ようこそ亜種聖杯戦争から遠く離れた教室へ   作:論 外之助

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まだ原作そんなに読んでもいないというのに、何故書き出してしまったのか。
その謎の真相を探るべく、我々はお布団の中へと潜った───。



春の日、運命の朝

「大丈夫か? 少年」

 

 月明かりが差し込む森の中、傷だらけでボロボロの僕の目の前に現れた女性は優しく声をかける。

 僕のことを先程まで襲いに来た化け物たちは彼女を前にして、一斉に距離を取り、警戒するように唸る。

 

「魔力のパスと状況を鑑みるに……いや、今は目の前の事態に集中した方が良さそうだな」

 

 彼女は未だ恐怖のあまり腰が抜けて地面に座り込む僕の方へと振り返り、優しく微笑む。

 その言葉の一つ一つに、身が震える。

 この人は、僕の味方なのだと、助けに来てくれたのだと、頭と心で分かった。

 それでも、それまでに感じていた恐怖は未だ消えない。

 そのせいで、全身が震える。

 そんな僕の体を、彼女は両腕で優しく包み込んでくれた。

 

「今までたった1人でよく頑張ったな。契約についてはこの状況を乗り切った後にしておこう」

 

 そう言った彼女は化け物たちの方へと振り返り、僕の目には捉えきれないスピードで駆け抜けた。

 何が起こっているのか、よく分からない。

 唯一分かることは、さっきまで僕たちを取り囲んでいた化け物たちが次々に爆発四散しているということ。

 音から察するに、彼女が文字通り目にも止まらぬスピードで化け物たちを殴っているのだろう。

 

「これでひとまずは安心、と言ったところか」

 

 結局、彼女はたった1人であるというのにも関わらず、ものの数分で僕を襲っていた全ての化け物を倒してしまった。

 

「では改めて自己紹介だ」

 

 そして、彼女は声高らかに名乗りをあげる。

 

「此度の亜種聖杯戦争ではライダーのクラスで現界した。我が名はヒッポリュテ。戦神アレスとオトレーレの間に生まれし子。誇り高き部族、アマゾネスの戦士長である!」

 

 月明かりが差し込む夜の森。

 そのど真ん中で未だ地面に倒れ込んでいる僕。

 凛として立ち、僕を見下ろす彼女。

 僕はこの夜を生涯、いや、死んだとしても忘れないだろう。

 

「問おう。君が私のマスターか?」

 

 この日、僕は運命に出会った。

 

 

 ***

 

 

「ん……」

 

 小さな声を出しながら、自身の目が覚めることを感じ取る。

 とすると、たった今見ていたのは夢の世界での出来事だったということだ。

 まさか入学する高校へ向かうバスの中で立ったまま寝てしまうとは。

 いや、これは僕が悪いんじゃない。

 春の日差しとバスのちょうどいい感じの揺れの心地良さが全ての元凶だ。

 ……まあ夢の中ではあるが、久しぶりにヒッポリュテに会えたのだから良しとしよう。

 それにしても、自分でも思うことなのだが、魔術師の子どもが全寮制の高校に通うことになるなんて、他の魔術師からは変な目で見られるのだろう。

 

 僕はとある魔術師の家系に生まれた。

 厳密に言うならば、僕の両親は2人とも魔術使いだ。

 今は夫婦揃って活動はしていないが、昔はかなりイケイケのフリーの傭兵だったらしい。

 偶然出会った2人はなんやかんやあって意気投合。

 そのまま2人の仲は順調に続き、恋人になり、結婚した。

 ……というか、今もまるで出会った当初のようにイチャイチャしている。

 正直な話、両親が仲睦まじいのは大変微笑ましいことなのだが、息子としては見るに堪えない。

 

 そんな両親の下、僕と姉は生まれた。

 ちなみに、両親は根源なんてものには一切興味がない。

 無論のことながら、僕と姉もない。

 幼い頃に両親から根源について詳しく教えて貰ったが、姉弟揃って

 

『『根源? 何ソレ美味しいの?』』

 

 という感想しか思い浮かばなかった。

 他の真っ当な魔術師がこれを聞いたのならば、口どころか身体中のありとあらゆる穴から泡吹き出して卒倒するか、ブチ切れて文字通り殺す気で襲いかかってくるだろう。

 

 とまあ魔術師の家系としては歪なのだろうが、一家全員で仲良く暮らしてる。

 両親と、姉と、僕と、祖父、そして居候(・・)の六人で、だ。

 中でも、僕と祖父はとてつもなく仲が良い。

 というよりも、祖父が僕にめちゃくちゃ構ってくるのだ。

 祖父は豪快、爽快、元気ハツラツといった絵に描いたような快男児。

 そんな祖父のことが僕は大好きだ。

 正直なところ、祖父がいなかったら僕はもう既にこの世にはいないだろう。

 それくらいの出来事が、僕のこれまでの15年もの人生の間で起こったのだから。

 自分で言うのもなんだが、僕の人生は濃い。

 濃厚も濃厚だ。

 その理由は、ある魔術儀式に起因する。

 

 ─────亜種聖杯戦争。

 それは、かつて行われた第三次聖杯戦争の最中、万能の願望機とも呼ばれる聖杯が奪われ、とある魔術師がその仕組みを世界中にバラ撒いたことにより起こるようになった極小の聖杯戦争。

 

 それに僕は、7回参加し、五体満足で生き抜いたのだ。

 本来の聖杯戦争とは規模こそ小さいが、死ぬリスクがバカみたいに高い儀式。

 それを勝ち抜く、ましてや生き残ることは困難を極める。

 だが、僕は7回も生き残った。

 それもこれも、僕を育ててくれた両親と姉、鍛えてくれた祖父、知識を授けてくれた居候たち、そして何より、共に戦ってくれた頼れるサーヴァントたちのおかげに他ならない。

 今まで召喚した7人も、成り行きで同盟を組んで親睦を深めたサーヴァントたちも、全員が英雄と呼ぶに相応しい者ばかりだった。

 彼らからは多くのことを学ばせてもらった。

 彼らとの出会いは、僕の人生のかけがえのない宝だ。

 

 しかし、僕だって魔術使いである以前に人間だ。

 はっきり言わせてもらうと、亜種聖杯戦争に疲れた。

 毎回毎回命懸けの思いをして何とか生き延びてきた。

 そんな儀式に巻き込まれる可能性がこれからもあるのかもしれないと思うと気が滅入る。

 命がいくつあっても足りない。

 もちろん、これからも巻き込まれる根拠はどこにもないが、逆もまた然り、巻き込まれない根拠もどこにもない。

 だから少なくとも高校3年間くらいは命懸けの争いとは無縁の平穏な生活を過ごしたい。

 そう考えていた中学3年生のある日、当時の担任の先生からとある高校から推薦を貰ったのだと面談の際に言われた。

 そのことを両親に報告したところ、

 

『推薦貰ったんだから受けてみましょうよ!』

『そうだな! お前だって悪い気はしないだろ?』

 

 肯定的な意見しか言われなかった。

 まあ確かに推薦を貰ったこと自体はありがたい話なので受けることにしたのだが。

 しかし、今では推薦の話を受けて大正解だったと思っている。

 その高校は3年間の全寮制であり、外部との接触、及び連絡は重大な問題等がなければ基本的に禁止とされている。

 この部分だ。この部分が非常に良い。

 全寮制、外部との接触は基本的に禁止。

 ここならば亜種聖杯戦争に巻き込まれずに穏やかな高校生活を送れる可能性が高いのではないかと考えた。

 そして見事合格した。

 

『うわぁぁぁぁぁん!! 待ってぇぇぇぇぇ!! 行かないで真白(ましろ)ちゃぁぁぁぁぁん!!』

『お前に3年間も直接触れ合えないとかお父さん嫌だぁぁぁぁぁ!!』

『嫌だ! お姉ちゃんお前と話したいこといっぱいあるのに! 弟! 弟行くな! 私を置いて行くなァァァァ!!』

 

 などという両親と姉の嘆きもあったが、全部鼻で笑ってやった。

 というか、全寮制だと前々から報告していたし、なんなら一緒に調べてお互い納得していたと言うのに。

 姉に関しては知らん。

 

『おう! なんかよく分からんが国立のスゲェとこに受かったんだって? 行ってこい行ってこい! お前の人生だ! お前の好きに楽しく面白く生きろ!』

『君の教育係として鼻が高いよ。ま、私の教え子なんだから受かって当然だけどね』

 

 こんな感じで激励を送ってくれた祖父と居候を見習って欲しいものだ。

 とまあ、そんなこんなで僕は現在、例の高校へ向かうバスの中にいる。

 バスの中にはチラホラと僕と同じ赤い制服を着ている人がいる。

 そのうちの多くが緊張しているように見える。

 新天地へ向かうこと、3年間家族と離れ離れになること、友人ができるかどうか、学習について行けるかどうか、などの不安があるのだろう。

 そんなことを考えていると、バスの中に声が響き渡る。

 

「あなたは高校生でしょう!? 目上の人にそんな口の利き方していいと思ってるの!?」

「目上? 確かに君や老婆が私よりも長く人生を送っていることは事実だ。そこに疑問の余地などあるはずもない。だが、目上とは立場が上の人間のことを指すのだよ。それに問題は君にもある。歳の差があるにしても、生意気極まりない態度ではないか」

「なっ……!?」

 

 見たところOLと思しき女性と僕と同じ制服を着ている中々にガタイのいい金髪が言い争っているようだ。

 女性の傍には重い荷物を持ったお婆さんが辛そうにして立っている。

 確かにあの金髪男子はお婆さんのすぐ側にいて、尚且つ優先座席に座っているのだからOLさんが彼に声をかけるのは自明の理だ。

 だが、彼は頑なに席を立とうとしない。

 確かに優先座席はあくまで優先座席であり、お年寄りに譲るという法的義務はないのだから、彼の態度も分からないでもない。

 これを聞いている僕としては席を譲れるものなら譲ってあげたいのだが、生憎と僕は席に座れていない公共交通機関利用者における敗北者なので、そもそも譲るという次元にすら到達していないのだ。

 

 その後、僕と同じ赤い制服を着た女子がOLさんの味方として論争に参戦。

 社会貢献だの色々な意見を金髪男子にぶつけるも、それら全てを一蹴される。

 結局、他の人がお婆さんに席を譲るという形でこの論争は幕を閉じた。

 

 その後は特段何事もなくバスは目的地に到着した。

 ぞろぞろと制服を着てバスをおりていく人達に僕も続いていく。

 高度育成高等学校。

 僕が3年間生活することとなる高校。

 亜種聖杯戦争とは遠く離れた理想郷(アヴァロン)。

 いざ目の前にすると、命懸けの戦いから遠く離れた場所だということを実感する。

 フフフ、この3年間で何をしようか。

 国立の高校と言うくらいなのだから、図書室に珍しい本が置いてある可能性は高い。

 歴史の本や神話の本はたくさんあるだろうか。

 英雄譚があるといいな。

 そうだ、最近興味のあるミステリーを読んでみるのもいいな。

 そんな呑気なことを考えながら歩いていると、後方から明るい声が聞こえてくる。

 

「ねぇ! そこの君!」

 

 振り返ると、そこにいたのは長いブロンドヘアーと整ったルックスが目につく女子だった。

 察するに、さっき僕が降りたバスのすぐ後に来たバスに乗ってきたのだろう。

 

「……僕?」

「そう! 君、私と同じ新入生だよね? 良かったら一緒に行かない?」

 

 すごいな。

 出会って数秒なのだが、目の前にいる女子は僕とは比べ物にならないほどのコミュ力を持っていることを既に思い知らされている。

 きっとクラスでは中心的な人物になるのだろう。

 おっと、いけない。

 せっかく話しかけてくれたのだから、返答しなくては。

 特に断る理由を持ち合わせていないので、一緒に行くことにしよう。

 

「僕で良ければ構わないが」

「本当? ありがとう! あ、そういえば自己紹介がまだだったね。私は一之瀬帆波、よろしくね」

「僕は岸波(きしなみ)真白。よろしく」

「岸波くんだね! これからよろしく!」

 

 そう言って輝かしい笑顔を浮かべる一之瀬さん。

 その笑顔に、どこかえも言えない何かを感じる。

 ヒッポリュテと契約を交わした、初めて亜種聖杯戦争に参加した、人生で初めてマスターになったあの夜のような不思議な感覚。

 これもまた、運命というやつなのかもしれない。

 

 ……それはそうとして、一之瀬さん、魔術師じゃないよな? 

 まずいな。どうしても初対面の人間が全員怪しく思えて仕方がない。

 クソ、これも亜種聖杯戦争のせいだ。

 あれのせいで会う人間全員手放しに信用出来なくなってしまった。

 この悪癖は一刻も早く治した方がいいと思いながら、一之瀬さんと共に歩を進めた。




よう実とFateにハマった!
だから書いた!
悔いは無い!

ちなみに主人公は某フランシスコ・ザビエルとは特に関係ない。
けどもしかしたら、子孫に白野って名前の子が現れるかもしれない。

Q.神秘の秘匿大丈夫?
A.この世界では魔術協会の連中が「このまま携帯とかが本格的に普及したらヤバくね?」ってなって原作とは異なりめちゃくちゃ危機感を持ち始めた。
そのため、新しい秘匿の方法を何とか確立したから今のところは大丈夫。

続くかどうかは未定。
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