ぼっち女子高生と千年悪魔   作:Revak

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第7話

 

「何を考えてるんだ、お前は」

 

 天羽家の屋敷の雄介の部屋で、雄介は達也相手に頭を抱えていた。

 

「いや、相手は所詮平民の女でしょ、いいだろ、父上」

 

 それに対し達也はぶー垂れている。

 

「……相手は悪魔を宿した少女だぞ。ただの人間じゃない」

「たかが悪魔程度……とは言えないか」

 

 達也はパトリツィアの雰囲気から下位の知性ある悪魔とは違った存在ではあると感じ取っていた。下手したら自身を超えた存在でもあると。

 

「そうだ。それにお前は、本家の事を軽視しすぎている……我が家が存続できているのも、天城家のおかげなのだと理解しなさい」

「……けっ」

「それに、我々退魔師は人を救う存在だ。人を軽視してはいけない。誇りをもって戦う職業なんだ」

「その結果が大衆からの蔑視かよ」

 

 ちっと達也は舌打ちをした。

 

 この世界では退魔師やアンデッド、悪魔の存在は表ざたになっていない。

 最初から存在していた世界ならば兎も角、途中から存在し始めた異形の存在。それらを前にただの国軍では相手になりません、など国としての威信に関わる。

 それに悪魔やアンデッドが実在すると認めてしまえばそれらによっておこる犯罪をどう裁くのか、という問題がある。

 

 悪魔の精神操作の魔法で操られた者とただの犯罪者の証言を見破る方法が無いのだ。

 

 極端な話、悪魔の存在を認めればその時点で「俺は悪魔に操られていたんだ」と言えば無罪になる世界が来てしまう。だから悪魔の存在を公表できない。

 パトリツィアが居た世界ならば高位の魔法でそれらを見破ることが出来るが、アンデッドと悪魔との戦闘に特化しているこの世界にはそれは無いのである。

 

 だから一般人からしてみれば悪魔なんて存在しない者を相手に戦う狂人が、退魔師だ。

 一般人に知られるわけにはいかないから隠し通すしかない。その結果が無理解につながる。

 

 達也はそれが嫌なのだ。仕事に誇りもくそも無いとは思っているが、一般人からの理解ぐらいは欲しい。

 だが退魔師の規定でそれは求めてはならないとなっている。

 

 そのイライラが積み重なり、何も知らなさそうな少女に対し怒りが向いてしまったのだ。

 

「明日の決闘、勝ち負けに関わらず謝罪をするんだ……いいな?」

「……はーい」

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 翌日。

 朝食を終えた結果、家の庭で千穂の体を乗っ取ったパトリツィアと退魔師達也が相対していた。

 

「んで、勝負の決まり方はどうする? 殺した方の勝ちか?」

 

 ニヤニヤ笑いながらパトリツィアが言った。

 

「……まいった、と言った方の負けでいいだろ」

 

 達也は勝つ気はあるとばかりにそういった。

 

「それでは、私が開始の音頭を取らせてもらう」

 

 そういうのは雄介が言う。

 

「それじゃあ、先にこれ使わせてもらうぜ」

 

 そう言い達也は腰の刀を抜いた。

 刀身も鍔も真っ白な刀だ。陶磁器の様な美しさがある。

 

「霊装、展開」

 

 そういうと刀──天刀が光った。

 次の瞬間、達也は鎧に包まれていた。

 真っ白な和風の鎧だ。顔は鬼のような面で隠されている。

 

「ほー、魔装か。良いもんもってんねぇ」

 

 魔装とはパトリツィアが居た世界にもある魔法道具(マジックアイテム)だ。

 全身鎧型の装備品で使用すると使った魔装以外武器と防具を装備出来ないというデメリットがあるがその分強力な力を持つ魔法道具(マジックアイテム)である。

 

 パトリツィアが居た世界には魔法道具(マジックアイテム)という魔法が込められたアイテムがあった。

 ランクもあり下から順に下級、中級、上級、秘宝級、聖遺物級、伝説級、そして神々が直接作った超級のアイテムである神器がある。

 パトリツィアは聖遺物級までの魔法道具(マジックアイテム)しか持っていない。

 

「魔装? これは霊装だ」

 

 達也が不快そうに言った。

 霊装とはこの世界における退魔師が使う道具の総称、言わば魔法道具(マジックアイテム)の事だ。

 

「おっとこりゃ失礼、んじゃやりましょか」

 

 雄介は怪訝な目をしながら開始の宣言をする。

 

「では、始め!」

 

 宣言と同時に達也が突撃する。

 ダッシュ。だが全身鎧を着ているとは思えない速度での走りだ。

 

 パトリツィアは相手に合わせて遊んでやろうと魔法を唱える。

 

「<上位道具創造>(スペリア・クリエイトアイテム)」

 

 パトリツィアの右手に刀身も鍔も真っ黒な、天刀の魔反対の様な刀が産み出される。

 

 大上段からの袈裟斬りを達也は放つも、パトリツィアが片手で簡単に弾いた。

 

「なにっ」

 

 達也の身体能力は既に人知を超えている。鉄を捻じ曲げるぐらいは余裕で出来る。

 更に言えば退魔師なので相手が悪魔かアンデッドの場合与えるダメージにボーナスが付く。だというのに簡単に弾かれたという事に驚愕せざるをえない。

 

 その後何度も達也は斬りかかるも全て弾かれる。

 その間パトリツィアはのんきにあくびなんかして、片目をつぶっていた。

 

「クソ!」

 

 そう叫び達也は後ろにジャンプし距離を取る。

 

 達也は腰のバックから符を六枚ほど取り出した。

 

「<退魔符>!」

 

 使ったのは悪魔やアンデッドに大ダメージを与える特殊能力(スキル)だ。

 事前に符を作るなどして用意し、それを使う事でダメージ量をさらに上昇させれるが、符が無くとも使える。

 

 退魔と書かれたお札が飛んで行く。

 

「<魔力の盾>(マジック・シールド)」

 

 対しパトリツィアは左手を向け魔法を唱える。

 半球状のシールドがパトリツィアの前に生成され、符が全てシールドに着弾した。

 

 結果は、無傷。シールドには罅一つ入っていない。

 

「なん……だと……」

 

 達也が絶望したような声を出した。

 

「今度はこっちから行くぜー」

 

 そうのんきに言いながらパトリツィアは盾の魔法を解除し、突撃した。

 

(はやっ)

 

 それは圧倒的に速かった。

 悪魔は種族的に戦士向けの種族であり、レベルを上げると戦士としてのステータスが良く伸びる。

 そのためパトリツィアは同レベルの呪文詠唱者(スペル・キャスター)──魔法使いと比べると身体能力が非常に高い。

 その気になれば時速百四十キロほどで走れるし、バフ魔法を使えばマッハにすら到達する。

 

 と言ってもそれは最高瞬間速度の話で今の速度はそれほどでもない。だが、たとえ退魔師であっても視認できぬ速度であるのは確かだ。

 

 観戦している千夏からは見えたが、相対している達也から見れば消えたように見えただろう。

 

 パトリツィアは袈裟斬りをした。構えも何もロクになってない攻撃だが、魔装を破って中の達也にダメージを与えるには充分だった。

 

 がくっと、達也は膝をついた。

 その首にパトリツィアは刀を向ける。

 

「まだやる?」

 

 ニヤニヤとした笑みを浮かべたままパトリツィアは問いかけた。

 

「……俺の、負けだ」

「……ちぇ。つまらねーでやんの」

 

 そういうとパトリツィアは千穂に体を戻した。

 

「だ、大丈夫ですか?」

「……問題ない。退魔師は丈夫だからな」

 

 日本にはごくまれに回復の術──魔法が使える者が生まれる。

 日本以外だと逆に退魔師が居らず、そのほとんどが信仰形呪文詠唱者(スペル・キャスター)だ。そのため海外の方が生存率は高い。

 退魔師は殆ど日本と中国が独占しているような物だ。

 

 達也は立ち上がり、魔装を解除した。

 胸が斬られ血がドバドバと出ている。

 

「あわわわわわ」

 

 人の出血をドラマなどではなく現実で見たのが初めてな千穂は慌てる。しかもそれが自分の体によってついたとなればなおさらだ。

 

「……問題ないと言っただろう」

 

 そう言って達也は特殊能力(スキル)を発動する。

 一時的に自己治癒能力を活性化させる特殊能力(スキル)だ。その代わりスタミナがものすごい勢いで消費される。

 

 それにより血が止まった。

 

「……すまなかった。女性に対ししていい事ではなかったと反省している」

 

 そう言って達也は頭を下げた。

 

「え、えと、もうあんなことしないでください、ね? だから頭を上げてください……!」

 

 千穂はそういうしかなかった。

 

 

 達也の内心は複雑だ。見下していた一般人に──その身に宿る悪魔とはいえ──無残にボロ負けしたのだ。

 だが、どこかスッキリしているのも確かではあった。

 

 

「うちの息子が申し訳なかった」

 

 そう言いながら雄介が千穂に近づく。

 

「今後、このような事は起こらないよう注意しよう……詫びをかねて、今日の晩御飯はうち行きつけの料亭をごちそうしよう」

「あ、ありがとうございます……?」

 

 相手をぶった切った上その父から飯を奢らせるなど強盗では? と千穂は一瞬考えたが深く考えるのはやめた。

 

「それじゃあ、修行に入ろうか。千夏さん。よろしく頼むね」

「はい。任せてください」

 

 

 

 

 ■

 

 千夏と千穂は山を登っていた。

 天羽家管理の山なので私有地である。

 

 この先にある滝で水行をするための登山だ。

 

 千夏は退魔師として体を鍛えている上霊威の高い退魔師なのですでに身体能力は常人を超えてる為問題なく登山できている。

 対し千穂は悪魔の種族特性である疲労無効をもって難なく山を登っていた。

 

 そうして三十分ほど登山すると目的地にたどり着く。

 

「ここで水行をするわ」

 

 そこは開けた場所で、滝がある場所だ。

 滝と言っても規模が大きい訳ではなく、人が四人ほど横並びになれば埋まる程度の滝で流れもそこまで強くない。

 だが水は澄んでいて綺麗だ。寄生虫などは居ないだろう。

 

 滝つぼにはそれなりの広さ深さがあり、全身を入れるぐらいは出来そうだ。下流に川となり流れ出ている。

 

「水行……あの、ほんとにこれに着替えるんですか?」

 

 千穂は千夏が持ってきた服──行衣を見る。

 

 行衣は水行をするときに着る浴衣のような作りの真っ白な服であり、後ろが若干透けている。

 そのためこれを着用すれば下着が丸見えになるだろう。

 

「安心して、ここは私有地だから人はいないわ」

 

 そういうと千夏は服をするりと脱ぎ始める。

 

「あわわわわわ」

 

 風呂場でもないのに服を脱ぐという事に千穂は驚きつつ顔を手で覆ってしまった。

 そのくせ隙間から千夏の体を見てしまう。むっつりだった。

 

 千夏の体は端的に言えばエロかった。

 巨乳どころは爆乳に片足突っ込んでいるのではないかと思うぐらい大きいくせに形が崩れていないロケットおっぱい。

 腰は細くくびれがあり、ケツはでかい。

 全裸で山の中。レイプされても文句は言えないだろう。

 

「さ、千穂ちゃんも脱いで」

 

 そう言われても千穂は「ひぇぇ」と情けない悲鳴を上げるだけ。

 そして千穂はいい事を思いついたと声を出す。

 

「あ、悪魔さん。代わりにやってくれませんか?」

 

 パトリツィアは千夏にもわかりやすいよう口を生成し話す。

 

「それでもお前がここで裸を晒す事には変わりないし、そもそも俺が退魔師の訓練したところで退魔師にはなれないから諦めろ」

 

 それだけ言うとパトリツィアは口をひっこめた。

 

 千穂は空を仰いだ。

 

 だが、すぐ気を取り直し「私、脱ぎます」と謎の宣言をしてから脱ぎ始めた。

 

 動きやすい登山服をするする脱いでいく。

 パトリツィアはうひょー女子高生の生脱ぎだと謎の興奮をしていた。ブツがないので起ちはしない。

 

 そうして千穂も全裸になり、行衣を受け取り着る。

 

「こ、これで何をするんですか?」

「まずは十分、滝に打たれてもらうわ。そのあとは三十分泳いでもらうわ」

「……なんか、遊ぶみたいな感じね」

「まぁ、最初はね。そのあとは少し休憩したら下山して、私と組み手をするわ」

「組み手……私柔道ぐらいしか出来ないですけど……」

「私が霊力を込めて攻撃するから、千穂ちゃんはそれを受けるだけでいいわ。ちゃんとマットの上でやるから安心してね」

「わ、わかりました」

 

 それじゃあ水行よ、と二人は訓練に入った。

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