Fate/sn×銀英伝クロスを考えてみた   作:白詰草

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37:美しき四面楚歌

 ――士官学校に入学したのは、無料で戦史を学ぶためだったのに、国の財政難で『彼』のいた戦史研究科は廃科になってしまった。金髪の友二人と、反対運動をしても実らなかった。当時の校長が与えた罰は、科の資料図書の目録作りという粋なもの。人生で思い切り本を読めた日々。

 

 書庫の鍵の貸し借りをするうちに、若い事務局次官と交流するようになり、門限破りを見逃した下級生に、慕われるようになった。薄茶色の髪と目を持つ事務官は六歳年上の先輩、鉄灰色の髪に青灰色の目の後輩は二歳下。金髪の同級生と、事務長の娘と並んで、『彼』の終生の友となった。

 

 実技が苦手な『彼』は必死の思いで卒業試験に取組み、なんとかパスして軍に入った。一年目は戦史統計室で、少ない仕事をそっちのけで資料を読み漁る日々。

 

 不真面目さが祟って、二年目の配属先は敵国に近い辺境の警備隊。そこで転機が訪れる。敵国との武力衝突が起こり、劣勢となった『彼』の部隊は、惑星へと逃げ込んだものの、包囲をされてしまった。そんな時に警備隊の司令官に、民間人三百万人の避難を命じられたのだった。

 

 目まぐるしい場面の転換が続く。多忙と緊張で、記憶が定かではないのだろうか。数多の断片の中に、金褐色の髪とヘイゼルの瞳がちらりと浮かんだような気がした。

 

 視界が落ち着くのは、背景の漆黒の中を惑星が遠ざかっていく姿。『彼』は、民間人を置き去りにして逃亡した上官を囮に、まんまと脱出に成功したのである。

 

 そして、『彼』はエル・ファシルの英雄と呼ばれた。なんのことはない、民間人を見捨てようとした軍の汚点隠しに過ぎないのだが。

 

 その自己分析は正しく、しかし誤っている。救われた人にとって『彼』は紛れもない英雄だった――。

 

 

 凛は、ふっと目を覚ました。己が工房で休めたせいか、ずいぶん体が軽くなった。昨日までの魔力の吸い取られ方が嘘のようだ。時計を見ると八時。十一時に柳洞寺門前で待ち合わせの約束だから、二度寝をするほど余裕はない。

 

「うー、仕方ない、起きよ」

 

 もぞもぞと身支度をする。墓参りに行くなら、お気に入りの私服というわけにもいかない。身に着けるのは、学生の礼服、制服である。とりあえず、ブラウスとスカートにカーディガンを引っ掛ける。髪を結うのは、食後でいいだろう。別室のアーチャーに声を掛けようとして、彼が居間にいることに気がついた。

 

「あら、てっきり寝てるか、霊体化してると思ってたのに……」

 

 呟くと凛は階段を下りて、居間に向かう。拙いドイツ語が聞こえてきた。ちょうど、終わりの挨拶をしているところだった。

 

「アウフ・ヴィーダーゼン」

 

「あら、誰に電話してたの?」

 

「セラさんにだよ。今日は車じゃなくて、街を歩いてもらおうと思ってね」

 

 アーチャーは公開することによって他者の目に触れ、記憶を残すことの重要性を強調した。

 

「藤村先生が同行すれば、余計に目立つはずだ。安全対策だよ」

 

 凛は、脳裏にその一団を思い浮かべた。士郎と藤村大河、イリヤと金銀の髪のメイドが三人。

 

「わたしたちの前途もだけど、士郎、大丈夫かしら……」

 

 墓参りする前に、墓穴を掘らないといいんだけれど。アーチャーは衛宮切嗣への関係者を集め、交流を推進させる気のようだ。個性の豊か過ぎる面々だ。キャスターとの対面より不安になってくる。

 

「物事は、複数の視点から見ることが大事なんだよ。

 歪みのない視線を持つ人間はいないけれど、複数の目で見ることによって、

 その歪みが、立体へと形を変えるんだ。

 ありのままの衛宮切嗣を知ることが、あの子たちには必要なことだと思うよ」

 

「そうね。でも、お墓参りの準備もしなくちゃ。先に朝食にしましょう」

 

 アーチャーの影響は少なくなかった。凛には、すっかり補給の重要性が身についていた。

 

*****

 

 遠坂凛よりも、更に多忙なのが衛宮士郎だ。墓参りの前に、イリヤと藤村雷画を訪ね、養父の遺品や戸籍の件について聞かなくてはならない。

 

 もっとも、士郎は早起きが苦ではないし、ここに逗留している女性たちの半分は家事のプロ。台所も占拠されかけている。ドイツ育ちのイリヤは、日本食を食べ慣れていないからだ。

 

 本日の士郎とセイバーの朝食は、白いご飯にみそ汁、焼鮭と納豆、小松菜のお浸しにたくわんと焼き海苔。

 

 一方、アインツベルン組は、ライブレットにハムとチーズ、野菜スープとコーヒー。こちらの女性たちは少食だ。三人で姉貴分一人といい勝負といったところだ。セイバーが割った食器は、イリヤが弁償してくれて、一緒にナイフやフォークも補充された。いずれも世界的に有名なメーカーの品だった。皿の一枚、カップの一客が五桁に届く。魔術師ってみんな金持ちなのかと、士郎を唸らせたものだ。

 

「ねえ、シロウ。その気持ち悪いの、本当に食べても大丈夫なの?」

 

 赤い瞳が、ねばねばと糸を引く、茶色の粒を気味悪げに凝視した。

 

「これは納豆っていうんだ。大豆って豆でできてる。

 俺は好きだぞ。でも、セイバーが平気だとは思わなかったなあ」

 

「においと味は独特ですが、大変に美味です。

 豆が、これほど栄養豊かなものだとは……」

 

 日本では古くから食べられているが、大豆がヨーロッパへ伝播したのは十七世紀。

そんな知識までよこす聖杯が、ちょっと恨めしいセイバーだ。

 

「この鮭もです。

 我が国と同じく、保存のための塩漬けだというのに、なんという差か……」

 

 セイバーは、ご飯と鮭と一緒に悔恨も奥歯で噛み締めた。彼女の故郷では、鱈や鱒を塩漬けにした。そのままでは塩辛すぎる。水に晒して塩抜きをして食べるのだが、塩分とともに旨みも逃げてしまい、パサパサになっていた。似たような調理法なのに、この差はいったい何なのだ。

 

「あはは、でも納豆はこのへんじゃあんまり食べないんだ。

 日本の東の方で生まれた食べ物だからな。

 慣れないと見た目や味が変わってるし、じいさんも食べなかったなあ」

 

「でもシロウは平気なのね」

 

「ああ、よく覚えてないけど、俺の実の親は納豆が食える人だったのかも……」

 

 これは、アーチャーとの会話をきっかけに、気がついたことだった。

 

「じいさんは、ハンバーガーみたいなジャンクフードが好きだったけど、

 イリヤの家で暮らしてたから、パンが中心だったのかな。

 カレーや牛丼みたいな食べ物じゃないと、ご飯ばっかり残すんだよ」

 

 おかずの味で白いご飯を食べるのが、日本人特有の口中調味だ。学校給食でも三角食べを指導される。だが、パン食中心だと身につきにくい。

 

「でも、セイバーは上手に食べてるよな。箸も綺麗に持つしさ」

 

「聖杯の賜物です」

 

 セイバーの言葉に、無表情に呟く者がいた。

 

「……お皿は割るくせに、無駄遣い」

 

「リズ、食事中にそんなことを言うものではありません」

 

「だって、ほんとのこと」

 

「だからです」

 

 セラに咎められて、リズは無言で頷いた。しかし、不服そうだ。不出来な後輩に、一言なかりせんという気なのかもしれない。

 

「先様のご都合もありますから、とにかくいただいてしまいましょう」

 

 怜悧な口調で言い切られ、反論の間もなくセイバー主従は食事を再開した。士郎は本気で、遠坂主従に常駐してもらいたくなってきた。

 

 そりゃ士郎だって男だ。美人に囲まれる夢を見ていなかったといえば嘘になる。いや、だった。人の夢と書いて儚いって本当なんだ……。

 

 現実はかくも厳しい。女の子たちに『ちやほや』ではなく『つんけん』されると、とってもきつい。男一人の孤独をひしひしと感じる。とはいえ、バーサーカーに出現されても困るわけで。

 

 なあ、じいさん、女の子に優しくしないと損するって言ってたよな。この状況はなんなのさ!? ほんとに優しくしてたら、こうなってなくないか?

 

 そう思うと、むくむくと疑問の雲が湧いてくる。士郎に巡ってきた遅い反抗期だった。

 

 思春期は、絶対の存在である親から、自己を確立していく重要な成長プロセスだ。衛宮切嗣を崇拝する養子に、恨んでいる実子をぶつけることで、幼い日の理想に疑問を抱かせる。最優と最強のサーヴァントのマスターに、最弱のアーチャーが仕掛けたのは一種の心理戦だった。

 

 毒は量を加減すれば、妙薬ともなる。心理戦は心理学の粋であり、薄めれば心理療法になる。ヤンは荒療治を選択した。遠慮なくぶつかり合えばいい。ぶつかるうちに角が取れて丸くなっていくし、ぶつからない方法も学ぶだろう。

 

 こう表現すると大仰だが、ありふれた小学校高・低学年の姉弟関係の再現である。

 

 聖杯戦争という異常な状況下で、精神年齢が幼い二人に必要なのは、平凡な人間関係の構築だ。きょうだいが仲良くし、周囲の大人と信頼関係を築き、友人たちと交流を深めていく。

 

 精神の支柱が一点だと、過大な重みがかかってしまう。ならば、柱と支点を増やすべきだ。そして、士郎とイリヤが、父から心理的に自立できる契機となればしめたものだ。士郎の理想にしても、自律と自尊のうえで果たさなければ、彼をきっと不幸にする。

 

 そして、成功しつつあった。

 

 ……優しくしろって言っても、こういう時、どうすりゃいいのさ。『女の子』じゃない、『女の子たち』への方法は!? それも教えといてくれよ……。

 

 セイバーに優しくしたらイリヤに睨まれ、イリヤに優しくすると、メイドの二人に睨まれる。かといって、メイド相手の話題がない。

 

 味見の時より味噌汁がしょっぱい士郎は、遠い目になった。

 

 こんな調子で、雷画じいちゃんのところに行って、大丈夫だろうか……?

 

 士郎の懸念は大あたりだった。人間の予想は外れて欲しいことが的中する。豪放磊落な雷画老は、士郎の連れに相好を崩し、胡坐の膝を打って大いに笑った。被後見人の、まだまだ小さな背中を力任せに何回も叩き、耳元で囁いた。

 

「坊主、いつの間に引っ掛けたんだ? おまえも隅に置けんじゃねえか。

 氏よりも育ち、蛙の子は蛙ってな。で、本命はどの娘だ? んんー?」

 

 ちっとも囁きになってない音量だった。三対の赤い瞳の温度が、一気に氷点下に突入した。

 

「ちょっ……、雷画じい、そういうんじゃないから、洒落になってないから!

 いまはやめてくれ。親父の戸籍とか、遺言状とか、そういうのが見たいんだ」

 

 真っ赤になって両手を振る士郎に、雷画は灰色の薄い眉を撥ね上げた。角刈りに黒目の小さい目と相まって、さらに凶相になった。士郎は慣れたものだが、セイバーを除く良家の子女らは身を固くするほどの迫力だ。

 

「どうした、ずいぶんな心境の変化じゃねえか。

 ま、無理もあんめぇ。こんなに可愛い嬢ちゃんがいたとはねえ。

 士郎にとっちゃ、血はつながってないが、義理の妹か。

 いやいや、あいつも罪作りなこった。

 うちの大河も随分と熱を上げとったが、女受けする奴だったからな」

 

 お願い、もうやめて。じいさんの信用度もゼロを突き破って、マイナスだ!

 

「え、ええーと、ごめん、時間もないから」

 

「おう、戸籍はあるが、遺言状みたいなもんは預ってねえ。

 あの時に世話になった弁護士に聞いといたが、やっぱり知らんとさ」

 

「そ、そうか。藤ねえは?」

 

「大河は寒稽古に行った。てか、俺が行かせた。あれがいると話が進まねえからな。

 墓参りに間に合うように戻ってこいとは言っといた。

 大河は遺言状は知らんってことだが、嘘じゃねえと思うよ。

 あれが預ってたら、その嬢ちゃんが来たのに隠しちゃおけん」

 

 夕日色の頭が頷いた。がさつで無駄に明るいぶん、大河はその手の陰湿さと無縁である。というより、言動が怪しくなって、すぐにぼろを出すに決まっている。

 

「その弁護士の話じゃ、遺言状は思わぬところから出てくるんだとよ。

 本の間とか、蔵の中とか」

 

「本とか、蔵?」

 

「そうさ、お嬢ちゃん。本棚の本に挟んどいたり、蔵の箱に入れといたり。

 どうしようかと思うようなことほど、そうしちまうって言うんだよな」

 

 もしも、聖杯戦争が通常の周期で発生していたら、イリヤが日本に来るのはあと五十年先だった。士郎は七十歳近くになる。その時に、この家に住んでいるかはわからない。

 

「……ええ、わかる気がするわ」

 

 皺のある無骨な手が、白銀の頭を撫でた。

 

「そっか、偉いなあ。鳶が鷹を産んだかね。 

 でなきゃ、お袋さんが、よっぽどできた美人だったんだろう」

 

「そうよ、とっても綺麗で優しかった……」

 

 セイバーは静かに瞑目した。彼女の感覚では、アイリスフィールが誘拐されたのは、一週間ほどの前。しかし十年の時が流れ、前回のマスターは死去し、彼の娘は外見はあまり変わらぬものの、中身は淑女となっている。

 

「おう、そうだろうよ。士郎の家にゃ、道場や土蔵があるから、家捜しも骨だぜ。

 先に戸籍を見てみるかい?

 ただなあ、素人が見ても、よくわからんぜ。

 嬢ちゃんたちは、日本語は読めるかね」

 

「はい、わたくしは多少ならばですが」

 

 しかし、雷画はセラの答えに気遣わしげな面持ちになった。

 

「これなあ、日本人だって、すらすら読めるもんでもないぞ。士郎、見てみな」

 

 促されるまま、黒い表紙の冊子を開く。最初は横書きのすっきりした戸籍が出てきた。衛宮切嗣の死亡年月日が載っている戸籍。その下に養子の士郎。士郎の名前の下には、確かに実父母の名前が載っていた。

 

「なんだ、調べようと思ったら、こんなに簡単にわかったんだ……。

 俺の本当の両親も……」

 

 一枚めくると、戸籍は縦書きになり、更に詳しい情報が載っていた。士郎が衛宮となる前の戸籍の本籍地。筆頭者である実父の名前。こちらの戸籍を調べれば、士郎の実父母と血縁を辿っていける。

 

 更にもう一枚。筆頭者は切嗣から矩賢に変わる。

 

「この人が、じいさんの父さんなんだ。

 難しい字の名前だよな。なんて読むんだろ?

 イリヤからだと、この人もお祖父さんになるんだな」

 

「うん……」

 

 切嗣の母にあたる妻はバツで消されているが、父の方は消えていない。

 

「じいさんの父さんは生きてるのか!?」

 

 これに雷画は顎をさすり、塩辛声で唸るように言った。

 

「いいや、そいつがわからんかったのよ。

 その戸籍は、あいつが士郎を養子にする前のもんだ。

 後のも取ってはみた。五年前の話だがな。次を見てみな」

 

「……消えてない。じゃあ!」

 

 表情を明るくする士郎と対照的に、雷画の表情は渋いままだった。

 

「あのな、戸籍ってやつには住所がわかるなんたらいう書類があるそうだ。

 そいつもくっつけてあるんだがよ」

 

 促されるままに更にページをめくってみる。

 

「○○国アリマゴ島? 外国にいるのか……」

 

「なんでもな、外国は日本みたいに役所に住所の登録をしないっちゅうのさ。

 調べてもらったが、そこは絶海の孤島ってやつでよ。

 電話もねえっていうんだぜ。

 死んでても、死亡届が出されていないかも知れんのだと」

 

 衛宮切嗣の娘と養子は、異口同音に驚きの声を上げた。

 

「ええっ!?」

 

「もっとも、あいつは一人っ子だし、士郎がいたから遺産相続には問題ねぇ。

 親子が絶縁なんざ、俺ら極道にも珍しいこっちゃないし、

 奴さんが連絡してないのは、相応の理由があるんだろうと思ったんでな。

 それ以上は手をつけてねえのさ。

 士郎の親戚のほうも、下手な相手だと、財産を食い物にされちまうからな。

 おまえがしっかりしてから、探すようにしたほうがいいと思ったのよ」

 

 決まり悪げにそう言って、雷画はイリヤに頭を下げた。

 

「だが、嬢ちゃんには済まねぇことをしちまったな」

 

「いいえ、教えてくださって、ありがとうございます。

 これでわかったわ。シロウが悪くないって。

 お爺さま、キリツグのこと許してなかったから……」

 

「そうかい。だが、びっくりしただろう。

 あいつもまだ若かったのに、こんなに可愛い娘もいて、無念だったろうに……。

 でも、知らないまんまなら、墓参りもしてもらえなかったんだ。

 嬢ちゃんには気の毒だったが……」

 

 雷画は太い溜息を吐くと、士郎に向き直った。

 

「だが、士郎よ、遺言探しはするだけはしてみな。どっかにあるかもしれん。

 弁護士に聞いたら、遺言による認知ってのがあるんだと。

 もし見つかったら、裁判やるより楽だとさ」

 

 琥珀とルビー、エメラルドも大きく瞠られた。

 

「えっ、じゃあなんで、じいさんは預けとかなかったのさ!?」

 

「士郎よ、おまえとその子、どっちが金持ちだ?」

 

「へっ!?」

 

 二人は顔を見合わせた。バイトをしながら高校に通っている士郎と、メイドを連れて、ドイツから日本まで旅行ができるイリヤ。比較にもならない。

 

「そういうこった。

 ドイツで何不自由なくお嬢様として暮らしているなら、

 無理に日本に連れてくるってのも考えちまうもんさ。

 ましてや、なさぬ仲の男の子まで遺してるんだからよぉ」

 

「ははは……」

 

 士郎は力ない笑いを零した。それがこの現状をもたらしているのだが。

 

「しかし、おめぇ、誰に教わった? 

 隠し子が来たってぇ時に、落ち着いて調べにくるなんざ、

 言っちゃ悪いが、おまえの知恵じゃあるめぇ」

 

 助け舟を出したのはセラだった。 

 

「実は、遠坂様のお力をお借りいたしました」

 

「ははぁ、やっぱりなあ。士郎、あっちが本命か?

 お袋さんもそりゃ別嬪だったが、あの子のが華があるからなぁ。

 すらっと柳腰でよぅ、小股の切れあがった女になるぜ。

 そいじゃぁよ、毎朝来てたボインの嬢ちゃんはどうすんだ?

 ああいう大和撫子の安産型のほうが、おまえにゃ合ってると思うんだがなぁ……」

 

 真紅と聖緑がドライアイスの剣と化し、士郎を串刺しにする。

 

 だからやめて、俺の信用も駄々下がりだ! 

 

「だから、だから、そういうんじゃないって!

 遠坂の親類も、ちょうど不幸があって、それでだよ!」

 

「やっぱり間桐の嬢ちゃんが本命か? 

 ――まさか、ひょっとして、……ウチのか?」

 

「だぁーっ! もう、違うって言ってるだろ!

 イリヤのこと、しっかりさせるのが一番大事なんだから」

 

 士郎は真っ赤になって力説した。その時、帰宅を告げる大河の声が。

 

「とりあえず、みんなで墓参りに行って来る!」

 

 宣言すると、士郎はほうほうのていで雷画の前から辞去した。背後に、美女と美少女たちを引き連れて。そこに孫娘も加わるわけだ。雷画は四角い顎をさすった。

 

「やっぱよう、氏より育ちが強いよなあ……」


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