ぼっち女子高生と千年悪魔   作:Revak

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第6話

 

 翌日。

 学校があるので千穂は普通に登校した。

 

 退魔師になるだの悪魔に憑りつかれただのあったが日常は続くのである。

 

 そうして通学路に友達は居ないので一人で学校に通学し、校内に入り下駄箱で靴を変えてから教室に向かう。

 

 教室に入ると既に結構な人数来ており、中には千夏も居た。

 

 千夏が千穂に気づくと笑顔を向けながら近づいてくる。

 千穂はこれが陽キャのオーラ……! と謎の戦慄をしていた。

 

「千穂さん、今日の放課後暇かしら? よかったらちょっと二人で勉強会しない? ファミレスにでも行って」

 

 そう千夏が提案した。

 

「わ、私なんかが行っていいんですか……?」

 

 千穂は若干の涙目になりながら問いかけた。

 それに対し千夏はクスリと笑った。

 

「いいわよ。私達──友達でしょ?」

 

 そう千夏は微笑んだ。

 

「は、はい。行きましょう!」

 

 こうして放課後の勉強会が決まった。

 

 

 

 

 そして昼休憩などに恵美と話すなどをして、放課後。

 

 二人は徒歩で近所のファミレスに向かっていた。

 

「それで、今度の定期テストの勉強ですか?」

「それではなくて、退魔師の御勉強よ。アンデッドとか悪魔に対して勉強した方が良いと思ってね」

「あ、そっちですか……確かに戦うなら相手について知らないといけないですもんね」

 

 千穂はゲームなどはあまりしない。暇つぶしのパズルゲームをするぐらいだ。

 だがそのパズルゲームでも属性相性やらキャラクターによる有利不利などはあるので勉強が居るというのは理解できる。

 

 そうして歩いているとファミレスに着く。

 

 四人席に二人は座る。

 

「それじゃあ、ポテトとドリンクバーでも頼みましょうか」

 

 そうして適当に頼み、ジュースを取ってくる。

 

「それじゃあ、まずはどこから話しましょうか」

 

 うーん、と千夏がうねった。

 

「じゃ、じゃあまずはアンデッドと悪魔の違いについて知りたい、です」

 

 そう千穂が意見を出した。

 それに対し千夏は微笑みで返す。

 

「わかったわ。それじゃあ、まずアンデッドだけど……アンデッドは生者が死ぬときに生じる負のエネルギーで生まれる存在よ。その存在の関係上墓地や戦場後に生まれるの。心霊スポットにもいるけど、それはその場所が元が墓地だったり戦場後だったから生まれるの」

「死霊、ていう存在ですか……」

「えぇ。有名なのだとゾンビとかスケルトンね。それらは弱いから正直一般人でも対処は出来るけど、グールやガストレベルは一般人じゃ対処できないわ。それにレイスなどの亡霊系は物理攻撃無効化してくるから、銃も意味ないわ」

「物理無効って無敵じゃないですか」

「えぇ。だから退魔師が居るの。退魔師の<退魔府>などの霊術なら祓えるの」

「霊術、ですか?」

「退魔師になると術が幾つか使えるようになるの。例えば負のエネルギーの浄化だったり、アンデッドや悪魔に対する特攻の力だったり……」

『言い方変えた特殊能力(スキル)だな』

 

 パトリツィアがそう補足した。

 

「と、話がずれたわね。強力なアンデッドというのはここ数十年は生まれてないわ。アンデッドは寄り集まるとより強力なアンデッドを生み出すのだけど、そうなる前に退魔師たちが墓地の浄化をしているか羅安心して。ただ……悪魔の場合は違うけど」

「アンデッドが居る理由はわかりましたけど、悪魔はなんでこの世界に来るんですか?」

 

 その疑問に対し千夏は苦笑した。

 

「それがわかってないのよね。悪魔の殆どは知性が無いか、あっても会話不能なカスばかりで……それに悪魔は知恵も回るから脅威よ。それにアンデッドと違って退魔師の力じゃないと悪魔は傷を負わないの」

「それは、強さに関係なく?」

「えぇ。どんなに弱い悪魔でも退魔師の力が籠ってないと無効化してくるの。ほんと厄介な敵なのよ……ただ、最近は悪魔の出現数も増えてきてるのだけど」

「……私に憑いてる悪魔さんなら何か知ってるかな」

『……悪魔は現世側で何かされないと基本召喚されないぞ。だがこの世界でもその法則が通じるのかはわからん。まぁ、知性ある悪魔に遭遇したら俺と変われ。精神操作で聞き出すから』

「……あなたについてる悪魔はなんて?」

「えっと、悪魔は基本召喚されるってことしか……詳しく知るなら現世に居る悪魔を操って聞き出すしかない、と」

「……悪魔と会話が可能になるというのなら強力ね。もしも捕獲出来たら話を通すわ」

「よろしくお願いします」

「それでじゃあ今度はアンデッドの種類について話しましょう。アンデッドも下位、中位、上位とあるのだけど……まずは最弱のスケルトンから──」

 

 この後めちゃくちゃ勉強した。

 

 

 ■

 

 九月十三日。十五時半過ぎ。

 千穂は自宅で三日間の修行準備をしていた。

 修行の準備と言っても専門的な道具は向こう側が揃えてくれるので宿泊に必要な物を揃えるだけである。

 

 そして準備を終え、キャリーケースに詰めた千穂は玄関に向かう。

 

「いってらっしゃい、気を付けてね」

 

 そう専業主婦の為昼間に居る千穂の母澪が言った。

 

「うん。行ってきます、母さん」

 

 そう言って千穂は玄関のドアを開けた。

 

 そこには千夏とタクシーが居た。

 

「さ、行きましょう」

「はい」

 

 そう言って二人はタクシーに乗り込み、駅に向かう。

 

 これから修行をする、という事で千穂は緊張し車内では無言で過ごした。

 

 そうして駅に着き、タクシーを降りて予約しておいた新幹線に向かう。

 因みに今回の旅費やら宿泊費は全部天城家持ちなので千穂は一銭も出してない。一応観光費用ぐらいは持ち込んでいるが。

 

 そうして新幹線に乗り、長野県に向かう。

 東京から長野まで約二時間。指定席に座って向かう。

 

「これから修行だけど、そう緊張しないでね。私がずっとついてるし、命の危険なんてないから。修行段階から命の危機なんてあるのは少年漫画の主人公だけだから」

「は、はい……けど、ちょっとワクワクと緊張が……」

 

 そのことに千夏は微笑んだ。

 

「ふふ、私もそうだったからわかるわ……私もアニメの魔法少女に憧れてたの。実際に悪い奴と戦う力があるって知った時は興奮して眠れなかったわ」

「……千夏さんはいくつから修行を?」

「六歳からよ。だけど自分で言い始めた事だから、辛くはなかったわ」

「ひえぇ……そんな幼少期から修行を……!」

「まぁ、そのおかげで霊威も六十ぐらいになったから、いいことなんだけどね」

 

 そう千夏は苦笑した。

 

 そのあとは学生らしい会話だ。テストのあれが難しかっただの、友達とどこそこに遊びに行っただの、流行の漫画の話などだ。

 

 

 

 千夏は天城家の長女であり、天城家を継ぐ者である。

 本来、肉体的スペックを考えれば男の方が後継者に相応しい。男女の性差による能力差は大きいからだ。

 だが、退魔師の世界では違う。霊威という強さの指標によって男女の差は薄くなる。

 ゼロ、とは言えない。素の筋力の差は埋めがたい物があるからだ。だがそれを限りなくゼロには出来る。

 

 千夏は優秀な退魔師だ。まだ二十にもなってない若さで霊威六十は数少ないと言っていいだろう。

 だからまだ伸びると思われており、それは実際正しい。順調に行けばかの聖女マーラに匹敵する力を持てるだろう。

 

 故にこそ、子宝に恵まれなかった天城家は千夏を後継に選んだ。

 後継となると、単純に戦闘力が高いだけでは困る。

 だから千夏が頭角を現した十歳ごろから英才教育を施されてきた。

 退魔師の学校ではなく、一般の高校に通っているのも後継者だからだ。裏の世界でもいいところの高校や大学の出身というのはステータスになるのである。

 

 だから千夏は退魔師の学校には通わず高校に居るのだ。

 

 それを千夏はよかったと思っている。こうして友人と巡り会えたのだから、と。

 

 

 

 

 ■

 

 

「ついたぁ~」

 

 約二時間新幹線に揺られる事でようやく千穂と千夏は長野県に着いた。

 そこから更に用意しておいた車で揺られる事で目的地である諏訪市のある天城家の別荘に着いた。

 

「……結構大きい家ですね」

 

 これが本物の金持ちの家……と千穂は戦慄していた。

 

 ついた先は天城家の本家の様な日本家屋だ。

 

 千夏が先頭に行き、千穂も着いて行く。

 

 玄関を開け、中に入るとそこには女中──和服を着た使用人が居た。

 

「お待ちしておりました。千夏様。千穂様」

 

 そう女中が頭を下げた。

 

「よ、よろしくお願いします」

 

 千穂も頭を下げた。

 

「では今日はお部屋にご案内させていただきます」

 

 そう言って玄関で靴を脱いで来客用のスリッパに履き替え、着いて行く。

 

 千穂と千夏は別の部屋に案内された。

 客のランクとしては千夏の方が上だ。何せ本家の人間で跡取りだからだ。

 

 千穂は案内された和室で軽く荷解きを済ます。

 

 そしてふぅ、と息を吐いたタイミングで「失礼します」と女中が来た。先ほどとは別の人だ。

 

「夕飯の準備が出来ました。茶の間に案内いたします」

「わ、わかりました」

 

 そうして千穂は女中に着いて行く。

 

 茶の間には何人かいた。

 千夏にこの家──天城家の分家である天羽家の当主天羽雄介とその妻天羽愛、その長男である達也が居た。

 

 天羽雄介は眼鏡をかけた四十代程の男だ。優し気な目をした男であり、優柔不断そうにも見える。

 達也は二十歳ほどの男で筋肉が服の上からでもはっきりとわかる程ついている。

 

 全員もれなく──千穂と千夏以外和服を着ている。

 

「ようこそ、天城家へ。千夏さん。千穂さん」

 

 そう雄介は微笑んだ。

 

「よ、よろしくお願いします」

 

 千穂は若干きょどりながらも頭を下げ、千夏は慣れているように「よろしくお願いします」と小さく頭を下げた。

 

 そして席に着く。上座は勿論千夏だ。

 立場的に言えば千夏は本家の後継者なので分家である天羽家と同等かそれ以上の立場だ。だから上座に座る。

 

 膳の上には山の幸の天ぷらが揃っている。どれも新鮮な物で美味そうである。

 千穂は高級料理だ……と圧倒されていた。

 千穂の中にいるパトリツィアも少し食いてぇなぁなんて思っていた。

 パトリツィアは現代料理をいまだ口にしていない。宿主の食の楽しみを奪ってはならぬと自重しているのだ。

 

 いただきます、と食事が始まった。

 

 ぱくり、と天つゆにかけて千穂がタラの芽の天ぷらを食べる。

 

「美味しい……!」

「はは、口に合ったようで何よりだ」

 

 そう雄介は笑うも、その子である達也は苦い顔をしたままだ。

 千穂は何かしたっけ、と考え千夏は警戒をしたままだった。

 

 

 

 

 

 

 ■

 

 夕食を食べ終え、一風呂入った後千穂は与えられた部屋に戻って、布団に横になった。

 和室なのでベッドは無い。

 

 これからどうなるんだろうか、という期待と不安と、千夏さんに迷惑かけてるなぁ、という思いが入り混じる。

 

 一度千夏に迷惑かけてごめん、と言っても千夏は気にしないでと笑うだけだった。

 

 なんだかなぁ、と思いつつ寝るまで漫画でも読もうかとスマホに手をかける。

 

 そこに声がかかった。

 

「失礼します。達也様がお話したいことがあると。入室してもいいでしょうか?」

 

 女中の声だ。千穂は少し悩んだ後「いいですよ」と返事をした。

 

 無造作に開けられ、先ほど一緒に食事をした達也が出て来た。

 

「……ただの女にしか見えんな。本当に悪魔を召喚したのか?」

 

 そう達也はじろりと睨みながら言った。

 千穂はそれを見て少し嫌な人かな、と内心びくつきながら返事をした。

 

「え、えっと、悪魔を召喚したのは本の力で、私の力じゃないというか……」

「……ふん。お前、状況わかってるのか? 退魔師にならないと死ぬという状況で、よくもそこまで悠長に構えられるな」

 

 そう達也は鼻を鳴らした。

 天羽家にも千穂の存在と状況は知らされている。でなければ安心して送ることなど出来ないからだ。

 

『んだこいつ。めんどくせー人間だな』

 

 ここまで黙っていたパトリツィアが口を開いた。

 千穂はそれを無視して話す。

 

「退魔師になるのは望まぬ事だとしても、最低限……いえ、それ以上の努力はして見せます」

「ふん……いや、退魔師にならずとも命が助かる方法があるぞ」

 

 そうニッとどこか獣欲を思わせる笑みを見せながら達也は千穂に近づき、顎クイをした。

 

「俺の女に成れ。そうなれば、命は簡単に助かる」

 

 それに対する千穂の返答はただ一つ。

 

「い、嫌です!」

『<衝撃破>(ショック・ウェーブ)』

 

 パトリツィアが魔法を唱えた。

 不可視の衝撃波が生じ、達也を吹っ飛ばした。

 壁にぶつかってめり込み、達也は気を失った。

 

 当然、轟音がなって人が来る。

 

 最初に来たのは千夏だ。

 

「なにかあった?!」

 

 千夏はフル武装で来た。

 天城家に伝わる霊装に一瞬で着替え、手にするは霊刀だ。

 

「え、えっと、その私じゃなくて悪魔さんが!」

 

 パトリツィアが口を生成し話す。

 

「なんか気色悪いことしてきたからぶっ飛ばした。正当防衛、オレ ワルク ナイ」

「何故片言?」

「その場のノリ」

 

 あっそう、と千夏は見下げる。

 

「くっ……俺を吹き飛ばすとは……!」

 

 そう吹っ飛ばされた達也が立ち上がってくる。

 

「ほー、俺の魔法を受けて無事か。骨も折れてなさそうで何よりで」

 

 達也はこれでも天羽家の長男であり、つまりは後継。戦闘訓練も相応に受けている。

 普段は大学生として暮らしつつ時間があるときは退魔師として活動しているのだ。弱いわけがない。

 

「……なるほど、悪魔というのは本当らしい。中位以上はありそうだな……」

 

 そう達也はやせ我慢しながら言った。

 骨は折れてないが少し罅は入っただろう。

 

「いいだろう、決闘を申し込む!」

 

 そう達也は宣言した。

 

 そのことに一同「は?」と目を点にした。パトリツィアもだ。

 

 

 

 天羽達也は代々続く退魔師の家系であり、その中でもエリートだと自負している。

 一般的な退魔師が霊威三十ほどの中で達也の霊威は七十と非常に高い。倍以上あるのだ。

 だからこそ己が選ばれた人間だと思いそれを疑ったことはない。

 

 故に一般家庭の者を見下している。

 お前らは何も知らないし力も無いのだから大人しく俺たち(退魔師)に守られていればいいんだ、と。

 

 だから一般人が退魔師の世界に踏み込んでくることを嫌う。

 お前らは弱いんだから黙ってそこに居ろと言いたい。

 

 だが、千穂は仮にも本家である天城家の客だ。声を大にして言う事は出来ない。

 

 だから決闘だ。決闘をし堂々と負けさせ、退魔師の世界から追い出そうと考えている。

 達也の頭に"そもそも退魔師の世界に来ないと死ぬ"という千穂の事情は無かった。

 

「英国的に手袋でも投げた方がいいか?」

 

 そう達也は鼻を鳴らす。

 

「いいぜ。受けてやるよ。めっためたにしてやる」

 

 そうパトリツィアが体を千穂の乗っ取り言った。

 

 達也はパトリツィアから感じられる威圧を感じ"あれ? 選択ミスった? "と冷や汗を流し始めたがもう遅い。魔界でも最上位の悪魔に喧嘩を売ってしまったのだ。

 

「それじゃあ、今からやるか?」

 

 パトリツィアはけらけら笑いながら言う。

 

 それに対し反対するのは千穂だ。

 

『ちょっと勝手に決めないで! 決闘なんて危ないよ!』

「これから退魔師として悪魔やらアンデッドと戦うのに何を怖がってんねん。それに俺がやるからモーマンタイ」

 

 達也は怯えつつ、口を開いた。

 

「明日、朝食後に決闘だ」

「おーけー、ンじゃあ俺戻るわ」

 

 そういうとパトリツィアは千穂に捜査権を移した。

 

「も、戻った……」

 

 千穂は達也を見てあわわわわと慌てた。

 達也はそれを見てこれがほんとにあの悪魔を宿した人間か……? と疑問を抱いたが口にはしなかった。

 

「それじゃあ、明日やるぞ」

 

 それだけ言うと達也は去っていった。

 

「……この壁どうするのかしら」

 

 千夏がポツリと呟いた。

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