どちらも難しいことと存じます。内に秘めておきたい想いは誰にでもあるはずですが、我々は言葉を編む生き物です。人間だけが持つ文化を自ら否定するのも、それはそれで愚かしい気がいたします。
ともすれば、その葛藤をどんな形であれ共有することこそが、信頼であり美徳なのではないでしょうか」
意識が覚醒すると、小鳥がさえずっていた。視界には、慣れない天井。
あ……そっか。ここ、家じゃなかった。
まだ寝ぼけてて良かった。おかげで胸にズキリとした痛みはこなかった。
私の身体はソファーの座面の上。背もたれ側には、冬眠するコグマみたいにポチタンが丸くなっていた。
あ……違った。ここ、冬じゃなかった。
胸がチクリと痛んだ。ズキリじゃなくて、チクリ。ちょっとだけ目が覚めてきたのかな。
別に、悪いことじゃないんだけど。
「ポチィ……」
ポチタンがうわ言を零す。赤子のように眠るものだから、自然と頭を撫でてしまう。
上身を起こすと毛布が落ちた。多分、ジェットさんがかけてくれたんだよね。
昨日は鬱陶しげだったけど、なんだかんだ優しい人みたい。私に
「……ああ!」
そうだ、喫茶ルナ! 私、昨日は喫茶ルナにいたはずなのに、どうしてここで寝ていたの?
『あの扉を開けば、月に招かれた瞬間から動き出し、明智様は本来眠るべき場所で瞼を閉じているはずです』
段々と昨夜の出来事が蘇ってくる。確か、店主のタクミさんが言っていたことだ。
どれだけ唸ってみても、店を出てからの記憶がない。ということは、本当に私はあの一瞬で事務所に戻ってきたってこと?
「はなまる不思議……」
しばらく呆然と、ソファーに座り込んでいた。夢のような体験にまだ心と頭が追いついていない。なんだか宙を浮いている気分。
……名探偵プリキュアに変身したことも、けっこう非現実めいていたはずなんだけど。
とりあえず身体を動かそう。それに、ジェットさんにお礼言わなきゃ。
ポチタンに毛布をかけて、研究室に向かう。中に入ると、ジェットさんの姿はなかった。
探すのも良かったけど、中学生としての好奇心が勝った私は、色々物色することにした。
きっとすぐに戻ってくるだろうし、変なもの触らなきゃ大丈夫だよね?
とは言ったものの、所詮子供の私には天才の発明なんて理解できない。本人の解説でもなければ、見た目はガラクタや失敗作と大差なかった。
果たして、私の観察眼はジェットさんのデスクにたどり着いた。
「ん?」
ふと、気になる文字列があった。私にも読み解ける文面。
それは、ある新聞の記事だった。日付は、数ヶ月前だ。
「
「こらーっ! 勝手に漁るなあ!」
「わっ」
背後から叫ばれてびっくりしちゃった。「ジェットさん」
「む、またその呼び方――まあいい。その顔、よく眠れたみたいだな」
「うん! 今日の私、はなまる絶好調だよ!」
頭の中がミントみたいに澄んでいて、とてもリラックスしている。逆に昨日の私は、わりと参ってたんだなって思い知った。
落ち込んでいるときって自分じゃ気付きにくい。よね?
「あんな?」
「ううん、今の私、冷静だなって。――ああっ、元気がないってわけじゃなくて、ええと、肩の力が抜けてるっていうかっ」
上手く伝えられなくてあわあわしていると、ジェットさんは苦笑した。
「よくわかったよ。タクミはちゃんと、お前を助けてくれたんだな」
「やっぱりジェットさん、タクミさんと知り合いだったんだ」
名探偵でなくてもわかることだ。喫茶ルナは私の慰めになるって、ジェットさん言ってた。店のことだけじゃなく、タクミさんがどういう人かも知っていたんだ。
「ありがとう、ジェットさん。私、本当はすごく心細くて……だから寝られなかったんだ」
「ああ……まあ、わかってたさ」
今ならわかる。昨日私は、
不安で弱い自分を隠すのに必死で、誰にも悟られたくないって怯えてた。
でも、今は大丈夫。怖がる必要なんてない。
この街は時間が巻き戻ったとしても私の故郷。友達や家族がいなかったとしても、変わらないものもある。もう新しい出会いに恵まれたんだもん。きっとみくるのような素敵な子と、これから何度も巡り会える!
何より、今こうしている間にも、月が私の足元を見守ってくれている。その事実が安心させてくれる。
「もう独りでも怖くないよ。私、嘘つかないから!」
「そ、そうか。……ん、いや待て。お前、」
途端、ジェットさんの顔色が変わった。
「どうしたの?」
「まさか、あいつ……」
あいつって、タクミさんのこと? 何かに気付いた様子に見えるけど……。
問おうとして、だけどできなかった。唐突に目の前に影が現れた。
「ポッチィ!」
「うえええポチタン!?」
いつの間にやら私の腰元にテープが繋がる。
な、なんだかこの展開、つい昨日もあったような……!
「おはよう! 私たちがプリキュアだって証拠を」
玄関を開けたみくるの声が近く、いや私のほうから猛スピードで近づいていく。
「たたた助けてみくるぅぅぅぅ!」
「をををおおおぉぉぉぉう!」
すれ違いざま咄嗟に手を伸ばしたらみくるの首にひっかかった。みくる、およそ乙女が出しちゃいけない悲鳴が出ちゃってるよ!
「おーい! 何だっていうんだ!」
「ご、ごめんなさい行ってきまーす!」
「ああもう、世話が焼けるな!」
取り乱したまま、何かを手にしてジェットさんが追いかけてくる。
やっぱり、なんだかんだいい人だ! 足が引きちぎれそうになりながら感心した。
「……こひゅ……んな……じぬ、じんぢゃうぅ……」
「み、みくるぅ!」
こっちは首が引きちぎれそう! ポチタンちょっと待って!
ポチタンに導かれた私たちは、パティスリーチュチュという店で立ち止まる。
ルナとはまた違った雰囲気。時間帯のせいではないと思う。さっぱりしていて軽やかな景観は、客層の厚さを感じさせる。
「タチュ、ケテ……」
……これも、昨日見た展開だ。
みくると目が合う。やっぱり同じ気持ちみたい。
誰に話を聞けばいいかはわかりやすかった。テラスで屈んでいる人たちに尋ねると、作家であるエリザさんのペンがなくなってしまったらしい。
エリザさん、賞を獲った凄い作家さんなんだって。私とそこまで歳は離れていないのに、はなまるすごい!
そのときの記事を見せてもらうと、
何か気になることがなかったかみくるが聞くと、ついさっきまでおばあさんと会話をしていたようだ。
冷静に考えてみよう。原稿とインクの様子を見る限り、エリザさんはそれなりな時間執筆に没頭していた。特に席を外すきっかけはなかったはず。
つまり、つけペンが消えるタイミングも原因もかなり絞られる。
「あんな」
「みくる?」
「ポチタンがあんなを引っ張ったのは、マコトジュエルが怪盗団ファントムに盗まれたときだった。ということは今回も……」
「……! そっか、ピンときた!」
足りないピースはみくるが見つけてくれていた。私は直感に頼っちゃうことあるけど、みくるは考えるのが得意だね!
「エリザざんのペンは、そのおばあさんに盗まれたんです」
「ええ!? 盗まれたって、そんな! す、すぐにおまわりさんに……」
「正確には怪盗団ファントム、ってエリザさん警察はちょっと!」
警察の人も力にはなってくれると思うけど、私たちはハンニンダーという兵器を知っている。あれって、多分プリキュアじゃないと倒せないよね?
しかし、私とみくるの心配は徒労に終わった。あまり聞きなじみがない言葉だけれど、通信障害で電話が通じないらしい。店長に「帆羽さん」と呼ばれた女性が教えてくれた。
「まだ犯人は遠くに行っていないはず。あんな、行こう! ジェットさんはエリザさんについてあげて!」
「……わかった。その前に、お前たちはこれを持っておけ」
そう言って私たちに渡されたのは、ジェットさんの妖精姿を模した通信機。プリキットボイスメモというらしい。さっき持ち出していたのはこれか。
通信障害でも使えるなんてはなまる便利。さすが天才の発明品!
今日二度目のお礼を言ってから――私はエリザさんに向き直った。
「必ず取り戻してきます。大事な宝物、なんですもんね」
不安で憔悴しているのが見て取れる。心の拠り所をなくしてしまったのだろう。
その感情は痛いほどわかる。だって、私もそうだったから。
「あんなちゃん……おばあさんにね、『あなたのファンです、握手してください』って言ってもらったんだ。私、本当に嬉しかったの。でもあの言葉は――嘘だったのかな……?」
「……!」
泣きそうな顔で言われた。私は言葉に詰まる。なんて返せばいいかわからなかった。
気休めを言えばいい? 慰めの言葉をかける?
でも、それで……
それで、昨日の私は救えただろうか。
「あんな、急ごう!」
「……っ、ごめんなさい。またあとで!」
先に飛び出していたみくるに引き戻されて、私は脱兎のごとく駆け出した。
ああ、いけない。私、逃げるみたいに……。
みくるの後を追いながら、エリザさんの言葉を反芻する。
――嘘だったのかな……?
心に余裕ができても、それだけで上手くいくものじゃない。本当の意味で「名探偵」になるには、私はまだ未熟すぎる。
……タクミさん。
あなたなら、あのときどうしていたんですか。
「二度も僕の変装を見破るとはね」
「やっぱりだ! アスパラガスカラーがチャーミングなナルシスト!」
「エメラルドだ! ってなぜその呼び方を!? まさかあのベイビーマスターッ……!」
「二人してなにその変な名前!?」
果たして、ファントムを公園に追い込むことはできた。
しかし当然マコトジュエルは向こうの手の中。ニジーによってハンニンダーが召喚された。
私たちはプリキュアに変身。後ろでジェットさんが驚愕を声に出す。これで証拠は見せられたってことでいいよね。
ミスティックが先手を取った。ハンニンダーを蹴飛ばしたところを私は遅れて追撃する。
相手は起き上がるや否や、こちらに向けて何かを噴射した。
黒い……インク?
「危ないっ!」
ミスティックが私を抱えてくれた。
「あ、ありがとう」
「……? 大丈夫? アンサー」
心配そうに覗き込まれた。しまった、顔に出てた。
嫌な音が後ろから聞こえて、二人一緒に振り向くと、インクを浴びた木が腐っていた。黒ずんで生気がない。
「強力なマコトジュエルをウソでおおえば、誰にも止められない兵器に生まれ変わるのさ」
憎たらしい顔でニジーが言う。彼の指示でハンニンダーが仕掛けてきた。
私たちは二手に分かれる。噴射口は一つなのだから、これで多少は戦いやすいはずだ。
「エリザさんのペンで、なんてことを!」ミスティックが毅然と糾弾する。
「違うよ。もう僕のものさ。芸術家は認められて喜ぶ人種、ファンと偽れば簡単に手元を緩めてくれる」
「偽る……」自然と、言葉が零れていた。「エリザさんのファンっていうのは、ウソだったったんだ」
「当然さ。ウソはいいね。欲しいものをたやすく手に入れることができるんだから!」
喧伝するかのように仰々しく語るニジーに、私は何も言わなかった。
呆れて、言う気にすらなれなかった。
「ふざけないで!」私の分まで、ミスティックが激昂して突撃する。「あなたのそれは、『奪う』っていうのよ!」
「同じことだよ、ベイビー!」彼女の拳とハンニンダーの噴射がかち合う。周囲に
「怪盗団ファントムは、ウソであふれおおわれた素晴らしい世界をつくる! そのために、ウソを以てマコトジュエルを盗むのさ!」
「好き勝手言ってくれるじゃないか」
恍惚と両手を掲げるニジーの正面に、ジェットさんが割り込んできた。どうして? ジェットさんにも戦う力があるのかな。
「ファントムの使命がウソを使って盗むことなら、キュアット探偵事務所の使命はウソを暴いて止めることだ!」
「ハッ! 随分と威勢のいいベイビーだ。じゃあこの状況で僕のウソを、ハンニンダーをどう止める?」
「……そんなの、些細なことだ。僕に力がなくたって、お前の前に立ちふさがっちゃいけない理由にはならない。ウソでこれ以上人を傷つけさせない、そのために僕はここに立っているんだ!」
「……!」
そっか――。
ジェットさんも悔しかったんだね。泣きそうな私を見て、それを自分にはどうにもできなくて。
嘘に傷つく姿を見る苦しさを、この人は知ったんだ。
私も。
私も、同じだよ。
「感動的だね! けど無意味だ。この力は、名探偵だって倒せる強さなのさ!」
「くそっ……!」
「ジェットさん!」
ハンニンダーがジェットさんに近づくのをミスティックが止めようとするけど、鋭いガラスの破片を飛ばされて距離を詰められない。
でも、私なら――
「ハン、ニン……ダー!」
あの禍々しいインクが、ジェットさんめがけて発射された。耐え難い痛みを想像したのか、覚悟した表情で彼は目を瞑った。
――ううん、大丈夫だよ。だって、
「……! お、おい!」
「アンサー!」
二人の狼狽する声。その向けられた先、ジェットさんを庇うように前に出た私は、インクを全身で浴びて真っ黒になっていた。
「……っ」
痛い。重い。熱い。身体中が蝕まれて、手足が焼け落ちるような感覚で、食いしばる歯が削れるくらいに軋む。
でも、不思議だ。全然怖くない。
「アンサー、アンサー!」
取り乱したミスティックが縋るように駆け寄ってくる。泣きそうで、震えて、瞳をわなわなさせて。プリキュアに初めて変身する前も、こんな感じだったな。
そして、私はあのときもこうだった。
「……嘘は、誰も救えないよ」
「え?」
呆然とする
「憧れに蓋をして諦めかけた人も、不安を隠して誤魔化していた人も、自分を傷つけるだけだった。そして、あなたの嘘で泣いていたんだよ。エリザさんは」
頭は澄んでいる。痛みも怒りも全部飲み込んで、ゆっくりと拳に力を入れた。
すうっと、身体の芯が透き通って、熱くなってくる。
ハンニンダーが殴り掛かる。ミスティックが「あっ」と叫ぶが、問題ない。
「嘘をついて、いいことなんて一つもなかった」
莫大な質量を、私は手負いのまま受け止めた。
他人を、自分すらをも救えない嘘なんていらない。
本当の気持ちを、本当の優しさを塗り潰す嘘なんて!
「真実の泣く声が聞こえないの? ニジー!」
胸の中が熱くなる。
私をおおっていた
そのまま縮んで、パッと消えた。
「……ハハ、そうか。再び舞台に立とうと言うんだね」
持てる限りの膂力で、ハンニンダーを押し返す。崩れたところをすかさずミスティックが追撃した。
隣にいる彼女は、安心したように私に微笑んだ。そして、肩を並べてニジーと向き合う。
「私たちは、名探偵プリキュア! あなたたちのウソは、私たちが終わらせる」
「そして、盗まれた真実を取り戻す!」
ジュエルキュアウォッチを操作し、出力を上げる。私とミスティックとの繋がりを深く感じ、共鳴が強くなる。
「これが」
「私たちの」
「
全速力で地面を蹴りだした私たちは、寸分の誤差なく同時にハンニンダーを貫いた。
浄化されたハンニンダーは、溶けるように消えていった。
「みくる」
変身を解除して、私は名前を呼んだ。すでにニジーは姿をくらませた。逃げ足だけは速いんだから。
「ありがとう、みくる。さっき助けてくれた」
「いいえ、私こそ。私じゃジェットさんのピンチに間に合わなかった。無事だったのはあんなのおかげ!」
みくるは憂慮の視線を向けてくる。
「それより、怪我はない? あのときすごく苦しそうだったけど……」
「大丈夫、はなまる元気だよ!」
優しいな、みくるは。
誰かの不幸を自分のことのように悲しんで、放っておけなくて。良いことがあったら本当に幸せそうに喜ぶの。まだ二日しか話していないのに、そんなみくるのことが大好きになった。
「ペンも取り返せたし、早くエリザさんのところに行かなくちゃね!」
「うん!」
この時代で最初に出会ったのが、みくるでよかった――。
チュチュに戻ると、憂慮の顔で佇むエリザさんの姿が見えた。
その表情は、私が手に持っているものを見て明るくなっていく。
「はい、どうぞ!」
「わあぁ、本当に取り返してくれたんだ! ありがとう!」
ペンを大事に握りしめるエリザさん。
「犯人には逃げられちゃいましたけど……」
「ううん。ペンは無事だったし、みくるちゃんたちも怪我はなさそうだし、それで十分だよ」
盗まれたものは持ち主に帰った。マコトジュエルはファントムの手に渡ることを阻止し、ポチタンが吸収した。
これで、この事件は終わりなはず。
なのに、なんだかもやもやする。本当にこれで解決なのかな。
解決って、もっとはなまるな気持ちになると思ってた……。
――嘘だったのかな……?
「エリザさんっ!」
「うえっ!? な、なに?」
「え、ええっと、」
反射的な行動で、私自身どうしたらいいかわからなかった。
きっとエリザさんの喜びの気持ちは本当。時が経てば色褪せて、忘れていく出来事なのも本当だと思う。それでも、傷ついた経験が消えるわけじゃない。
忘れちゃったら、その過去も救えなくなってしまうような気がする。それって、可哀想なことなんじゃないかな。
「あんな……?」
みくるが訝しげに名前を呼ぶ。いけない、何か、なにか……。
やっぱりやめといたほうがいいのかな。所詮私の自己満足。
……タクミさんなら、どうしただろう。
私の嘘を止めてくれたのはタクミさんだ。あのとき、あの人は何をしてくれたんだっけ。
『ですが、『今』ではないかと存じます』
『月は、いつでもそこにあります』
『私はここで月とともにお待ちしています。あなたが、自分を見つめる勇気を持てるように』
そうだ。
月明かりのような優しい言葉と、包み込むような微笑み。でも、私が真に感謝していたのはそこじゃない。
――言葉じゃなくて、
「
「へ?」
「握手です! あ、ああ握手ををを」
うぅ、私、結局突拍子もないことを……。
焦りで噛み噛みになってしまった私を、エリザさんは笑わないでくれた。
「うん、いいよ。じゃあはいっ」
快く右手を差し出された。これ、私がワガママ言ってるだけな気が……
ううん。決めたんだもん、私なりな救い方を頑張るって。私は、名探偵なんだから。
私は両手で包んで応えた。
女の子らしい柔らかな手。だけど少し大きくて、ゴツゴツしているところもある。私より年上だからというだけじゃない。
きっとこの手で、何枚もの原稿を書いてきたんだ。
「あ、あの! 私まだエリザさんの本、読んだことはないけどっ」
やっと言葉が追いついてきた。うん、これでいい。もう大丈夫。
「でも、読んでみたいです。絶対読みます! きっと好きになります! だから、応援しています!」
私の必死な言葉は届いたのか、エリザさんはきょとんと目を丸くして、そして笑った。
心なしか、さっきよりもはなまるな笑顔だった。
「うん! ありがとう、あんなちゃん!」
あぁ、よかった。
やめなくて、逃げなくて、信じ続けて、よかった。
私、ちゃんと救える。誰かのことも、自分自身のことも。
「あんな」
気付けばみくるが傍らにいた。慈愛すらも感じさせる温かな瞳で、私を見つめている。
私のやりたかったこと、感じたこと、全部わかってくれたみたい。さすがみくるだね。
見つめ合う私たちは笑い合う。私たちは知ったんだ。これこそが、本当の、
「キュアっと解決!」
*
木の軋む音がした。
来店の合図だ。ベルは店主の意向でついていない。音に気付く先客たちの視線を浴びたら新規も萎縮してしまう、という考えだ。
事実、今だって妖精たちは誰も入口を向かなかった。各々の談笑、あるいは物思いに耽っている。
ただし、今来た
迷わずカウンター席の定位置につき、象徴的なハットを外した。
「いつものを頼むよ」
間髪入れずにグラスが置かれる。器用なマスターだ。
「ここは喫茶店なのですが……ワインならバーにでも通ったらいかがです?」
「わかるだろう? ここがいいのさ、ここが」
グラスを傾け滑り具合を確認。匂いを味わってからゆっくりと喫した。
酸味の混じったアルコールが舌の上をころころと転がる。
「君に
「
当店の目玉であるマスターは、人当たりのいい愁眉だった。
タクミのイメージCVは豊永利行さんか江口拓也さんです。彼には4つモードがありますが、どれに切り替えても声がぴったしだなと思いました。
まことみらい市のマコトミライタウンは別の街だと言及はされていましたが、拙作ではまことみらい市の中にマコトミライタウンがつくられるという解釈です。どのみちあんなちゃんが馴染みのある街なのは事実なはず!(強引)
今回は2話をちょっといじりましたが、今後の店外パートはもっと展開に変化がおきたり、タクミも出てきたりする予定です。でもあんなちゃんはまだしばらくお客様。
ライブ見てきました。ライブ自体ほぼ初めてだったのですが、とんでもない感動とロスを味わっています。生で聞くとシンガーの方々もすっごいなって惚れ惚れしました。
そしてとにかくあんなちゃん可愛い、好き。あの笑顔がたまらん。千賀さん本当にありがとうございます。
ああ、また映画見に行こっかな。(6回目)