにした。

 

 ★

 

「お、おお……」

 

 スパイスたっぷりのピザを受け取って、歩佳は感激。

 

「ジューシー。しかもスパイスが効いてる。美味い」

 

 青葉も唐揚げを買って、出来栄えに感動。

 

「フフッ、たくさん食べてね」

 

 キッチンカーだが、以前、渇明と炎示がデュエルした広場を使っている。

 

 なかなかの順番待ちとなっており、それだけ人気のようだ。

 

 そして、その人気の一端だが……。

 

「刺喜(さしき)。次は唐揚げMサイズ」

「はいはーい。直ぐに作るから、お母さんはお客さん篭絡しといてねー」

「適当な事言わないの」

 

 スパイシー・ホイールを営業しているのは、椎名灼夜(しいなしゃくや)と、椎名刺喜(しいなさしき)の母子だ。

 

 灼夜は、金髪を長く伸ばして、スタイル抜群で妖艶な雰囲気を放っている。

 娘の刺喜は、そんな杓夜に似て美人であり、雰囲気は大人なのにどこか軽い印象だ。

 

 美人の母娘が運営する、美味くて値段もそこそこのキッチンカー。

 

 こう言っては何だが、『そりゃ稼げるだろう』という話ではある。

 

「ピザめっちゃ美味いね。それに、灼夜さんの胸。何度見てもすごいね」

「Gと誰かが言ってた」

「そうだね。私よりカップサイズが二つ上とは、なかなか見ないよあれは」

「……娘の方も大きくない?」

「Dはありそうだね。是非ともハグハグしたいね! いっでぇ!」

 

 頭に手刀が叩き込まれた。

 

「ふざけてるともういっぺん入れるからな?」

「ごめんなさい。真面目にやります……」

 

 どつき漫才こそ行われているが、それでも美少女二人の話だ。

 

 この町の人間なら、この半年で見慣れたものである。

 

「……一体何やってんだか」

 

 遊陽としては、まだ、ため息をついていたが。

 

「えーと、注文は」

「あ、ダブルチーズバーガーのセットで以上です」

「はい。お支払いは……」

「あ、スマホで」

 

 スマホを当てて決済する。

 

「FIELD 23PRO……珍しいですね」

「あー。型落ち品を買いまして」

「そうですか」

「お母さん。できたよー」

 

 刺喜がセットを用意して、遊陽に渡した。

 

「ありがとうございます」

「またいらっしゃってくださいね~」

 

 良い笑顔の刺喜。

 

 顔立ちは美人だが、表情はとても柔らかい。

 

「あぁ、はい」

 

 遊陽は適当にうなずいて、キッチンカーを離れていった。

 

「……これで、行列はひとまず終わりかぁ」

 

 刺喜は、離れていく遊陽を見ている。

 

「で、あれが、帯包遊陽(おびかねゆうひ)君だね」

「そうね。聞いてた通りよ」

 

 二人はそういいつつも、作業の手は止めない。

 

「あ、次のお客さん」

「いらっしゃいませ。ご注文は何に――」

 

 灼夜がそういった時だった。

 

 

 広場の中央に、ズドオオオオオオンッ! と、何かが降ってきた。

 

 

「っ! ……青葉ちゃん」

「あれは……」

 

 ベンチで食べていた歩佳と青葉は、降ってきた何かを見る。

 

「……ふむ、なかなか誘えそうもなかったのでお邪魔させてもらったよ」

 

 全身を装甲で覆って、それを胸元の大きなネジで止めているような歪な外見。

 

 ネジ怪人が、広場に、突如として現れた。

 

「怪人か、なら、私の出番だああああっ!」

 

 歩佳はデュエルディスクを腕から外して、腰に付けた。

 

『DUEL DRIVER』

 

 スイッチを押す。

 

『Your name is……』

 

「変身!」

 

『KAMEN RIDER SOLAR!』

 

 光が増幅し、アーマーとなって、歩佳に装着される。

 

 仮面ライダーソーラーになった。

 

「さあ、不思議な宝石でバチッとする魔法を使っちゃうよ!」

 

 ソーラーの登場……というより、すでに広場に歩佳がいたことで、広場では混乱が少ない。

 

「早く、デュエルディスクの電源を切って避難して」

 

 青葉は近くの子供たちのところに行って、避難誘導している。

 

「大丈夫、大丈夫だ。焦らずに行こう」

 

 腰を抜かしている人も多くいる。

 遊陽はそんな人たちに手を貸して、奥に連れていく。

 

「手札から『サンライズ・コンストラクション』を発動! デッキから『サンライズ・バリケード』を手札に加えて、特殊召喚!」

 

 サンライズ・バリケード DEF1300 ☆1

 

 怪人と人の間を遮るように、バリケードが出現。

 

「モンスター効果で、デッキからフィールド魔法、『サンライズ・クリスタルヤード』を手札に! このまま――」

「手札から永続魔法、『螺芯兵の地盤締結』を発動。発動時の効果処理として、デッキから『螺芯兵スクリュード』を名称指定して手札に加えつつ……これがフィールドにある場合、相手はフィールド魔法を発動できない」

「んなっ……」

 

 フィールド魔法の発動封殺。

 

 ソーラーのデッキは、『フィールド魔法によってモンスター全てのレベルを上げて、レベルが高いシンクロモンスターにつなげる』というものだ。

 

 それを止められると、レベルを上昇させることはできない。

 

「だけど……手札から『サンライズ・スクリーン』を特殊召喚! 自分フィールドに『サンライズ』カードがあれば特殊召喚できる!」

 

 サンライズ・スクリーン DEF1500 ☆2

 

「ほう、諦めないか」

 

 ネジ怪人は歩佳に向かって突撃した。

 

「スクリーンの効果で、サンライズ永続魔法であるパルスガンを手札に、発動!」

 

 歩佳の右手に、結晶から削り出して作ったような銃が出現。

 

 電撃弾を放った。

 

 しかし、ネジ怪人は一切避けることなく、その身に受ける。

 

 一切怯むことなく、突っ込んでくる。

 

「威力不足か……」

 

 殴りかかってくるネジ怪人の拳を回避して、その腹に左手でパンチを叩き込む。

 

「づぁ、が、頑丈すぎ」

「当たり前だ」

 

 しかし、歩佳は痛がりつつも、素早く距離を取る。

 

「ふむ、まだ諦めていないようだ」

「そりゃ、そうだよ。私は魔法カード『サンライズ・サンシャイン』を発動。デッキから『サンライズ』モンスターを1体、特殊召喚できる!」

「それは何とも、無駄なことを……」

「変身中なら、『サンライズ』フィールド魔法を捨てて発動することもできる。『サンライズ・クリスタルヤード』を捨てて発動するよ!」

「むぅ」

 

 少し、ネジ怪人は不審に思ったようだ。

 

「私は『螺芯兵スクリュード』を召喚しよう。変身中なら、『激流葬』を発動可能状態でセットした後、特殊召喚できる」

「んなっ……」

 

 螺芯兵スクリュード ATK2700 ☆8

 

 フィールドに出現したのは、右手にパイルバンカーを装備した二足歩行ロボットだ。

 

「で、サンシャインの効果は何かな?」

「ぐっ……で、デッキからチューナーモンスター、『アサルトバリア』を特殊召喚!」

 

 サンライズ・アサルトバリア ATK1000 ☆1

 

「フィールド魔法を使って発動したなら……自分フィールドのサンライズモンスターのレベルが、1つずつ上がる」

 

 サンライズ・バリケード   ☆1→2

 サンライズ・スクリーン   ☆2→3

 サンライズ・アサルトバリア ☆1→2

 

「合計レベル7か。さて、シンクロ召喚するのかね?」

「ぐっ……」

 

 歩佳は仮面の下で顔を歪ませた。

 

 歩佳のエクストラデッキに、レベル7以下のシンクロモンスターは入っていない。

 

 良悟たちが組んだデッキだが、レベル7は、入っていない。

 

「都合よく、カードは作れないんだよねぇ……」

 

 歩佳は残りの手札を見る。

 

「まだ、諦めていないか。いいだろう。『螺芯兵スクリュード』、私に装備だ」

 

 命令を受けたスクリュードは、右腕のパイルバンカーを残して消滅する。

 

 それが、ネジ怪人の右手に装着された。

 

「も、モンスターを武器に……」

「そういうこともある。さてと……」

 

 ネジ怪人は歩佳に急接近した。

 

「くっ……」

 

 パイルバンカーの先端を歩佳に向ける。

 そのまま、体を逸ら……。

 

「えっ」

 

 地面に、釘が刺さっていて。

 

 うまく、姿勢が……。

 

 

 ズガンッ!

 

 

「がっ……」

 

 パイルバンカーが歩佳の胸に炸裂して、そのまま吹き飛んだ。

 

「さて、ドローしようか……永続魔法、『螺芯兵の陣地』を発動していた。その変身効果により、フィールドに『螺芯兵スクリュード』がいるなら、地面に釘を打ち込める。ただ頑丈なだけのシンプルな釘だ」

「がふっ、はぁ、はぁ……」

「しかし、足腰が上手く使えないことは、戦闘において非常に重要だ。陣地とはこうして用意するものだよ」

「じ、助言どうも……」

 

 歩佳は立ち上がる。

 

 しかし、その視線が、下に、チラチラ向かっている。

 

「フフッ、そうだ。君は足元にネジが刺さっていないか、それがここから気になり続ける。そしてそれは……」

 

 再度、ネジ怪人は歩佳に急接近する。

 

「あっ」

「集中力の低下だ」

 

 パイルバンカーが、炸裂する。

 

「っ!」

 

 歩佳は上半身だけをひねってパイルバンカーを回避すると、その右腕を掴んで、そのままの勢いで背負い投げ!

 

「おりゃあ!」

「ぐおおっ……」

 

 ネジ怪人の体が、背中から地面に墜落する。

 

「よし、ドロー! 手札から2体目の『サンライズ・バリケード』を特殊召喚! 2枚目のクリスタルヤードを手札に!」

 

 サンライズ・バリケード DEF1300 ☆1

 

「これでレベル8――」

「『激流葬』を発動。忘れたのかな?」

 

 流されていく。

 

 フィールドにいた4体の壁が、流されていく……。

 

 わけにはいかない!

 

「速攻魔法、『サンライズ・セーフティ』を発動! このターン、私のレベル7以下のサンライズは効果破壊されない!」

「そうか。私のスクリュードも、永続効果で破壊されない」

 

 激流葬は、発動しただけで終わった。

 

 ただ……。

 

「フンッ」

 

 ネジ怪人は、右腕で、パンチを繰り出す。

 

「えっ、ぐっ……」

 

 そのパンチが、歩佳の腹に突き刺さった。

 

「はっ……え、パンチって」

「スクリュードなら装備解除してあそこだ」

「えっ」

 

 歩佳はそちらを見る。

 

 そこでは。

 

 二足歩行のロボットとしての体を取り戻した螺芯兵スクリュードが。

 

 アサルトバリアを、粉砕していた。

 

「あっ……」

「永続魔法、『螺芯兵の墓地締結』を発動。変身中なら、螺芯兵スクリュードが破壊した相手モンスターと同名モンスターは、このデュエル中、特殊召喚出来ない」

「そんな……」

「君のデッキに、チューナーモンスターはアサルトバリア3枚しか入っていないのだろう? 企業対抗戦。というのだったかな。それの映像で、他のチューナーを見たことがない……ただ、『アサルトバリア』を名称指定して展開する強力なカードをいくつか用意して、それで問題ないようにしている」

「うっ……」

「ただ、そのアサルトバリアを指定して封じてしまえば、君のデッキに、チューナーはいない」

「そんな……あっ」

 

 再び、ネジ怪人の右手に、パイルバンカーが……。

 

「あっけないな」

 

 

 ズガンッ!

 

 

「ぎゃっ、ああああっ!」

「歩佳!」

 

 青葉が叫んだ。

 

 パイルバンカーの直撃を受けた歩佳が吹き飛んで、そのまま、地面を転がる。

 

「ドロー……さて、そろそろ終わりで良いか」

 

 ネジ怪人はパイルバンカーの杭を巻き取ると、転がる歩佳に向かって突撃し……。

 

『KAMEN RIDER HELIOS!』

「むっ……」

「させるか! 『ハイドロキッズ・シールド』を発動し、そのまま『プロミネンス・シールド』だ!」

 

 プロミネンス・シールド DEF2500 ★4

 

 仮面ライダーヘリオスが、ネジ怪人の前に飛んできて、盾を構える。

 

 ネジ怪人はパイルバンカーを起動して盾に炸裂させたが、遊陽の構えは揺らがない。

 

「グッ……なかなか良い構えだ。殺気や闘気は薄いが、『守れる自分でありたい』という強い意志を感じる」

「そりゃどうも。ここからは好き勝手にさせねえ」

「そうか……ほう」

 

 ネジ怪人はデュエルディスクを見て、感嘆の息が漏れた。

 

「なるほど。君が、仮面ライダーヘリオスか」

「さっきベルトから鳴り響いた通りだよ」

「新しい仮面ライダーとはな。出てくるとは思っていなかった」

「……いるとは思ってなかった。じゃないのがなんか不気味だが、今は、お前を倒すことにするよ」

 

 ヘリオスはしっかりと、盾を構える。

 

「はぁ、はぁ……仮面、ライダー。私が知らないライダーが、この町に……」

「ソーラー。まだやれるか?」

「も、もちろん、だよ!」

「そうか……それなら」

 

 ヘリオスは、カードを使う。

 

「俺は『プロミネンス・シールド』の素材を使って、1枚ドロー。ハイドロキッズ・シールドが墓地に送られた時、デッキから永続魔法以外の『ハイドロキッズ』魔法……『ハイドロキッズ・プレゼント』を手札に加える。このまま発動だ」

「プレゼント?」

「変身中なら、手札のモンスター1体と、デッキのハイドロキッズ1体を、相手フィールドに特殊召喚できる」

「えっ?」

「デッキの『ハイドロキッズ・レスキュー』と、手札の……『リスト・クロック』を、ソーラーのフィールドに特殊召喚だ」

 

 ハイドロキッズ・レスキュー ATK1400 ☆4

 リスト・クロック      ATK 400 ☆1

 

『お、ユ……ヘリオス! 今日は胸のでけぇ嬢ちゃんと共闘だな!』

「ふざけてる場合か!」

『わりぃわりぃ!』

 

 出てきてすぐにふざけるレスキュー。

 

「リスト・クロック……」

 

 歩佳は、自分のフィールドに特殊召喚されたモンスターを見る。

 

 ★

 

 リスト・クロック

 レベル1 光属性 機械族 ATK400 DEF400

 通常・チューナー

 

 かっこいい腕時計も、誰かが、時間に追われながら作っている。

 人を白昼夢に誘うウサギの、安息の時はいずこへ。

 

 ★

 

「……チューナー」

「レベル3がすでにいる。レスキューと腕時計で出せばいい」

「……わかった!」

 

 歩佳は立ち上がった。

 

「私は、レベル3のスクリーンと、レベル4のハイドロキッズ・レスキューに、レベル1のリスト・クロックをチューニング!」

『よっしゃ! 行くぜ嬢ちゃん!』

「シンクロ召喚! 『サンライズ・コンバークル』!」

 

 サンライズ・コンバークル ATK2600 ☆8

 

 頭に宝石が付いた、小さなウサギが出現。

 

「来た。コンバークル。歩佳の、エースモンスター」

 

 青葉が、壁の後ろで口にした。

 

「エースモンスター……そうか、そういうことか」

 

 ヘリオスは頷いた。

 

「……ヘリオス?」

「いや、なんでもない。俺も俺の展開をやるか。『ハイドロキッズ・スクランブル』を発動。デッキから……スプラとジェットを特殊召喚!」

 

 ハイドロキッズ・スプラ  ATK1200 ☆4

 ハイドロキッズ・ジェット ATK1400 ☆4

 

 出現する、水鉄砲を持った子供と、ジェットパックを背負った子供。

 

 どちらも、二等身でどこかマスコットのような見た目であり……。

 

 コンバークルの背中に、二人で乗っかった。

 

「「はっ!?」」

 

 歩佳とヘリオスは同時に驚愕した。

 

『お、良い感じの乗り心地だぜ!』

『よっしゃぁ! 行くぜコンちゃん!』

『きゅうっ! きゅううっ!』

 

 スプラとジェットがしっかり背中を掴むと、コンちゃんは上機嫌で走り出した!

 

「ちょ、コンちゃん!?」

「何してんだアイツら!?」

 

 コンちゃんが、ネジ怪人に突撃する。

 

「……ふざけたことを」

 

 ネジ怪人はパイルバンカーを向ける。

 

 だが、スプラが水鉄砲でネジ怪人の顔面を狙った。

 

「むっ……」

 

 左手で目元を隠して……。

 

『今だジェット!』

『よしっ!』

 

 ジェットの背中にあるジェットパックが点火!

 

 そのまま、ネジ怪人に向かって加速!

 

 コンちゃんの頭の宝石が、ネジ怪人の腹に直撃した!

 

「ぐ、ごぉ」

 

 なんか変な声が出た。

 

「こ、コンちゃん……」

 

 普段なら、もう、パルスガンの先端に接続している。

 

 だが、今は。

 

 スプラとジェットを乗せて、あんなに……。

 

「しゃーない。手札から永続魔法、『ハイドロキッズ・フィーバー』を発動。変身中なら発動時の効果処理で、デッキから『湿地草原』を1枚、フィールドに置く」

 

 デッキから、1枚のフィールド魔法が場に。

 

「永続効果で、俺のフィールドのハイドロキッズはレベルが2つ下がり、攻撃力が500アップだ」

 

 ハイドロキッズ・スプラ  ATK1200→1700 ☆4→2

 ハイドロキッズ・ジェット ATK1400→1900 ☆4→2

 

「さらに、フィールド魔法、『湿地草原』の効果で、水属性、水族、レベル2となったハイドロキッズたちは、攻撃力が1200アップだ!」

 

 ハイドロキッズ・スプラ  ATK1700→2900

 ハイドロキッズ・ジェット ATK1900→3100

 

『よっしゃああああああっ!』

『張り切っていくぜえええ!』

 

 スプラとジェットは大盛り上がりだ。

 

「え、ちょっ、なんで『湿地草原』を発動できるの!?」

「発動じゃなくて、フィールドに『置いた』んだよ。これは『地盤締結』の影響を受けない」

「ズルい!」

「ズルくて制約をすり抜ける効果だから、変身中しか扱えないんだよ」

 

 実質、永続魔法1枚で、自分フィールド全てのモンスターの攻撃力を1700上げているのと同義だ。

 

 変身しているときだけの強力な効果といわれれば、歩佳としても納得せざるを得ない。

 

「ぐっ、ふざけないでもらおうか! 魔法カード『螺芯兵の電磁魔王』を発動!」

 

 地面から、ネジが連なったようなイカを思わせるモンスターが出現する。

 

 電磁魔王ダイオースクリュー ATK? ☆10

 

「な、なんだ、このモンスターは……」

「で、デカい。足が10本あるけど、これは……」

「『螺芯兵の電磁魔王』は、自分フィールドの『螺芯兵』永続魔法を全て墓地に送ることで、エクストラデッキの融合モンスター、『電磁魔王ダイオースクリュー』を特殊召喚するカード! 攻撃力は、墓地に送られた永続魔法1枚につき、1000ポイントとなる!」

 

 墓地に送られたのは、『地盤締結』と『墓地締結』と『陣地』の三枚。

 

 電磁魔王ダイオースクリュー ATK?→3000

 

「え、わ、私にとって邪魔なカードを、全部墓地に……」

「ライダー二人が相手なら、その強さを問わず、『自分の最大の強さ』で押しつぶすべき」

「……怪人は報道されるから、本来なら表で切り札を出したくはないってわけね」

「え、どういうこと?」

「まぁまぁ……で、どうすっかなアイツ」

 

 ダイオースクリューはネジが連なったような姿のモンスターだ。

 

 ネジに電気を流して電磁石にすることで、ネジをつなげて体を維持している。

 

『ヘリオス! このデカいのは俺たちに任せとけ!』

『そっちはそっちでネジ怪人と戦ってくれ!』

『きゅうっ!』

 

 三人とも、どうやら、このイカの相手を引き受けてくれるらしい。

 

「……だそうだ」

「なら、やるしかないね」

 

 歩佳はパルスガンを構える。

 

「……本当はコンちゃんが接続されてる方が性能が良いんだけど、『武装情報の再現』は可能。ある程度は自由な弾を撃てるよ」

「自由な弾?」

「こんな感じ!」

 

 歩佳はパルスガンのトリガーを引く。

 

 すると、散弾のようにばらまいたと思ったら、誘導弾のようにネジ怪人に向かっていく。

 

「フンッ!」

 

 ネジ怪人がパイルバンカーを振り回して、電撃弾を弾き落とした。

 

「……なるほど」

「で、ヘリオスはどうする?」

「俺はこのまま、壁になっておくよ。ソーラーは自由に戦ってくれ」

「へぇ……わかった!」

 

 歩佳は前に飛び出た。

 先ほどまでのダメージを感じさせない軽やかな動きで、ネジ怪人に近づいていく。

 

「フンッ、攻撃力不足のオモチャで、何ができる」

「いろんなことだよ!」

 

 歩佳はトリガーを引く。

 

 多種多様な弾丸がばらまかれて、ネジ怪人を襲う。

 

「ぐっ……な、なんだ、パルスガンの威力が……データ以上の出力に……」

「なんだかわかんないけど、今なら負ける気がしないんだよね!」

 

 次々と電撃弾を銃口から放っていく。

 

 一方。

 

『よっしゃイカちゃんよぉ! 俺たちを倒せるかな!』

『そんな遅い足捌きじゃ、俺のジェットパックの加速はとらえきれないぜ』

『当たりそうになったら、俺の水鉄砲でぶち抜いてやるけどな!』

『きゅうっ! きゅううっ!』

 

 ダイオースクリューは足を叩きつける。

 大量のネジが集まって太くなっており、当たれば大ダメージは免れない。

 

 しかし……ジェットパックの加速と、水鉄砲による足の迎撃。

 

 何より、コンちゃんの動きが元から精度が高く、全て避けている。

 

『うおっ、あっぶな! 今ちょっと擦(こす)ったぞ』

『水鉄砲でしっかり迎撃しろや!』

『掴まってるだけで大変なんだって!』

『俺もそれには心の底から同意するぜ!』

 

 いや、ちょっと怪しい部分もあるにはあるが。

 

「……心の底から、か」

 

 歩佳はジェットが口にした言葉を、自分も呟いた。

 

「ぐっ、な、なんだ、先ほどよりも、動きが良すぎる。時々繰り出す拳も、何故、私に通るのだ。さっきは、君の方が痛がっていたはず……」

「それはそうなんだけど、今ならいける!」

「ふざ、けるなああっ!」

 

 ネジ怪人が手札のカードを使う。

 

「魔法カード『螺芯兵の激流葬歌』を発動! デッキから『激流葬』1枚を墓地に送り、その効果を適用する!」

「全破壊か……『プロミネンス・シールド』の効果発動! 俺のモンスターは、効果破壊されない!」

 

 ヘリオスも移動する。

 

 その先は、すでにフィールドにある、レベル1と2の、『サンライズ・バリケード』だ。

 

 その前に立って、激流葬の水圧をプロミネンス・シールドで受ける。

 

 そして……。

 

『うっひょおおおおっ! プールだあああっ!』

『あっはっはっ! コンちゃん! 俺たちに動きを合わせろ! そうすりゃ破壊されねえ!』

『きゅうっ!』

 

 激流の中。

 

 水の子供たちは元気にはしゃいで、コンバークルもバシャバシャと遊ぶ。

 

「……コンちゃん」

 

 歩佳は、そんなコンちゃんを見て……。

 

「……楽しそう」

 

 戦いの中で、そう、呟いた。

 

「グッ、げ、激流葬が受け流されるとは」

「受け流すっていうか遊んでるけどなアイツら……あー、手がしびれる」

「なら、さっさと決着を付けようか! 『クリスタルヤード』を発動!」

 

 サンライズ・バリケード ☆2→3

 サンライズ・バリケード ☆1→2

 

「2体目のバリケードの効果で、フィールド魔法『サンライズ・ルーフトップ』を手札に、そのまま発動!」

 

 サンライズ・バリケード ☆3→4

 サンライズ・バリケード ☆2→3

 

「これで合計7! 手札から『死者蘇生』を発動! ヘリオス、もう一回借りるよ!」

「ああ!」

「『リスト・クロック』を特殊召喚!」

 

 リスト・クロック ATK400 ☆1

 

「レベル4と3のバリケードに、レベル1のリスト・クロックをチューニング。シンクロ召喚! 『サンライズ・レールガンナー』!」

 

 サンライズ・レールガンナー ATK2800 ☆8

 

 現れたのは、結晶でできた、レールガンの砲台。

 

「コンちゃんが遊んでるんだし、こっちで行くよ。コンちゃんを手に入れる前まで愛用してたエースだからね!」

「……そうか、そっちも、エースと言えばエースなのか」

 

 ヘリオスは、何かに納得した。

 

「さーて俺は……出せるのはこれだな。『ハイドロキッズ・サイダー』を召喚!」

 

 ハイドロキッズ・サイダー ATK1000→1500→2700 ☆2

 

『よっしゃ、参上!』

 

 右手のボトルを持った子供。

 

 が、レールガンナーの上に登場した。

 

「あれ?」

『俺はどうするかな……ん? なんでこのレールガン、上に穴があるんだ? ……サイダー入れちゃえ』

「こらあああああっ!」

 

 レールガンナーの上にあったらしい穴にボトルからサイダーを投入。

 

 流石の歩佳も絶叫した。

 

「ちょ、お前何やってんだ!?」

 

 ヘリオスも叫んだ。

 

 レールガンナーは、『ガギギギッ……』と変な音が響きだした。

 

 そのまま、砲身を上に。

 

「えっ、どうなっちゃうの!?」

 

 歩佳が驚いていると。

 

 レールガンナーの砲身から、ブシャアアアアッ! と、噴水が。

 

『うおおっ! 噴水だ!』

『いいぞいいぞ!』

『わっはっは!』

 

 その噴水が、スプラとジェットにも降りかかり……。

 

『……あれ、ジェット、なんかちょっとピリピリしてこねえか?』

『当たり前だろ。デカい電磁石の傍だぜ? 炭酸を含んで純水じゃなくなった俺たちが無事なわけねえだろ?』

『そりゃそうだぜ! ってヤベェじゃねえか!?』

『問題ねぇ! お前たちはコンバークルと一緒に居るんだ! 電気は良い感じに制御してくれる!』

『『そうなのか!?』』

『きゅうっ!』

『そうみたいだ!』

『え、そうなの!?』

『いや俺もウサギ語はわからん!』

『胸張って言うな馬鹿野郎!』

 

 ……何をしているのやら。

 

「ふふっ……あははっ! あっちは大丈夫だね」

「ああ」

 

 歩佳とヘリオスは、ドライバーのスイッチを押す。

 

『『LETHAL PHASE』』

 

 歩佳の足に電気が集まり、ヘリオスの足に炎が集まる。

 

「ふ、ふざけるな。こんな戦いで、負けるわけがあるかああああっ!」

 

 ネジ怪人が絶叫する。

 

『それがそうでもねえんだよ!』

 

 スプラがレールガンナーの上に着地して、水鉄砲をダイオースクリューに向ける。

 レールガンナーも、砲身が電気を帯び始めた。

 

「いくよヘリオス」

「ああ」

 

 ライダー二人で、上に飛んだ。

 

『いくぜレールガンナー!』

 

 スプラが水鉄砲を放つと同時に、レールガンナーも電撃弾を放つ。

 

 ダイオースクリューは足で体を守ろうと重ねたが……すべてを貫いた。

 

「おりゃああっ!」

「せりゃああっ!」

 

 ソーラーとヘリオスのライダーキックが、ネジ怪人の胸に、叩きこまれる。

 

「そんな、バカな、私が……ぐあああああああああああああああああああああっ!」

 

 ネジ怪人は吹き飛んで、ダイオースクリューに激突し……そのまま、爆散した。

 

 ★

 

「ありがとうヘリオス。おかげで助かったよ」

「いや、礼は要らないよ」

 

 ヘリオスは、自分のデッキから『リスト・クロック』のカードを取り出して、歩佳に見せる。

 

「えっ……」

「これ、あげるよ。俺のデッキにシンクロモンスターは入ってないからな」

「そ、そうなんだ……」

「別にレアカードってわけでもないしな」

「フフッ、ありがとう、貰っておくね!」

 

 ヘリオスからカードを受け取って、歩佳は微笑んだ。

 

「それじゃ、俺はもう行くよ」

「うん。それじゃあ、機会があったら、また一緒に戦おうね!」

「……そうするよ」

 

 ヘリオスはそう言って、広場から去っていった。

 

「……歩佳、大丈夫?」

「お、青葉ちゃんも大丈夫だった? 波が凄かったけど」

「私も、みんなも大丈夫だった」

「そっか! それならよかった! それにしても、この町に、まだ、仮面ライダーがいたんだね」

「うん」

「それはそれとして……コンちゃん、すごかったね」

 

 ライダーがいた。

 

 それすらどうでもいいと思えるほどに……。

 

「ジェットと水鉄砲で、あんなに飛び回ってさ。ネジ怪人に突撃したり、あのイカの足をぴょんぴょん避けたり」

「確かに、あんなに軽やかに動けるとは思ってなかった」

「そうそう! 激流の中でバシャバシャ泳いでたのもすごかった! とても楽しそうで――」

「ねえ、歩佳」

「何、青葉ちゃん」

 

 青葉は、歩佳に聞いた。

 

「歩佳、なんで、泣いてるの?」

「……えっ?」

 

 歩佳は、自分の目元に手を当てた。

 

 水が、流れていた。

 

 歩佳は。

 

 大粒の涙を、ボロボロとこぼしていた。

 

「わ、私、なんで、泣いて……」

「あの……」

「私は、あ、ぐすっ、うあっ」

「歩佳……」

「うわあああああああああああんっ!」

「歩佳!」

 

 青葉は歩佳を、胸に抱きしめた。

 

「ぐずっ、うええんっ」

「……」

 

 広場のど真ん中で泣きじゃくる歩佳を。

 

 落ち着くまで、青葉はずっと、背中をさすっていた。

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