何だこのサブタイトル!?文字化けか!?
と思った読者の方々、安心してください。
お使いの端末は至って正常ですので。
神崎、柴田の2人と共に街に繰り出したが、やはり僕たちと同じような考えを持つ者は多く、新入生で溢れかえっている。
Bクラスの面々と鉢合わせることもしばしばあったが、軽く挨拶するだけだ。
まだ出会ってから数時間の関係なのだから、無理もない。
そして現在、僕たちはコンビニの中にいる。
冷やかしのような形になってしまうことに関しては、少しばかり申し訳ない。
「神崎、岸波、これ見ろよ」
「どうした……ってここにもあるのか」
柴田が何かを見つけたらしく、神崎がそれを尋ねる。
柴田が指さすそれは、無料で売られている商品だった。
「さっき行ったスーパーにも無料の商品があったよな? 賞味期限が近いのか……それか訳あり品か?」
「いや、それなら半額辺りが妥当のように思えるが……」
2人はなぜ無料で売られている商品があるのか疑問に思っている様子。
さっきトイレで整理した考えが当たっていたらの話だが、大方ポイントを大量に消費してしまった生徒、そして配られるポイントが少ない生徒への救済措置だろう。
目の前にあるような無料の商品には、来月からお世話になる人がいるのだろう。
もしかしたら、そのお世話になる人は僕たちなのかもしれないがな。
「岸波はどう思う?」
とうとう僕にも尋ねてきたか。
物的な証拠も根拠もない、ただの妄想ならば教えられるんだが、仮にこれが合っていた場合、今後も意見を求められるかもしれない。
そうなると、僕が目立ち、有名になってしまうことは必然になるというわけだ。
それは非常に困る。
クラス内で名前と顔が知れ渡るだけならばまだいい。
だがそれがクラス外にもなると話は別だ。
亜種聖杯戦争で出会うマスターが尽く僕の顔と名前を知っているのが気持ち悪くて嫌という理由もあって逃げてきたんだぞ。
とりあえず、無難に返答しておこう。
「ポイントを使いすぎた人への、学校側からの慈悲ってところじゃないか? 月末にはそういう人が多発することもあるだろ」
「やはりそうなるか。俺も岸波と似たような意見だ」
「なるほどなー。でもそんな10万なんて大量のポイントをポンポン消費するやついるか?」
これからそういう奴が出てくるようになるんだろ。
知らんけど。
ただなんの情報も共有しないというのも後味が悪いな。
かなり遠回しな言い方ではあるが、僕の考えを教えておこう。
「それにしてもこの学校はすごいよな。毎月10万、それも4クラスに3年も渡すとなると、莫大な額になる。しかもそれは僕たちだけじゃなく他の学年にもだ。いくら将来有望な若者だからといっても、太っ腹にも程があるな」
「確かに……結構どころかかなりの金動いてそうだよな」
柴田は僕の言葉をそのまま受け取ったか。
やはり今の言葉だけでは少し弱いか?
「……」
いや、どうもそういう訳ではなさそうだな。
神崎は顎に手を当てて思考を巡らしていた。
どうやら彼にも疑問が芽生えたらしい。
この様子なら、明日にでも星之宮先生に直接聞きに行きそうだ。
もっとも、十中八九はぐらかされるだろうがな。
***
日が沈む前に街の散策を終え、2人と別れた僕は寮に割り振られた自分の部屋へと入った。
わずか8畳のワンルーム。
一国一城の主、というには少し心もとないが、今日からここが僕の拠点になるわけだ。
さて、じゃあそろそろ家にいる家族と連絡を取るとしよう。
本棚にある赤い背表紙の本を1冊取り出し、ベッドに胡座をかいて座る。
そして本を開き、ベッドの上に広げる。
すると、ホログラムのようなものが眼前へと展開された。
実はこれ、本に見立てたビデオ通話ができる魔力で動く通信機なのだ。
高育は私物の持ち込みは基本的には許可されているが、外部と連絡が取れる電子機器などの持ち込みには厳しい。
なので急遽、見た目も中身もどこにでもある普通の本を模した通信機を居候が開発してくれた。
彼女には本当に頭が上がらない。
3年間外部との連絡禁止とかいうルールがあるが、バレなければ問題ない。
それに、3年も家族と離れ離れというのは寂しいところがあるからな。
渡された携帯に通話の履歴が学校側に筒抜けになる機能とかがあるのかもしれないが、この通信機なら履歴も残らない。
『……あ! やっと連絡来たわね!』
画面の向こうから聞き馴染んだ明るい声が伝わると、僕の母、岸波
今朝会ったはずなのに、何故だか懐かしさを感じる。
聞き慣れた親の声というものは、やはり安心感があるな。
「他のメンツはいないのか?」
『ちょっと待ってね……あなた〜! 真白ちゃんから連絡来たわよ〜!』
『おっ! もう来たのか! OK、今行く!』
数秒もすると、お茶が注がれたコップを持った父、岸波
相も変わらず夫婦仲がよろしいことで。
『あっ! 弟から連絡来てるじゃん! ちょっとママ! パパ! 来てるなら来てるって言ってよ!』
次に現れたのは僕の姉、岸波
「喜ぶ気持ちもわからんでもない。だが声量は少し抑えてくれ。大丈夫だとは思うが、万が一隣の部屋の人に聞かれたら面倒だ」
『あっ、そうだったな』
『確かにそうね……ごめんなさい。以後気をつけるからね』
『マジメンゴ』
おい姉、お前本当に謝る気あるのか?
「……というか、じいちゃんは?」
『あー……トイレじゃないか?』
『大きい方してるのかもね』
『おぅ! 真白、元気にやってっか!』
またしても、聞き慣れたデカい声が聞こえてくる。
画面越しでも分かる、ガタイの良い白髪の男。
僕と姉である玲香の祖父、岸波
『おじいちゃん相変わらず声でかいって! もうちょっと抑えて!』
『おっと悪ぃな。どんくらいの声量が丁度いいのかイマイチ掴めんくてな』
「まぁそれなら仕方がないな」
『弟ォ! さっき私たちが声デカかった時と反応が違いすぎるぞ弟ォ! おじいちゃんに甘すぎるぞ弟ォ!』
甘くするに決まってるだろ。僕の人生の恩人だぞ。
祖父がいなければ僕は今ここに生きてなどいない。
祖父に助けられ、鍛えられ、教えられ、亜種聖杯戦争を生き抜いたと言ってもいいのだから。
『やぁやぁ! どうやら私が開発した通信機はちゃんと起動しているようだね! まぁ私が作ったのだから、ちゃんと動いて当たり前なのだがね!』
画面の向こうから、また新たな声が聞こえてきた。
とうとうおいでなすったな、我ら岸波家の名誉居候が。
『遅かったじゃねぇか。何してたんだ?』
『いや何、主役は遅れてやってくる、というのを1度やってみたくなってね。最後に登場した方がインパクトあるだろう?』
『それはまた私的な理由だこって』
『まぁ私のことは今はどうでもいい事だ。どうだい真白、そっちで元気にやってるかい? 本来なら3年間は会えないであろう家族との場所を越えた再会なんだ。喜びと感動に浸りながら咽び泣いてくれたっていいんだぜ?』
彼女が岸波家の居候となったのは、姉と僕が生まれるよりもずっと前のことだ。
祖父は今よりも世界中を飛び回ってフリーの魔術師として活動していた。
その最中、祖父はイタリアで起こった亜種聖杯戦争に巻き込まれたような形で参加した。
結果は祖父が勝利。
祖父以外の参加者は全員死亡したと聞いている。
そして、祖父は聖杯を手に入れた……のだが、ここで1つ問題が発生した。
その聖杯は、魔力リソースとしては立派だったのだが、願望機としての機能は持ち合わせていなかった。
つまり、失敗作だったのだ。
だが祖父も祖父が召喚したサーヴァントも特に叶える願いはなかった。
でもせっかく現界したのだから第2の生を謳歌するのも悪くない、と考えた。
受肉は不可能でも、聖杯と魔力のパスを繋げば現界の維持は可能。
そうしてイタリア亜種聖杯戦争から数十年がたった今でも、現界し続けて、岸波家に居候となっている訳だ。
「僕がそんなタイプじゃないことくらい分かってるだろ─────ダ・ヴィンチちゃん」
『だろうね。まぁ知っていたさ』
彼女こそ、祖父がイタリア亜種聖杯戦争にて召喚したキャスターのサーヴァント。
その真名、レオナルド・ダ・ヴィンチ。
イタリア、ルネサンス期を代表する稀代の芸術家。
人呼んで、
『それでどうなの真白ちゃん。そっちで楽しくやって行けそう?』
「あー……不安要素はあるが、それなりにはやっていけそうだな」
『不安要素ってなんだ?』
『いきなり身体測定やらされて、最下位は除籍処分って言われたりしたとか?』
「それどこの雄英だよ」
とりあえず、僕は今日1日で起こった出来事を余すことなく話した。
気軽に話せる人なら数人はできたこと、学校にある監視カメラが尋常じゃないこと、いきなり10万円に匹敵するポイントを貰ったことなど。
僕の推理も一応話した。
『え? 何そこ監獄?』
『俺の息子が入学初日で囚人となった件』
『弟、とりあえずその石の海から自由になれ』
まぁそういう反応になるよな。
じいちゃんだけだよ、腹抱えて爆笑してるの。
ダ・ヴィンチちゃんは笑いながらも彼女なりの考えを言ってくれる。
『推理を聞く限り、中々面白そうなところだね。恐らくだが進学率、就職率100%という謳い文句も何かしらの条件があるのだろう』
『条件って?』
『例えばそうだね……クラス毎に何かしらの基準が設けられていて、一定の水準を越えたクラス、もしくは最も優秀なクラスのみが高育が謳い文句としている制度の恩恵に肖れるのかもしれない』
なるほど、有り得ない話ではない。
じゃあやっぱりあの謳い文句、ほぼほぼ詐欺に近しいのでは?
手口が契約書の最後辺りにものすごく小さな文字を仕込んでる詐欺師と同じだろ。
いいのか? 国運営の高校がこんなやり方して。
『それが合ってたとしてら……最初のクラス分けの時点で能力値ごとに振り分けられてるってことか?』
『能力値ってのがどれのことを指し示してんのかが分からねぇが……順当に考えりゃ学力と身体能力、この2つは入ってるだろうな』
『後は……何かしら? 社交性とかも含まれたりするのかしら?』
「たった1回の試験で能力ごとに分けられるのは少し腑に落ちないんだが……もしかしたら、小学校、中学校の計9年間の成績とかも参考にされていたりするのかもしれないな。国運営の高校なんだから、できたって不思議じゃない」
『あ、確かに。じゃあ弟が上から2番目のBクラスってのも納得できるね』
『昔から能力を抑えて生きてきたからその評価になってるってことか。特に身体能力は隠すのに必死だったし……』
『学力に関しても……ちょっと待って? 真白ちゃん、聞き忘れてたけど……あなたもしかして入学試験の時も……』
「点数の調整のことか? もちろんしたが?」
『お前まだあの77点縛りやってたのか……』
縛りという程のものでもないが。
僕は昔から勉強は出来た方だ。
それもこれもひとえに教育係が良すぎたからなのだが。
あのレオナルド・ダ・ヴィンチが直々に勉強を教えてくれたんだ、伸びるに決まっている。
国語算数理科社会英語、全て余すことなく教えてくれた。
万能の天才は、教え方も天才的だったのだ。
そして、僕はある出来事により物覚えが良い……と言うよりも、成長速度がかなり早かった。
教える側だったダ・ヴィンチちゃんからは、
『教えている側からしたらすっごい気持ちいい!』
と言われた。
そしてダ・ヴィンチちゃんがちょっと調子に乗った結果、僕には大抵の分野の大学レベルの知識が僕の脳に叩き込まれている。
なのでこれまでのテストで難しいと思ったことは1度もなかった。
厳密な時期は忘れてしまったが、確か小学1年生の2学期辺りから全ての教科で77点を取るように調整し始めたのだったかな。
ラッキーセブン、なんか縁起が良さそうとかそんなふざけた理由で。
もっとも、記述などの問題や配点の都合上それほど上手くいかないことの方が多いのだが。
高育の筆記試験でも77点を取るように調整していたのだが、割と下振れたのかもしれない。
それによってBクラスに入れられた可能性は十分にあるな。
まぁ居心地良さそうなクラスだったので、結果オーライとしておこう。
『にしても弟の運は一体どうなってんの? 命懸けの争い事から逃げようとしてそこに入学したのに、逃げた先でも争い事に巻き込まれるって……』
『これは幸運:EXね』
『良い意味でも、悪い意味でも、な』
家族からの言葉の刃が痛いな。
時に言葉は暴力よりも殺傷能力が高い時があるんだぞ。
しかしまぁこの高校でも争い事からは逃れられないというわけか。
まぁ死ぬリスクがないのだから、亜種聖杯戦争と比べればマシなことこの上ないのだが。
『困ったことがあったら俺たちに相談するんだぞ?』
『無理しちゃダメよ、真白ちゃん』
『嫌なことあったら私に泣きついてきていいんだぞ、弟よ』
『何でもかんでも一人で抱え込むんじゃねぇぞ? ぶちまけたい言葉があったら俺たちにぶちまけりゃいいんだからよ』
『そうそう。君にはこの天才が味方にいるんだ。頼りたい時にはいつでも頼ってくれたまえ』
本当にこの家族は優しさが主成分でできているというか、温かみしか知らないというか。
魔術師の家系としては異色にまみれているのだろうが、こういう家族で本当に良かったと心の底から思っている。
その後は何気ない雑談を繰り広げ、おやすみと言ってから通信を切り、風呂や食事を済ませて就寝。
こうして、僕の高校生活1日目は幕を閉じた。
レオナルド・ダ・ヴィンチ
Fate/GrandOrderからのゲスト登場。
真白の祖父、仁がイタリア亜種聖杯戦争で召喚したキャスタークラスのサーヴァント。
マスターとの仲は極めて良好で主従関係、と言うよりは親友のような関係性。
聖杯へ託す願いはないが、聖杯に関しては学術的に興味があるという理由で現界。
勝利後は、せっかく現界したんだから第2の人生を楽しんじゃおっかな〜!ってなって魔力のパスを繋いで現界し続ける。
以後は岸波家の居候となる。
名目上は居候ではあるが、岸波家全員が彼女のことを家族だと思っているし、彼女自身も岸波家を家族だと思っている。
玲香と真白が幼少の頃から教育係として勉強を教えてあげていた。
FGO同様、自身が描いたモナ・リザに心酔し、肉体改造を施して女性の姿での現界。
真白はその事を聞いて理解を拒みかけたし、性癖が歪みかけた。