クロスアンジュ 天使と竜の輪舞~愛するミスティ・ローゼンブルムと共に~ 作:田中_jack
この大事故にて、その後、私とミスティの運命、そして世界の動きが急速に変化していきます。
「幼なじみ」の私とミスティは、2105年4月、5歳の時に「国立ローゼンブルム大学 付属小学校」に共に入学した。
小学校の入学前から、次第にミスティは王家の後継者としては育てられず、むしろアイドル的な王女として育てられ始めたが、ここでミスティの性格がプラスにも、マイナスにも働いたのだ。
プラス面では、王家どころか世間でもあまりいないであろう、考え方も真っ直ぐでよどみも無いその性格は、やはり、周囲に明るさと希望を与える「花」であり、「ローゼンブルム」の名にふさわしい。
一方、マイナス面では、ミスティは今でも言われているが、「世間知らずのお嬢様」との評価がついて廻ることになった。
そこで、私の両親も王家も、ミスティの将来を心配して何度も膝を交えて「話し合い」を進めた。
その結果、私とミスティは小学校の入学前の時点で、「カップル」になる方向で、親同士だけで決定してしまったのだ!!
私とミスティがこの事を知るのは、後年、「動乱の時代」と言われている時期であった。
入学した「国立ローゼンブルム大学 付属小学校」は5年制の小学校で、当然のことながらレベルの高い、進学校の一つである。
国立ローゼンブルム大学は、日本連邦の一部になる前のローゼンブルム王国時代より存在する歴史ある大学の一つで、世界的な学者や技術者、研究者、評論家、政治家、音楽家などを数多く世に送り出している大学だ。
その付属小学校に入学出来ただけでも、私とミスティは嬉しかった。
幸い、私とミスティは双方の両親の意向もあり、入学当初から同じクラスだった。
この事が、入学後の「大事故」の際、大きなプラスに働くとは、入学時には私もミスティも、夢にも思っていなかったのだ。
小学校に入学して数週間後の4月27日のことである。
私は小学校に登校しようと、朝食を済ませて準備をし、家を出ようとしたら、父親から呼び止められた。
「これを持って行きなさい。」
「これ、何?」と私が尋ねると
「特殊な傘だ。太陽光パネルや情報通信機能、電磁装甲などの機能が付いたテロ対策用品だそうだ。
製造しているメーカーから試作品が届いたので、常に持ち歩きなさい。ミスティを雨でぬらす失態はしないようにね。」
ミスティと私の家は、1ブロック先の近くにあった。私の家の方が小学校よりも少し遠かった。
また、小学校も都市の道路を2ブロック先で比較的に平坦で比較的近く、小学校の生徒でも楽に歩いて通える範囲であった。
「近すぎず、遠すぎず」の距離だ。
その日の授業では、担任の先生より、HRなどで「今後の進路について考えましょう」との内容を中心に授業や指導を受けた。
改めて体力測定、健康診断、適性検査、IQ測定試験などだ。
そして、授業が終わり、私とミスティが帰宅する時。
「一緒に帰りましょう」とミスティが、いつものように声を掛けてくれた。
私は、朝に父親の言葉を思い出し、「うん」とうなずいて、例の特殊な傘を持ち、一緒に歩いて校門を出た。
そして護衛の数の多さに驚いたのだ。
当時、ミスティの護衛は通常、SP4人に侍女が2人で、その他に運転手と護衛1人が乗った車とバイクが1台ずつであった。
ところが、今日はその4倍の人数であるSP16人に侍女が8人で、その他に運転手と護衛1人が乗った車とバイクが4台ずつであり、「大名行列」のような体裁であった。
さすがに、私を含めて、小学校の生徒や先生ですら、驚いていた。
「このままでは、次には護衛にヘリや装甲車両がついて廻ることになるのかな?ミスティがクラスで孤独にならないようにしなければ!!」
と、改めて私は決意した。
私はミスティに恐る恐る、今日の護衛の多さの事を尋ねると、
「SPや侍女の新人研修の一環だそうです」とのミスティらしい、明るい答えが返ってきた。
お~い、侍女はともかく、SPの新人研修の研修場に、王女様を利用して良いのか??
校門の前で、「こんにちは」と、いつもの顔なじみになった、待機していたSP達と侍女達に私は頭を下げた。
SP達からは、「またこのガキか?」といった目つきと顔つきで、一応の挨拶を返す。
逆に侍女達からは、「まあ、坊ちゃん、こんにちは」と言ってくれたことで、私は少々、気が楽になった。
「大事故」は、この後の下校途中に発生したのだ!!
私とミスティが、学校の校門から下校しようとした時、2ブロック離れたヤクザな廃棄物処理業者の倉庫の地点から双眼鏡や望遠カメラで、その一部始終を監視している数名がいた。
そのグループの長の名は「スケベビッチ・アル・ガッポリーネ」という、ミスルギ皇国ではその名の通り、裏世界で企業や有名人へのテロや脅迫、「みかじめ料」や「顧問費」という名の「金銭の巻き上げ」「非合法売春」で有名な、職業的テロリストで、やくざな男だ。
この連中、違法活動でミスルギの警察に逮捕されていたにも関わらず、数日前に突然、皇帝であるジュライ・飛鳥・ミスルギによって、「恩赦」されて釈放されたのだ。
そして、ある人物から、「ミスティを事故にみせかけて殺せ」という命令と、多額の報酬を提示され、二つ返事でその命令を実行することにしたのだ。
そのある人物とは・・・・・?
スケベビッチ・アル・ガッポリーネが「準備はいいか、野郎共!!」と言うと、
子分A「合点承知、やつらの通学路で、一番高いビルの1階と、地下のガス管、地下下水道にガスと爆破物をしかけましたぜ!!」
子分B「この足元のヤクザな廃棄物処理業者の倉庫にあった、ガソリンと廃油、過酸化水素水、有毒化学薬品の入ったドラム缶にも点火出来るようにしましたぜ!!ドラム缶に巨大ロケット花火を付けて、側溝に入ったガソリンにも引火出来ますぜ!!
やつらにドラム缶と火の雨を降らせますぜ!!」
子分C「LPGタンクローリー車を盗みましたぜ。LPGは満タン、遠隔操作でミスティというガキとその取り巻きを吹っ飛ばせますぜ!!」
私とミスティに危機が迫っていた。
私とミスティが帰ろうと校門を出て、一緒にSPや侍女を引き連れて移動し始めた時、私はついつい自慢したいがために、朝に父親に渡された「特殊な傘」の話をしてしまった。
「これは特殊な傘でね、太陽光パネルや情報通信機能、電磁装甲などの機能が付いたテロ対策用品だよ。まだ発売前の試作品で、ミスティも見たことがないでしょう?」
ミスティはその傘に、大きな興味を持ってしまった。
「リデル、その傘どうやって使うの??」
「こう拡げて、傘の柄を立てて使うのさ」
と、私はその傘を広げて、メインボタンをONにして、太陽光パネルや情報通信機能、電磁装甲などの機能を作動させた。
この時点では、私は父親の受け売りでミスティに話をしていたのであって、何が何だか半信半疑の中で「特殊な傘」を操作していたのだ。
初めて操作する「特殊な傘」であるので、当然だろう。
それを見ていたSPや侍女ですら、「実に便利な道具が開発されたのだな」と、興味津々の様子であった。
それで、ますます、ミスティは興味を持ち、「リデル、その傘をちょっと貸して」と言ったのだ。
私は、ミスティのお願いを聞いて、「じゃあ、このまま手に取ってね」と、「特殊な傘」をそのままミスティに貸した。
私とミスティの、このわずか1分程度の行動と会話が、ある意味で私とミスティを救ったのだ!!
ミスティは、傘の機能、特に情報通信機能に興味を持ち、まるでスマートフォンのタッチパネルを操作するように、立体型3D画像やニュース項目などを手や腕を動かして見ていった。
「リデル、この長い舌を出したぬいぐるみは何?」
「ペロリーナという、ゆるキャラだよ、ミスティ」
「この猫や犬のキャラクター、可愛いな」
「この音楽、良い曲ね」
など、キャラクターグッズやぬいぐるみ、流行の音楽などに新鮮な刺激をミスティは感じていたのだ。
ここで、私は大きな疑問を持たざるを得なかった。
どうもミスティの反応が、あまりにもおかしい。
まるで、2歳や3歳の子供が、初めて触れる感覚に似ているように大喜びしているのは何故??
ミスティは、ひょっとして、今まで新聞どころか、漫画、キャラクターグッズやぬいぐるみ、流行の音楽にすら、興味がなかったのか??
それとも、教育に悪いと、遠ざけられているのだろうか??
私が、そのような深い疑問を持ってミスティが喜ぶ表情を見ながら歩き、1ブロック目の信号を渡り、通学路の一番高いビル脇の歩道に差し掛かった時、突然、「ドカーン」「ドカーン」と2回の地鳴りを伴う爆発音が響き渡った!!
地下のガス管や側溝がいきなり爆発したのだ!!
その爆発で、SPが乗った車とバイク4台ずつが全て文字通り吹き飛ばされ、引っ繰り返って地面や周辺の建物に叩きつけられた。エアカー、エアバイクなのに、想定外の爆発や地面の隆起には対応出来なかったようだ。
また、マンホールの蓋や側溝のブロックなどが吹き飛び、その上や周囲にいたSP16人全員と、侍女8人が文字通り、倒れてしまった。
無事に残るのは、私と、ミスティだけになってしまった。
スケベビッチ・アル・ガッポリーネが子分Aに、「よし、よくやった。」と声を掛けた。
そして、次の命令を伝えた。
「ビルの1階を爆破するタイミングは、子分Bのドラム缶と火の海攻撃と、子分CのLPGタンクローリー爆破の後とする。テロとは見えないようにしろ!!」
子分共「へい、合点承知!!」
そして、調整されたタイミングで、ドラム缶と火の海攻撃の点火スイッチが押され、LPGタンクローリーの遠隔操作が開始されたのだ!!
私と、ミスティの運命はいかに??
次回は、前編に引き続き、後編として主人公の私とミスティが「大事故」に巻き込まれ、その危機に立ち向かう場面です。