ぼっち女子高生と千年悪魔   作:Revak

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第5話

 

 その後、少し話をした後、千穂は自宅に帰った。

 

 昼飯は外で適当に済ませ、千穂は自室に入るなりベッドにダイブした。

 

『大分きてんなぁ。だいじょーぶかー?』

 

 パトリツィアが気楽に声をかけた。

 パトリツィアは憑依している関係上憑依先の心の動きにも敏感だ。

 なので今日一日で退魔師になるだの殺されるかもという話で心に大分キているのを感じ取った。

 

「だいじょうぶじゃないよ……うへぇ」

 

 千穂はそう潰れたような声を出した。

 

『まぁ、最悪俺が精神操作でどうにかしてやるから安心しろ』

「家族にそんなことできないよ……」

『そりゃ残念。良いご家庭なんですなぁ~』

 

 パトリツィアの前世の父はカスだった。

 母を殴りギャンブルに金を溶かした上借金こさえて蒸発したカスだ。

 だから普通の家庭出身の奴を見ると意味も無く殺してやりたくなる。

 だが今の千穂は己にとって便利な存在になる途中だ。だから殺しはしない。

 

「うん……だから、正直に話せばわかってくれるはず……だけど……」

 

 うがぁ~千穂は枕に顔を埋めた。

 やはり怖いのだ。あなたの娘は体に悪魔を宿してますよ、なんて言って冷静で居られるはずが無いのだ。

 

 そうして悶々とどうやって説明しようかと悩んでいるとついに夕飯の時となり、母が千穂を呼んだ。

「はーい!」と返し千穂は部屋を出て一階のリビングに向かう。

 

 リビングには父の佐野健一と母の佐野澪、中学一年生の弟の佐野透が居た。

 

 千穂も椅子に座り、母の配膳を待つ。今日の晩御飯はハンバーグだった。

 

 全員揃っていただきます、と食べ始める。

 

「千穂、今日友達の家に遊びに行ったらしいじゃないか。どうだった?」

 

 そう父の健一が話始めた。

 

「うん。友達、かはまだわからないけど……天城さんのお父さんとも話したよ」

 

 千穂と千夏の関係は友人というにはまだ距離があるし、知人と言うには距離が違い。

 千穂は知らぬ事だが千夏側は既に友人認定しているが、千穂としてはまだ知人だと思っている。

 

「それで、そのことでこの後話したい事があるんだ」

 

 そう強い瞳で千穂は言った。

 

「……わかった。大事な話があるんだな」

「うん。私の今後に関する、大事な話」

 

 千穂がそういうとリビングが変な空気になる。

 パトリツィアは現代の家庭おもしれーとけらけら笑う。

 

 そうして夕飯を食べ終えると家族そろって椅子に座る。

 食べ終えた皿はシンクに置いてある。

 

「それで、話ってなんだ?」

 

 そう健一が問いかけた。

 

「……私、退魔師になるの」

 

 その言葉に千穂以外目を点にした。

 

「退魔、師? それは……ゲームとかのか?」

「ううん。現実の、悪魔やアンデッドと戦う職業に就くの」

 

 千穂の言葉に家族は首をかしげるしかない。

 

「ねーちゃんアニメの見過ぎだよ」

 

 そう弟の透が言う。

 

「まぁ、普通に言っても信じられないわな」

 

 そう千穂の頬に口を生成しパトリツィアが喋った。

 

「んな?!」

「なにそれ?!」

 

 健一と澪が驚愕し、椅子をがたっと蹴って立ち上がる。

 

 そのままパトリツィアは千穂の体を乗っ取った。

 目が赤くなり、悪魔の瘴気が放たれる。

 

「はじめまして、千穂ちゃんのご両親様。俺は悪魔様だ。こいつの体を借り受けてる」

 

 よろしくーとパトリツィアは手をひらひらする。

 

「娘に何をした!!」

 

 そう健一が怒鳴った。

 

「そう怒鳴るなよ。俺ちゃん召喚されたから願いを叶えてやってるだけだぜ?」

「召喚、された?」

 

 健一がオウム返しをした。

 

「おう。あんたの娘さんが俺を召喚してまで願いを叶えたかったらしくてな、んでもって契約を結んだってワケ。おわかり~?」

「……千穂に害をなすつもりか?」

「んなもんしないわ。その逆、他の雑魚共から千穂ちゃん守ってやるよ。こいつが健やかに成長するのは俺にもメリットあるからな」

「……そのメリットの内容はなんだ」

「おしえない♡」

 

 パトリツィアはそうハートマークを付けていった。

 

「……言え」

 

 健一は強い目でパトリツィアを睨んだ。

 

「言わないっつーの……つうか俺が悪魔だってすぐ信じていいのか? 二重人格かもしれねーぞ」

「……娘はそんな口調じゃないし、何より目の色が一瞬で変わった。現代の技術でそれは不可能だろう」

「わ、私としてはまだ千穂の冗談か何かだと思うんだけど……」

 

 澪がそういう。

 

「じゃあ悪魔らしく魔法でも使いますかね<上位道具創造>(スペリア・クリエイトアイテム)」

 

 そう唱えた瞬間パトリツィアの右手に刀身も鍔も真っ黒な刀が生成された。

 

「ついでに空も飛んでやろう」

 

 そういうとパトリツィアはふわりと浮かんだ。

 悪魔は種族的に飛行が可能なので魔法を唱えずとも空を飛べる。

 

 空に浮かんだままパトリツィアは胡坐をする。

 

「ほれ、これで信じられるだろ?」

 

 そうパトリツィアは右手の刀をくるくる回す。

 

「……本当、なのね」

「おうともよ」

 

 そういうとパトリツィアは椅子に座り直し、刀を消した。

 

「んじゃ体返すから、あとの説明はよろしこ」

 

 そういうとパトリツィアは千穂に体を帰す。

 瘴気が無くなり、目の色が黒に戻る。

 

「うん。私が、悪魔を召喚したんだ」

「そう、なのか……」

 

 長い沈黙が流れる。

 口火を切ったのは弟の透だ。

 

「悪魔って危険じゃないの?」

 

 それに対し千穂は答える。

 

「他の悪魔は危険だけど、私に着いてる悪魔さんは私の身を守ってくれるの」

「他のは危険なんだ……じゃあ退魔師になって悪い悪魔と戦うって事?」

「そうなる、かな」

 

 その言葉に透は目をキラキラさせた。

 

「すげー! じゃあ俺も退魔師になれる?!」

「退魔師は限られた人しかなれないから、透は成れないかなぁ」

 

 千穂がそういうと透は「ちぇ、つまんねーの」と口を尖らせた。

 

「……悪魔と戦うなんて、危険じゃないか。そんな仕事、させる訳にはいかないだろう」

「そうだけど、退魔師にならないともっと危険っぽくて……」

 

 そこにパトリツィアが口を挟む。

 

「まぁ、何かあっても俺が守ってやるから気にすんな」

 

「悪魔の言う事を信じろと……?」

「悪魔は種族的に嘘を嫌う、だから信じろ」

 

 それだけ言うとパトリツィアは口を消した。

 

「……その仕事の労働環境とか、詳しい話は聞いているのか?」

「そういう詳しい話は明日天城さん……退魔師の偉い人がしてくれるって」

「……重役からの直々の説明か。わかった。詳しい話は明日聞こうか。その天城さんの家にこちらが行くのか?」

「いや、天城さんが家に来てくれるらしいよ」

「わかった……全て、説明してもらうからな」

「……うん」

 

 

 

 

 ■

 

 

 翌日。

 千穂の家に天城千夏と天城啓道が来た。

 

「どうぞ、おあがりください」

 

 そう母の澪が言うも表情は硬い。

 娘が命を奪い奪われの職業に就く、という事でいい顔をする親は殆ど居ないだろう。それがわかっているから啓道と千夏は何も言わない。

 

「失礼する」

 

 そう言って家に上がり、リビングの椅子に座る。

 

「それで、説明させていただきましょうか。何故娘が退魔師なんていう怪しくて命の危険がある仕事に就かなければならないのかを」

 

 健一としては職業に貴賤はないと思っている。

 だがそれはそれとして娘の命が危険に晒されるような職業についてほしくないと思うのも本心だ。

 

「まずは、自己紹介からさせていただきましょう。儂は天城家の当主天城啓道と申します。こちらは娘の千夏です」

「よろしくお願いします」

「……よろしくお願いします」

 

 健一はそう返した。

 

「まず──」

 

 

 そこからは昨日千穂にしたのと同じ説明がされた。

 退魔師にならないと千穂の命が危ない、という話だ。

 話が終わると健一はふぅ、と息を吐いた。

 

「……お話はわかりました。ですが──すべてを無視して隠れる……という訳にはいかないのですか? はたから見れば、とても悪魔が宿っているとは思えません。実際、悪魔が表に出てこなかった数日間私たちは悪魔に気づきませんでした……お恥ずかしいことに」

 

 それは最後のあがきとも言えた。

 それに対し残酷な答えを啓道は返す。

 

「無理でしょうな。戦闘特化の儂らはともかく探知系の退魔師に見られれば一発で悪魔が憑いているとわかる。そうなると人里離れた場所に引っ越しすることになる。今の生活のすべてを捨てる事になりますし、そこまでしても百パーセント安全とは言えません。確率が下がるだけ……それならばまず間違いなく千穂さんの身を守る為に退魔師になった方が良いと思います」

 

 専門家からそう言われると健一は「そう、ですか」としか返せなかった。

 すべてを捨てて隠れたとしても、退魔師に見つかれば即殺される。

 ならば虎穴に入らずんば虎子を得ず。退魔師にとって有能な存在であると知らしめ、味方にさせた方が良いと思わせた方が良い。

 

「わかりました……千穂」

 

 健一は千穂に向かって話しかけた。

 

「お前はそれでいいのか? 退魔師という、聞く限り命の危険がある仕事をすることになるが……」

 

 それに対し千穂は笑顔で答える。

 

「大丈夫。私に憑いてる悪魔さんも、私を守るって言ってくれてるし」

「そう、か……」

 

 健一は長いため息を吐いた。

 

 そして、啓道に向かって頭を下げた。

 

「娘を、お願いします」

「……完璧に守るという大言壮語は言えません。ですができうる限りの事はしましょう」

 

 そう言って啓道も小さく頭を下げた。

 

 パトリツィアは現代の家庭めんどくせーなとあくびをかみ殺していた。

 

「それでは、これからは修行の話についてです」

 

 そう啓道が口火を切った。

 

「まずは来週の金曜日の十三日。学校が終わり次第電車で長野県に向かって貰います。長野のある山奥で退魔師としての修行をします」

「修行……具体的にどのような事か聞いても?」

「水行をしたのち、退魔師との組み手を行います。霊威あるものとの交わりで体に霊力を纏わせるのです」

 

 霊力とは言うがこの世界に霊力なんて力はない。

 退魔師の認識では悪魔やアンデッドが使うのが魔力、人が持つ力を霊力と呼んでいるが実際は同じ魔力でしかない。

 上層部はそれに気づいているが一般に知られると困るので秘匿している。

 

「そして霊力に目覚めた後は実戦と、知識の蓄積です。どのような悪魔が居るのか、アンデッドの種類などについて勉学してもらいます」

「……その過程で命を落とす可能性は?」

 

 健一が鋭い目で問いかけた。

 

「ゼロ、とは言えません。ですが暫くは娘の千夏に護衛を兼ねて傍に居させます。千穂さんの身は守れるでしょう」

「……わかりました。千穂もそれでいいか?」

「私はそれでいいよ……不謹慎かもしれないけど、ちょっとワクワクしてるし」

 

 千穂とて年頃の少女だ。だから己が超常を扱えるようになると聞いてワクワクしない訳がない。

 

「では、この予定で行きましょう」

 

 そうして天城家の訪問は終わった。

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