TS転生おせいそアラサー女教師がチャンプの夢女になる話 作:(・8・)
「バトルフィールドは……デブリ帯ですか」
マリアちゃんとのフリーバトルを承諾した私が、出撃してから目にしたものは無数に散らばるスペースデブリだった。
しかも、ミノフスキー粒子の濃度が高く、レーダーもほとんど機能していない状態。
マリアちゃんが使っているガンプラのビルド次第では、私が大きなディスアドバンテージを背負わされるかもしれない。
「気を引き締めていきましょう……!」
『そのひつよーはない』
「ッ!?」
咄嗟に回避運動。
アラートが鳴るのがあと一瞬でも遅れてたら、反射があと一瞬でも間に合わなかったら、死角から放たれたレールガンの一撃は私に直撃していたことだろう。
ただ、これで、「弾が飛んできた方向」はわかった。
弾が飛んできた場所に敵がいると思い込んで突撃すれば、敵の位置が特定できる──という考えは、上級者帯では迂闊にすぎる。
そして、マリアちゃんが素直に弾を撃った地点に留まってくれているか、なにより──本当に放たれたレールガンは本体が持っているものなのかは、検討しなければいけない。
「恐らくは起きバズーカの要領でしょうね……仕方ありませんけれど!」
私はあえて、死角ではなく、弾を撃ってきたマリアちゃんが武器を遠隔操作しているという前提で位置取りを行うことにした。
デブリを盾にしつつ高速機動で隙間を縫いながら、縦横無尽に放たれるレールガンとミサイルの波状攻撃を回避する。
とはいえ、これで、相手が組んでいるビルドの方向性は見えてきた。
マリアちゃんは、圧倒的な手札を自在にコントロールし、勢いで押し潰してくるタイプだ。
言ってしまえばそれは、キョウヤさんの戦い方に近い。
死角から飛んでくるメガ粒子砲を回避、デブリの一つにアンカーを打ち込んで、機体に急制動をかける。
『短い間で、マリアと「ウプウアウト」の戦い方を見破ったのはほめてやろー、でも──どうする、コトリ』
見破ったからといって、勝てるわけでもなければ、そのまま講じた対策が素直に通用するわけでもない。
マリアちゃんは、きっとそう言いたいのだろう。
確かに、並のダイバーであれば先ほどまでの数分間を生き延びることすらできずに倒れ、上位ランカーですら、圧倒的な弾幕量の前には手をこまねくはずだ。
だけど──マリアちゃんは、法外な強さを誇っていても、理外の存在ではない。
「マリアちゃん、忘れていませんか? 私は──GBNで、3番目に強いんです」
私は、アンカーを引っ掛けたデブリを軸に遠心力を思い切りかける形でブーストを噴かし、そのまま勢いでアンカーを切断した。
これによって、支えを失ったデブリがそのまま勢いに乗って質量弾となり、周囲のオブジェクトに衝突を起こすことを繰り返して連鎖していく。
その辺に配置されているモビルスーツの残骸やら、ソーラーパネルの破片やら──地形の一部として組み込まれたオブジェクトが天然の散弾になって、まだ見えないマリアちゃんのガンプラに襲いかかる。
『なるほど、少しはできるよーだ』
マリアちゃんが私の攻撃に対して取った対策はシンプルだった。
大火力を正面に展開し、デブリを強制的に排除する。
無数の宇宙塵が光の中に飲まれて消え、光条の先に姿を現したのは、シルヴァ・バレトファンネル試験型の特徴を大きく残した、恐らくはリーベン・ヴォルフのカスタム機だった。
漆黒の宇宙に溶け合うような黒と、高貴さを伺わせる金色のツートンカラーが美しいガンプラだ。
『マリアと「ガンダムMk-XⅥ ウプウアウト」のすがたを見られたか……ごさんだった』
「見えた以上は、遠慮なく戦わせてもらいます」
武装を盛るだけ盛ったことで嵩んだ重量を、大推力のスラスター兼攻撃手段の一つでもあるユニットで補うどころか、プラスに転換しているマリアちゃんと「ウプウアウト」は脅威なのに間違いはない。
だけど、よく勘違いされていることがある。
それは、推力と機動力はイコールではない、ということだ。
「それだけの重量をカバーするだけの推力はあっても、小回りは利かないはず! だったら!」
『ふところに入ればしょーきがあると見たか、でもあまい。とってもあまいぞ、こいがたき』
マリアちゃんの言葉が挑発なのか、苦し紛れの強がりなのかはわからないけど、どちらにしたって私のガンダム・明宵星にできることは、突っ込んで斬ることだけだ。
さっきみたいに地形を利用した攻撃も、二度目は通用しない。
だったら、1秒でも早く決着をつける他に、戦いを終わらせる手段はないだろう。
左手に持ったアサルトライフルを連射しながら、自慢の大推力で逃げようとする「ウプウアウト」に向けて次の手を打とうとした、刹那。
「きゃあああああっ!?」
『言ったはず、マリアはあまくない。小回りが利かない「ウプウアウト」と小回りが利くコトリの「明宵星」と素直に追いかけっこしたって、勝ち目はない。なら、相手の得意な戦いに乗ってあげるひつよーもない』
マリアちゃんが次の手として仕掛けていたのは、リーベン・ヴォルフの肩に装備されたナラティブガンダムB装備のシールドとミキシングされている、ダークハウンドのバインダーに搭載されたワイヤーアンカーでの電磁攻撃だった。
宙域へと巧妙に隠された糸に触れた私の明宵星はスタンして、大きな隙を晒してしまう。
判断ミスだ。遠隔操作をできる武器があるなら、電磁攻撃も選択肢に入れておくべきだったのに。
『終わり』
無情にマリアちゃんが吐き捨てて、ウェポンプラットフォームと化しているバックパックに装備されているレールガンを撃ち放つ。
受け切れるか?
受け切れたとしても、その後戦えるか?
いや──そんなことを考えている時点で悠長だ。
私はダウンした電装系を大急ぎで復帰させて、右腕に装備しているシールド「グレンゲ」に収まっている「ナルカミ」を射出してワイヤーを切断、急死に一生を得る。
あと一瞬でも判断が遅れていたら、即死だった。
「はぁ……っ、はぁ……っ……!」
『なるほど、おもしろい』
「やってくれましたね……!」
こんな状況なのに、私は不思議と胸が高鳴るような気持ちを感じていた。
ヒリつく、というものだろうか。
かつてGPDで戦っていたときの思い出と重なり合って、心臓が熱くなり、脳が芯まで痺れるような感覚が私を支配していく。
出し惜しんでいる場合じゃない。
全てを曝け出せ。
もっと、もっと──不完全燃焼を踏み倒して、燃えて尽きるまで!
リミッターを解除、楔を解き放たれた明宵星のツインアイが真紅に染まり、眼光を流星のように残して宇宙を駆ける。
「っふふ……っはは……あはははは!」
『む──マリアのせーぞんほんのーが危険をうったえている。今のコトリ、なんか危ない』
「危ない? 当たり前ですよ! 今の私は多分、過去に匹敵するぐらい滾ってますからね!」
アーレスとの戦い以来だろうか?
それともイタリア代表を叩きのめしたとき以来だろうか?
わからないし、今はどうでもいい。とにかく、目の前の敵を1秒でも早く斬り倒す。
それだけに意識を集中して、私は左手に持ったアサルトライフルを投棄。
同時に右手で、左手のハードポイントに接続していたバスタードメイスの柄を握る。
既に「ナルカミ」による攻撃を仕掛けられて、「ウプウアウト」が防勢に回っている今しか、好機はない。
「──これでぇぇぇっ!!!!」
『マリア、負けない! キョウにぃも、勝つのも、全部マリアのもの!』
「
マリアちゃんが引き抜いたビームサーベルを振るうよりも早く、私はバスタードメイスの鞘の中で赤熱化させていた大太刀を抜刀──灼炎が、ビームの刃を揺らがせ、巻き込み、自分のものとして相手の機体を断ち切る。
本来はこんなものじゃないけれど、GPDの頃から私が得意としてきた、いわば必殺技だ。
GBNではそれがシステムに落とし込まれることで、擬似的に全盛期の威力を再現しているけれど、まだまだ「本物」には程遠い。
それでも、「ウプウアウト」の半身を溶断するには十分すぎる威力があった。
ほとんどの武装を失い、半身も破壊されたにもかかわらず、マリアちゃんはまだ勝利を諦めていないのか、残った武装を私に向けて発射しようとしている。
なら、ここは素直にトドメを刺してあげるのが武士の情けというものだろう。
私は抜刀の熱がまだ残り、赤熱化している大太刀を「ウプウアウト」のコックピットに突き立てて、そのまま勝負の幕を引いた。
勝利の余韻と共に、自分の中に灯り、煌々と燃えていた炎が消えて、遠くなっていくのを感じる。
『Battle Ended!』
『Winner:コトリ!』
機械音声が私の勝利が確かなものだと証明する中で、ひどい虚脱感が襲ってきた。
ああ、そうか──勝ったのか、私は。
もうすぐで、自分の中で永遠に封じ込めようとしていた獣を解き放ちかけて、子供相手に本気を出して。
……なんて、大人気ないんだろう。
【Tips】
【ウルシヅキ・マリア/マリア】
【一人称:マリア】
【身長:138cm】
【外見イメージ:黒髪のワムデュス(グランブルーファンタジー)】
現在GBN個人ランキング2位に降臨する猛者にして、若干12歳の天才少女。チャンピオンであるクジョウ・キョウヤを「キョウにぃ」と呼び、慕っているが、これはマリアがキョウヤから見て姪に当たる存在で、幼い頃からよく交流があったためである。そのため、父親に恋心を抱くような感覚の延長線でキョウヤに恋心を抱いており、ガンプラにも幼い頃から触れてきたスペシャル少女でもある。