月曜日。
勉強に全く興味がない高校生にとっては何も面白くない日ではあるが、クラスに一人、美少女がいれば華やかになるものだ。
「……ねぇ、青葉ちゃん」
「どうしたの?」
艶のある長い金髪を伸ばした巨乳美少女、
普段から朗らかなオーラを絶やさない彼女だが、いつになく真剣な表情だった。
そんな歩佳と話しているのは、
群青色のショートボブが特徴的で、なんだか保護欲を刺激するような幼い顔立ちであり、歩佳に対して『また何か変なこと言い出すんだろうなぁ』と言いたそうな顔をしている。
「なんか日焼け止め。いつもより塗った方がいい気がする!」
「曇りだけど」
バッサリ切った青葉である。
「そう、うん。曇りなんだけど、なんか肌がチリチリするっていうか……」
「聞いててもわからん」
「私も言っててわからん!」
「じゃあ私はどうすればいいの……」
青葉はため息をついた。
「んー、えー……」
歩佳がキョロキョロ、教室を見渡している。
スマホを弄っている遊陽の方を向いた。
「あっ、遊陽君。スマホ変えたんだね」
「ん? え? あ、ああ……」
急に話しかけられて驚いた様子の遊陽だが、事実なので頷いた。
「それってなんて機種なの?」
「23PROだけど……」
「……青葉ちゃん。今の最新モデルって何だっけ?」
「25」
「へぇ……二世代前のPRO?」
「本来は19万だけど、型落ち品だから、安く買えたんじゃない?」
「そんな感じ」
青葉の補足に遊陽は頷いた。
「そうなんだ。前は……」
歩佳の言葉が止まった。
前は、何だと思ってたんだろうか。
「……ばっちぃの使ってたもんね!」
「許されると思ってんのか」
青葉から呆れた様子でツッコミが来た。
「いや、だって、あんなに黄色くなったクリアケース。私初めて見たよ?」
「私も初めて見たけど、前に使ってたやつだからって黒歴史にしていいわけじゃねえわ」
「……遊陽君。ごめんね」
「ああ、うん。いいよ」
「ほら、遊陽君も、『多分これから同じことでいじられるんだろうなぁ』って顔してるじゃん」
「俺そんな顔してた?」
「してる」
「あの、青葉ちゃん? 私はこう見えて社長令嬢だからね? 分別はあるからね?」
「分別があるやつが人の持ち物を『ばっちぃ』とかいうか」
青葉が呆れた時、チャイムが鳴った。
「あ、もうそろそろ先生来るね。ゴングに救われた!」
「「おい」」
遊陽と青葉は同じタイミングで突っ込んだ。
★
放課後。
「あの、渇明さん」
「なんだ?」
校舎の屋上で、遊陽は渇明と話していた。
ベンチが置かれて、渇明は本を読みながら、遊陽と話している。
「俺、スマホ変えたんですよ」
「へぇ、23PROにしたんだな」
「はい。で……俺の前のスマホ。どう思ってました?」
「……」
渇明は本を閉じて、鞄に突っ込むと、遊陽の方を向いて言った。
「お前と電話するとき声ガサガサだなとは思ってた」
「すんませんでした」
流石に聞き取りにくい電話をずっとかけていたとなると、遊陽としては頭を下げるしかない。
「……あと、渇明さんって、本、読むんですね」
「まぁ、たまにはな」
「ブックカバーつけてましたけど、どういう本なんですか?」
「『好きなカードで作るデッキ構築』だ」
「あ、俺も読んでます。それ」
「……なるほど」
『そうか』でも、『ふーん』でも、『奇遇』でもなく。
渇明の返答は、『なるほど』だった。
「で、今日はやるんだろ?」
「はい」
「よし、やるか」
渇明は鞄からデュエルディスクを取り出した。
遊陽もデュエルディスクを持って、少し離れる。
「行きますよ。渇明さん」
遊陽は腕からデュエルディスクを外すと、腰に当てた。
ベルトがディスクから飛び出て、一周して、腰に巻かれる。
『DUEL DRIVER』
遊陽は、スイッチを一つ、押した。
『Your name is……』
音声がベルトから響いている。
「変身!」
ライダーカードをベルトに挿入!
『KAMEN RIDER HELIOS!』
ベルトから炎が溢れて、赤いアーマーを構築していく。
遊陽の体に装着されて、彼は、仮面ライダーになった。
「それが、ライダーとしてのお前か」
「はい。これが、仮面ライダーヘリオスだ!」
「いいだろう」
渇明のデッキがシャッフルされる。
そのまま、5枚引いた。
遊陽もカードを5枚引く。
それと同時にカードが消えて、炎のホログラムとなって宙に浮いた。
「「デュエル!」」
遊陽 LP4000
渇明 LP4000
「先攻はもらいます。魔法カード、『ハイドロキッズ・チャージ』を発動。デッキから『ハイドロキッズ』モンスターを手札に、俺は『ハイドロキッズ・サーフ』を手札に加える。こいつは変身中なら、手札から特殊召喚できる!」
ハイドロキッズ・サーフ ATK1000 ☆4
サーフボードを持った子供が出現!
『お、ユーヒ。今日は先輩とデュエルか!』
「そうだ。今日も頼むぞ」
『任せとけ!』
サーフはグッドサインを出した。
「さらに、手札の『ハイドロキッズ・ジェット』は、フィールドにハイドロキッズがいるなら、特殊召喚できる!」
ハイドロキッズ・ジェット ATK1400 ☆4
『頑張るぜ!』
「レベル4のサーフとジェットで、オーバーレイ!」
『『やるぞおおおっ!』』
二人の子供が光の弾となって、渦に飛び込んでいく。
「エクシーズ召喚! ランク4。『ヘリオ・スライサー』!」
燃え上がる剣を握る戦士が、遊陽のフィールドに出現する。
ヘリオ・スライサー ATK2500→2700 ★4
「ほう……」
「まだ通常召喚していない。手札からスプラを召喚!」
ハイドロキッズ・スプラ ATK1200 ☆4
『よっしゃいくぞ! ……あれ、水鉄砲、水切れしてね?』
「何してんだお前は!? まぁいいや。スプラの効果で、デッキから『ハイドロキッズ・マリン』を手札に。マリンは、自分フィールドにハイドロキッズがいるか、エクシーズ素材になっている場合、手札から特殊召喚できる!」
ハイドロキッズ・マリン ATK1100 ☆4
『よっしゃっ、あっ、ちょっとシュノーケルに水が』
「お前も何してんだ!? ハイドロキッズがエクシーズ素材になっているときに特殊召喚したマリンの効果で、デッキからハイドロキッズ魔法……『ハイドロキッズ・スクランブル』を手札に!」
「スクランブル?」
「このまま発動! 変身中なら、ハイドロキッズを2体、特殊召喚成功時のみ効果発動を封じて、デッキから特殊召喚できる!」
「はぁ!?」
「レスキューとサイダーを特殊召喚!」
『『参上!』』
ハイドロキッズ・レスキュー ATK1400 ☆4
ハイドロキッズ・サイダー ATK1000 ☆4
「どんどん行くぜ! 俺はマリンとサイダーでオーバーレイ! 『プロミネンス・シールド』!」
プロミネンス・シールド DEF2500 ★4
「さらに、スプラとレスキューでオーバーレイ! 『ハイドロキッズマシン・ダブルポンプ』!」
ハイドロキッズマシン・ダブルポンプ ATK2300 ★4
「これで、エクシーズモンスターが3体だ!」
ヘリオ・スライサー ATK2700
プロミネンス・シールド DEF2500
ハイドロキッズマシン・ダブルポンプ ATK2300
『どうするユーヒ。あの先輩にローションぶっかけるか?』
『いつでも準備万端だぜ!』
「やめんかお前ら!」
ふざけることしか考えていない子供たちである。
「プロミネンス・シールドの効果で、エクシーズ素材を1つ使って1枚ドロー。カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!」
遊陽のターンが終了。
「俺のターン。ドロー」
渇明はカードを引いた。
遊陽の盤面を見て……。
「エクシーズモンスターが3体。伏せカード1枚に手札2枚か」
「そうです」
「フフッ、見慣れたカードが多いが、そういやライダー効果は知らんな。後はそこがどんな風に作用するか……手札から、『グリーディ・スタッグ』を召喚!」
グリーディ・スタッグ ATK1800 ☆4
緑色のクワガタがフィールドに出現。
「スタッグの効果発動。デッキから、『強欲な壺』を手札に加える。俺は、カード名を『強欲な壺』として扱う『満たされぬ強欲な壺』を手札に」
1枚の魔法カードが渇明の手札に加わった。
「やっぱり何度聞いても、『強欲な壺を手札に加える』って言われると、ちょっとモヤっとしますね」
「だろうな。さらに手札から、『グリーディ・タイガー』の効果。手札のこのカードをターン終了時まで開示することで、デッキから『グリーディ』モンスター1体を手札に加える。俺は『グリーディ・マンティス』を手札に」
さらにカードのサーチ。
「この効果でタイガーを相手に見せている間、俺はモンスターの特殊召喚ができない……が、『満たされぬ強欲な壺』を発動。カードを1枚引いて、手札1枚をデッキ下に。1枚ドローして、タイガーをデッキボトムに送る」
「何度聞いても満足できない効果してますね」
「まあな。さて……俺は手札から、『グリーディ・ホッパー』の効果発動。『強欲な壺』を発動しているターン中、手札から特殊召喚できる」
グリーディ・ホッパー ATK1700 ☆4
次は、バッタだ。
「ホッパーの召喚・特殊召喚成功時、効果発動。デッキから『グリーディ・フュージョン』を手札に加える。そのまま発動だ」
「!」
「場のスタッグとホッパー、手札にマンティスを素材として、融合召喚! 『グリーディ・コーカサス』!」
グリーディ・コーカサス ATK2800 ☆8
出現したのは、緑色の、コーカサスオオカブトだ。
「3体融合。こんな簡単に決めてくるなんてなぁ」
「コーカサスの融合召喚成功時、素材が全て風属性なら、相手モンスターをすべて破壊する!」
「プロミネンス・シールドの変身中効果発動! ターン終了時まで、俺のモンスターは効果で破壊されない!」
雷を纏ったコーカサスが遊陽のフィールドに突っ込んだが、プロミネンス・シールドから炎のオーラが溢れて、全員を守った。
『うおおっ! あっぶねぇ!』
『お、おっかねぇ効果持ってんな!』
ダブルポンプに乗っているスプラとレスキューも大慌てである。
「……エクシーズ素材を使わないのに、ターン終了時まで効果破壊されない効果か。随分硬いな」
「変身中効果ですからね。これくらいはできますよ!」
「そうか。なら、それに振り回されてないか確かめてやる。墓地の『グリーディ・フュージョン』の効果発動。墓地のこのカードをデッキに戻して、墓地の『強欲な壺』を手札に加える」
渇明の手札に、『満たされぬ強欲な壺』が加わった。
「!」
「俺は『満たされぬ強欲な壺』を再度発動。この瞬間、コーカサスの効果を適用する。ドローして1枚ボトムに戻す効果を、『レベル8以上のモンスター1体の攻撃力を500ポイントアップさせて、1度のバトルフェイズで相手モンスター全てを攻撃できる』に変更する」
「ぐっ……」
グリーディ・コーカサス ATK2800→3300
「バトル! コーカサスで、ヘリオ・スライサーを攻撃!」
コーカサスがヘリオ・スライサーに突っ込んでいく。
「ダブルポンプの変身効果発動! モンスター1体を選択して、このターン、そのモンスターの戦闘で、お互いのモンスターは破壊されなくなる! 俺はコーカサスを選択する!」
『『ローションをくらえ!』』
コーカサスがローションまみれになった。
ただ、ヘリオ・スライサーには突撃。
ヘリオ・スライサーは燃え上がる剣で受け止めた。
「ぐっ……」
遊陽 LP4000→3400
「……このターン。コーカサスの戦闘で、遊陽のモンスターは破壊できないか。だが、ダメージは受けてもらう。コーカサスで、ダブルポンプを攻撃!」
「うわっ!」
『『うおおっ!』』
遊陽 LP3400→2400
「シールドにも攻撃」
「なんで!?」
コーカサスがシールドにも突っ込んだ。
「まあまあ……で、コーカサスの効果は使ったことがある。戦闘破壊されなくても、無策で攻撃表示にする意味はない。何を伏せたんだ?」
「ぐっ……罠カード『ハイドロキッズ・ダッシュ』を発動! ハイドロキッズモンスターが戦闘を行って、俺がダメージを受けたターン中、デッキからハイドロキッズ魔法を1枚手札に加える。ただ、変身中なら2枚! 俺は『ハイドロキッズ・ソード』と、『ハイドロキッズ・アーマー』を手札に!」
「なるほど」
「これで、リソースは圧倒的に俺の方が……」
「速攻魔法、『グリーディ・ネゴシエイト』を発動。このターン、グリーディモンスターと戦闘を行って、破壊されていない相手モンスターの数、デッキからカードをドローする」
「なに!?」
「デッキから3枚ドロー」
渇明はカードを3枚補充する。
これで、渇明の手札は6枚だ。
「しかし……なんか、硬いな」
「ぷ、プロミネンス・シールドとダブルポンプがいれば、相当な防御力に……」
「いや、そういう『硬さ』じゃなくて……」
渇明は、ヘリオ・スライサーを見る。
炎の剣を構えている戦士を。
「……今は置いておくか」
「え?」
「メインフェイズ2。カードを3枚セット。ターンエンドだ」
グリーディ・コーカサス ATK3300→2800
「ふぅ……」
遊陽は一息ついた。
モンスターの数で言えば、遊陽の方が3体いる。
だが、強力なモンスターが一体いれば、それだけで戦況を決めてしまうのが、デュエルモンスターズだ。
戦闘ダメージを叩き込むなら、グリーディ・コーカサスを突破しつつ、更に攻撃を加えるしかない。
「俺のターン。ドロー!」
3枚のセットカード。
さっぱりわからないが、それでも、遊陽にもリソースの稼ぐ手段はある。
5枚になった手札の中から、2枚を掴んだ。
「手札から、永続魔法、『ハイドロキッズ・ソード』と『ハイドロキッズ・アーマー』を発動! 変身中なら、それぞれ、『プロミネンス・ソード』と『プロミネンス・アーマー』をエクシーズ召喚扱いで特殊召喚して、それぞれエクシーズ素材にできる!」
プロミネンス・ソード ATK2000 ★4
プロミネンス・アーマー DEF2500 ★4
「これで、エクシーズが5体か」
「その通り! さらに、プロミネンス・ソードの効果で、素材を使って、1枚ドロー! ハイドロキッズ・ソードが墓地に送られた時、デッキからハイドロキッズモンスターを手札に加えられる。俺は『サーフ』を手札に!」
手札1枚と、サーフ。
「『プロミネンス・アーマー』の効果で、素材を使って、1枚ドロー! ハイドロキッズ・アーマーが墓地に送られた時、ハイドロキッズ罠カード……『ハイドロキッズ・コンビネーション』を手札に」
手札1枚と、コンビネーション。
「そして、プロミネンス・シールドの効果で、素材を使って、1枚ドロー!」
手札1枚。
これで、合計、手札8枚!
「随分引いたな」
「フィールド魔法『プロミネンス・ブレイブゾーン』を発動! 自分フィールドの戦士族エクシーズモンスター1体に、フィールドの『プロミネンス』エクシーズモンスターを任意の数装備させる。俺は、3体をヘリオ・スライサーに装備させる!」
ヘリオ・スライサーが元々持っていた炎の剣が消えた。
そして、右手にプロミネンス・ソードを。
左手にプロミネンス・シールドを。
胴体に、プロミネンス・アーマーを装備する。
『うおおおおおおおっ!』
『旦那かっちょいいっ!』
スプラとレスキューは大盛り上がりだ。
「ブレイブゾーンの効果で、装備しているエクシーズモンスター1体につき、攻撃力が600ポイントアップする!」
ヘリオ・スライサー ATK2700→4500
「攻撃力4500か……」
「さらに、3体以上装備している場合、俺のフィールドのカードは全て、戦闘と効果では破壊されない!」
「全てのカードが、だと?」
「本来はヘリオ・スライサーだけ。でも、変身中なら、俺のカード全てが破壊されなくなる!」
「そりゃまた……」
「2体以上装備しているときの効果で、相手モンスター1体を破壊する! 変身中なら、この効果に対して相手はチェーン出来ない!」
「ほぉ……」
プロミネンス・ソードを構えたヘリオ・スライサーが、コーカサスに突撃する。
そのまま、炎の斬撃を浴びせて……。
「よし……えっ」
コーカサスが、破壊されない。
「どうして……」
「手札の、2枚目の『グリーディ・マンティス』の効果。風属性『グリーディ』モンスターが破壊される場合、手札から墓地に送って身代わりにできる。これは『発動』じゃなくて『適用』だからな」
「なら……手札から、『サーフ』を特殊召喚!」
ハイドロキッズ・サーフ ATK1000 ☆4
変身中のため、無条件で手札から出せる。
『よっしゃ!』
「ハイドロキッズの共通効果で、ハイドロキッズを2体以上素材にしているモンスターの素材になれる!」
『旦那! 俺の力、使ってくれ!』
ヘリオ・スライサー ATK4500→4600
「ヘリオ・スライサーの、3体素材の効果発動! 1ターンに1度、相手モンスター1体を破壊する!」
「罠カード『グリーディ・チェンジャー』を発動。自分フィールドのグリーディモンスターを破壊する効果を発動した時、それを無効にする」
「ぐっ……」
「さらに、自分フィールドにレベル8以上のグリーディモンスターがいるなら、デッキ・墓地から、『強欲な壺』を1枚手札に加える。俺はデッキから、2枚目の『満たされぬ強欲な壺』を手札に」
「しまった……」
明らかなキーカード。
手札に加わったのは痛い。
「……バトルフェイズだ! 俺はヘリオ・スライサーで、グリーディ・コーカサスを攻撃!」
「とりあえず伏せカードを使わせようって戦術か。確かに、戦闘でも効果でも破壊されない盤面を作ってるなら、あとはリソース勝負してれば十分か」
「行け! ヘリオ・スライサー!」
ヘリオ・スライサーが炎の剣を構えて、グリーディ・コーカサスに向かって突撃する。
「俺相手にそれは甘い。永続罠、『強欲な壺の聖域』を発動し、効果も発動だ。1ターンに1度『強欲な壺』を、手札から発動できる」
「なっ……」
「さらに、強欲な壺の聖域は、自分フィールドにレベル8以上のグリーディモンスターがいるなら、強欲な壺の効果を、『モンスター1体の攻撃を無効にして、1枚ドローする』に変更できる。ヘリオ・スライサーの攻撃を無効にして、1枚ドローだ」
「マジかよ……」
遊陽は手札を見る。
六枚もある手札だ。
それが、どのような手札になっているのかはともかく……。
「メインフェイズ2。俺はカードを2枚セット。ダブルポンプを守備表示にして、ターンエンドだ」
ハイドロキッズマシン・ダブルポンプ ATK2300→DEF2000
「俺のターン。ドロー」
渇明がカードをドローする。
「……あらら、こうなるか」
「!」
4枚になった手札。
渇明は、そのうち一枚を掴んだ。
「俺は手札から、3枚目の『満たされぬ強欲な壺』を発動。それを、グリーディ・コーカサスの効果で変更する」
グリーディ・コーカサス ATK2800→3300
「そして、『グリーディ・コール』を発動!」
「うわっ、俺にとってめっちゃ見慣れたカード!」
「墓地の『満たされぬ強欲な壺』が1枚以上なら、デッキからグリーディモンスターを手札に。2枚以上なら、レベル4以下のグリーディモンスターを特殊召喚。3枚なら、レベル8以下のグリーディモンスターを特殊召喚だ。この中から1つを選択することになるが、俺が使うのは、当然3つ目」
デッキから、1枚のカードを抜き取って、モンスターゾーンに置いた。
「現れろ。レベル8。『
渇明のフィールドから、表現することすら難しい圧力が溢れる。
一体の、緑色の鱗を持った巨大なドラゴンが、その姿を現した。
強欲眼の渇望竜 ATK3000 ☆8
「ぐ、グリーディアイズ……渇明さんのエースモンスター」
『うおおおおっ!』
『迫力やべえっ!』
渇明のエースモンスターの登場。
遊陽だけではなく、スプラとレスキューもビクビクしている。
「召喚、特殊召喚に成功した場合、効果発動! 墓地の『強欲な壺』を全て手札に加える!」
「ぐっ……」
3枚の『満たされぬ強欲な壺』が、全て手札に。
その3枚を除いて、渇明の手札は2枚であり、その内容によっては……。
「俺は『強欲な壺の精霊』を召喚!」
強欲な壺の精霊 ATK100 ☆1
「そいつは……」
「そう、強欲な壺を使ったら、デッキから1枚ドローできるカードだ。というわけで……俺は『満たされぬ強欲な壺』を3枚発動! 1枚ドローして1枚ボトムにおいて1枚ドロー。これを3回繰り返す!」
満たされぬ強欲な壺は、1枚ドローして1枚ボトムに戻す魔法カード。
『満たされぬ強欲な壺』を発動した時点で手札がマイナス1で、1枚ドローして1枚ボトムのため、手札枚数は実質的にマイナス1だ。
それを、強欲な壺の精霊のドロー効果でマイナスを帳消しにしている。
今の渇明は。
完璧に近い状態で調整された、4枚の手札を持っている。
「手札から魔法カード『グリーディ・ストーム』を発動! 自分フィールドにレベル8以上の『グリーディ』がいるなら、相手フィールドのカード1枚を手札に戻す! ヘリオ・スライサーだ!」
「罠カード『ハイドロキッズ・トライガード』を発動! このターン、ハイドロキッズを3体以上素材にしているエクシーズモンスターは、相手が発動した効果をうけなくなる!」
「ほぉ、なら火力で押し通すか。手札から、魔法カード『グリーディ・インパクト』を発動! このターン、俺が『強欲な壺』を3回以上発動し、墓地に3枚ともあるなら、自分フィールドの『グリーディ』モンスターの攻撃力を倍にする! グリーディアイズの攻撃力は2倍だ!」
強欲眼の渇望竜 ATK3000→6000
「攻撃力6000……」
「バトルだ! グリーディアイズで、ヘリオ・スライサーを攻撃!」
グリーディアイズが、口の中にエネルギーをため込んでいく。
「壊滅の、クレイブ・ストリーム!」
超威力のブレスが放たれる!
「罠カード、『ハイドロキッズ・コンビネーション』!」
「素材1枚につき400ダウンか。だが、ヘリオ・スライサーの素材は3つ。1200ダウンじゃ下げきれないぞ」
「変身中なら、手札のハイドロキッズを、任意の数、そのモンスターの素材にできる!」
「なぬぅ!?」
「俺は……手札全部! 4体のハイドロキッズを素材にする!」
レスキュー、サイダー、マリン、ジェット。
4体がヘリオ・スライサーの素材になる。
『旦那! 今行くぜ!』
『俺たちもやるぞ!』
『カチコミだああっ!』
『ジェットパック壊れたああっ!』
ヘリオ・スライサー ATK4600→5000
「これで、素材は7体! グリーディアイズの攻撃力は、2800ポイントダウンする!」
「なんか一体だけおかしいことになってなかったか!?」
「知らん!」
「無視!?」
強欲眼の渇望竜 ATK6000→3200
「倍にする前とほぼ変わらない……」
「迎撃しろ! ヘリオ・スライサー!」
ヘリオ・スライサーは盾でブレスを受け止める。
ブレスの勢いが弱まっていき……。
「チェーンして速攻魔法、『グリーディ・ゼログラビティ』を発動! この戦闘でお互いに発生するダメージは0になる!」
「でも、グリーディアイズは破壊だ!」
「残念だが、墓地に強欲な壺が3枚あれば、戦闘するモンスターは戦闘でも破壊されなくなる!」
ブレスを防いだだけで終わった。
「でも、これでグリーディアイズの攻撃は防いだ。コーカサスはヘリオ・スライサーを突破できないし……」
「コーカサスでヘリオ・スライサーを攻撃!」
「えっ」
「速攻魔法、『決闘融合-バトル・フュージョン』発動!」
「忘れてた! あったわそんなカード!」
「俺の融合モンスターの攻撃宣言時、相手モンスターの攻撃力を俺のモンスターの攻撃力に加える!」
グリーディ・コーカサス ATK3300→8300
雷を纏ったコーカサスが、ヘリオ・スライサーに突っ込んだ。
戦闘破壊はされないものの、ダメージは防げない。
「ぐっ、うおああああああああああああああああああああっ!」
遊陽 LP2400→0
★
「なぁ、遊陽」
「なんですか?」
デュエル終了後。
変身も解除して、屋上のベンチに並んで座った。
「お前さ。エクストラデッキってどうなってんだ?」
「ヘリオ・スライサーが1枚、プロミネンスのソード、アーマー、シールドが3枚ずつ、あとダブルポンプ1枚の合計11枚です」
「だからコンビネーションに全部ツッコむとかいう暴挙に出やがったのか」
「暴挙って……」
「あんな大雑把なアドリブ見たことねえぞ俺」
「いやぁ……その……なんというか……」
遊陽は頭の中が整理できていない様子。
「ハイドロキッズ装備とプロミネンス装備で手札補充が凄いことになったのはいいとして、その後に何をすればいいのかわからなくなって、大雑把になったってところか?」
「その通りです!」
「……まぁ、確かに、一回、手札8枚になったのに俺を倒しきれないとなると、ちょっとデッキに殺意が無さ過ぎるな」
リソースの回復がすさまじいことになっていたが、それで何をすればいいのかの解答がデッキに用意されていない。
「それに、ブレイブゾーンの耐性もあるし、あれがあれば簡単には負けないと思ってて……」
「フィールドの大怪獣バトルに巻き込まれてデュエリストがくたばったら意味ねえだろ」
「返す言葉もございません」
「まぁ、俺も楽しかったからいいけどな」
渇明は微笑んだ。
「まぁ、自分が好きなカードでデッキを組めばいいさ」
「そうします」
渇明としてもいろいろ思うところはあるはずだが。
結局、楽しければ良いのである。