遊戯王 KAMEN RIDER HELIOS   作:レルクス

17 / 17
第17話 カード開発会社を襲う鍵の怪人

 金曜日の朝。

 

「なぁ、ヘリオスって誰なんだろうな」

「ハイドロキッズとプロミネンスを使ってるらしいな」

「えーと……お……遊陽も使ってるって話だよな」

「帯包(おびかね)が出てこねえのかよ」

「なんか覚えにくいんだよアイツの名字……」

 

 仮面ライダーヘリオスの登場は、ある程度、水面市において広まっている。

 

 加えて、ハイドロキッズとプロミネンスを使っていたということに関しては、水面高校の中でも少しずつ広まっている。

 

 誰か、遊陽とデュエルしたことがある。またはデッキについて話したことがある生徒が、顔の広い生徒とつながって広まったのだろう。

 

 ただ、遊陽がヘリオスだとは思われていない。

 

 そもそも今回のヘリオスのような『正体を隠しているライダー』というのは、たびたび紙面を賑わせるものだが、『人前に出るときはダミーデッキを使っている』と言うパターンが多い。

 

 ヘリオスが使っているのが『ハイドロキッズ』と『プロミネンス』と報道され、同じデッキタイプを遊陽が使っているからと言って、常識目線では『ダミーデッキと同じ』というのが妙な話だ。

 

 そしてこの話は、確定していることが少なすぎて話が広がらない。

 

 水面高校においては、仮面ライダーソーラーの今後の話が盛り上がり、ヘリオスの話が少し出る。と言った程度と言ったところである。

 

「ソーラーって、次の企業対抗戦ってどうなってるの?」

「デイドリームも出るのかな?」

「レールガンナー以外のシンクロもモードチェンジするのか?」

 

 水面高校において、話題は歩佳の話で染まっていた。

 

 渇明とのデュエルで、エースモンスターの発覚、コンバークル・デイドリームの誕生、そしてシンクロ兵器が『/(スラッシュ)バスター』になったことなど。

 

 特に、『今後どうなるのか』という、想像しやすい話のタネが投入されたことで、その話題性も上がっている。

 

「うーん。企業対抗戦ねぇ、次の予定は決まってないんだよね」

「あれから、レールガンナー以外って進化した?」

「いや、まだ進化してないよ。それに、レールガンナーは、コンちゃんを使う以前のエースだったからね」

「エースって言えば、いるってこと、隠してたんだ」

「あはは、怪人に対策されないために、隠してる人もそこそこいるんだよ」

「へぇ……」

 

 歩佳はクラスメイトと話している。

 

「デイドリームねぇ。相手する側は苦労するよねぇ」

「コンちゃんは強いからね!」

「電撃浴びたら攻守が……そう、攻守が1000上がるというのがマジでおかしい。なんで柵のサンライズの守備力も上がるのか」

「青葉ちゃん。なんでそんなデイドリームに対して辛辣なの!?」

「進化してなくても私をボッコボコにしてくるデッキが強化されたら言いたいことはある」

「ごめんって!」

 

 まぁ、いつも通り、ダウナーな青葉からはツッコまれていたが。

 

「……」

 

 遊陽は、そんな教室の話を聞き流しながら、配られたプリントを見ていた。

 

 どうやら、市の方から配布するように言われたプリントらしい。

 

(……水面市で、カードの盗難事件が増えている。しかもレアカードばかりか)

 

 一枚が数百万円にも数千万円にもなるのがデュエルモンスターズのカードだ。

 

 当然、レアカードに関しては、どこも厳重に管理しているはず。

 

 それでも、盗まれている。

 

(……怪人のしわざ、なんてこともあるのかもな)

 

 裏路地に潜み、お互いのスコアを狩りあっている怪人たち。

 

 暗黙の掟もいろいろありそうだが、表にひょっこり出てきた怪人によって、何か被害があるのかもしれない。

 

 仮面ライダーソーラーと言う情報が広まっている水面市ではあるが、怪人の事件を全て防げるわけではないのだ。

 

(……備えだけはするか)

 

 佐々木が最初に家に来た時に置いていったプレミアムセレクションボックス。

 封入されていたカードの管理は、スリーブには入れているが、その程度だ。

 

 ★

 

「といって、別に金庫とかが欲しいかって言われると違うんだよなぁ。第一、佐々木さんに言えば、俺が持ってるカードの管理くらいはやってくれそうだし……」

 

 放課後。

 

 ダイソーコ水面支店の扉から外にでて、街を歩きながら、遊陽は呟いた。

 

「まぁでも、これくらいのカードケースくらいは持ってていいか」

 

 そう口にする遊陽の手にあるのは、カードが100枚くらい入りそうなカードケースだ。

 

「ダイソーコ水面支店の中でもそこそこいいカードケースだからな。頑丈だし、こういうのに入れておくか」

 

 遊陽は振り返って、店を見る。

 

「……ヘリオスの活躍。ってことなのかな。ハイドロキッズたちが値上げされてた……報道を受けて、誰かが買い占めてるのかもしれないし、なんかネットを見ても相場がちょっと上がってるんだよなぁ」

 

 遊陽はため息をつくと、また、街を歩く。

 

(仮面ライダー効果ってやつなのかな……)

 

 ニュースを見たり、評論家の言い分を聞く限りでは、『ハイドロキッズやプロミネンスを使っているが、ダミーデッキの可能性が高い』とされている。

 

 しかし、それでも、仮面ライダーが使っていたという報道は、市場に与える影響は大きい。

 

「……どうするかな。これから……っ!」

 

 遠くで、悲鳴が聞こえた。

 

 続いて、ガシャンッ! と、ガラスを割る音。

 

 しかも、どちらも続いている。

 

「……怪人が何かを襲ってるのか」

 

 遊陽はすぐに、裏路地に走った。

 

 人の視線がなくなったあたりで、腕に付けているデュエルディスクを、腰に巻く。

 

『DUEL DRIVER』

 

『Your name is……』

 

「変身」

 

『KAMEN RIDER HELIOS!』

 

 炎が溢れて、アーマーになって、遊陽に装着される。

 

 仮面ライダーヘリオスになった。

 

 そのまま、裏路地から飛び出す。

 

「!」

 

 目に映ったのは、『アサユキ製造』と言う看板がかかった三階建てのビルだ。

 

 その一階部分が、窓ガラスが割れて、中も荒らされている。

 

「チッ、ジジイが、邪魔すんな!」

「うわっ!」

 

 30代半ばと思われるメガネの男性が、出入り口から蹴りだされてきた。

 

 そして……蹴りだした本人も、中から出てくる。

 

「……怪人だったか」

 

 錠前と鍵が特徴的な、細い体つきの怪人だ。

 

「へぇ、仮面ライダー……ソーラー以外にもこの町にいると聞いてたけど、こんなところで会えるなんてね」

「……」

 

 女性の声だ。

 

「そこそこの掘り出し物はあったし、さっさと撤退しようと思ってたけど……仮面ライダーなら、怪人を倒すために強いカードを持ってるはず」

「だったらなんだ?」

「デッキ、私に寄こしなさい」

「嫌に決まってるだろ」

「そう……」

 

 カギ怪人の傍に、ホログラムのカードが5枚浮かんだ。

 

 遊陽もベルトからカードを5枚ドローして、それが炎のホログラムになる。

 

「だったら、力づくで奪ってやる」

「カードが狙いか。どちらにしても、相手になってやる!」

 

 カギ怪人が、手札のカードを即座に使用する。

 

「私は永続魔法、『暗業鍵(あんごうかぎ)サクリファイス』を発動! このカードがフィールドにある場合、私はレベル5以上の召喚でリソースが不要になる。『エーアイズ・シンギュラリティ』を召喚!」

 

 エーアイズ・シンギュラリティ ATK2900 ☆8

 

 フィールドに出現したのは、単眼しかない顔で、近未来的な拵えの大剣を持つモンスター。

 

「んなっ……」

「行きなさい、シンギュラリティ!」

 

 シンギュラリティが走ってくる。

 

「『ハイドロキッズ・スクランブル』を発動! デッキから、『ハイドロキッズ・レスキュー』と『ハイドロキッズ・サイダー』を特殊召喚!」

『『俺たちの出番だああっ!』』

 

 放水機を持った子供と、ボトルを持った子供が出現。

 

 ハイドロキッズ・レスキュー ATK1400 ☆4

 ハイドロキッズ・サイダー  ATK1000 ☆4

 

「は、ハイドロキッズ、ですって?」

「知ってるのか……」

「ククク……そのデッキなら、確実に、強いエースがいる。出しなさい! あなたのエースモンスターを!」

「俺には俺の準備ってもんがあるんだよ! 『ハイドロキッズ・スプラ』を召喚! デッキから『ハイドロキッズ・ジェット』を手札に加える。このまま特殊召喚!」

 

 ハイドロキッズ・スプラ  ATK1200 ☆4

 ハイドロキッズ・ジェット ATK1400 ☆4

 

『俺たちもだ!』

『一気に行くぜええっ!』

「俺は、サイダーとジェットで、オーバーレイ!」

 

 2人の子供が、渦に飛び込む。

 

「エクシーズ召喚! ランク4、『ヘリオ・スライサー』!」

 

 ヘリオ・スライサー ATK2500→2700 ★4

 

 フィールドに出現したのは、炎の剣と鎧を身に着けた、一人の剣士だ。

 

『うおおっ! キタキタァ!』

『今日も頼むぜ旦那!』

 

 フィールドに残ったレスキューとスプラは喜んでいる。

 

「へ、ヘリオ・スライサーですって?」

「そうだ。俺のエースモンスターだ!」

「ふ、ふざけるな! ランク4よ? エクシーズモンスターの中でも激戦区のランク4! どれほどの企業がその枠を奪い合うために開発競争をやってると思ってるの!? そこのダイソーコに行けば1500円で買えるような安物じゃない!」

「なんでそんなに怒ってんだよ!」

『『そうだそうだ! 雰囲気悪いぞオバサン!』』

「誰がオバサンだこらぁ!」

 

 子供は基本、お姉さんに遠慮がないものである。

 

「と、とにかく、出しなさい! あなたの本当のエースを!」

「お前が何と言おうが、へリオ・スライサーは俺のエースだ!」

「チッ……」

 

 カギ怪人が舌打ちした。

 

 そして……。

 

「ヘリオ・スライサーが、彼の、エースモンスター……」

 

 社長であろう、先ほどのメガネの男性が、呟くように言った。

 

「チッ、だったらそのクズを倒して、次を引っ張り出してやる! 永続魔法、『暗業鍵コピーパス』を発動。続けて、シンギュラリティの効果発動! 1ターンに1度、デッキから『エーアイズ』モンスターを1体手札に加える。変身中なら2枚よ」

「エーアイズ・シンギュラリティに、『エーアイズ』……」

「それは、『エーサーバー・クリエイション』の……」

「フフッ、流石にカード開発をやってる社長なら知ってるみたいね。そうよ、どちらも、『エーサーバー・クリエイション』の開発部が保管してたカード」

「盗み出したのか」

「そういうこと!」

 

 カギ怪人が、デッキから2枚のカードを抜いた。

 

「私はシンギュラリティの効果で、『パワーデモンズ・アシュラ』と、『グロウドラゴン・アクアスター』を手札に」

「何言ってんだ!?」

「コピーパスの効果よ。このカードがフィールドに存在する限り、私がカードを発動した場合、デッキのモンスターは、そのモンスターと同名として扱われる」

「なにぃ!?」

 

 要するに。

 エーアイズ・シンギュラリティの効果が発動した瞬間、カギ怪人のデッキのモンスターは全て、カード名が『エーアイズ・シンギュラリティ』になっていた。

 

 この手のカテゴリを参照してサーチを行うカードは『同名以外』をデッキから動かすものだが、シンギュラリティは同名でも手札に加えられるカードのため、このような挙動が可能となっている。

 

「さらに永続魔法、『暗業鍵トライサモン』を発動。通常召喚権が3回に増える! そして、リリースは不要! パワーデモンズ・アシュラと、グロウドラゴン・アクアスターをリリースなしで召喚!」

 

 パワーデモンズ・アシュラ   ATK3000 ☆8

 グロウドラゴン・アクアスター ATK2900 ☆7

 

 三面六椀の悪魔と、不思議な水を放つドラゴンが出現。

 

「あれは、『三隅《みすみ》開発』と、『アトリエ・ルルリキッド』の……」

 

 先ほどの男性の口から、企業名が漏れた。

 

 この2枚も、どうやら盗み出したものらしい。

 

「さあ、奴の剣士を叩き潰しなさい!」

 

 3体のモンスターが襲い掛かってくる。

 

『させるか!』

『だったら俺たちも、旦那と一緒に戦うぜ!』

「スプラ、レスキュー、オーバーレイ!」

『『よっしゃー!』』

 

 スプラとレスキューが渦に飛び込む。

 

「エクシーズ召喚! 『ハイドロキッズマシン・ダブルポンプ』!」

 

 ハイドロキッズマシン・ダブルポンプ ATK2300 ★4

 

 放水機が二門ある、子供が遊ぶような戦車が出現。

 

 スプラとレスキューが乗り込んでいる。

 

『よっしゃ! 覚悟しろモンスター共!』

『あのババアごとローションまみれにしてやるぜ!』

「躾のなってないガキどもが!」

「……」

 

 内心で謝った遊陽であった。

 

 それはそれとして、3体の最上級モンスターと、遊陽のモンスターたちが激突する。

 

 ヘリオ・スライサーは炎の剣で、エーアイズ・シンギュラリティの大剣とつばぜり合い。

 ダブルポンプは、三面六椀の悪魔をローションで転ばせて、不思議な水を放つドラゴンのブレスを回避している。

 

「つーわけで、俺も戦うか。『ハイドロキッズ・ソード』を発動して、効果発動。『プロミネンス・ソード』をエクシーズ召喚!」

 

 プロミネンス・ソード ATK2000 ★4

 

 遊陽の右手に、炎の剣が出現する。

 そのまま、カギ怪人に斬りかかった。

 

「チッ……」

 

 カギ怪人は、右腕を頑丈で大きな鍵に変貌させた。

 

 それを使って、ヘリオスの剣を止める。

 

「ウザいわね。さっさと倒してやるわ」

「お前こそ、ここで奪ったカードを返しやがれ!」

 

 競り合って、押し込んだ。

 

 カギ怪人が地面に背中をつく。

 

「ダウンだ。ドロー! よし、手札から『ハイドロキッズ・シールド』を発動して効果発動。『プロミネンス・シールド』をエクシーズ召喚!」

 

 プロミネンス・シールド DEF2500 ★4

 

「シールドの効果で、素材を使って1枚ドロー! ハイドロキッズ・シールドの効果で、墓地に送られた場合、デッキから永続魔法以外のハイドロキッズ魔法、『ハイドロキッズ・アームズコール』を手札に加えて、そのまま発動だ。永続魔法のハイドロキッズを手札に加える!」

「何その茶番!?」

「そのまま発動! 『ハイドロキッズ・アーマー』を手札に加えて、発動! 『プロミネンス・アーマー』をエクシーズ召喚!」

 

 プロミネンス・アーマー DEF2500 ★4

 

「仕上げだ! フィールド魔法、『プロミネンス・ブレイブゾーン』を発動!」

 

 シールド、アーマー、そして遊陽が持っているソードが、ヘリオ・スライサーに装備される。

 

「ブレイブゾーンの効果で、装備しているエクシーズモンスター1体につき、攻撃力が600ポイントアップする!」

 

 ヘリオ・スライサー ATK2700→4500

 

「こ、攻撃力、4500ですって!?」

『うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!』

『旦那かっちょいいいいいいいいいいいっ!』

 

 全身にプロミネンス装備を揃えたヘリオ・スライサーに、スプラとレスキューは大興奮。

 

「今のお前なら……やれ! ヘリオ・スライサー!」

 

 ヘリオ・スライサーは頷くと、プロミネンス・ソードを構える。

 

 爆炎が放たれて、真横に一閃。

 

 エーアイズ・シンギュラリティ、パワーデモンズ・アシュラ、グロウドラゴン・アクアスターの3体が、ヘリオ・スライサーの一撃で粉砕される。

 

「なっ……最上級モンスター3体が、あんな安物に……ぶ、ブレイブゾーンはレアカードだけど、あんなカードをエースなんて……」

「何が言いたい」

「じゃあ、あの、企業対抗戦の対戦カードは……いや違う! 私のせいじゃない! 私が作ったカードのせいじゃ……」

「企業対抗戦?」

 

 何やら、因縁を抱えているのは、遊陽にもわかった。

 

 しかし。

 

「いずれにせよ、人の会社を襲って、カードを奪っていい理由にはならない」

 

 ベルトのスイッチを押す。

 

『LETHAL PHASE』

 

 ヘリオスの足に、炎が溢れた。

 

 そのまま、空に飛びあがる。

 

「あっ……」

「おりゃあああああっ!」

 

 ヘリオスは炎を纏うキックをカギ怪人に向かって放つ。

 

 ヘリオ・スライサーが剣を突きだすと、炎が溢れて、キックの炎がさらに燃え上がった。

 

「くそぉ!」

 

 カギ怪人は手札のカードを使う。

 

 壁が、出現した。

 

 攻守もレベルもわからない。

 何かの魔法カードで出したようだ。

 

 ヘリオスのキックが、その炎の壁に衝突する。

 

「うわっ」

 

 当たった瞬間、壁から莫大な煙が溢れる。

 

「クソッ……どうなって」

 

 煙がはれて……そこに、カギ怪人はいなかった。

 

「逃げられたか……あ」

 

 カギ怪人には逃げられたが、一個のカードケースが落ちている。

 

 遊陽はそれを拾い上げた。

 

 そのまま、男性のところに走って行って、渡す。

 

「あの、これ、あなたの会社のものですよね」

「え、ええ、ありがとうございます」

 

 男性は優しい手つきでケースを受け取った。

 

「……あ、あの、ちょっと、待っててもらえませんか?」

「えっ」

「すぐに戻ってきますので!」

 

 そういって、男性は会社に戻っていった。

 

 すぐ、と言っていたが、本当に直ぐだ。

 

 15秒ほどで戻ってくる。

 

「申し遅れました。僕は『アサユキ製造』の社長、朝之祇園(あさゆきぎおん)と言います。こちらを」

 

 一枚のカードを出してきた。

 

「え、これ……」

 

 イラストは、彼にとって良く見慣れているが、かなり豪華といって良い。

 

 それも当然か。

 

 そのカード名には、『スーパー・ヘリオ・スライサー』と、記されている。

 

「ヘリオ・スライサーの、『先』と言えるカードです」

「ど、どうしてこんなものを」

「ヘリオ・スライサーを開発したのは、10年前の僕なので」

「えっ……」

 

 アサユキ製造。というらしいカード開発会社。

 

 その社長が。

 

 ヘリオ・スライサーの、開発者。

 

「子供の皆が、『出してみたい』と思えるカード、それを作るのがこの会社の理念なんです。10年間、ずっと、カードを作り続けてきました」

「で、でも、こんなカード。見たことがない」

「表には、まだ出せないカードでしたから」

「何故……」

「ヘリオ・スライサーは、『何のカテゴリにも属していないカード』ですから、昨今だと、親が子供に与えにくいカードなんです。あまり需要が無くて、流通会社に提案する『枠』を1つ使ってまで、出せるものじゃなかったので……」

「……そう、ですか」

「まぁ、効果の一部が複雑すぎて、量産業者の規格に当てはまらない。ということもありますけどね。開発して出来上がったものです。何枚かできていたものですし、1枚、渡したくて」

「こ、こんな貴重な物を……」

「カードを守ってくれたお礼でもあります。どうか、うけとってください」

「……わかりました」

 

 遊陽は、自分のエクストラデッキに、カードを入れた。

 

「あの子たちを、もっと、楽しませてあげてください」

「……わかりました」

 

 仮面の下で、遊陽は笑顔になった。

 

 祇園の顔を見てわかったからだ。

 

 デュエルしているときに騒いでいたハイドロキッズたち。

 

 あの無邪気でうるさい子供たちが、これを渡す決め手になったのだと。

 

「あの、復旧、大変だと思いますけど……」

「いえいえ、カード会社を経営するんです。襲われた後にどうすればいいかは研修を受けてますよ」

「そうですか」

「正体、隠されてるんでしょう? もうすぐ警察が来ますから……」

「……わかりました。それじゃ」

 

 遊陽はアサユキ製造から離れていった。

 

 ★

 

「……スーパー・ヘリオ・スライサー。まさか、こんなカードがあったなんてな」

 

 裏路地に入って、遊陽は変身を解除した。

 

「……それにしても、企業対抗戦か」

 

 先ほどのカギ怪人は、それを思い出して、何かを否定していた。

 

「……」

 

 スマホを取り出して、電話をかける。

 

『はい、佐々木です』

「もしもし、遊陽です」

『遊陽様。どうか、なさいましたか?』

「あの……企業対抗戦って、どんな感じなんですか?」

『企業対抗戦ですか。興味がおありで?』

「まぁ、そんなところです」

『どこか、企業のライダーとして戦いたい。と言うわけではございませんね?』

「はい……え、出ようと思えば出られるんですか?」

『プレミアム特典、かつライダーであれば可能です』

「……」

 

 遊陽は絶句した。

 

 法人スコアという、どれだけ税制優遇を受けられるのか、レコックス系列でどれほどいい素材やサービスを貰えるのかを掛け合う戦いに、特典で割り込めるというのは、一体、どういうことなのか。

 

「ま、まぁ、そんな感じではないので」

『であれば、実際に見る方が早いでしょう。明日は時間は空いていますか』

「空いてます」

『近場のデュエルスタジアムで、企業対抗戦が行われます。そこで、ハイスコア・シートをプレミアム特典でご用意することが可能です』

「ハイスコア・シート……」

『通常は企業の接待などで使われることも多い席になりますが、特典を使えば、一人で貸切ることも可能です』

「明日ですよね。そういうのってすでに満席なのでは?」

 

 企業を代表するライダーたちの戦いと言うことになる。

 

 まぁそうでなくとも、この世界なら、『デュエルに関する大型イベント』というだけで、その席に座るための競争はすさまじいものになるのだ。

 

 普通なら満席のはず。

 

『いえ、プレミアム特典のため、1部屋か2部屋、こちらで確保しています。もし予約がなければ、一般のVIPにお電話してお招きすることになりますね』

「一般のVIPって凄い日本語ですね」

『プレミアム特典とはそういうものです』

「わかりました。じゃあ、明日、予約お願いします。あと……俺が来るってことは、必要な関係者以外には秘密にしてください」

『畏まりました。それでは明日、車で迎えに行きますので』

「お願いします」

 

 通話終了。

 

「……企業と企業の戦い、か」

 

 遊陽にとっては遠い世界の話を口にしながら、家に帰っていった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

PERSONA × MY-TH UNFATHOMABLE VOYAGE ―沖縄怪異航路―(作者:ボルメテウスさん)(原作:ペルソナ)

他人の悩みなら解決できる。自分のことだけは、見ないふりをしてきた。▼沖縄の孤島に築かれた南星学園都市へ転校した真瀬結人は、▼青い仮面の怪物「不可思議」による人間消失事件へ巻き込まれる。▼逃げれば助かる。それでも見知らぬ誰かへ手を伸ばした瞬間、▼銀鼠のペルソナが孵り、心は黒銀の鎧へと変わった。▼百年前の十二支、海に沈んだ封印、島々を侵す認知世界。▼これは、自分…


総合評価:21/評価:-.--/連載:55話/更新日時:2026年10月24日(土) 01:00 小説情報

呪術回転 (作者:Nikich)(原作:呪術廻戦)

ジョニィ「撃つか?届くけど」▼伏黒「え?」▼死滅回遊の泳者となったジョニィ・ジョースターが0をプラスにしようとする話


総合評価:26/評価:-.--/連載:1話/更新日時:2026年08月03日(月) 16:13 小説情報

原子崩しみたいなビームをぶっぱなす(作者:ぽこちー)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

▼タイトル通り『原子崩し』みたいな能力を持ったオリ主が、ゼンゼロ世界で暴れまくるだけのお話です。▼


総合評価:226/評価:9.75/連載:1話/更新日時:2026年10月17日(土) 13:53 小説情報

アルカナ・シャドウは仮面の戦士の夢をみるか?(作者:ほろろぎ)(原作:名探偵プリキュア!)

 有森恭司(ありもり きょうじ)はキュアット探偵事務所に居候(いそうろう)中の、どこにでもいる記憶喪失の青年だ。▼ 事務所をたずねてきた二人の少女──あんなとみくるとの出会いで彼は、夢の中で戦う戦士『仮面ライダーゼッツ』の力を手にする。▼ ゼッツの力を危険視する謎の少女、『キュアアルカナ・シャドウ』は恭司のことを知っているような様子で……。▼※たんプリ本編2…


総合評価:279/評価:9/完結:9話/更新日時:2026年08月22日(土) 22:01 小説情報

遊戯王の世界に転生?! ってかこの人ペガサスさんじゃね?(作者:記録担当者(暫定))(原作:遊戯王)

前世の知識や記憶を持った男が転生した。▼海馬コーポレーションの名を見て、ここが遊戯王の世界だと気がつく。▼孤児院の中で、原作に関わらずに済むと呑気に考えていたのもつかの間、気がついたらインダストリアル・イリュージョン社へ。▼男はこの世界でどう生きるのか。


総合評価:146/評価:-.--/連載:5話/更新日時:2026年09月20日(日) 06:12 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>