キングの胃痛をさらに強める災難が降りかかってきます。
【グランドマスター】
さやかの魔女化未遂事件から数日後。
魔法少女達のソウルジェムが純化された次の日、突然の体調不良により、キングは点滴を受けながら二日間入院していた。
少しでも負担を少なくするため大部屋の寝室を選んだものの、費用はキングの予想をはるかに超え、二日間の総費用は11万4968円(保険適用外)もかかった。キングにとっては悪夢としか言いようがない。
日頃のストレスにより胃腸薬を服用していたキングだったが、さすがに医療費10割負担は財布に響く。その上、ただでさえ逼迫していた生活費が、入院によって『マイコレクション売却』というゲームオーバーに近づきつつあった。
医療費3割負担獲得に奔走する地上最強の男・キングは、せめてお金は稼ごうと、見滝原市役所の待合室で求人票と睨み合い、自分でもできる作業がないかと思案に暮れていた。
そのとき、壁紙のチラシで賞金付きのゲームトーナメントを知ったが、以前のように身分証や銀行口座未登録により申し込めず、応募して生活費を稼ぐための身分証が必要だった。
――キングがこの見滝原の世界で『ゲームの大会に出る』『病院に行く』という一般人としての最低限の生活を送るためには、まず身分を証明しなければならない。異世界からリスポーンしたキングには、戸籍も住民票も存在しなかった。
役所の窓口で絶望したキングが調べた結果、本籍を有しない者が新たな戸籍を編製するには、家庭裁判所へ『就籍(しゅうせき)許可の申立』を行い、司法の審判を仰がねばならないという現実に行き着いた。
だが、就籍許可の審判が下りるまでには、どれだけ早くても1ヶ月から数ヶ月の期間を要する。当然、間近に迫ったゲームトーナメントの申し込みには到底間に合わない。
それどころか、あと数週間でこの街に襲来するという天災『ワルプルギスの夜』は、家庭裁判所の審判を待ってはくれない。
キングは、世界を滅ぼしかねない災厄の魔女との決戦に、『健康保険証を持たない医療費10割負担(保険適用外)の身分不明者』として挑まねばならないのである。もし被弾して骨折でもしようものなら、コントローラーを握れなくなるどころか、莫大な医療費による破産は免れなかった。
今後の生活を案じ、見滝原家庭裁判所へ『就籍許可の申立』は行ったが、すぐに保険証が発行できない現実に、何もかもどうしようもなくなったキング。
ゲームの下見やフレーム暗記を建前に、今日は現実逃避のためのゲーム漬けの予定である。
――インターホンが鳴ったためドアを開けると、そこには少し緊張した面持ちの美樹さやかが立っていた。目の下のクマは濃く、どうやら憔悴した様子が垣間見える。
「マスター。……あの、ちょっと相談してもいいですか…。」
(さやか氏…また学校かどっかで悩んでるのか…?)
キングはいつもの険しい貌のまま、静かにソファに腰掛け、テレビ画面の格闘ゲームを一時停止した。
《ドッ、ドッ、ドッ、ドッ……》
静かな部屋にキングエンジンの重低音が響き始める。
さやかはその心音にわずかに反応しながらも、拳をギュッと握りしめ、意を決したように切り出した。
「私…マスターが『バグごと俺の領域に置いていけ』って言ってくれて、本当に救われたんです…。でも……あのときのことを思い出すと、魔法少女になるのが怖くなって……その度に、まどかやマミさん、杏子たちの思いを踏みにじった光景ばかり頭に浮かんじゃって……。本当に辛かったのはまどか達なのに、何で自分が苦しんでいるのかって思うと……」
さやかは救われたといっても、『魔女化の窮地を脱しただけ』であり、再び自分の道を歩めるほどには回復していなかった。
ほむらから手渡されたグリーフシードやまどか達の手助けにより、半日ほど学校に通えるくらいの日常生活を送れることは可能だが、教室の喧騒や、駅の近くなどでふとした瞬間にあのときのことがフラッシュバックしてしまう。寝る前に発生した際は、全く寝付けないことも多かった。
「私……自分がすぐに立ち直れるほど完璧じゃないって、ようやく分かったんです。これからも、恭介のことで嫉妬したり、誰かを羨んだり…そんな醜い感情がまた出てきちゃうかもしれない。………でも…間違えないプレイなんて、私にはできない……また心が濁ったら…私は…どうしたらいいの……?」
その問いを聞いたキングは、腕を組み、かつてないほど真剣な眼差しでさやかを見つめた。
引きこもりのゲームオタクであるキングだが、目の前の少女が『自分の弱さ』と必死に向き合っていることだけは痛いほど伝わっていた。だからこそ、自分の唯一の武器である『ゲーム論』のすべてを懸けて、真面目に答えようとした。
「美樹さん…。率直に言うと、そんなの人間の『仕様』だから気にするだけ無駄だ。」
「し、仕様……?」
「どんなゲームだってな…キャラの固有性能や世界のルールそのものをプレイヤー側が『間違ってる』『不快だ』って怒ったところで、1ミリもゲームは変わらん。文句があるなら運営(インキュベーター)に言うしかない。
…それに、初心者が『1回もコンボミスをしない(間違えない)完璧なノーダメージプレイ』なんて目指すのが、そもそもプログラム上のエラーみたいなもんだ。どれだけ上手いプロゲーマーだって、画面端でハメられたら普通にキレるし、焦ってコマンドを暴発させて自爆することだってある。」
キングの言葉は、格ゲーの理不尽な環境への愚痴のようでありながら、その実、彼が怒った『インキュベーターの理不尽なシステム』そのものを指していた。
「美樹さん…。大切なのは『被弾(ダメージ)をゼロにすること』じゃない。
……本当に大事なのはな、体力がミリ残りになっても、どんなに無様にハメられても、コントローラーを投げずに最後のドット単位の削り合いまで『対戦(生きること)を継続する決意』だ。画面が暗転して『GAME OVER』の文字が出るまでは、どんなに泥をすすってボコボコにされてても、そのマッチはまだ終わってないからな。」
「……対戦(生きること)を継続させること……私にはまだ…、すぐにできることではないけど……でも、少しずつ取り組んでみようと思います…。」
「あぁ…。コンボミスして泣きそうになったらいつでも来るといい…!」
キングの真摯な熱さに触れ、完璧なヒーローを目指さなくていい、最後まで投げ出さないことが大事だと、さやかはキングの優しさを全力で受け止めた。キングも、さやかの気持ちを尊重しながら、不器用ながらも背中を押した。
――同時刻
(私は……最低ね。)
見滝原の公園で、マミはベンチに座り、自分のソウルジェムを見つめていた。
マミはあの路地裏で、さやかが魔女化しかけた瞬間に『銃口を向け、手榴弾まで隠し持っていた自分』を思い出していた。
(…美樹さんが魔女になりかけたあの時、彼女を救う方法ではなく、自分が魔女になった瞬間にソウルジェムごと吹き飛ぶ方法ばかり考えていた。……呪いを振り撒くのが怖くて、未来が怖くて、いつでもゲームをリセットする準備をしていた…)
(でも、先生は叫んでくれた。『将来の不安も、恐怖も、自分に対する醜さも、全部俺に置いていけ』って。私の浅ましさも、恐怖も、最初からすべて見抜いていた。だからこそ、あの場にいる私達の絶望そのものを、代わりに背負ってくださったんだわ……)
キングが放った『全部、俺のテリトリーに置いていけ』という言葉。それは、自分が醜いと感じる自責感、自己嫌悪さえも、キングの前では思いを吐き出しても良いことを意味していた。それが、いくつもの理想を抱え込んでいたマミの心をどれほど救ってくれたかは、想像に難くない。
マミは、ソウルジェムから目を離し、吹っ切れたような、でもどこか寂しげな表情で微笑みながら答える。
「私……ソウルジェムが魔女を生むとしても、生きることから逃げずに向き合い続けてみせるわ。」
マミは正面を見つめながら話を続けた。
「……ねぇ、暁美さん。」
「………気づいてたのね。」
「あなたには借りてたままだったわね…。返しておくわ。」
ほむらが受け取ったのは、あの日マミに渡した手榴弾だった。
「あの時の私には必要だったけど、今の私には『必要のないもの』だからね。」
「……そう。役に立ったのなら、それで十分よ。」
さやかとの対話後。ストックしていたコーラが切れたため、買い出しに出かけようとキングがドアを開けた瞬間、インターホンの音と共に、マミがドアの前で佇んでいた。
「……あの、少しご報告が。あの日、先生の言葉を聞いて、私ようやく目が覚めたんです。だから……」
マミは、少し照れくさそうに、でも誇らしげに微笑む。
「暁美さんに借りていた手榴弾、先ほど彼女にお返ししてきました。もう、今の私には『ゲームをリセットするための道具』は必要ありませんから。生きることから、逃げないと決めたんです…!」
前に組んでいる手のひらは少し震えていたが、そこには魔法少女としてではなく、一人の人間としての決意が込められていた。
だが、話を聞いているキングの脳内は、全く別の問題に気を取られていた。
(……ん??マミ氏今なんて言った??しゅ、手榴弾……!?ってことは何!? 先週俺の家でみんなして泣いたり叫んだり、ゾンビがどうとか修羅場やってた時、この子のポケットには本物の爆発物が忍ばせてあったってことかよ!!うっかり床に落として爆発してたら俺の家どころか俺の命まで消し飛んでたじゃねぇかああああ!!!)
恐怖のあまり全身の筋肉が硬直する。同時に、脳裏に最悪の爆死イメージがよぎったことで、心臓が爆音で脈打ち始める。
《――ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドッ……!!》
マミはハッとしてキングに視線を移す。
(………! 私の浅ましい覚悟を、今になって激しい怒りと共にお叱りになっているんだわ……。命を軽んじていたことを、これほど本気で怒ってくださるなんて……!)
マミはキングの怒りを察知し、深々と頭を下げた。
「申し訳ありません、先生…!本当に、愚かな事をしていました…!」
「……終わったことだ。二度と、そんな物騒なアイテムに頼るな……」
(いや謝るなら最初から持ち込むなよ!!返してきてくれたなら本当に良かったけどさぁぁぁ!!!)
「はい…!」
――マミから解放されたキングは、何とか買い出しを終えて帰路に向かっていたが、偶然道端で杏子と鉢合わせた。
(……えっ、杏子氏…?…いや、知らないふりして通り過ぎ――)
「…キング?……ちょっといいか?」
キングは断れなかった。
二人は自販機の隣に移動し、コーラを飲みながら杏子は恥ずかしそうにキングに伝えた。
「……アタシも、キング達が来るまでは、ずっとさやかを説得してたんだよ。アタシの過去を話したり、本当にそれでいいのかってな……。」
杏子は触れていたコーラの缶をさすりながら続けた。
「……でも、アタシだけじゃダメだった。なんつーか……助け方はわかってんのに…心が追いついてないのが悔しくてな…。マミが『攻撃する』って伝えたとき……さやかはもうどうすることもできないんじゃないかって……諦めてた…。」
「……その…キング……ありがとな…。さやかのこと…助けてくれて……。」
(……さやか氏のことか…なんで助かったのか俺もわからんが……)
「……問題ない。テリトリープレイヤーを救出するのはギルドマスターの義務だ。」
「それに、佐倉さん…君は『自分ではどうしようもなかった』と勘違いしているみたいだな。」
「……?」
「美樹さんを助けられなかったと言うが、それは違う。君が美樹さんをずっと説得していたからこそ、彼女はあと一歩のところで留まり、俺が何とか間に合うことができた。」
キングは腕を組みながら、杏子に視線を向けた。
「……俺だけであれば…彼女は間に合わずに魔女になっていただろう。君が必死に止めていたからこそ、俺にバトンが繋がったんだ。……だから、君は決してダメだったわけじゃない。むしろ、最高のファインプレーだった。礼を言う。」
自分の行為が無駄じゃなかった。さやかを助けた張本人からそう言われた杏子は、目をうるわせながら、空き缶をゴミ箱に投げ入れた。
「ったく……わざわざ礼なんてらしくねぇな…変なこと言いやがって……」
杏子は溢れそうになる感情を必死に抑えながら立ち去っていった。
(何十回ものループの中で、巴マミが私から受け取った武器を『生きるため』に、ましてや『必要がなくなったから』と笑顔で返してきたことなんて、ただの一度も無かった……)
日が沈み、辺りが暗くなった頃。
冷たい雨の降る見滝原市の歩橋の上で、ほむらはただ一人、拳を強く握りしめていた。受け取った手榴弾の、冷たい金属の感触を確かめながら、マミの変化に違和感を生じさせていた。
あの男の存在は、魔法少女たちの『絶望の因果』そのものを根底から書き換えている。
何度、この砂時計を引っくり返してきただろう。
まどかを魔法少女の契約から遠ざけ、災厄『ワルプルギスの夜』を打ち破る。そのたった一つの目的のために、私は時間を巻き戻し、無数のタイムラインを孤独に彷徨ってきた。
ある時間軸では巴マミが狂気に狂って仲間を手にかけ、ある時間軸では美樹さやかが絶望の果てに魔女へと成り果て、ある時間軸では契約の代償として、まどかが世界を滅ぼす怪物を生み出して逝った。
この世界は、最初からクリア不可能なクソゲー――インキュベーターの理不尽なシステムによって構築された、絶望の檻だ。
そう諦めかけていた。
だが、この今回の時間軸だけは、決定的に何かが狂っていた。
原因は、ただ一つのイレギュラー。ほむらが何度も時間を巻き戻したことで、まどかを中心に宇宙規模の巨大な因果の引力(歪み)が発生し、そこに部屋ごとマンションごと巻き込まれてリスポーンしてしまった、あの恐ろしい貌(かお)をした謎の一般人――キング。
(……おかしいわ。これまでの何十回、何百回というループの中で、あの男が存在した歴史なんて、ただの一度も無かったのに。)
ほむらは冷徹な瞳を閉じ、この時間軸で目撃したキングの常軌を逸した挙動の数々を脳裏に呼び戻し、戦術的な分析を開始した。
最初の遭遇は、見滝原市の寂れた廃ビルの中だった。
まどかを契約から守るため、インキュベーターを仕留めようとした私の前に、空間の歪みからあの男――キングが突如として現れた。
私は激しく警戒し、時間停止を用いて死角から無音で接近し、その男を確実に排除しようと試みた。
でも、キングは腕を組んだ直立不動のポーズのまま、一切の回避行動すら取らなかった。背後から突き立てた私の銃口に対し、『情けない』と一言だけ残し、避ける価値すらないとでも言うように、微動だにせず前を見据えて静止していた。
(あれは……恐怖を知らないのではないわ。あの男は、私の能力を最初から完全に見切っていた。だから、自分の元には絶対に攻撃が届かないという『未来の確定演出(盤面)』を予知して、ただ傲然と構えていたのよ……!)
さらに、その場に現れた巴マミが変身した瞬間、キングはフッと目を細めた。
直後、戦場に鳴り響いたのは、大気そのものを激しく振動させる地鳴りのような重低音の波動。
変身した巴マミの魔力の残響すらも力技で押し潰し、襲いかかろうとしていた魔女の使い魔たちを一瞬で『自然消滅』させてしまった、あの圧倒的な圧。
(巴マミは、キングが心臓の鼓動だけで敵を排斥したと言って『先生』と呼び、最初の弟子になった。美樹さやかはあの部屋を最強のギルドだと思って『ギルドマスター』と呼んでいる。……えぇ。それも仕方のないことね。彼女達はキングをただの強い武術家だと思っているけれど、あの男の本質はそこじゃない。彼は、この世界の『因果の数値(パラメータ)』を、独自の言語であるゲーム用語で表現しているんだわ…!)
キングの口から漏れる『フレーム(世界の境界)』、『セーブポイント(帰る場所)』、『バグ(呪い)』という奇妙な言葉の数々。それは、ほむらが孤独に戦い、ループを繰り返してきたこの絶望の世界のシステムそのものを、上位階層から俯瞰し、チェスの盤面のように完全にコントロールしている証拠に他ならなかった。
佐倉杏子が殴り込んできた際にも、キングはダンスゲームの筐体の限界を力技でへし折り、理論値上限のバグパーフェクトを叩き出して彼女を瞬時に屈服させた。まどかが美樹さやかのソウルジェムを歩道橋から投げ捨て、彼女が仮死状態になったあの悪夢も、キングは世界のすべてのバグ(仕様の歪み)に対する深い怒りを湛えた顔で静止していた。
(……あの時、キングは凄まじい殺気でわたしを睨みつけた。『これ以上、俺の盤面で不手際を起こしてまどかを泣かせるな』と、無言で警告していたのよ。だから私は、必死でトラックを追いかけるしかなかった……)
そして極め付けは、あの咆哮ね…!宇宙の寿命を説くキュゥべえに対し、キングは『強制ログアウトさせてやる』と冷徹に吐き捨て、インキュベーターという種族の概念そのものを上位権限から消去すると脅迫。
さらに、今にも魔女化しそうだった美樹さやかを『お前たちのバグごと、俺のテリトリーに置いていけ』という絶対的な博愛の咆哮だけで、グリーフシードも使わずに純白の自動浄化を引き起こしてみせた。
(孤独に時間を巻き戻し、何百回ループしても、私は一度だってインキュベーターの論理をへし折ることも、魔女化のシステムを書き換えることもできなかった。……なのに、あの人は言葉だけで、世界の絶対法則を絵画のように書き換えてしまった……)
雨に濡れる歩道橋の上で、ほむらは静かに、心からの涙を流した。
(私は、ずっと一人で戦ってきた。誰にも信じてもらえず、まどかにも理解されず、冷たい砂時計を回し続けるだけの機械になりかけていた。……だけど、あの人は違った。私の繰り返してきた時間の重さを、孤独を、そのすべてを最初から見抜いた上で、この盤面を終わらせるために待っていてくれたんだわ……!)
冷徹に、孤独に、誰にも理解されずに世界を呪いながら繰り返してきた時間。その果てに、ようやく巡り逢えた。この理不尽な世界を終わらせるために、遥か高次の世界から降臨した、真の絶対者――。
「……グランドマスター」
ほむらは夕闇の向こうにある、あの家賃6万4000円のマンションの方角を見つめた。
「もう、私は一人じゃない。……彼の用意した完璧な盤面(ゲーム)の上で、私はただの忠実な駒として動けばいい。ワルプルギスの夜なんて、キングの前ではただのイベントボスに過ぎないわ……!」
ほむらの心は、キングへの全面的な信頼の光によって、かつてないほど強固に満たされるのだった。
しかし、『ほむらが何十回、何百回とループしている最大の要因』においては、例えキングであっても、全面的に協力してもらう必要性があった。
(今度こそ…今度こそ俺はフレーム暗記を……)
買い出しと杏子の相談により、ヘトヘトになって帰宅したキング。今日はゲーム漬けの予定でありながら全くゲームができなかった。すぐさま取り掛かろうとテレビをつけた瞬間。
『ピンポーン』
怒り八丁である。
(…………絶対に、出ん…!!俺は今、激しい怒りと共に『居留守』という名の完全防御を展開している……! 電気がついてようがテレビの音が漏れてようが、俺は一歩も動かんぞ……!)
ソファの上で腕を組み、目をつぶって完全に静止(居留守のポーズ)をキメたキング。
「カチッ」という音と共に、一瞬でインターホンの音が消え、静寂が訪れた。
(ふぅ……諦めて帰ったか……よし、ゲームを――)
そう思って目を開けると、目の前にほむらが無言で立っていた。
(ぎゃああああああああああ!!! ほむら氏!?!?幽霊!? ホラーゲームの演出!? なんで部屋の中にいるんだよおおおお!!! 怖すぎて声が出ねぇ!!!)
(……やはり、私の時間停止すら、この男の領域では無意味。キングは時間を止められることを察知し、あえて目を閉じて世界の因果の流れを『瞑想』によって観測していたのね……!)
ほむらは、時間停止して部屋に侵入した際、キングが微動だにせず目を閉じ、凄まじい威厳を放っていたのを目撃している。
「……驚かないのね。私の侵入すら、あなたの盤面(ゲーム)の上では想定内ということかしら……?」
(ただ居留守使おうとして目瞑ってただけだよ!! 驚きすぎて心臓が止まって声が出ないだけだよ!!)
「実は….キングに折り合っての相談があって来たの。」
「……折り合っての相談とはなんだ……?」
「ええ……。あなたを、因果を操る『グランドマスター』と見込んでお願いするわ……」
(グラ………え??)
「まどかを魔法少女にさせないでほしいの……!」
魔法少女まどマ⭐︎キング第10話 完
ここまでご覧いただきありがとうございます!
まどかを魔法少女にさせないでほしいと願いはキング通用するのか。第11話もぜひご覧ください!
「まどかを魔法少女にさせないでほしいの……!」
「そんなの……」
(そんなの俺が決められるわけないだろ!俺に言われても困るわ!)