遊戯王 KAMEN RIDER HELIOS   作:レルクス

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第8話 輝かせたい気持ち

 水曜日の朝。

 

 遊陽が教室に入ったとき、中は少し、ざわついていた。

 

「昨日、怪人を六体も倒したって本当?」

「そうだよ! ニュースになってたかな。ウィード怪人が5体と、えーと、あの試験管みたいな……」

「歩佳、あれは蒸留器」

「そうそう! 蒸留器みたいな怪人が1体いて、合計6体だったよ」

 

 途中、青葉から補足を入れてもらいながら、歩佳がクラスメイトに話している。

 

 人的被害ゼロで、怪人を討伐。

 

 めったに表社会に出てくるような存在ではないゆえに、それに遭遇すると、間違いなく事故が起こるものだ。

 

 レコックス・コーポレーションは『怪人事故』に関しては補償制度も用意しているが、『襲われたこと』が心に与えるダメージは非常に大きい。

 

 それを防ぐのは、仮面ライダーにとって、最も大きな役割でもある。

 

「そういえば、怪人って、倒した後はどうなるの?」

「怪人はそのまま倒れてるから、行政の人が回収していったよ。すっごく手際よく運んでたね。現場の状態確認も、物が壊れたりしてたらその分の補償もテキパキ進めてた」

「その手の保険って、なんかすごく渋るイメージがあるけど、怪人に関しては手を尽くすんだな……」

 

 話を聞きながら、遊陽は考えていた。

 

 怪人は倒れてもそのまま。

 

 ただ、裏路地で倒した時は、怪人は人間戻っていた。

 

 あれが、カードショップに来たからと言って、違うとも思えない。

 

「……」

 

 チラッと、鞄の中に突っ込んだデュエルディスクを見る。

 

 ……そう、立体映像を投影する、今となっては世界中に普及した装置を。

 

「……っ」

 

 思うところはいろいろあったが、ここで、遊陽が話すようなことではない。

 

 そもそも。

 

 今、遊陽が考えているようなことを、今まで誰も考えなかったはずがない。

 

 それが広まっていないなら、広まっていない理由があるはずだ。

 

「で、そのカードショップの店員さんが言ってたんだけどね」

 

 怪人の話題から、次の話題になったようだ。

 

 遊陽はそれを聞き流しつつ、鞄から水筒を取り出してお茶を飲んで……。

 

「1枚のカードを、5時間もかけて探してた人がいたんだって!」

「ブフッ!」

 

 心当たりがある話にお茶を強烈に吹き出した。

 

「……えっ、遊陽君。大丈夫?」

「だ、大丈夫」

「人が水を飲んでるときに衝撃的なことを言う歩佳が悪い」

「いや、流石にそれは想定できないよ!?」

 

 青葉からの無茶振りに思わず反論する歩佳だが、それ以上の反撃はできていない。

 

「それに、歩佳も1枚のカードを探しに行ってたでしょ? スターターデッキの中にあるからそれを買えばよかったけど、私がスターターに入ってるって言わなかったらどうしてたの?」

「……多分、長時間探してたと思うよ!」

「人のこと言えないじゃん」

「青葉ちゃんも一緒にね!」

「人の時間を何だと思ってんの?」

 

 遊陽もヤバいが、歩佳も結構、ヤバいのかもしれない。

 

 ハンカチで唾とお茶が飛んだ机を拭きながら、遊陽はそう思った。

 

 ★

 

 放課後。

 

 遊陽は学校を出ると、そのまま、タワーマンション、『グラン・リボーン』に向かっていた。

 

 プレミアム・ラウンジを利用するために以前利用した場所で、今回もそこに用がある。

 

 エントランスに入ると、スタッフたちがぴくっと反応して、出入り口にいる遊陽を見て、納得した様子でもとの仕事に戻っていく。

 

 スタッフルームから、佐々木さんが来た。

 

「あ、佐々木さん」

「お待ちしておりました。遊陽様」

「……上、行きましょう」

「そうですね。個室とカードを用意していますよ」

 

 二人でプレミアム専用エレベーターを使って、上に行く。

 

「朝にお電話といただきましたが、『勝つためのカード』を入れたいとのことで」

「うん……あの、強馬渇明って人。知ってますか?」

「ええ、知っていますよ。遊陽様が通う『私立水面高校』の二年生で、学校内のイベントは殿堂入り扱いとか」

「え、渇明さんって殿堂入りだったの?」

「知らなかったのですか?」

「学内のデュエルイベントに出ないなぁとは思ってたけど、殿堂入りだったなんて……」

「水面高校の教員には元プロのデュエリストもいます。デュエル実技試験でやりすぎて、『イベント出禁』が決まって、表向きは殿堂入りとしているそうですね」

「……まぁ納得です」

「でしょうね」

「……その先輩から言われたんですよ。『お前のデッキには殺意が足りない』って」

「確かに、以前お渡ししたカードはインフラになりうるカードですが、勝つためのカードではありませんね」

「そういうことです」

 

 エレベーターが到着した。

 

 降りて、廊下を歩いて、ラウンジに入る。

 

 今日はそのまま通り過ぎて、個室に入った。

 

 もちろん、絶景なのは変わりない。

 

「……あの、結構、大きなストレージを持ってきたんですね」

「ハイドロキッズとヘリオ・スライサーを考慮しつつ、勝つためのカードですからね。候補は多いんですよ。候補はね」

「はぁ……」

「とりあえず、ソファにおかけください」

「ああ。はい」

 

 座った。

 デュエルディスクから自分のデッキを取り外して、机に並べる。

 

 佐々木も確認した。

 

「……確かに、率直に言いますが、『勝ちたい』という思いで組んでいませんね」

「そうなんですよね。勝ちたいって思ってデッキを組んだことがたぶんないので……」

「何故なのか、自分で分かりますか?」

「だって……」

「だって?」

「勝つってことは、そのためにいろんな計算をしてデッキを組むってことですよね」

「そうですね」

「……ぶっちゃけめんどくさいんです」

「正直でよろしい」

「どの目線ですか!?」

「そう言ってほしかったのでは?」

「それはそう!」

 

 佐々木さん。察する能力が高過ぎである。

 ババ抜きとかめっちゃ強そう。

 

「さて、茶番はこのあたりで良いとして、私からもいろんなカードをお見せしましょう」

 

 大きなストレージから、いくつかのカードを抜き取る。

 

「こうしてデッキリストを見るのは初めてですからね。それに合わせたものですと、最適なのはこれらのカードかと」

「……え、5枚?」

「ええ」

「それだけ大量に持ってきたのに、選ぶのは5枚?」

「そんなものですよ。『勝つ』というのは」

「……」

 

 貰った5枚のテキストを確認する。

 

「……うーん。むぅ、入れてみます」

「納得できない時は試運転するのがいいですよ」

「そう、ですよねぇ」

「今回、『プレミアム・スターターデッキ』を1箱お持ちしています。こちらを私が使用し、変身した遊陽様とデュエルするというのはどうでしょう」

「え、変身した俺と、佐々木さんが?」

「はい」

「あの……めっちゃ、強いですよ。変身効果」

「そうしないと、渇明さんとのデュエルと、比較にならないでしょう」

「……そうですね」

 

 遊陽は頷いた。

 

「あと、私は遊陽様のデッキを全て確認しましたが、こちらのプレミアム・スターターデッキの内容は確認しますか?」

「あー……やめときます。パッと見てもわからないので」

「畏まりました。それでは、屋上のプレミアムデュエルコートに移動しましょう」

「そんなのあるんですね……」

 

 というわけで、二人で移動することに。

 

 ★

 

「……思うんですけど、たまにこのあたりでヘリが飛んでるなーって思った時、大体はプレミアム用の何かを運んでるんですか?」

「そのようなパターンが多いですね」

 

 プレミアムデュエルコート。

 

 というより、そもそも、48階から屋上まで、プレミアム専用となっている。

 

 ヘリポートも用意されていて、その横に、デュエルに適したラインが引かれている。

 

「それでは、デュエルを始めましょう」

「はい」

 

 遊陽は腕からデュエルディスクを外すと、腰に当てた。

 

 ベルトがディスクから飛び出て、一周して、腰に巻かれる。

 

『DUEL DRIVER』

 

 遊陽は、ベルトのスイッチを押した。

 

『Your name is……』

「変身!」

 

 ライダーカードをベルトに挿入!

 

『KAMEN RIDER HELIOS!』

 

 ベルトから炎が溢れて、赤いアーマーを構築していく。

 遊陽の体に装着されて、彼は、仮面ライダーになった。

 

「これが、仮面ライダーヘリオスですか」

「そうです。行きますよ。佐々木さん」

「ええ」

 

 佐々木はデュエルディスクを構える。

 

 そこに、プレミアムスターターデッキを箱から開封して、シュリンク包装を開けて、ディスクに装填。

 シャッフルされたデッキから、5枚ドローした。

 

 遊陽がデッキからドローすると、手から消えて、赤く光るホログラムになる。

 

「「デュエル!」」

 

 遊陽  LP4000

 佐々木 LP4000

 

「先攻は……私ですね」

 

 デュエルディスクのターンランプがついたのは、佐々木のデュエルディスクだ。

 

「では、『フロントリビア・ブックメイカー』を召喚」

 

 フロントリビア・ブックメイカー ATK1900 ☆4

 

 出現したのは、白いローブを身に纏って、本を手に持っている男。

 

「フロントリビア……レコックスが2500円で販売してるスターターデッキが定期更新されてるけど、全部、そのテーマだったはず」

「ええ、プレミアム版でも、カテゴリは変わりませんよ。ブックメイカーの召喚成功時、デッキから『フロントリビア』モンスターを手札に、私は『フロントリビア・ブックバインダー』を手札に加えます。このモンスターは、自分フィールドにフロントリビアがいれば、特殊召喚出来ます」

 

 フロントリビア・ブックバインダー ATK1400 ☆3

 

「特殊召喚成功時、自分以外に魔法使い族がいるなら、デッキから『融合』を1枚手札に」

「他に魔法使い族を要求……魔法使い族の融合デッキか」

「その通り、私は『融合』を発動。フィールドのブックメイカーとブックバインダーを素材として、融合召喚! 『フロントリビア・レッドソーサラー』!」

 

 フロントリビア・レッドソーサラー ATK2600 ☆7

 

 フィールドには、赤い本を手にする荒々しい相貌の男が出現。

 

「このデッキのエースですよ」

「もう出てくるんですね……」

「レッドソーサラーは、フィールドから素材を選んだ場合、その数1枚につき、デッキから『レッド・ポーション』を手札に加えます」

「『レッド・ポーション』!?」

 

 佐々木の手札に、魔法カード、『レッド・ポーション』が手札に加わった。

 

「私は2枚とも発動。レッドソーサラーの効果で、私が使う『レッド・ポーション』によるライフ回復は、500から1000になります」

 

 佐々木 LP4000→5000→6000

 

「佐々木さん」

「なんですか?」

「面白いカード使いますね」

「でしょう? 私はカードを2枚セットして、ターンエンドです」

「残り手札2枚に伏せカード2枚で、攻撃力2600のモンスターか。俺のターン。ドロー!」

 

 遊陽はカードをドロー。

 

「俺は手札から、『ハイドロキッズ・スクランブル』を発動! 説明は不要ですね。デッキから『ハイドロキッズ・サイダー』と『ハイドロキッズ・ジェット』を特殊召喚!」

『『よっしゃあ!』』

 

 ハイドロキッズ・サイダー ATK1000 ☆4

 ハイドロキッズ・ジェット ATK1400 ☆4

 

 飲料水のボトルを持っている子供と、ジェットパックを背負った子供が出現!

 

『お、ユーヒ! 今日は屋上だな!』

『風が強いぜ!』

「飛ばされるなよ。俺はお前たちでオーバーレイ!」

『『渦に向かってぶっ飛ぶぜ!』』

「余計な事言うんじゃない! エクシーズ召喚! ランク4『ヘリオ・スライサー』!」

 

 ヘリオ・スライサー ATK2500→2700 ★4

 

 燃え上がる剣を装備したエースがフィールドに出現!

 

「そちらももう出てくるんですね」

「あれ、佐々木さんってそういう人でしたっけ?」

「デュエル中はそういう人です」

「そういうことにしておきます。どんどん行きますよ。俺は『ハイドロキッズ・スプラ』を召喚!」

 

 水鉄砲を持った子供が出てきた。

 

 ハイドロキッズ・スプラ ATK1200 ☆4

 

『ユーヒ。俺を初手で握りすぎじゃねえか?』

「確かにそうだな! 召喚成功時、効果発動! デッキから『ハイドロキッズ・マリン』を手札に! そのまま特殊召喚だ!」

 

 シュノーケルを持った子供が出てきた。

 

 ハイドロキッズ・マリン ATK1100 ☆4

 

『ユーヒ! 大変だ!』

「俺はマリンの効果で――」

『本当に大変なんだって!』

「……なんだ?」

『おならが出そうだ!』

「俺はデッキから『ハイドロキッズ・シールド』を手札に!」

 

 無視した。

 

「このまま永続魔法『ハイドロキッズ・シールド』を発動! そのまま効果発動だ! 『プロミネンス・シールド』をエクストラデッキからエクシーズ召喚扱いで特殊召喚して、素材にする!」

 

 プロミネンス・シールド DEF2500 ★4

 

「プロミネンス・シールドの効果で、素材を使って1枚ドロー!」

 

 まず、ドロー1枚。

 

「墓地に送られた『ハイドロキッズ・シールド』の効果! デッキから、永続魔法以外の『ハイドロキッズ』魔法カードを手札に。俺は『ハイドロキッズ・アームズコール』を手札に加えて発動! デッキからハイドロキッズ永続魔法を手札に加える!」

「なんですかその茶番」

「俺はデッキから、『ハイドロキッズ・アーマー』を手札に! このまま発動して、効果も発動だ! エクストラデッキから『プロミネンス・アーマー』を出して、素材にする!」

 

 プロミネンス・アーマー DEF2500 ★4

 

「プロミネンス・アーマーの効果で、素材を使って1枚ドロー! ハイドロキッズ・アーマーが墓地に送られた時の効果で、『ハイドロキッズ・コンビネーション』を手札に!」

「ほう……」

「さらに、レベル4のスプラとマリンでオーバーレイ!」

『よっしゃいくぞ!』

『おりゃあああっ!』

 

 2体が光の渦に飛び込んで爆裂する。

 

「エクシーズ召喚! 『プロミネンス・ソード』!」

 

 プロミネンス・ソード ATK2000 ★4

 

「そのまま効果発動! 素材を1つ使って、1枚ドロー!」

「これで、ヘリオ・スライサーに加えて、3種類の装備が……まさか」

「そのまさかですよ。手札からフィールド魔法、『プロミネンス・ブレイブゾーン』を発動! 発動時の効果処理で、ヘリオ・スライサーに、三種類のプロミネンスを装備させる!」

 

 ヘリオ・スライサーの手から剣が消えて、プロミネンス・ソード、シールド、アーマーが装備される。

 

「ブレイブゾーンの効果で、装備しているエクシーズモンスター1体につき、攻撃力が600ポイントアップする!」

 

 ヘリオ・スライサー ATK2700→4500

 

「……」

「さらに、手札の『ハイドロキッズ・サーフ』は、変身中なら無条件で特殊召喚!」

 

 ハイドロキッズ・サーフ ATK1000 ☆4

 

『うおおおっ! 旦那かっちょいいいいっ!』

「サーフの効果! 2体以上ハイドロキッズを素材としているエクシーズモンスターの素材になれる!」

『行くぜ旦那! 俺の力使ってくれ!』

 

 サーフがヘリオ・スライサーのエクシーズ素材になる。

 

 へリオ・スライサー ATK4500→4600

 

「こ、これが……現状の完全体と言ったところですか」

「そうです! ブレイブゾーンの効果で、プロミネンスを3種類装備しているなら、俺のカードは全て、戦闘でも効果でも破壊されない! 装備が2種類以上あるなら、チェーン不可のモンスター破壊が行えますよ」

「……マジで言ってるんですか?」

「マジで言ってます」

「……そうですか」

 

 遊陽と佐々木の中で、『渇明がバケモノだったって話になるんじゃね?』と思い始めてきた。

 

 まぁ、それはそれである。

 

「ただ、手札、6枚ありますね。どうしますか?」

「まずは、そのリソース、使ってもらいますよ。ブレイブゾーンの2種類以上の効果で、チェーン不可でレッドソーサラーを破壊!」

 

 レッドソーサラーが粉砕された。

 

「よしっ、これで……」

「レッドソーサラーが破壊された場合、墓地からレベル4以下のフロントリビアを1体特殊召喚できますよ。私は『フロントリビア・ブックメイカー』を守備表示で特殊召喚」

 

 フロントリビア・ブックメイカー DEF1200 ☆4

 

「こ、後続確保……」

「ブックメイカーのサーチは特殊召喚でも使えます。私は『フロントリビア・アルケミスト』を手札に」

「ぐぅ……ヘリオ・スライサーの効果で、エクシーズ素材を3つ以上持っているなら、相手モンスターを破壊できる! 俺は、ブックメイカーを破壊!」

 

 ヘリオ・スライサーが剣を振ると、ブックメイカーが破壊された。

 

「これで……」

「墓地に『レッド・ポーション』がある状態で自分フィールドのフロントリビアが破壊された場合、手札の『フロントリビア・アルケミスト』の効果発動。手札から特殊召喚!」

 

 フロントリビア・アルケミスト DEF1000 ☆3

 

「ま、また後続が……」

「この程度の攻勢なら伏せカードを使う必要もありませんよ。さて、どうします?」

 

 まだ、遊陽の手札は、6枚もある。

 

「魔法カード『ハイドロキッズ・タッグジャンプ』を発動! 変身中なら、手札と墓地から、ハイドロキッズを1体ずつ特殊召喚できる。俺は、墓地のスプラと、手札のレスキューを特殊召喚!」

『行くぜええっ!』

『何か燃えて……旦那の剣だけか!』

 

 ハイドロキッズ・スプラ   ATK1200 ☆4

 ハイドロキッズ・レスキュー ATK1400 ☆4

 

「俺はスプラとレスキューでオーバーレイ!」

『俺たちってことは』

『アレだあああっ!』

「エクシーズ召喚! 『ハイドロキッズマシン・ダブルポンプ』!」

 

 ハイドロキッズマシン・ダブルポンプ ATK2300 ★4

 

 放水機を2門設置したマシンが出現し、スプラとレスキューが乗り回している。

 

「それは……」

「プレミアムボックスで当てたカードですよ。レスキューを探すのが大変だったのなんのって……俺は、スプラとレスキューを素材にしているダブルポンプの効果発動! 相手モンスター1体の表示形式を変更できる!」

『『くらえっ!』』

 

 アルケミストが攻撃表示に。

 

 フロントリビア・アルケミスト DEF1000→ATK1200

 

「さらに、魔法カード、『絶対届かぬ壁を超えて(スリーマンズ・チャレンジャー)』を発動! 自分フィールドの、エクシーズ素材を3つ以上持つモンスター1体を対象に、攻撃宣言時からダメージステップ終了時まで、攻撃力が倍になり、相手はカードを発動できない効果を付与します!」

「まあ、通せませんね。罠カード『フロントリビア・アルケミーサイクル』を発動。墓地から『レッド・ポーション』1枚をデッキに戻すことで、相手が発動した魔法、罠を無効に」

「んなっ、なんで『スクランブル』とかに使わなかったんだ!?」

「追加効果で、レッド・ポーションをもう1枚戻せば、このターン、相手モンスター1体を対象に取り、攻撃できません」

「そっちが本命か! 手札から速攻魔法、『天なる剣』を発動! 自分フィールドで一番攻撃力が高い戦士族モンスターが相手のカードの対象になった場合、その発動を無効にする!」

「カウンター罠、『フロントリビア・レッドリバース』を発動。相手がカードの効果を無効にする魔法、罠カードを発動した時、それを無効にして、相手モンスター1体をセット状態にします」

「なぬ!?」

「チェーンは……ありませんね。私はダブルポンプを選択し、セット状態に」

『『うおおおおっ!』』

 

 ダブルポンプがセット状態に。

 

「さらに、へリオ・スライサーはこのターン。攻撃できません」

「ぐっ……」

 

 6枚あった手札だが。

 この攻防で、もう、2枚に。

 

 そのうち一枚は、『ハイドロキッズ・コンビネーション』だ。

 

「……佐々木さん」

「えぇ。分かってますよ」

「このデュエル。俺の勝ちです!」

「では、どうぞ」

「魔法カード、『ハイドロキッズ・リスタート』を発動! 自分フィールドの、もともと攻撃力よりも、高い攻撃力を持ち、ハイドロキッズを3体以上素材とするエクシーズモンスター1体を対象に、そのモンスターをエクストラデッキに戻す!」

 

 ヘリオ・スライサーがエクストラデッキに戻った。

 

 プロミネンス装備も、もともと持っていたエクシーズ素材も、全て墓地に置かれる。

 

「その後、エクストラデッキに戻したモンスターを、フィールドに特殊召喚する!」

 

 ヘリオ・スライサー ATK2500 ★4

 

 再び、エクストラデッキからヘリオ・スライサーが出てくる。

 

「変身中にこの効果で特殊召喚されたモンスターは、エクストラデッキに戻る前の攻撃力と同じ攻撃力を得る!」

 

 ヘリオ・スライサー ATK2500→4600

 

「攻撃力4600ですか。しかし、私のフロントリビア・アルケミストの攻撃力は1200……ライフが6000の私には届きませんよ?」

「ハイドロキッズ・リスタートを墓地から除外して効果発動! 変身中なら、自分フィールドの、エクシーズ素材がないエクシーズモンスター1体に、自分のハイドロキッズモンスターを3体、素材に加える! サーフ、マリン、サイダー。頼んだぞ!」

『『『旦那ああああっ!』』』

 

 3体が素材に加わった。

 

 ヘリオ・スライサー ATK4600→4900

 

「墓地から『天なる剣』を除外して効果発動! 変身中なら、任意の魔法カードを墓地から手札に! 俺は、『絶対届かぬ壁を超えて(スリーマンズ・チャレンジャー)』を手札に戻す。このまま、素材を3つ持っているヘリオ・スライサーを対象に発動だ! このカードは、フィールドの同じモンスターを対象に取れないけど、1度エクストラデッキに戻ったヘリオ・スライサーは、対象に取れる!」

 

 ヘリオ・スライサーが剣を構えなおした。

 

「ヘリオ・スライサーの攻撃宣言時からダメージステップ終了時まで、攻撃力は倍になり、相手はカード効果を発動できなくなる! バトルだ! ヘリオ・スライサーで、フロントリビア・アルケミストを攻撃!」

 

 へリオ・スライサー ATK4900→9800

 

「攻撃力、9800。うわっ!」

 

 アルケミストを一刀両断して、佐々木のライフを消し飛ばした。

 

 佐々木 LP6000→0

 

 ★

 

「ヘリオ・スライサーで勝つことにこだわりすぎでしょう。他のモンスターを出せば、突破力もありますよね」

「ありますねー……」

「タッグジャンプでしたか。あれで手札と墓地からハイドロキッズが出てきましたが、出す先をダブルポンプではなく、私がお渡しした汎用的なエクシーズにするだけで、戦況は変わったはず」

「変わりましたねー……」

 

 個室に戻って、二人で話している。

 

「とはいえ、その手癖は遊陽様が大切にするべきものです。そこを伸ばしたいなら、それを伸ばしましょう」

「それで、いいんですかね?」

 

 デュエルというのはいろんな判断が求められるものだ。

 

 そういったものを無視して、デッキを構築して良いものなのだろうか。

 

「短所を埋めるというのは、必要な場合にするべきことです。長所を伸ばす、短所を埋める、裾野を広げる。相手を倒すためには主に三通りありますが、全部やる必要はありません」

「そうですか……」

「できているのが渇明さんというだけの話です」

「あの人を基準にしたのが大きな間違いという話になりませんか?」

「途中でちょっと思ったでしょう」

「思いました」

 

 付き合いは短いが、『遊陽が望む空気』を読み取る能力が高すぎて、随分気の合う会話になっている。

 

「私もこれからは、遊陽様の手癖に合わせたカードを選出しましょう」

「ありがとうございます」

「専任コンシェルジュですから、当然です」

 

 佐々木は微笑んだ。

 

「勝つためのカードを入れているからこそ、後攻1ターン目でこのデッキに勝ちましたが、それにこだわる必要もなさそうですね。それでは……」

 

 ストレージからいろんなカードを取り出し始める佐々木。

 

 遊陽も楽しそうに、佐々木が取り出したカードたちを見ている。

 

 ここはラウンジであり、腹が減ったらご飯も出る。

 

 二人はしばらくの間、絶景を眺めつつ、デッキ構築に熱中していた。

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