トラウマ転生 ~三度目こそは幸せに~ 作:ビチビチ呪子
悲報 どうやら私は社長の2万年に及ぶループの中で特大のやらかしをしてしまったらしい。
替えの効かない腕輪(ヒトガミからの干渉をオフにすることが出来る超絶レアアイテム)を預けられている時点で、悪いことではないだろうが、ある程度成長したら部下としてこき使われたりするんだろうか?
と言うかルーデウスやナナホシさん転生・転移者はバグ的な条件で現れる存在で、彼のループでも初めて相対したと言っていたような気がするが……。もし私が通常のループで当たり前のように存在しているのだとしたら私は彼らのように魂や肉体ごと召喚されたというより、神様転生的な超常パワーで無理やり世界の枠組みに組み込まれた存在として見た方がいいのかもしれない。
……だとすると不味くないか?
普通に考えて単体最強キャラの龍神オルステッドこと社長である。魔力を回復出来ない、他者に滅茶苦茶怖がられるなどのデバフはあれど、本気を出せば倒せないものはいないと作者に太鼓判を捺されている。
キャラクターとしては好きだし、とても魅力的だとは思うが、ヒトガミを殺すことに執念を燃やす彼の側で安寧を過ごせるとは夢にも思えない。
だって、オルステッドとヒトガミはどっちが殺されるかの終わりのない戦争を、星を巻き込んでしているのだ。
その片方についた。しかも腕輪を預けられるほど信頼されている女となればヒトガミは全力で私を利用しようと動く。
剣神やら北神やら鬼神やら、この世界のつえーやつがいっぱい押し寄せてくるのだ。私はサイヤ人ではないので全然ワクワクしない。怖い。全力でごめん被る。
だが、これまでのループで私のスキルツリーの先を全て暴かれているとしたら、龍神から逃げ切ることなど正に不可能というやつであろう。
つまり詰みというやつである。下手したらこれまでのループで私は何百何千とヒトガミの刺客やらに襲われ又は龍神を裏切ろうとして殺されてきたのかもしれない。
そして自分が転生者でこの世界の記憶があることもゲロり、ヒトガミに私の記憶を覗かれたら不味いから腕輪を預けられると……殺されていないことから、最低限の好感度は稼げているようだが、とても喜んでいられる状況などではない。
どうしよう。今からでも全力で媚を売るべきか……それともワンチャン目指して、迎えにくる前に逃亡を図るべきか。
不幸中の幸い、このループにはルーデウスやナナホシといった今までのループにはない未知が存在している。それに転移事件、あれもある。それらを上手いこと利用すれば龍神とヒトガミ、その両方から逃げ切ることも不可能ではないかもしれない。
いや、龍神はともかくヒトガミはこの腕輪があれば絶対に逃げ切れる。
私はよくある流され系の主人公ではないので、動けるようになったら、あの猿を殺して人里離れた山に籠る。その覚悟がある。
懸念点は過去の私がこの一連の事件について龍神側にリークしている可能性があること。転移先は完全ランダムなので待ち伏せは出来ないとは思うが、事前に知っているなら範囲外まで連れ出してしまえばいいだけのこと。
つまり私が平穏な生活を送る為に必要なロードマップはこれだ。
まず、力こそ絶対の正義。と言うか力がなければ話にもならん!と言うことで来るその日まで死ぬ気で鍛えまくるしかない。
ロキシー先生が来たら恥も外聞を吐き捨てて授業に参加するのだ。そしてあわよくばのルーデウスのようにオリジナル魔術の開発にも着手したい。
この場合、個人でやるとループの内容を沿うことになるかもしれんので、ルーデウスと共同で開発することが重要だろう。幼少期のルーデウスはコンプレックスおじさんなのでコミュニケーションに難があるかもしれんが、妹属性を全開にすれば攻略出来ない相手ではない筈だ。
逃げる足も必要なので、闘気を纏えないと話ならんし、パウロに土下座して三大流派を教えて貰おう。
相手はデフォで光の太刀を放ってくる怪物なので、魔術師と剣士の総合力で瞬殺されない足切りラインである王クラスには至っていたい。
そして次。ルーデウスと仲良くなる。これに尽きる。昨日までは厄ネタ宝庫の主人公と仲良くなるなんて……と思っていたが、社長を出し抜くには未知の物を繰り出すしかない。剣神もそう言ってた。
とにかくルーデウスと仲良くなりまくって、今までのループにない可能性の数々を生み出すのだ。
きっと過去の私のことだ。彼とロキシーとの間に生まれる子供がヒトガミを倒すキーとなることまで話しているに違いない。それならルーデウスにとって私が、とんでもなく大切な存在で、死んだりでもしたら一生EDになるほどまでに依存させてしまえば、社長も私に強く出ることができなくなる筈。
もしそれで、原作通りに進んでも私は社長の命令をフルシカトして田舎で悠々自適に生活することが出来る。ヒトガミとの戦いなんて勝手にやってろという話だ。
その次。ギースを殺す。
これは絶対である。と言うか下手したら過去の私の情報を元に社長が殺しにいってるまでもあるが、アイツは生かしておいても百害あって一利なしのクソ野郎である。
原作では受けた恩は返せ、それはねぇんじゃないかと屁理屈抗弁を垂れていたが、私には狂信者以外の何者にも見えなかった。
もしくは一度の成功体験にハマって沼から抜け出せなくなる債務者のようである。
まだ私が何かされたわけではないが、私は彼をヒトガミの使徒としてしか見れない。と言うか彼もその為に命を使い潰す気なのだろう。
ヒトガミは絶対悪=生かしてはおけない=ギースという図である。
私は悪くない。悪いのはヒトガミだ。
ここまで来たらあとは簡単。
王クラスの実力、原作主人公の依存対象、原作のフィクサーを倒したとなれば、平穏な生活の為に必要なものは、スローライフを送る場所と少しの金である。
妥協はしたくないが、流石に0歳児にはどうしようもないし、ネットで検索など出来ないのでこれはおいおいでやっていく。
10年ぐらい旅をして一番居心地の良いところに永住とか、そういうのが楽しそうだが、簡単なだけにここまで来る為の労力が尋常ではない。
と言うか出来るのか?
どうしよう。味噌っかすの才能しかなくて、社長から未来知識だけの価値を見出だされた生きる天然図書館とかの扱いを受けていたら。
それはそれで楽出来そうだが、お前はあれとの間に子供が生まれたら都合が良いからあれと結婚しろと言われたら、私の生きたままに死んだような生活を送ることになるのだろう。
自由は地獄、自由の奴隷などど、自由という言葉に嫌悪感を覚える層が一定数いるようだが、やはり自由を求める欲求こそ人間に許された一番純粋な感情だと思う。
私は私が選んだ人生を生き抜く。
誰の言いなりにもなるものか。今度こそは好きに生きて満足して死んでやるんだ。
……うん。これで覚悟完了ってところかな。
まあ0歳児に出来ることなんて何もないので、魔力を使いきったら寝るしかないんですけどね。
今は大人しく地道なレベリングをするのみである。
でもバタバタって風で煽るだけって、つまらないし、退屈だ。
せめてもう少し派手なら飽きないのだが……。
そう言えばこの世界って不死魔族とかいう、魔人ブウみたいな存在いるけど、アイツらってどういう原理で復活してるんやろ?もし無詠唱を越えた無意識無詠唱とかで肉体を復元しているのだとしたら……いや、血が薄まると効果が薄まるようだし、血……遺伝子に何か細工があるのかな?
ふって湧いた疑問だった。だが、何故かそれがとてつもなく引っ掛かる。
もしそうなら魔術で再現とか……血に魔術を仕込む……いや、ダメだ。血は代謝で入れ替わる。弄るなら骨髄……それを核に、と。
伊達に前世で勉強漬けの毎日を送っていたわけではない。この世界では物理現象と魔法が上手いこと噛み合っているようだし、もしかしたらいけるかもしれないと、私は過去のループで同じ物を開発し、オルステッドに伝わっているかもしれない。そんな初歩的なことも忘れ、まるで決められた運命に沿うように思考に更けることになった。
「あう(行ける)!」
それから三日後のことである。
パンっ。
私は真っ赤な柘榴となって弾けた。
「キャァァァァァァ!!!!!!!?」
結果的に実験は成功だった。もしや私はチート転生者の部類なのかもしれない。
けれど不死魔族の
良いことなのかな~?ルーデウスにも若干引かれてるし……でも目を離したらヤバイと思わせて距離は近づいたので結果オーライ?
これが不死魔族の力とは何ら関係ない新時代の『技術』だと認められるまで実に300年の年月を要した。