蜘蛛子ちゃんが目覚めて暫く経ち今現在、私達二人はスキルの確認をしていた。
それは“今私達が持ってるスキル”じゃなくて“取得可能なスキル”の確認。
鑑定のレベルアップによってスキルポイントの残量が確認出来るようになったこと、正直あんまり気にしてなかったんだけど。
なんとその“スキルポイント”の表示を更に鑑定することで所持しているポイントの範囲で取得可能なスキルがずらっと確認出来るようになっていたのだ。
これが非常にありがたい、いちいちスキル名を予想して確認して取得するみたいな手間が省けるようになったんだから。
そんなわけで二人でだらだらと、何か有用なスキルはないかと探し続けているのが今の状況。
そういえば、スキルポイントが最初から60000あった私と違って蜘蛛子ちゃんの初期スキルポイントは100だったらしい。
これって悪趣味な差別なのかな、仮に私達を転生した上位存在的なのがいるなら異議を唱えるよ。
その最中である、蜘蛛子ちゃんが“ソレ”を発見したのは。
最初に配られたスキルポイントを全然使っていなかった私は、まだポイントの残量が57600もある。
そのポイントで取得出来るスキルとなると、そりゃあまあ多いのなんの。
一つ一つ確認していくと私と蜘蛛子ちゃんで速度の差が出るのは当然で、私より先に彼女がソレを見つけるのは当然のことだった。
“傲慢”
気になるスキルがあったら一声かけて、と事前に伝えておいたところ蜘蛛子ちゃんから伝えられたのはそんな名称のスキル。
私の取得可能スキル一覧からも同じ名前のスキルを探すが、少なくとも私はそのスキルを取ることは出来なさそう。
名前から効果を予測することが出来ないスキルである傲慢、とはいえそんなスキルなんて他にも沢山ある。
ただ蜘蛛子ちゃんがわざわざ伝えてきたってことは、そのスキルに何か気になる点があるということで……
『傲慢……傲慢……』
傲慢と聞いて咄嗟に思い浮かぶものといえば、オタクの義務教育みたいな“七つの大罪”だろうか。
その中の一つ、最も重い罪として挙げられるのが傲慢……だったっけ?
人を知るにはまず話題から、ってことで色々な知識を浅く取り入れてはいるけどあまり詳しい分野ではない。
ただ少なくとも無関係な話ではない気がする、何故ならば。
『……
それは私がこの世界に転生したその日、初めてスキルの存在を理解して使用してみようと思ったあの時。
私がスキルポイントを使って取得出来るスキルがあると学ぶきっかけになった、そのスキル。
傲慢と同じように、それも七つの大罪として定められた罪。
あの時は出来なかったけど、鑑定がある今の私ならこのスキルの効果を知れる筈。
そう思って、聞こえてきたシステム音声に対して再度鑑定をかけてみる。
《嫉妬:神へと至らんとするn%の力。対象のスキルを封印する。また、Wのシステムを凌駕し、MA領域への干渉権を得る》
……あ〜?んん〜?知らない言葉が沢山出てきた。
『傲慢の説明に“Wのシステム”とか“MA領域”とか、出てくる?』
その言葉を聞いて頷く蜘蛛子ちゃん、なら多分これも傲慢と同じ系統のスキルってことなんだろう。
確かに気になるというか、うん、他のスキルとはわけが違うように感じる。
効果の書き方の話ではない、それは私達二人が持っているn%I=Wというスキルに関する話。
n%にWのシステム、唯一MA領域に関してはよく分からないけど……
この鑑定不能の謎スキルと同じような言葉が使われているんだよね、嫉妬には。
『私も嫉妬っていうスキル、取得出来る』
解読出来る方として、スキル封印の効果。
能力として書いてあることは凄く強いように感じるんだけど、これって鑑定ありきの力じゃない?
だって相手が何のスキルを持っているか分からないと封印するスキルも選べない……
いや、発動すれば全スキルの封印とかも可能なのかな。
だとしたら明らかにバランスが崩壊してるような気がするんだけど、そもそもこの世界はゲームじゃないんだからありえるにはありえるか。
なんて思ってたら自分の持っているスキルの一つ、羨望の効果を思い出した。
一度も使ったことがないけれど、このスキルも嫉妬と同じようにスキルを封印する効果を持っていた筈。
名称的にも羨望の上位互換のスキルとして嫉妬が存在する、って認識で良さそうかな。
取得してもいいけど、取得することで何か悪いことが起きる可能性も捨て切れない。
ただスキル封印は魅力的だし、逆に言うと“何かこのスキルが重要な役割を担っている”可能性だってある。
じゃなきゃこんな変なテキストにならない、少なくとも何かしらの意味は持っていると思う。
まあとにかく一旦蜘蛛子ちゃんに相談してみて……
『……もしかして傲慢、取った?』
声をかけようと向き直ったその目線の先に、蜘蛛子ちゃんが頭を抱えている姿が映った。
それを見てそう聞いてみれば、微妙な顔をしながら頷く蜘蛛子ちゃん。
取得したということはステータス、スキル欄にそのスキルが表示される筈。
先程進化したお互いを確認した時以来、あまり間の空いてない鑑定を再度彼女へとかける。
見慣れないスキルが、
《傲慢:神へと至らんとするn%の力。取得する経験値と熟練度が大幅に上昇し、各能力成長値が上昇する。また、Wのシステムを凌駕し、MA領域への干渉権を得る》
《深淵魔法:深淵の闇を操る最上級闇魔法。使用可能な魔法はレベルによって異なる》
《奈落:奈落を顕現させる》
明らかに場違いというか、他のスキルと比べて異様な存在感を放つ三つのスキル。
わけのわからない説明の傲慢は言わずもがな。
それに加えて“最上級闇魔法”と、魔法が使えない蜘蛛子ちゃんが持っていてはいけないようなスキルがまず一つ。
スキル名だけではなく効果の説明に関しても簡素すぎるスキルも新たに取得していた。
深淵魔法は何故か最初からレベルが10だし、他二つに関してはそもそもレベルの表記がない。
気まずそうに目を逸らす彼女、スキルポイントの残数的にも取ったのは“傲慢”のスキルだけだった筈。
ならこの二つのスキルは傲慢の副産物的なものなんだろうか、だとしてもやはり不穏な空気が漂うスキル説明。
性能的には間違いなくプラスなんだけど、それにしても裏を感じるような抱き合わせ。
ただ、う〜ん、蜘蛛子ちゃんが取ってるんだしなぁ。
同調圧力的な話ではないけど、自分一人で危ない橋を渡るよりかはまだ試してみる度胸が湧く。
私達が変に邪推してるだけで実際のところただの強スキル詰め合わせパック、みたいな可能性もあるわけだ。
なら試してみる価値もある、かな。
後先考えずに、というより未来のことを考える余裕すらあんまりない状況なんだし。
今を生きられるだけマシなんだから、躊躇って死ぬくらいなら色々試してから死のう。
その結果生き残れたら万々歳なわけだしね、やってみないことには始まらない。
ごめんやっぱり躊躇った方が良かったかも。
そんな音声と共に取得したのは、やはり追加で二つのスキル。
蜘蛛子ちゃんと同じように見覚えのないスキルが二つ増えると共に、自分のステータスが少し上昇したのを確認した。
これで増えたスキルは合計で三つ、予想通りだ。
あと禁忌のレベルが上がった、やめてね。
『私も嫉妬、取ったよ』
ただもう後に引くことは出来ない。
強くなったには強くなったんだし、100ポイントで複数のスキルが手に入ったのは良いことだ。
うん、良かった良かった、だからやめよう、これ以上考えてたら変に後悔する気がする。
《天鱗:龍種が持つ頑丈な鱗。魔法を分解する力を持つ》
《禍根:怨念を力に変えて纏う》
天鱗は多分常時発動系のスキルで、禍根の方は正直よく分からない。
少なくとも今発動することは出来ないようで、鑑定みたいに使おうと思っても発動することは出来なかった。
それでも嫉妬と天鱗の効果はすごい、ものすごい、だって私のステータスの欠点を補ってくれている。
嫉妬の方はステータスとか関係なしに効果が強い、注目するべきは天鱗の方。
私は平均抵抗能力のステータス……恐らく魔法攻撃に対する耐性のステータスが低かった。
そこに天鱗の効果が噛み合う、低かった魔法に対する耐性をこれで補うことが出来るんだから。
中層で見たタツノオトシゴの火球、今後ああいうファンタジー攻撃をしてくる相手が増えるのならきっとこのスキルは役に立つだろう。
あと嫉妬を取得した影響なのか他の影響なのか、耐久系のステータスが全体的に上昇していた。
つまりなんというか、今のところ欠点を感じない。
色々不穏に感じる部分はあるんだけど、目に見えた実害は禁忌のレベルが上がったことくらい。
で、その禁忌もまだ実害を感じていない。
他のスキルと比べても入手から即座に得られるメリットが大きくて、とにかく今のところは利点ばかり。
やっぱり取り得のスキルだったように感じる、変に警戒しすぎたのかな……?
そんなこんなで新たに強力なスキルを手に入れた私と蜘蛛子ちゃん。
今後の中層攻略で役に立たないかと、私が追加で火耐性のスキルを取って今回のスキル取得会はお開きになった。
ポイントを抱えたまま死ぬのも癪だし、困ったことがあればスキルポイントを使って解決しちゃうのも手なのでは?
なんて考えながら、中層攻略のための計画を二人で立てる。
とにかく下層でレベルを上げて、最低限の準備が整ってから中層へ移動しようという計画。
そうしないと蜘蛛子ちゃんが死ぬ、戦闘能力の話ではなく火に弱いのが致命的なので。
糸が燃えるなら巣も作れない、奇襲もしづらいとなると今までのやり方じゃ通用しない。
せめて環境に対応出来るようになってから中層に挑もうという結論で会議は纏まるのだった。
因みに肝心の遠距離攻撃の手段は見つからなかった、というか完全に忘れてた。
ちゃんと探せば一つや二つくらい見つかったんじゃないかな、と今更ながらに思うけど……
嫉妬のインパクトがあまりにも大きすぎて頭から抜け落ちていた、アレは仕方ないと思う。
そのことに私が気付くのは、まだ先の話。