影ですが、なにか?   作:хорошо!

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10 文字通り味気ない

 私達が標的にして……というか、私達を標的にしてくるから返り討ちにし続けているタツノオトシゴ。

 そのタツノオトシゴは“竜種”の魔物であるらしい、龍種ではなく竜種である。

 

 《竜:龍の下位種族と言われる魔物の一種。下位ではあるものの、中には龍種に匹敵するものも存在する》

 

 私達が見た地龍の下位の存在、それがタツノオトシゴのような竜種。

 タツノオトシゴは火竜だ、火竜が進化した時に急に地龍なると思う?

 私はならないと思う、分岐進化的なのがあるとしてもそういう変化はしないと思う。

 じゃあきっと火竜の上位に位置する火龍もいるんだろう、会いたくないね。

 

 《エルローゲネセブン LV7

 HP:461/461(緑)

 MP:223/223(青)

 SP:218/218(黄)

   :451/466(赤)

 ステータスの鑑定に失敗しました》

 

 《エルローゲネセブン:エルロー大迷宮中層に生息する下位竜に属する魔物。雑食性でその大口により何でも飲み込む》

 

 視界の先に映るのは、ゆっくりとマグマを泳ぐナマズのような魔物。

 この世界の命名規則は分からないけど、ゲネの部分とか下位竜であることから恐らくタツノオトシゴの進化系?

 或いは、タツノオトシゴの仲間であることが分かる。

 中層の魔物はステータスだけ見れば下層の平均的な魔物より少し弱い。

 けど、このナマズは強い、中層では初めて見る強さの魔物だ。

 

 『逃げる?』

 

 その言葉を聞いて、天を仰いで唸る蜘蛛子ちゃん。

 別に私達があのナマズにちょっかいをかける理由はない、多分蜘蛛子ちゃんのステータスなら問題なく逃げられる。

 しかしSPが高いナマズと追いかけっこをし続けると、ちょっと面倒臭いかもしれないとのこと。

 まあでも無理に挑む必要もないので、やっぱりここは気付かれないうちに回り道をするべきか。

 

 『あ』

 

 その方針で決定し振り向いた時、別の位置から這い出たナマズと私達の目が合った。

 その場にいる全員が一瞬静止した直後、ナマズがその大口を開いて私達のいる位置を口に放り込み……

 でも私がそう易々と丸呑みされることを良しとするわけもなく!!

 その口が閉じられることはない、私が両腕で押さえ付けているから。

 しかし明らかにステータス負けしている、もたない、私の身体が生身だったらきっと腕から変な音が鳴っている。

 

 とはいえ一瞬でもその攻撃を止められれば私達にとっては十分で、口内に毒を放り込まれたナマズはのたうち回る。

 それによって力が抜けたのか攻撃範囲から難なく脱出出来た、でも腕は暫く使い物にならなそう。

 が、隠密を心掛けていた私達が急に戦闘を始めたんだ。

 当然その戦闘風景は周りから見て目立つ筈で、最初に発見したナマズからの追撃を恐れ警戒するも。

 

 『逃げてる?』

 

 仲間が苦しみのたうち回っている姿を見て、もう一匹のナマズは踵を返して逃げ出していた。

 ステータス的には私達に圧倒的に勝ってるんだから、わざわざ逃げることないと思うんだけど。

 いや戦わないに越したことはないんだけどね、私今あんまり戦闘したくないし。

 腕がちょっと、うん、痛すぎるかも。

 ビタンビタンと跳ね回る、毒を受けた方のナマズに対してトドメを刺す。

 

《経験値が一定に達しました》

《個体、レクターウンブレラがLV5からLV6になりました》

《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》

《熟練度が一定に達しました》

《スキル〈体術の才能LV2〉が〈体術の才能LV3〉になりました》

《スキル〈集中LV6〉が〈集中LV7〉になりました》

《スキル〈打撃耐性LV4〉が〈打撃耐性LV5〉になりました》

《スキル〈生命LV9〉が〈生命LV10〉になりました》

《条件を満たしました》

《スキル〈生命LV10〉からスキル〈身命LV1〉に進化しました》

 

 と、丁度良くレベルアップしたことで傷が治り腕の痛みも次第になくなった。

 傲慢と潜影様様すぎるね、それくらいレベルアップまでの期間が短縮されてる。

 ステータスが上がる、という意味でもそうだけど他の部分。

 スキルの熟練度だとか、各種パラメーターの全回復とかの恩恵を得られるのがやはり嬉しい。

 実際ここでレベルが上がらなかったら、暫く私の腕は使い物になってなかった気がするし。

 

 とまあ、ナマズが逃げ出したことにより周囲の安全が確認出来たので休憩を挟む。

 中層の魔物はマグマの中を移動しているため、身体が非常に熱い。

 私にとってのその熱さは我慢出来る程度というか、熱いとは思うけどそれ以上の感覚があまりない。

 マグマダイブとかしたら流石にまずいだろうけど、火球を一発二発貰っても多分耐えられると予想しているのはこれが理由だったりする。

 

 だから仕留めて捕食するまでに若干の時間を置いて冷まさないと、蜘蛛子ちゃんはその魔物を食べられないのだ。

 私は食べられるんだけどね、とはいえ別に食い意地を張ってるわけではないので蜘蛛子ちゃんに合わせる。

 と、冷ましたナマズを口にした蜘蛛子ちゃんが私の頭をしきりに叩いてくるのだ。

 

 『どうしたの?』

 

 キラキラとした瞳で私の頭を叩き続ける彼女、痛いからやめて。

 そんな彼女が地面に刻んだのは“美味い”の一言。

 差し出されたナマズの一切れを、私も食べてみる。

 

 ……うん、味しない、分からない。

 

 この身体の良いところでもあり、悪いところ……

 いや、今のところあんまり欠点的なのは感じてないんだけど。

 口がない私はその身体から直に食事を行ってて、その形式の問題なのか味を感じないっていう話を前にした気がする。

 これのお陰でタニシみたいな、蜘蛛子ちゃん曰く“食べていいものではない”という相手も私は無理なく食べることが出来ていた。

 

 ただ味を感じないということは、美味しいものを食べても何も感じられないということ。

 食感も旨みも何もかも感じない私にとって、ナマズは他の相手と変わらないただの糧でしかなかった。

 いやタニシとかカエルとかは食べると若干ダメージ負ってたから、それに比べれば美味しいのかもしれないけど。

 

 そんなわけで味が分からない私と違って、ナマズに対して明らかな美食を感じている蜘蛛子ちゃん。

 別にSPの値に余裕がないわけでもないし、折角ならとそのナマズは蜘蛛子ちゃんに全て食べさせた。

 美味しく食べてもらえる方がきっとナマズも本望な筈、絶対そんなわけないけど。

 

 この出来事がきっかけとなり、蜘蛛子ちゃんはナマズを探し求める怪異となるのであった。

 うん、まあ、レベル上げにはなるから私としても別にいいんだけどね。

 ちょっと妬ましいかもしれない、そんなに美味しいなら私も感じたかったな……

 

 

 

***

 

 

 

 接敵と同時に〈嫉妬〉を発動させることで、タツノオトシゴの火球攻撃をMP切れの前に止めさせることが分かった。

 そんなことがあってタツノオトシゴ狩りが今まで以上にスムーズになった私達、がしかし根本的な問題は変わらない。

 私達は中層の相手に自分達から攻撃を仕掛けることが出来ない、という問題。

 それを解決するためにと、私は蜘蛛子ちゃんからとある提案を受けた。

 

 “魔力感知”

 “術式感知”

 

 今のところ宝の持ち腐れと化している、私達の魔法スキル。

 蜘蛛子ちゃんはこの二つのスキルを取得することで魔法を使えるようになるんじゃないか、と予測しているらしく。

 スキルポイントが有り余っている私に対してそんな提案をしてきたのだ、実際こういう相談はどんどんしてくれた方が嬉しい。

 

 結論から言うと、取れなかった。

 名称の特定まで出来ているのに取得不可な時点で薄々察してたんだけど、何処にもない。

 私の取得可能スキルの中にそんなスキルは存在しなかった。

 これで確信したのは、恐らく個体や種族によって入手出来るスキルに適性があるということ。

 そして同時に、私は魔法への適性が致命的にないということだった。

 

 薄々察してたよ、薄々察してたんだよ私も。

 だって私他のステータスに比べて明らかに魔法系のステータスが低いというか、嫉妬を取るまで抵抗系のステータスも低かったんだもん。

 最初から薄々思ってた、私は多分魔法を使い熟すタイプの種族じゃないんだろうなって。

 けどファンタジー世界といえばやはり魔法に憧れるもので、いつか使用出来るかもしれない魔法に思いを馳せて……

 

 なんて、考えていたわけで。

 その結果がこれとなると、まあショックである。

 それを伝えられた蜘蛛子ちゃんも同時にショックそうな表情をしていた、思いついた遠距離攻撃の手段が潰えたわけだから当然である。

 けど何故か影魔法のレベルだけ上がる速度が速い、私が影の魔物だからという理由な気はするけど。

 使ってないのに上がるってことは、何かしらの手段でこのスキルを発動出来るんじゃないか……?

 

 なんて、私は思うわけだ。

 思うだけで実行は出来ない、結局使用出来た試しはない。

 その代わりと言ってはなんだが、スキル探しの道中で私はこんなスキルを発見した。

 

《現在所持スキルポイントは58100です》

《スキル〈純潔〉をスキルポイント5000使用して取得可能です》

《取得しますか?》

 

 5000ポイントという、少ないとは言えない量のポイントを消費して取得可能なそのスキル。

 とはいえ別にそこは気になる点じゃない、これより消費ポイントが多いスキルなんていくらでもある。

 問題はその効果……うん、その効果が問題。

 

 《純潔:神へと至らんとするn%の力。神龍結界を超える防御性能を持つ結界を展開する。また、Wのシステムを凌駕し、MA領域への干渉権を得る》

 

 見つけてしまった、例の謎スキルシリーズを。

 てっきり七つの大罪に合わせて七つしかないと思っていたそのスキルだったが、多分もう七つある。

 七つの美徳、だったっけ。

 その数だけ更にこの謎スキルシリーズがあると、このスキルの存在でなんとなく理解した。

 他にどんな美徳があったかまではスラスラと出てこないけど、なんとなく。

 

《〈純潔〉を取得しました》

《残りスキルポイント53100です》

 

 まあ、取得するよね。

 

《熟練度が一定に達しました》

《スキル〈禁忌LV4〉が〈禁忌LV6〉になりました》

 

 正直こっちも上がるだろうという覚悟を持って取得したけど、それはそれとして一気に二つもレベルが上がるのは心臓に悪いので出来ればやめてほしい。

 ただでさえレベルがカンストした時に何が起こるか分からないんだから、本当に。

 

《条件を満たしました》

《称号〈純潔の支配者〉を獲得しました》

《称号〈純潔の支配者〉の効果により、スキル〈腐触耐性LV1〉〈夢想〉を獲得しました》

《〈腐触耐性LV1〉が〈腐触耐性LV7〉に統合されました》

《熟練度が一定に達しました》

《スキル〈腐触耐性LV7〉が〈腐触耐性LV8〉になりました》

 

 ということで副産物のスキル二つもゲット。

 片方が腐触耐性なのはなんとも言えない、元々持ってるスキルだし。

 まあレベルが上がったのは素直に喜ばしいけど、嫉妬の天鱗と比べたら微妙に感じるのも仕方ないだろう。

 

 試しに〈純潔〉を発動してみると、目の前に結界のようなバリアのようなものを張ることが出来た。

 説明的にも凄い防御力を誇ってそうだし、強いんじゃないかな。

 ただ流石に発動にMPを消費する上、その消費速度がだいぶ早いので乱用は出来なさそう。

 私MPはあんまり多くないし、これからどうにか伸ばしていく方針で頑張ろう。

 

 ところで副産物のもう一つ、手に入れた〈夢想〉のスキルはというと。

 

 《夢想:夢の世界で生きている》

 

 ……私、寝ないから夢とか見ないんだけど?




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