「……どーすっかなぁ」
パトリツィアはそう呟きながら上海の空を飛び、東方明珠塔に戻っていった。
地上に降りると、そこには四人の男女が居た。
男は蓮司とタウルス。女は黄龍とマーラだ。
「よっ」
パトリツィアはそう言いながら地上に降りた。
「……千穂はんの体に憑いとる悪魔か。何の用や?」
蓮司が構えながら問いかけた。
「いや、佐野千穂死んだから、その報告に来たのよ」
千穂が死んだ、という言葉に蓮司は目を見開き驚愕した。
「……そうか。お前はどうするつもりや?」
「まぁ、魔界に帰るかな。やる事もうないし」
パトリツィアは千穂の体で地球を見て回る気にはなれなかった。
悪魔が一時とはいえ魔界から大量に湧いて出たこの世界で悪魔が生きていくには息苦しいだろう。だから魔界に帰るのだ。
そこに千夏が現れた。
「悪魔、魔界に帰るというのならその体を帰しなさい、葬儀をするわ」
「……やだね。これは契約の対価だ。お前には渡さない」
あっかんべーとパトリツィアは笑みをした。
「それじゃあな、俺はもう帰るね、ばいびー
第十環魔法により、パトリツィアは魔界に帰還した。
■
それからの話をしよう。
一時開いた魔界のゲートは世間を一時ざわつかせたが、すぐ鎮火した。
そして、世界から悪魔とアンデッドが消えた。
墓地に行っても負のエネルギーは無く、アンデッドが湧いて出てくることも無くなった。
サタニストはその本懐を果たしたのだ。世界の
故に──退魔師たちは力を失うだろう。
もはや強者同士で子を作ってもそれは現実的な……鋼鉄を素手で斬り裂くような馬鹿みたいな身体能力の持ち主は生まれないだろう。
一般家庭から化け物みたいな身体能力の子が生まれる事ももはやない。
そう、退魔師たちもこの歪んだ世界の被害者であったのだ。現実に化け物みたいな身体能力した人間が生まれるわけがないのである。
上海は壊滅したが、徐々に復興して行っている。十年も経てば元通りになるだろう。
──魔界。馬主亭。
魔界に多数ある飲食店だ。悪魔は飲食不要だが出来ない訳ではない。
その店でパトリツィアは飲んだくれていた。
「おい、金はあるんだろうな?」
そう店主の馬面──文字通りの意味──の悪魔がそれっぽい演出の為カップを拭きながら問いかけた。
「金ならあるから問題なーい」
千穂の体でパトリツィアは飲んだくれていた。
悪魔は毒に対し高い耐性を持つが無効化能力は無いので酒を飲むと酔う。
パトリツィアの目的は破綻した。
本来なら千穂はまだまだ強くなれたはずだった。
だというのに、魔界の王のせいで途中で死に、中途半端な強さでパトリツィアの物になってしまった。
それが悔しいのだ。己の目的を達成できなかったことが。
「なんだかなぁ……」
いきなり現れた悪魔によってすべてを台無しにされたことが悔しい。だがそれに反抗する程餓鬼ではない。
はぁ、とパトリツィアはため息を吐くのだった。