クロスアンジュ 天使と竜の輪舞~愛するミスティ・ローゼンブルムと共に~ 作:田中_jack
昨日の私とミスティの記者会見は、概ね大成功であった。
翌日4月29日のJUFNNが朝8時から放送している「とくダネNEWS!」では、大倉キャスターが、その記者会見について、こう伝えた。
「自治国家ローゼンブルム王国の王都王宮付近で、一昨日の夕方、かなり離れた『廃棄物処理業者の設備や建物で発生した』事件に関連して、昨日の夕方16時より、王宮で、被害に遭われたリデル・田中君とミスティ・ローゼンブルム王女が記者会見を開きました。」
「笹井君、やはり今回の事件はテロ事件と断定されたの?」
「その通りです。やはり、事件発生当時の映像解析や遺留品などから、産業廃棄物の爆発事故を装った王宮などを狙ったテロであるとしか考えられないと捜査当局や情報機関は判断しており、王都では、現地の警察が捜査本部を設けて犯人の行方やテロの手口、犯行の背景などを捜査中です。
また、昨日の記者会見でもありましたが、犯人と見られる5人のグループがミスルギ皇国へ逃げ込んでいるとの情報があり、警察や日本連邦政府当局はICPOを通じて国際手配や国際的な捜査協力を要請しております。」
「記者会見には、小学校に入学してまもないリデル・田中君とミスティ・ローゼンブルム王女が、本当にハキハキとした受け答えをしてくれていたね。中田君、記者会見の様子はどうだったの?」
「はい、私も記者会見に出席して質問したのですが、正に大倉さんの言われる通りでして、とても小学校に入学したばかりとは思えないお二人でした。
特に、リデル君が、騎士道や武士道に触れるなど、大人顔負けの論調でした。
また、ミスティ王女の可愛らしさは、本当に最高でした。」
「記者会見の後半は、文字通り二人のモデル撮影会のような感じだったのでしょう?
うーん、これは大物になるお二人ではないのかなあ。そんなオーラが感じられるようです。今後のご活躍に期待したいところです。」
大倉キャスターは、今日も私とミスティを「控えめで持ち上げる」論調で、番組を取り仕切ってくれた。
後日、何か言い訳でも作って、私とミスティで会いに行かなければ、と私は思った。
記者会見の翌日の29日、特別授業参観日である小学校の教室で、授業の合間に、私とミスティの同級生の男の子の一人で、数学や物理、地理に非凡な才能が芽生えているアルベルト・マンシュタインから相談を受けた。
自分の住んでいる市の隣町である、国境を挟んだエンデラント連合の田舎町に、1人の幼なじみの少女が、「ノーマ」として逮捕、社会から排除された、というのだ。
ここで、当時、ミスルギ皇国やエンデラント連合などの、マナを使用している国で、「ノーマ」が逮捕された後の扱いについて触れておきたい。
ローゼンブルム王国の隣国であるミスルギ皇国、エンデラント連合、ガリア帝国では、「マナ」の使用者が絶対であり、ノーマが逃走したり、ノーマを匿ったり庇ったりする者には、発砲や射殺さえ許されていた。
また、ノーマの逮捕をするなら何をしても良い、と言う取締の検疫官らの横暴も酷く、捜査や家宅捜索と称しては金品を持ち去る、家屋や部屋、店や会社の設備や商品などを破壊する、逮捕した人の持ち物や衣服を「没収」と称して剥ぎ取る、婦女暴行や拷問をするなど、正に中世の魔女狩りや、ロシア革命時の粛清の如き残虐で非人道的な行為も半ば公然と行われていた。
マナを使用している国では、知識人を中心に、「ノーマを排除する以前に検疫官を排除しろ」との市民の怨嗟の声が徐々に高まりつつあった。
そのため、マナを情報通信や金品の転送機能に使用し始めてから、政治社会体制を嫌った人々やノーマ逃亡者、ノーマ擁護者などは反体制の地下活動か、日本連邦などに亡命するか以外の選択肢はなく、この3カ国からの亡命者が増加する傾向にあった。
その他の「マナ」を使用する国家、マーメリア共和国、ヴェルダ王朝ではそこまでは厳しくはないが、ノーマへの取締は行われていた。
逮捕されたノーマは、初めの頃は、ローゼンブルム王国を通じてアルゼナルへ送られていたが、ローゼンブルム王国が疲弊した2098年頃からは、アルゼナルへ送られることはなく、ローゼンブルム王国へ追放されるだけで、その後の管理はされず、ノーマやアルゼナルへの人員や物資の授受を含めて、「日本連邦のやりたい放題」になっていた。
そして、2100年にローゼンブルム王国は日本連邦の一部になり、アルゼナルは日本連邦の領土の一部として、日本連邦軍の「管理下」に置かれた。
また、日本連邦と「ドラゴン側の世界」にて、ドラゴンを統治する「もう一つの世界」などの最高幹部とは話がついており、異星人系のドラゴンか、疑似生体的(つまり生体ロボット)で人が変化していない「ドラゴン」しか、アルゼナルへは現れないようになっていた。
そのため、当然の結果として、マナのエネルギー源の「ドラグニウム」の取得量が、マナを使用している国や地域では減少しており、私とミスティが小学校に入学した2105年の時点ですら、一部で混乱が生じ始めていた。
これらの政策も、公然の秘密だが、ノーマを解放し、「マナ」の使用を出来ないようにする日本連邦など世界の大部分の国家や地域の「人道上の配慮」と「国家戦略」の一つである。
既に、日本連邦では「ドラグニウム」の取得方法が技術的に確立していたが、同時にマナや「ドラグニウム」の使用を誤ると危険であるとして、その危険性についても研究が進んでいた。
この点だけでも、マナを使用している国家や地域とは、立場や技術的素地に大きな違いがあると言えよう。
日本連邦にとっては、20世紀から21世紀にかけて、捕鯨やマグロ等の過度な規制への報復の意味もあったのだが。
2105年の時点では、アルゼナルは、純粋な「軍事拠点」であり、ノーマの志願者やマナを使用している国家からの亡命者らが概ね12歳から20歳まで交代で勤務する。長くとも24歳になれば「名誉退役」扱いである。
そのため、アルゼナルでは、この時点でもほとんどが若い人だけしかいない。
いわゆる「雇用対策」の一環でもある。
アルゼナルでは飛行場や船着き場、軍艦などの寄港地などを整備した上で、補給や人員、物資の輸送などは日本連邦がしっかり軍艦や航空機、空母機動艦隊などの護衛付きで行っており、敢えて民間の高速フェリー船も就航させていた。
また、幼年部などの教育施設や総合病院、武器製造工場、各種生産設備などは日本連邦内やローゼンブルム王国自治領内の「亡命政府」「亡命キャンプ」などにあった。
更に、逮捕され、ローゼンブルム王国自治領へ追放されたノーマは、自動的にローゼンブルム王国自治領内の「亡命政府」「亡命キャンプ」に行くことになっていた。
ここには、マナを使用しない各国政府も承認しており、日本連邦を含めた多くの団体や個人からの支援も受けていた。
アルベルトとヒルダの話に戻ろう。
アルベルト・マンシュタインから得た情報より、幸いにも、すぐにその女の子が王都、それも小学校の近くの「亡命キャンプ」にいることが判明した。
その少女の名前は、ヒルデガルト・シュリーフォークト。貴族の末裔の家系で、昔は騎士の一族としても有名であった。
アルベルト・マンシュタインは彼女をヒルダ、と呼んでいた。
「赤毛のツインテールの女の子」で、リンゴやアップルパイが好きな可愛い少女だ。
特別授業参観が終わり、早速、私とミスティ、アルベルトの3人で近くの「亡命キャンプ」に保護されているヒルダに会いに行き、幸いにもすぐにヒルダに会えた。
ヒルダは、アルベルトを見ると、すぐに「アルベルトなの?会いたかった」と泣きながら、アルベルトに抱きついてきた。
見たところ、特に暴行や虐待された様子はないが、家族と引き離された恐怖と不安が強い様子であった。
「私ね、突然捕まって、国境でローゼンブルム王国に引き渡されたの。どうしたら良いのか、なぜこうなったのかすら、さっぱり分からないままここに来たの。」
「今までの事より、これからの事を考えよう、ヒルダ」と、アルベルトが励ます。
「そうだよ、ヒルダさん。頑張ろうよ」
「頑張りましょう、ヒルダさん。応援しますよ」
私とミスティも励ました。
その時だった。
ローゼンブルム王国の国王ご夫妻が、有名プロデューサーであるケマル・縁部理桜(えんぶりお)氏と共に、私達の前に現れたのである。
「お父様にお母様、どうされたのですか?」と不思議そうにミスティが尋ねると、
「なに、ケマル・縁部理桜さんが、どうしても君たちに会いたいと言ってね、ご紹介したのだよ。」と国王陛下がミスティに返事をした。
「ケマル・縁部理桜さん、この4人はいかがでしょうか?」
「いいですね、いいですね、正に私が理想としている、未来の大スター、成長株そのものの人材です!!」と、ケマル・縁部理桜さんは、初対面からたったの5秒で即断即決して、私達の将来を決定する発言をしてしまった!!
後年、「黄金のダイヤモンド・タッグ」と呼ばれることになる、リデル・田中とミスティ・ローゼンブルム、アルベルト・マンシュタインとヒルデガルト・シュリーフォークトの4人がタッグチームを組むことが、この時、事実上、決定されたのだ。
ちょうどその頃。
私の父、大統領府の主席補佐担当大臣の田中隆男は、連邦政府の観光庁長官や複数の大統領補佐官から泣き言を言われていた。
「田中大臣、何とか助けて下さい。有名プロデューサーであるケマル・縁部理桜氏と、直接の連絡がなかなか取れないのです。大統領もミスルギ皇国に対抗するために、彼とコンタクトを取って、大ヒット番組や歌などの宣伝活動を強化せよ、と指示を受けているのです。」
「事務所に連絡しても、「多忙でこちらも連絡出来る時間が限られている」としか返答がありません。」
「彼は気に入った人には積極的に会いに行くようです。人脈の広い田中大臣に、是非お力添えを!!」
「私は元々医者で、芸能や広報活動はお門違いですが。」と父が話すと、
「ご子息のリデル君が記者会見に出ていたではありませんか。ローゼンブルム王国の国王ご夫妻にも人脈があるならば、可能性はありますよね?」
「とにかく、何とかならないでしょうか?」
と、父は、帰宅間際に、無理矢理、ケマル・縁部理桜氏のコンタクト作業に協力させられた。
しかし、通常の方法であるメールやTV電話では、結果は同じであった。
父は、自宅に戻ることにして、夕方、大統領府を後にした。
その後、意外な場所で、ケマル・縁部理桜氏のコンタクトの約束を果たすことになる。
次回は、リデル・田中とミスティ・ローゼンブルム、アルベルト・マンシュタインとヒルデガルト・シュリーフォークトの4人がタッグチームの「ドタバタ始動劇」です。
これにアンジュやサラなどが、どのように関わるのか?
お楽しみに。