クロスアンジュ 天使と竜の輪舞~愛するミスティ・ローゼンブルムと共に~   作:田中_jack

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 今回より、「黄金のタッグチーム」の4人、私とミスティ、アルベルトとヒルダに、新たなる戦力が加わった宇宙医科大学校の生徒らが、大動乱の始まった世界に対して立ち向かいます。

何故か、昨今の世界情勢と似てきているなあ、と感じる今日この頃です。



第5章 大動乱の始まりとそれを巡る駆け引き
第34話 大動乱の始まりとそれを巡る駆け引き


 2113年7月14日、午前8時。

 

「黄金のタッグチーム」の4人、私とミスティ、アルベルトとヒルダは、同期生や「ダイヤモンドローズ騎士団」などが所属している「特殊機動部隊」らと共に、旧チェコ共和国とウィーン周辺との連邦である「チェコ・オーストリア連邦」の首都ウィーンに移動した。

それも、政府専用機に完全武装して搭乗する物々しさで、だ。

補給コンテナや補給部隊を搭載した輸送機や、その警護に戦闘機や宇宙往復機なども就く、正に戦闘態勢の下での移動だ。

 

移動した目的は、名目上は、今週、首相に使命され就任、組閣を終えた円鰤夫(エンブリヲ)氏こと、エンブリヲ・フォン・フリードリッヒ氏との会談にて、日本連邦外務大臣の志木田茂雄氏、広報大臣のマイク・ジャクソン氏の護衛とウィーンの広報活動のためである。

その会談の模様は、「政府広報」の形で発表されることになっている。

 

しかし、それならば、完全武装して移動する意味がない。

その本当の理由は、私達全員がウィーンに到着後に知ることになったのだ。

 

 

 

「お忙しい中、わざわざご来訪頂き、感謝の言葉もありません!!」

7月10日に就任した、円鰤夫(エンブリヲ)氏こと、エンブリヲ・フォン・フリードリッヒ首相は日本連邦外務大臣の志木田茂雄氏、広報大臣のマイク・ジャクソン氏の両大臣に向かって、盛大な歓迎の言葉と演出をもって出迎えた。

 

「7月7日以来ですね、エンブリヲ・フォン・フリードリッヒ首相閣下。」

志木田茂雄外務大臣が握手しながら言葉を返した。

 

「お初にお目に掛かります、エンブリヲ・フォン・フリードリッヒ首相閣下。」

マイク・ジャクソン広報大臣が握手しながら挨拶した。

 

うん?

エンブリヲ・フォン・フリードリッヒ首相の隣にいる美しい女性は??

 

「マリアーノ・アントワネットと申します。

新しく新設された広報大臣に就任しました。」

マリアーノ・アントワネット広報大臣が、いきなり挨拶した。

 

「マイク・ジャクソン広報大臣です。

この度の会談、宜しくお願いします。」

マイク・ジャクソン広報大臣が珍しく緊張して挨拶をした。

 

「彼女とは、私の首相就任と同時に婚約しました。

結婚式の日程は政治との兼ね合いもありますが、後日、皆様に招待状をお送りしますよ。」

エンブリヲ・フォン・フリードリッヒ首相が和やかに紹介した。

 

「是非、その際には出席させて頂きます。」

志木田茂雄外務大臣とマイク・ジャクソン広報大臣がにこやかな表情で交互に答えた。

 

 

「志木田茂雄外務大臣、お初にお目に掛かります。」

政権発足時に就任したグルノー・フォン・グーテリアン外務大臣が、握手しながら挨拶した。

 

「こちらこそ、宜しくお願い申し上げます。」

志木田茂雄外務大臣も、挨拶を返した。

 

 

 

その後、両国の外相会談や広報大臣会談、その後の晩餐会が開催された。

ここまでは、通常の会談(?)であった。

勿論、当日の私達は警護活動と、広報活動の両方の活動をこなした。

ウィーンやその周辺は、本当に歴史を感じさせる風景や建築物が多い。

広報にも熱が入る。

感動しますよ。

 

 

 

 翌日の7月15日、午前9時。

 

両国の外相と広報大臣の双方が出席した全体会談が、首相官邸で開始された。

ここで、衝撃の事実が公表されたのだ!!

 

「エンブリヲ・フォン・フリードリッヒ首相閣下、貴国が我が日本連邦との今後の関係はいかにされるか、そのお考えをお尋ねします。」

志木田茂雄外務大臣が、力強い口調で尋ねた。

 

「我が国は、内陸国で単独では生きてはいけません。

ヨーロッパ合衆国を目指した、かつてのEUも、現在の情勢では再結成すら不可能でしょう。

ですから、我が国は日本連邦への参加を、心から表明します。」

エンブリヲ・フォン・フリードリッヒ首相が、就任してから間もないとは思えない、意表を突く発言をした。

 

「まず、経済と安全保障の分野で、早急な加入を要請します。

その後は、政治や法制面での加入や統合を進め、できるだけ早い、代表権付きの加盟を目指します。」

 

「代表権付きの加盟は、ある程度の財政出費と兵力や軍事力の負担が伴いますぞ。

大丈夫ですか??」

志木田茂雄外務大臣が、心配して念を押し、畳みかけた。

 

「持参金も準備しますよ。」

グルノー・フォン・グーテリアン外務大臣が補足した。

 

「ついでに、マナとそれに関する全ての情報や資料も付けて下さい。」

マイク・ジャクソン広報大臣が、ここは絶対に譲れない決意で要求した。

 

「マナの使用は、今年中に停止はしますが、今までの負の遺産が帳消しになるわけではありません。

ジュライ元皇帝、ジュリオ元皇太子、リィザ・ランドック元近衛長官らに対する工作活動、現在も続く略奪した資産などの情報や使われ方、隠蔽された事実を含めて、全て公表して下さい。」

 

「エンブリヲ・フォン・フリードリッヒ首相閣下。

我が国としては、貴方がマナやそのシステムをコントロールしていたのではない事は知っていますが、それと同時に、貴方が各国でロビー活動をしていた事実も知っています。

知らなかった、他の人がやった行為でも全く関与しなかった、だけでは済みませんぞ。

少なくとも、証拠や証言はしっかりと公表して頂かなければ。」

志木田茂雄外務大臣が、まるで厳しく追及する検察官の如く、発言した。

 

 

「ご指摘の通り、私は確かに各国で長年に渡りロビー活動をしていました。

それは事実です。

ここにご臨席のケマル・縁部理桜(えんぶりお)プロデューサーとも、それが縁で2090年に知り合えたのですから。

 

7月7日の会談の席でもお話しましたが、マナの基本原理を発表した2088年の私の論文が、勝手に盗用されるような形で使用される事態に陥りました。

2090年頃からの私のロビー活動は、ある意味でケマル・縁部理桜氏とは、持ちつ持たれつの、阿吽の呼吸の間柄、表裏一体でした。」

エンブリヲ・フォン・フリードリッヒ首相が答えた。

 

「ほう、ケマル・縁部理桜さん、それは事実ですか??」

志木田茂雄外務大臣が畳みかけた。

 

「ある意味でその通りですよ、志木田外務大臣。」

ケマル・縁部理桜氏は答えた。

 

「私が番組や歌番組などで2090年より少し前の2088年からプロデュースしているのはご存じの通りですが、2090年にエンブリヲ・フォン・フリードリッヒ氏と知り合えてから、大きな目標と大義を持てたのですよ。

 

私がプロデュースを重ねつつ、かつてのミスルギ皇国などへの影響力の強化に努め、エンブリヲさんがその人間関係を利用して政府の首脳らにアクセスする、という表裏一体の関係が知らず知らずの内に出来てきたことも事実でしょう。

 

エンブリヲ・フォン・フリードリッヒ氏がマナに関わっていたことを知ったのは、2110年に田中隆男大臣らから教えて頂いた時でしたが、何か大きな目的のために動いているのは薄々、知ってはいました。

目的も無しに「独立自由党」を立ち上げるはずがありませんしね。」

 

「だからこそ、ケマル・縁部理桜さんの人間関係の助けも頂いて、我々は今現在、こうしてエンブリヲ・フォン・フリードリッヒ首相と会談出来るのも事実ですしね。」

志木田茂雄外務大臣が、ある程度納得した。

 

「分かりました。

エンブリヲ・フォン・フリードリッヒ首相、これまでの工作活動とか、ミスルギ皇国の我が国への挑発やテロ攻撃などの真実もご存じですね??」

 

何だって??

どういう事なのだ??

 

「全てが、仕組まれたのですよね??

2105年の王宮テロ事件以降、今年の7月7日の大型怪獣の攻撃に至るまでの日本連邦ローゼンブルム王国などへの一連の攻撃や挑発行動がね。」

志木田茂雄外務大臣が、生きるか死ぬかの選択を迫るかのように、迫力ある顔と声で言った。

 

まさか??

私やミスティが襲われた2105年のテロ事件ですらも、裏で仕組まれていたのか??

一体、誰が??

 

「我が日本連邦に加入したい、という貴国の希望は、確かに承りましょう。

しかし、それには、当然の事として、これまでの関係の清算や事実関係の確認も必要です。

そうしなければ、旧ミスルギ皇国やエンデラント連合が、我が日本連邦に先に加入する事態にもなりかねませんぞ。」

 

「全ては、異星人の「ザイア星のザイア民族」がマナのシステムに目をつけ、レプタニアン星系の私の成果を持ち逃げし、自分の星系に利益を持ち出すように勝手な改造を施したのが原因です。

そして、それに積極的に加担したのは、マナのシステムを売り込んだフランスであり、マナを利用した国家を「コントロール」していったのです。

 

2105年の王宮テロ事件以降、今年の7月7日の大型怪獣の攻撃に至るまでは、全て、異星人の「ザイア星のザイア民族」が、ジュライ元皇帝の「替え玉」やジュリオ元皇太子の「替え玉」によって、引き起こされたのです。

これは、政権内部のスパイ組織や反体制派が組織的に仕組んだ事です。

 

私も、何か怪しいとケマル・縁部理桜さんと情報交換しつつ、掴んだ事ではあるのですが。

ですから、ケマル・縁部理桜さんとは、ミスルギ皇国などでは今日は本物だ、偽物だ、と言った具合で確認し合いながら、お互いにロビー活動やプロデュース活動をしていたのです。

 

もっとも、2110年の王宮襲撃事件に関しては、私にも落ち度がありました。

『新しい世界を造ろう』と、マナの社会システムを変えようという改革勢力を政権内に育てようと動いたのですが、どうも当時のリィザ・ランドック元近衛長官やジュリオ元皇太子には勝手な解釈で動かれたようです。

また、伝えたれた情報も歪められていたようです。」

エンブリヲ・フォン・フリードリッヒ首相が、裁判で証言しているかのような口調で話した。

 

「その当時、もう少しオブラートな言い方が出来なかったのですか??」

思わず、マイク・ジャクソン広報大臣が言った。

 

「リィザ・ランドック元近衛長官は、2110年の王宮襲撃事件では貴方から唆されたように証言していますよ。」

 

「それだけ、彼らも追い詰められていたのです。

またリィザ・ランドック元近衛長官も、多くの後ろめたい行為もしていましたよね。

例えば、彼女が在職中に行った100京円規模の横流しの件も、私は知っていますよ。」

エンブリヲ・フォン・フリードリッヒ首相が、はっきりと言った。

 

「もっとも、日本連邦やローゼンブルム王国の警備体制や防衛体制のレベルの高さは、当時から良く知っていました。

だから、基本的には心配はしていなかったのです。

ケマル・縁部理桜さんを通じて、『黄金のタッグチーム』などの件も聞いており、私が2105年頃から日本連邦にも頻繁に連絡していたのは、志木田茂雄外務大臣も良くご存じのはず。」

 

「ははははは、一本取られましたな。」

志木田茂雄外務大臣が笑った。

 

「ジュライ元皇帝の「替え玉」やジュリオ元皇太子の「替え玉」の件は、ご心配なく。

既に、2110年の一連のミスルギ皇国動乱の際、拘束しております。

ジュリオ元皇太子の本物は、わざと薬物を注射された上で、アルプス山脈の山中に放置されていたのを、地元の住民によって保護され、田中大臣の経営する医療法人の病院に収容されました。

医師が完全回復を確認したのは、今月1日になってからですがね。

ですから、あの動乱時に『黄金のタッグチーム』が輸送機を攻撃して不時着させ、拘束した人物は替え玉だったわけです。

それも、ジュライ元皇帝とジュリオ元皇太子の「替え玉」が2人とも機内にいたのです。

 

シルヴィアさんも、アンジュリーゼさんの機転がなければ、その後の調査では、もう少しで替え玉にされるところでしたよ。」

志木田茂雄外務大臣が、国家の機密事項をさらっと言った。

 

 

そうか、私達もその替え玉によって戦闘を強いられていたのか。

だから、予備役の私達の戦闘行動が、一番効率が良かったのか。

国際政治とは、何と非情で、かつ非常な世界なのか。

 

 

この時から、私やミスティ、アルベルトやヒルダが、政治への関心が高まり、かつ世の中を正さなければならない、との思いを次第に強めていったのだ。

現実を目の当たりにして、自分を含めてその運命に翻弄されていると知ったのだから、当然と言えば当然だろう。

天命は、この時に私達に進むべき道を示してくれたのだ。

 

 

「2110年の一連の戦闘とか、エンデラント動乱や、2111年のガリア動乱も同様ですか??

今年7月7日の大型怪獣の件はどうですか??」

ケマル・縁部理桜氏は尋ねた。

 

「2110年の一連の戦闘とか、エンデラント動乱、2111年のガリア動乱も、仕組んだのはマナを使用していた国家の仕業です。

ミスルギ皇国の軍人や当時の検疫官も、指揮命令系統を無視した行動を行い、それに関与していました。

今年7月7日の大型怪獣は、それを作成したのはフランスであることが判明したのです。

昨日、田中隆男大臣と中谷元雄国防総省大臣から報告を受けました。」

 

 

本当に、衝撃的な事実だった。

人類の争いだけではなく、異星も絡んだ戦いになってきたのか。

 

 

 

 7月15日の夕方。

私達は、「政府広報」の一環としての撮影やレポートなどを終えた。

宿泊先の迎賓館に戻り、志木田茂雄外務大臣らと夕食を頂いていた。

 

「君達には、本当に難儀を掛けているよ。」

志木田茂雄外務大臣は、私達をねぎらった。

 

「ただねえ、正規軍を出した戦闘は、秘密裏に行う特殊作戦や潜水艦戦、航空戦などと違って、陸軍などの大部隊を堂々と使う事はやりにくいのだ。

だから、特殊部隊とか、予備役とか、民兵組織とか、諜報部隊の戦いになる面もあるのだ。」

 

エンブリヲ・フォン・フリードリッヒ首相も、その意見に同意して、次のように言ったのだ。

「だからこそ、君達のように優秀で有能、有益な人物や組織が必要になるのだよ。」

 

「何だか、少々複雑な気分にもなります。」

私は言った。

「ただ、私達が国家や世間から必要とされる理由も、よく分かりました。」

 

 

 

 7月16日に私達はウィーンから帰国した。

その後、宇宙医科大学校は7月19日には終業式を迎え、4年生の1学期を終えた。

 

 その日の夜、つまり7月19日の夜に、「黄金のタッグチーム」の私達4人はようやく予約されたスケジュールから解放されたので、その日から滞在したのは、王宮から程近い、あの「ローゼンブルム王宮 ジェノヴァ海岸別荘」である。

そう、その隣に、「高級リゾート 縁部理桜ホテル」がある別荘である。

今回は、すんなりと使用出来たので、「また何かある」と思って、勉学や休養に集中した。

 

案の定、正式に夏休みに入った翌日の7月20日、午後1時に連絡が入った。

 

私達4人の「黄金のタッグチーム」は、無料で「ローゼンブルム王宮 ジェノヴァ海岸別荘」を使用させて貰える引き替えに、極めて重大な話があるので来て欲しい、と言われ、『高級リゾート 縁部理桜ホテル』の特別室に案内された。

準備が整い、海で遊ぼうか、プールに行こうか、と迷っていたタイミングだった。

 

 

そして、その極めて重大な話で、政治や社会の大きな転換を迫ることを証明する事実と、今後の方針が明らかになったのだ。

 




 今回は大学4年生の夏、私ことリデルの誕生日パーティー後のエピソードを描きました。


4年生の夏休みを迎え、大きな節目を迎えた「黄金のタッグチーム」である私ことリデル、ミスティ、アルベルトとヒルダの私達4人は、更なる愛と絆を深め合うのでしょうか??
私達4人を含めて、宇宙医科大学校の同期生らは、どのように今後発展していくのか??

大きく暴露された事実を前にして、今後の情勢の変化は??

4年生の夏以降、私達に益々大きな発展と大波乱の予感??

次回をお楽しみに。
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