読者の皆様方からの感想や評価ってねぇ……とっても身に染みるのよ。
まるで冬の寒い日に食べるおでんの大根みてーによォ〜。
という訳で令呪をもって我が肉体に命ずる。
投稿しろ。
東京都の埋立地に日本政府によって設立された全国屈指の名門校。
それが高度育成高等学校。
略して『高育』。
ここに入学した者は3年間は外部との連絡、及び特別な事情が無い限り学校の敷地外に出ることが禁止される全寮制の高校。
60万平米を超える敷地内には娯楽施設や小売店、飲食店などがある為、不自由はしなさそうだ。
その様は、1つの街と言っていいものだ。
そして、高育の最大の魅力は進学率、就職率100%という謳い文句だ。
僕はこれを初めて見た時、新手の詐欺か何かだと思った。
進学率、就職率100%?
怪しい匂いがプンプンする。
仮にこの謳い文句が真実だったとしても、何かしらの厳しい条件があるに決まっている。
亜種聖杯戦争だってそうだ。
あれに関しては途中で頓挫する可能性は無きにしも非ずだが、それは今は置いておこう。
他のマスターやサーヴァントと戦い、勝ち抜いた果てに、ようやく聖杯を手に入れられるんだぞ?
それと同じだ。
何か大きな結果を得ようとするならば、その過程は酷く険しい。
うまい話には裏がある。
幼い頃から教わっていることだ。
しかし、この話が偽りだろうが真実だろうが、僕にとってはどうでもいいこと。
亜種聖杯戦争から離れられるのならば、争いとは無縁の生活を送れるのならば、それでいいのだ。
そんなことを考えているうちに、クラス分けの掲示板が見えてくる。
高校生になっても、自分のクラスが分かる瞬間というものは心躍る。
見たところ名簿順に書かれてあるな。
「岸波……岸波……あった、Bクラスだ」
「えっと……あ! 私もBクラスだ!」
どうやら一之瀬さんも自分の名前を見つけたようだ。
僕の名前の少し上を見てみると、確かに一之瀬さんの名前が書かれてある。
まさか初めて話した相手が同じクラスだとは。
偶然というものは、やはり馬鹿にはできないな。
「同じクラスだなんて奇遇だね。改めてよろしくね」
「こちらこそ、よろしく頼む」
それから僕たちはBクラスの教室へと向かうべく、廊下を歩く。
「…………?」
「岸波くん? どうかしたの?」
「……いや、なんでもない」
一之瀬さんにはそう言ったが、何か違和感を覚える。
ここ、やけに監視カメラが多くないか?
ここから見えるだけでも結構な数が設置されているぞ。
国が運営している高校だからだろうか。
これだけ監視カメラが多いのならばセキュリティ面で心配することは無さそうだ。
そうこうしているうちに、目的地であるBクラスの教室に到着した。
一之瀬さんに続き、僕もBクラスの教室へと足を踏み入れる。
教室内では既に数多くの生徒が入っているようで、楽しそうに談笑している。
僕と一之瀬さんは別れ、それぞれの席へと向かう。
どうやら僕は教室の中央よりも少し後ろ辺りの席のようだ。
前すぎず、後ろすぎない席。
僕の頭文字は『き』なので、いつもなら最初の席は教室の左側辺りなのだが、位置的に名簿順の席ではないな。
完全にランダムで振り分けられているのだろうか。
荷物を置き、席に座るとすぐ近くにいた明るくて活発そうな男子が話しかけてきた。
「よっ! 初めましてだな。オレは柴田颯だ。よろしくな」
「僕は岸波真白。よろしく」
「真白? それって真っ白で真白か?」
「それで合ってる。珍しい名前だろ? でも僕としてはこの名前は結構気に入ってるんだ」
「そうか。確かに珍しいっちゃ珍しいけど綺麗な名前だと思うぜ」
そう言われると嬉しいな。
幼い頃は名前が少しばかりコンプレックスだったのだが、長年過ごしていると愛着が湧くもので。
自分で言うのもなんだが、今では良い名前だと思っている。
その後も柴田と会話が続くも、1人の女性が入ってきたことを皮切りに会話を終えてそれぞれの席に着く。
このタイミングで入ってくるということは担任だろうか。
セミロングの髪型が特徴の女性は教壇の前に立ち、全員の着席を確認すると笑顔で自己紹介を始める。
「初めまして、私がBクラスの担任の星之宮知恵です。保険医だから授業を行うことはないけれど、基本的に保健室にいるから何かあったらいつでも来てね」
初対面のイメージではあるが、優しそうな女性という感じだ。
「これから体育館で入学式が行われるから、みんなで移動……って言いたいところだけど、まだ時間があるから、先にこの学校のルールについて説明するね」
星之宮先生はそういうと、腕に抱えていた資料を各列の1番前の生徒に渡し、後ろに渡すよう指示する。
僕にも資料が配られ、後ろの席へと渡す。
書いてあることは、既に貰った資料とほとんど内容は変わらないようだ。
「まずこの学校には卒業までの3年間、クラス替えはありません」
へぇ、珍しい。
それと同時に少し残念な気持ちになるな。
自分のクラスが発表されるあのワクワク感が、ここではさっきの1回きりなのか。
「次に学生証カードを配ります。これは君たちの財布と身分証を兼ねているものだから、絶対に無くさないでね。このカードがあれば、敷地内の全ての施設を使用できるし、ポイントを使って買い物もできるよ。基本的に学校内でポイントを使って買えないものはないわ」
ほう、買えないものはない、か。
「今言ったポイントは毎月の初めにみんなに自動で配られるようになっているわ。1ポイントにつき1円の価値があるよ。そして、この学年全員に10万ポイントが支給されているよ」
は? え? なんて言った?
10万? 今10万ポイントと言ったか?
僕は心の中で驚愕するだけに留まったが、教室内の多くの生徒が動揺のあまりざわつく。
ちょっと待て、星之宮先生は1ポイントにつき1円の価値があると言っていた。
じゃあ何か? この学校の敷地内限定とはいえ、たった今僕たちの財布に10万円PONとくれた訳か?
僕たちをベネットか何かと勘違いしてないだろうな。
10万なんて一般的な高校生からしたら破格の額だぞ。
「驚いてるわね。その10万ポイントは君たちがこの学校に入学したから、それだけの価値と可能性があると学校側は判断しているの。だから負い目は感じないで好きに使って大丈夫だからね。注意点として、卒業後にポイントは回収されるから気を付けてね」
その後、質問タイムに移行するが、僕を含め誰も質問しなかった。
それから体育館へと移動し、入学式に参加した。
まぁこれに関しては、想像していたのとほぼ同じ内容だったな。
校長や生徒会長、その他のお偉いさんたちの話を黙って聞くだけだ。
国運営の学校でも、そこは変わらないらしい。
入学式が終わると、Bクラスの教室へと戻った。
教室内はいきなり渡された10万ポイントに浮き足立ち、何に使おうか、この後買い物に行こうか、などの会話で盛り上がっている。
いきなり10万ポイントが配られたと聞いた時には動揺してしまったが、食費や購入する日用品などを考えると、案外妥当……なのかもしれない。
しかし、いきなり10万も配るのはどうかしていると思う。
逆によく10万もいきなり渡されて、そんな手放しで喜べるな?
いきなり渡すのではなくて、もう少し告知とか事前連絡とかしてくれないものだろうか。
そうしているうちに、複数の生徒が教室から出ていこうとする。
その時だった。
「ねぇ、みんな!」
一之瀬さんが席から立ち上がり、教室全体に届くよう大きな声を出した。
「これから3年間一緒に過ごすことになるし、お互いのことは知っておいた方がいいと思うんだ。それで今から自己紹介しようと思うんだけど、どうかな?」
「おぉ! いいなそれ!」
「賛成賛成!」
柴田を筆頭に、一之瀬さんの意見に賛成を出す者が多発する。
自己紹介か、別にしても構わないが内容考えるのが面倒くさいな。
というか本当に社交的なクラスなんだな、ここは。
反対意見が全く出てこない。
そう思っていたが、ふと右隣の席に座っているツインテールの女子を見てみると、少しばかり顔を顰めていた。
恐らく自己紹介に否定的なのだろう。
全員が全員社交的というわけでも無さそうだ。逆に安心できる。
しかし、現実は悲しいもので。
結局自己紹介をする、という方針で決定した。
哀れ、隣のまだ名も知らぬツインテール女子。
一之瀬さんをトップバッターとし、着々と自己紹介が行われていく。
紹介される内容は様々だ。
趣味、特技、得意な教科、好きな食べ物、好きな芸能人、入ろうと思っている部活、etc。
中にはウケ狙いの者もチラホラといる。
「じゃあ次は……後ろの君、お願いしていいかな?」
とうとう一之瀬さんに当てられてしまった。
ここでウケ狙いの自己紹介をかませば、クラスの面白枠として認知される。
しかし、生憎と僕はそんなものになるつもりは一切なく、なろうとする度胸もなければ勇気もないので普通に自己紹介をしよう。
普通の自己紹介の定義が何かと問われれば困ってしまうが、とにかく普通を心掛ける。
「岸波真白です。趣味は読書。特に通史の本や偉人にまつわる本が好きです。3年間よろしくお願いします」
よし、至って普通、極めて普通。
恐らく大多数の人間が思っている普通の自己紹介を無事に行えた。
これならクラスにいる生徒A程度の認識になるだろう。
自己紹介を終えるとクラス中からパチパチと拍手が起こる。
中には「よろしくなー!」と言ってくれる者も多数いる。
よしよし、滑り出しとしては上々だ。
その後も滞りなく続き、Bクラス全員の自己紹介が終わった。
解散が宣言されると、僕は教室を出てトイレへと入る。
念の為トイレの天井を見回してみるが、監視カメラは無い。
よかった、流石にトイレの中には無いよな。
となると、トイレ以外にも設置されていない場所がある可能性は十分あるな。
僕以外トイレには誰もいない。
これならゆっくり考え事ができそうだと思い、1番奥の個室トイレへと入る。
流れるような動作で鍵をかけ、蓋を開き、便座へと座る。
さて、用を足すついでに、星之宮先生が言っていたことを整理しよう。
所々、違和感があったからな。
『基本的に学校内でポイントを使って買えないものはないわ』
学校内で買えないものはない、そう言っていた。
敷地内にある施設、ではなく学校内という言い方がどうもしっくり来ない。
星之宮先生が言っていた『もの』とは一体何を指し示しているのだろうか。
普通に考えるのならば、店で売られている商品の事などを指し示すのだろう。
だが何か引っかかるものがある。
もしかすると、権利のようなものも買えるという意味合いなのかもしれない。
例えばポイントさえ支払えば学校を休める権利を買える、だとか。
買える買えない云々に関しては、これから見極めていく必要がありそうだ。
次に行こう。
『ポイントは毎月の初めにみんなに自動で配られるようになっているわ』
毎月ポイントは配られると言っていた。
毎月10万ポイントが配られる、なんて一言も言っていない。
それにこうも言っていた。
『その10万ポイントは君たちがこの学校に入学したから、それだけの価値と可能性があると学校側は判断しているの』
今日配られた10万ポイントは、あくまで僕たち生徒が高育の入学試験に合格したからだ。
だからこれからは10万ポイントを欲するのならば、それ相応の価値と可能性を示さなくてはいけない訳で……待て、示す?
「……まさか」
廊下に尋常じゃないくらい設置されている監視カメラはそのためか?
ではあれはセキュリティ目的では無く……いや、その名目もあるのかもしれないが、主目的はそれではなく、生徒を監視するためのものか?
となると、生活態度などが判断材料とされるのだろうか。
廊下を走ったり、遅刻したり、校内で何かしらの問題行動を起こしたりしたならば、その全てが監視カメラを通して学校側に伝わり、毎月のポイントに影響を及ぼす、という感じに。
……いや、判断材料は生活態度だけでは無いのかもしれない。
定期的に行われるテストの成績などでも貰えるポイントは変動する可能性はあるな。
入試に合格したことが評価されているのならば、今後の学業も評価の対象になる……有り得なくは無い。
とりあえず現段階で整理できるのはこんなところか。
今整理したことを星之宮先生に聞いて……いや、ダメだな。
それならさっき全部ストレートに言えば良かっただけのこと。
なのにそれをしなかった、ということは学校側も現段階では全てを明かさないようにしているということか。
ここで直接聞きに行ったら変に目をつけられるかもしれない。それは嫌だ。
整理してみて気づいたが、思った以上に面倒くさそうなところだな。
入学初日にして少し不安になってきたぞ。
今日からこの学校で3年間平穏無事に過ごす……出来るだろうか……?
ダメだ、ネガティブな思考に寄ってしまっている。
考え事は終わったので、トイレを出て、教室へと戻り荷物を回収する。
「すまない、ちょっといいだろうか」
再び教室を出ようとしていると、前の席の男子が声をかけてきた。
確か神崎、だったか。
自己紹介のときでは物静かそうなイメージだったことを覚えている。
冷静沈着、という四字熟語が似合いそうな男子だ。
「これから帰るところだったか。岸波さえよかったら少し街を見回らないか?」
確かに街は気になるな。
どうしようかと悩んでいると、柴田がこちらへと歩み寄ってくる。
「なぁ、それ俺も一緒に行っていいか? こういうのは人数多い方が楽しいだろ?」
「俺は構わないが」
どうやら柴田も参加する様子だ。
ここは1つ、クラスメイトとの交流を深める為にも同行しよう。
「わかった。3人で行こう」
こうして僕、神崎、柴田の3人組は教室を出て街へと繰り出した。
どうしよう。
なんか後半推理ゲームの推理パートみたいな感じになってしまったかもしれない。
まぁ作者は推理ゲーム全くやったことないんだけど。
それとなんだこのサブタイトル。
考えるのが難しかった結果こうなりましてね……。
もしかしたら変えることがあるかもしれない。
考え事はトイレでしろってペルソナ5Rで学んだ。
それにしても想像していたよりも話の進み具合が早くてビビってる。
これじゃあ次回には居候の正体分かっちゃうんだけど。