水行を終えた二人は着替え、天羽家の屋敷に戻った。
そしてそこの訓練用の平屋で二人は組み手をすることになった。
「よろしくお願いします」
二人は専用の柔道着を着ている。
先ほど着ていた行衣も退魔師が作った
それを着用した状態で禊をすることで退魔師のクラスが生えるのだ。
パトリツィアが居た世界、及びこの世界にはクラスという物がある。
例えば料理人だったり、剣士だったり、あるいは柔道家だったりと多種多様な職業、クラスがある。
それらに就職し、レベルを上げる事で強くなる。
と言っても一般人は高くて二レベルが限界だ。というか大半はレベル一にすら届かない雑魚である。
そんな世界でレベル一あるのは達人と呼べる者で、レベル二ともなればオリンピックの金メダリストクラスだ。三レベルは超人である。
そんな多種多様なクラスのうち退魔師は就くのに面倒な職業だ。
就くのに退魔師のクラスに就いている者からの教導が必須なのだ。それがないと退魔師に成れない。
では最初の退魔師はどうだったのか、となるがそれは置いておこう。
退魔師になるには教導を受け、一定条件を満たす必要がある。
千穂と千夏はマットの上で組み手をすることになる。
「まずは柔道をするわ。授業でしてるから大丈夫よね?」
退魔師のクラスを得るのに必要な条件の一つに、退魔師から霊力──魔力を受け取る必要がある。
ただそれには単に肌に触れて魔力を流せばいいだけで、攻撃する必要はない。
そのことは判明しておらず、攻撃に魔力を乗せる必要があると思われている。
「はい、大丈夫です」
「そう。それなら……行くわよ!」
そのまま柔道の技をかけていく。
背負い投げだったり固め技だったりと多種多様な技をかけていく。
それが一時間続いた。
パトリツィアはよくこんなんしてられるなとあくびをしていた。
終わり、二人はスポーツドリンクを飲む。
「よし、これで霊力に目覚めたはずよ」
「え? もう、ですか?」
その言葉に千穂は実感がない、という。
「試しにこれ使ってみましょうか」
そう言って千夏はバックから刀の柄だけを持ってきた。
「それは?」
「これは霊刀の一種。霊力を込める事で刀を生成できるの……ほら、こうやって」
千夏が魔力を込めると白い刀身が生成された。
「おお、凄い!」
「まぁ、凄いのは見た目だけで性能は悪いんだけどね」
そう千夏は苦笑する。
実際武器としてみると非常に弱い。
何せ維持に魔力を常に消費するのでコスパが悪いし、そのくせ斬りにくいし折られやすいというゴミである。
だが魔力の操作の練習には使えるのでまだ生産されている
千夏は刀身を消すと千穂に渡す。
「霊力を込めて見て。今の千穂ちゃんなら使えるはずよ」
「わかりました! むむむむむ……」
そうして千穂が魔力を操作し、霊刀に魔力を込める。
そして刀が生成された。
「で、出来た! これが霊力……!」
だがすぐ刀は消えた。
「つ、疲れた……」
そして千穂を疲労が襲う。
魔力切れの症状だ。これは肉体ではなく精神に依存する疲労の為肉体の疲労無効の種族特性では無効化出来ない。
「お疲れ様。これ飲んで」
そう言って千夏は小瓶を渡した。
ガラスの小瓶であり、中には青い液体が入っている。
「これは?」
千穂が飲食物としては飲みたくない色だと若干引く。
「霊力を回復させる薬よ。味は悪くないわ……よくも無いけど」
「わ、わかりました」
そして千穂が小瓶を開け飲み干す。
「あ、疲労が無くなった」
「最初の内はそれで全快するけど、霊力量が増えると一個じゃ足りなくなるから、霊力の管理は気を付けてね」
「わかりました」
「それじゃあ、この後は装備品を見繕うかしら」
「装備品、ですか?」
ゲームの様な単語に千穂ははてなマークを浮かべる。
「そうよ。悪魔やアンデッドと戦うのに素手じゃ危ないでしょう? 武具は必須よ」
「おぉ、少し興奮します!」
「ふふ、さ、シャワー浴びたら見繕いましょ」
「はい!」
■
シャワーを浴びて汗を流しスッキリした二人は天羽家の武具保管庫に来ていた。
「おぉ……」
思わず千穂は感嘆の声を漏らした。
そこには多数の武器があった。
モーニングスター。刀。バイブ。盾。和風に西洋の鎧など。
「なんか一つ変なの混じってません?」
「気のせいよ」
「気のせいですかね?」
「気のせいよ」
強い口調で言われたので千穂は「あっはい」としか返せなかった。
「……あれ? こういうのって持ち歩きするんですか?」
「勿論、そうでないと運べないもの」
「……刀とか持ってるときに職質受けたら捕まりません?」
「そうね。だから全力で逃げる必要があるわ」
警察の上層部などには退魔師やアンデッドの存在は知られているが、一般の警察にまでは知れ渡ってない。
そのため武装した状態で出歩くと普通に捕まる。
「えぇ……」
『俺の魔法で異空間に武具しまっといてやるから安心しろ』
そこでパトリツィアが口を挟んだ。
「あ、悪魔さんが異空間にしまってくれるらしいです」
「そう? 悪魔の力って便利なのね……」
少し羨ましい、と千夏は言った。
「それじゃあ、好きなのを選んで頂戴」
「はい! ……こういう時アドバイスとかは無いんですか?」
千穂は気になって問いかける。
「うーん。どの武器もいいところと悪いところあるから……明らかな地雷武器ってのも無いから、ホント好きなのでいいよ」
「そうですか……なら、これっていいですか?」
そう言い千穂は壁に立てかけてある刀を手に取った。
刀は千五百グラム程するが千穂の今の筋力なら難なく持てた。
「いいんじゃない? 次は防具ね」
「防具……うーん。全身鎧とかだと動けなくなっちゃいそうですね」
動きやすさなら千夏が着ていた奴がいいな、とパトリツィアと千穂は思ったがだけどあんな痴女みたいな恰好したくないなと同時に思ったので口には出さなかった。
「なら私が着てるのと同じラバースーツはどう? 動きを阻害しないし、防御力もあるわ」
長い沈黙が流れた。
「……流石にあの格好はちょっと」
千穂はどうにか沿う言葉をひねり出す事しかできなかった。
「そう? 可愛いと思うけど……」
その感性は理解できない。悪魔と千穂の思考が重なった。
取りあえず他のを見よう、と二人は色々と見て回った。
軽装鎧から忍者装束まで色々とある。
その中で、千穂はこれがいいかも、と上下セットの装備を見つめた。
「これもいいわよね。学生っぽいし」
千夏が言う通り千穂が手にしたのは改造したセーラー服の様な装備だ。
見た目こそセーラー服を改造した物だが、その実糸すら聖別された聖鎧である。
パトリツィアが口を生成し魔法を唱える。
「
鑑定魔法を唱える。
その結果このセーラー服は上級のアイテムだとわかった。人の世界では充分強力な装備である。
「私これにします」
「わかったわ。それじゃあ、試着しましょ」
「はい……あ、今更なんですけど装備のお金とかは……」
「経費で落ちるから気にしなくていいわ」
「あ、ありがとうございます」
そうして装備を取って千穂は試着室に入り、着替えた。
「どうですか?」
「うん、よく似合ってるわ」
実際似合っていた。
紺色のブレザーに赤いネクタイ。灰色のミニスカート。
体形は隠されているが、着るものによってはだいぶ見た目の印象が良くなる装備品だ。
「あの、この服かってにサイズ調整されたんですけど……」
「あぁ、霊装はサイズ自動で調整してくれるの。簡単な破損なら勝手に直るから便利よ」
「霊装ってすごい……」
「それじゃあ、装備も決まった事だし、次は実戦ね」
「じ、実戦、ですか」
実戦という言葉に千穂は怯える。
「そう緊張しないで。ただアンデッドをぶっ飛ばすだけ。何かあっても私が守るから、どんと安心しなさい!」
そう千夏はでかい胸を張って言った。