「また行き止まり?!」
「飛ぶぞ! 舌噛むなよ!」
あたし、
「〈バルチャー〉がこんなしつけぇのは滅多にないぞ! お前なんかヤバそうなモン拾ったか? 光ってる
「うぇ……知らないよそんなの」
全然心当たりがない私は首を横に振る。上下左右にぐわんぐわん揺すられて吐きそうだ。
「チッ……
着地したのは鉄骨むき出しのビルの多分4階くらいだ。一休みしたいけど、足を止めれば〈バルチャー〉とかいうドローンに追いつかれる。手首のシューター?とかいうのを弄ってるイージィをよたよた追いかけながら、あたしはポケットを探った。電波がつながらないスマホと、使えないお金しか入ってない財布、あとは……あれ?
「なに、これ……」
くしゃくしゃの紙切れが出てくる。広げたら多分B5くらいのサイズだろうか。
「これって──」
遡ること数時間前。スパイダーパンクの驚きの正体を聞かされた日の翌朝。朝食を済ませたあたしはアルトさんが用意してくれた街の地図を見ていた。
「オレにはオレのタイミングがあったのによォ……」
「まだ言ってる……」
「ストリートの皆が知ってるのに今更正体隠しても面倒しか起きませんって。そんなことよりこの廃墟ですよ」
そんなことじゃねーし……とブツブツ言ってるイージィを放って、アルトさんが話を続ける。指さしているのは
「二、三日前くらいですかね。この辺りでちょうど虹夏ちゃんくらいの年の子供を見たって人が何人かいるんですよー」
アルトさんが調べてくれたところによると、リョウらしき人物……というにはあまりに手掛かりが少ないけど、髪が青っぽかったとか、やせ型だったとか、それっぽい特徴の人がいたらしい。未だツンツンしてるイージィはともかく、街の人たちも温かく迎えてくれたけれど、正直心細さがじわじわ染みてきてるあたしには無視できない情報だった。
「ただ、この一帯は道路が崩れたり水道管が途切れたりで、住むには向かない場所なのが気がかりですねー」
「でもそのリョウってやつは野草食ったりしてるんだろ。アウトドア趣味のギークだってならしばらく持つんじゃねぇか」
「うーん……アウトドア趣味って程では……」
リョウは道草食ってるし一人暮らしも頑張ってはいるけど、人並み以上に寂しがるところもあるし急にテント買った時も組み立てだけで満足して帰ったし焚火台買った時も火起こしに飽きてあたしに丸投げだったし……
「仲良しなんですねー」
「べ、別に付き合い長いだけですし!」
「そのリョウってのが頑張って野宿してるならよし。もし人違いでもあんまり長居に向かない場所だ。迎えに行ってやったほうがいい。最悪のパターンとして、街を襲うつもりの奴が下準備してるって可能性もある」
「さすがに一人しか目撃されてないんじゃその線は薄いんじゃないですかー?」
「キングピンみたいな
「その時は……頼れる隣人の出番ですよねー?」
アルトさんがニコッと含みのある笑顔を向ける。イージィはわざとらしく溜息をついた。
かくしてその場所に向かったあたしとイージィは、目的地に着く手前で突然現れたドローン〈バルチャー〉の群れに追い回されることになったのだった。曰くこれも例のオズコープとかいう会社の兵器で、ハゲタカの名前の通り資源になるものを集めるロボットらしい。もちろん手段は択ばずに。
そんな物騒なロボットがなんであたしなんかを追いかけてくるのかわからない。イージィが言ったような変なもの持ってないし……と思った矢先にあたしが見つけた紙束。ほんの二、三枚のそれは破れた漫画のページだった。
「これ、リョウが持ってきたアメコミだ! こっちの世界に来る前に光ってたやつ!」
「
よくわからない言葉が出たけど、どうやらこの漫画が狙われてるらしい。このクシャクシャの漫画が?
「とりあえず丸めて捨てろ!」
言われたとおりにぎゅっとして後ろに投げると、ぶんぶん唸るドローンが餌に群がる鯉みたいにそっちへ集まった。
「降りるぞ!」
返事をするより前にイージィはあたしを抱えると、10メートルくらいの高さを一気に飛び降りる。悲鳴が出そうな口を押えるか押さえないかのうちに、糸で減速してゆっくりと地面に降ろされた。昼ごはんが出そうなのを堪えながら元居たビルを見ると、ドローンが追ってくる様子はない。イージィもふぅと息を整えて、念のため物陰に移動した。
「さっきのドローン、漫画なんか集めてるの?」
「形は重要じゃない。伝説の杖だろうがコーラの空き瓶だろうが、並行世界の壁を超えるメタ・エネルギーが詰まってんだ。そこまで感知できるとは……」
そんなすごい漫画だったんだ。いまいちの見込めずにいると、イージィは気まずそうに眼を逸らしながら言った。
「……悪い。オレのミスだ。もっと早く気付くべきだった。久々のヒーロー業で鈍ってたな」
「えっ」
我ながら失礼だなとは思うけど、急にしおらしくされても困る。返事に悩んでいるうちに、イージィは続きを話し始めた。
「ともかく、あの聖なる紙切れはお前が家に帰るときにも必要になる。だから取り返すぞ」
イージィが腕の機械を操作すると、立体映像の地図が浮かび上がる。今更だけどSFっぽくてすごい。地図上では赤い点が移動していた。
「さっき
赤い点が止まる。その場所は出かける前に広げていた地図で見た場所、最初の目的地のすぐ近くだった。
「もし、リョウも同じ漫画の切れ端を持ってたら……」
「あぁ、きっとここにいる」
ついてくるだろ、と言わんばかりにイージィの手が差し伸べられる。あたしは迷わず握り返した。
To be contuned…
*ビリオン・バード
BOOM BOOM SATELLITESの楽曲タイトルから引用。SHINE LIKE A BILLION SUNは忍殺のOPが入ってる贔屓目を差し引いても名アルバム。
*O.U.O.
オーバー・ユニバース・オブジェクト。特にMCUの用語ではなくさっき考えた造語。ご都合アイテムなので特に意味はない。