クロスアンジュ 天使と竜の輪舞~愛するミスティ・ローゼンブルムと共に~ 作:田中_jack
現在の北朝鮮も、冷戦終結までの1990年頃までは「ある程度の余裕」があったそうですから。
「クロスアンジュ」は、旧ソ連の社会に似ている点と、米国のクレジットカードが幅をきかせている社会にそっくりですね。
それだからこそ、敢えて、この作品が出来たのかも知れません。
2125年12月23日の午後7時。
「慈善クリスマスコンサート」を名乗った、VIPのディナーショーが、ジェノヴァのローゼンブルム王宮で開催されていたパーティーが、お開きになった直後。
アジア太平洋連邦の阿倍野真三大統領、私の父で欧州連邦の田中隆男大統領、日本連邦の志木田茂雄大統領と中谷元雄副大統領の4人に相談を持ち込んだVIPがいた。
独のアーセナル・シュワルツネッガー大統領と、その夫人のリィザ首相である。
既に、リィザが兼任していた外務大臣は、他の政治家に担当して貰っていた。
「少し、『喫茶アンジュ』でお話したい件がございまして。
欧州の件と、地球全体の今後の行く末の件で。」
新たなる動きが、始まろうとしていた。
『喫茶アンジュ』では、今回のパーティーに参加した私達『大統領府特別補佐官』らと、「アジア太平洋開発金融機構」の初代総裁である麻生次郎総裁、「銀河連邦経済パートナーシップ協定 地球代表部」の甘利明雄代表、それに日本連邦や欧州連邦の主要閣僚らが既に待っていた。
「皆さんと一同に会する機会を頂き、誠に有難うございます。
私はこの通り元気です!!」
麻生次郎総裁は、大統領府にいた時以上に、エネルギッシュになったお顔だ。
「天の川銀河系やアンドロメダなどへの宇宙外遊や出張では、毎回発見と驚きの連続ですよ。」
甘利明雄代表が、笑って言った。
「お二人ともに、お元気そうでなによりです!!」
日本連邦の志木田茂雄大統領が、笑顔で二人を労った。
「志木田大統領こそ、お元気そうで何よりです!!」
麻生次郎総裁が嬉しそうに返事をした。
「早くこっちに来て下さいよ。
外交がこんなに難しいことかを今更ながらに痛感しています。」
甘利明雄代表が、笑って言った。
「わかりました、甘利代表。
あと2年ほどのお時間を下さい。」
志木田茂雄大統領も、笑って返事をした。
日本連邦や欧州連邦の主要閣僚らも、同様の挨拶を交わした。
この日を平穏に過ごせることが、どんなに嬉しいか。
9月11日の「アケノミハシラ」の崩壊の後で引き起こされた、経済や金融危機の対応を最優先とするため、首脳部をはじめ、私達も東奔西走して頑張った。
「アケノミハシラ」の崩壊の後で引き起こされた大政変劇と大経済激動にて、2125年の11月末までに、20垓円を超える金額を稼いだが、その後も経済や金融の安定化をするために、凄まじい投資や経済、そして産業の下支えをした。
何しろ、例の国際的な金融資本を攻撃する仕手戦に加えて、彼らの裏金の密告や依頼などが凄まじく、主な依頼などの事案100件だけでも10垓円に達したので、それを元手に「ベンチャー企業の立ち上げへの資金協力」や、「技術開発支援」、私達同期生などの「人脈を駆使した運用」などを徹底的に行った。
それが、更なる資産形成や富の形成につながったのだ!!
特に、秋月夫婦の実家、つまり「秋月電子グループ」や「水瀬グループ」の銀行や金融会社の「協力とそれに見合った出資」や、私ことリデル・田中の家系の人脈を駆使したことにより大きな効果を挙げ、それが2130年現在でも投資の効果による配当や経済成長という形で続いている。
2125年12月23日現在ですら、稼いだ金額が既に先月末の2倍、40垓円を超える金額になっていた!!
「本当に、今回の危機をリデル君達の力で乗り切る事が出来た事に、心から感謝している。
今後とも、資金を含めて宜しくお願いしますよ。」
アジア太平洋連邦の阿倍野真三大統領、私の父で欧州連邦の田中隆男大統領、日本連邦の志木田茂雄大統領と中谷元雄副大統領が、和やかにそれぞれの立場で、同じ主旨の感謝の言葉を、私達に話された。
勿論、「今後ともアジア太平洋連邦などのスポンサーという立場で居続けて下さいね!!」という、裏のある意思の表明であることは、明らかだった。
これが、「政治的な配慮」と言うものの一つであるのだろう。
午後7時15分。
「そろそろ、個別の作業部会を行いますので、分野別にご集合下さい。」
ホスト役の、エマニエル・ローゼンブルム国王が呼び掛けた。
皆がそれぞれの作業部会に移動し始めた時、アンジュが、夫のタスクの制止を振り切って、駆け寄ってきた!!
「ちょっと、いいかしら。
アーセナル・シュワルツネッガー大統領閣下と、ご夫人のリィザ首相閣下。」
アンジュが、いつもの勝ち気な目をして、挑むように言った。
サラも、これはまずい、と思って駆け寄って言った。
「アンジュ、よしなさい!!」
また、アンジュか。
例のミスルギ皇国時代の「100京円」問題だろう。
「リィザ、貴女はどうしてこうも図々しいのよ!!
一体、何考えているの??」
アンジュが、いつも以上の勝ち気な目をして、怒鳴るように言った。
「私はいつも国益を考えています。
それが、首相という名の政治家の役割です。」
リィザが、その細い目をしながら、表情を変えずに淡々と答えた。
「ほう。
国益、ねえ。
欧州連邦の田中隆男大統領閣下は、旧ミスルギ皇国でリィザ元近衛長官が、何をしたのかをご存じでしたよねえ。
それが、我が国の国益になっているのですか??」
アンジュが尚も食い下がる。
リィザがミスルギ皇国時代に100京円を出身族のドラク族に送金していたのは周知の事実だ。
それは既に私が天皇皇后両陛下や当時の阿倍野真三大統領、そして、アンジュの父である、モモコ連邦のジュライ大統領の了承の下で200京円を立て替えたことで解決している。
今更、何が言いたいのだろう??
「アンジュ大元帥の言われる事は、よく承知しておりますよ。
しかし、その100京円の件のお陰で、貴女も含めて身を守りきる事が出来ました。
そして旧ミスルギ皇国が崩壊するのを防ぐことが出来たのも事実です。」
欧州連邦の田中隆男大統領が、感情的にならずに、さらりとした言い方で答えた。
さすがは、私の父親だ!!
偉い!!
「私は、この件が解決したとは聞いていないわよ。
第一、お金だって戻っていない!!」
アンジュが、アンジュらしく「ツンデレの表情」でぶち切れて食い下がる。
アンジュは、両親から何も聞いていないようだな。
私と志木田茂雄大統領との間で、「目配せのやり取り」をした後、私はアンジュにこう言った。
「その件は、既に政治的には解決しているのだよ、アンジュ。」
「何ですって!!」
アンジュが驚いた。
「誰が、誰が解決させたのよ??」
憤る声で、アンジュは質問した。
「アンジュの前にいる、リデル・田中大元帥、その人でーす!!」
ミスティが、ミスティらしく、私が答える前に、このように言った。
「リデルの英断で、この件は少なくとも政治決着したのだ。」
アルベルトが、淡々と答えた。
「そうそう。
これは日本連邦の最高首脳部の了解の上で、リデルが英断を下したから解決したのよ。
感謝しなさいよね、元皇女様。」
ヒルダが、珍しく以前にアンジュに対して言っていた口調で答えた。
アンジュは、これらの言葉に大きな衝撃を受けていた。
「う、嘘でしょう!!
お金はきちんと払ったの??」
もう、狼狽そのものの表情だ。
「ジュライ大統領に直接、200京円をきちんと支払いましたよ。
ジュライ大統領も大変満足されていました。」
私も、父に倣って、努めて感情的にならずに答えた。
アンジュが、「信じられない、リデルにそんな力や技量があったなんて・・・」と、大きなショックを受けて文字通り目を回していた。
これを見たタスクが慌てて、アンジュを抱きかかえて支えた。
おいおい、100京円で目を回していたら、今後の政治や経済の荒波に絶えられないぞ。
まあ、リィザに対しては、王宮襲撃事件などを含めた心のわだかまりもあったのだろうから、無理もないが。
「全く、アンジュは平気で無茶をするのね。
まあ、ドラゴン世界のカンフル剤でも飲ませますからご安心を。」
サラが、笑ってアンジュに「ドラゴン世界のカンフル剤」を飲ませた。
このカンフル剤は、相当な効果のある薬で、「死人でも目が覚める」という。
熊の肝のように効果がある。
直ぐに効果があり、アンジュが起立して立ち上がり、皆に頭を下げた。
この件については、2130年に、私が日本連邦の大統領に就任後、すぐに「道義的な解決」を進めて、最終解決することになる。
話題を戻そう。
個別の作業部会が開始され、私達「機動任務対処集団」38人は、日本連邦などの首脳部と共に「打ち合わせ」を行った。
その内容は、今回の「アケノミハシラ」の崩壊の後で引き起こされた、経済や金融危機の対応で露見した、独の南部ミュンヘン郊外の鍾乳洞にあった、20世紀以来の隠し財産や「聖杯」と呼ばれる異能な品物の取り扱い、そしてスペイン、フランス、ポーランド、南朝鮮に主に居る、「アケノミハシラ」に巣くっていた金融資本の連中に迎合した政治家や官僚、企業などに対する処置だった。
独の南部ミュンヘン郊外の鍾乳洞にあった、20世紀以来の隠し財産や「聖杯」と呼ばれる異能な品物の取り扱いについては、私達「機動任務対処集団」38人などを含めて全力で対処し、現在は無害化されている。
2130年現在は、その広さを利用した野菜工場などの工場や宇宙環境を模した研究開発施設、各種の発電所、軍の貯蔵庫などの重要産業や重要施設、防衛施設として使用されている。
勿論、大きな観光資源の目玉としても価値があり、地域の活性化にも一役買っている。
「この発見された書類には、20世紀前半から22世紀の初頭までの、歴代の独の首相や大統領の署名がありました。
アーセナル・シュワルツネッガー大統領閣下と、ご夫人のリィザ首相閣下の署名はありませんでしたが、調査の結果、ベルリンの独大統領府の秘書室長がその署名を待っていた書類を作成していたことが判明しました。
つまり、独の官僚は、大統領府の役人を含めて、これらの事は周知の事実だったのです。
そして、その秘書室長はフランスのドウラクードット大統領が雇った殺し屋集団に殺害されそうになりましたが、我々の手で保護しました。
もっとも、デューク東郷夫妻などの狙撃などが冴えまくった成果も大きいものがありますが。
殺し屋集団は私達や憲兵隊が逮捕した上で、「ドラゴンの世界」で尋問を受け、全てを自供しています。」
私は、この事実を淡々と述べた。
出来れば、このような事があったとは、個人的感情としては知りたくもなかったのは事実だ。
それでも、私は軍人であり、政治家であり、そして大統領の特別補佐官である以上、見なくても良いものなどは無いのだ!!
アーセナル・シュワルツネッガー大統領と、夫人のリィザ首相は、国の恥であることを暴露されたような表情を浮かべていた。
当然だろう。
「知らぬは、首脳のみだけだったとは。
本当に情けない!!」
アーセナル・シュワルツネッガー大統領が、吐き捨てるように言った。
「これも、私自身の政治家としての不徳の致すところです。
皆様に、お詫び申し上げます。
また、20世紀以来の隠し財産や「聖杯」と呼ばれる異能な品物の無害化をして頂き、
有難うございます。
全てを、差し上げます!!」
「一応お尋ねしますが、全ての価値はどれくらいなのですか??」
リィザ首相が、尋ねた。
当然だね、その質問は。
「施設の価値、蓄えられた金銀などの貴金属や宝石類、レアメタルなどの鉱物資源、美術品や芸術品などの貴重品の価値などを合わせれば、少なくとも欧州連邦の出資金の合計、10垓円を超えるかと。」
私はそのように回答した。
現時点では、欧州連邦の加盟国家や加盟地域を合わせて50があり、加盟国家・地域毎に1000京円以上の出資が必要なのだ。
実際には日本連邦や英独が相当な出資をしているので、合計で10垓円の出資金となっているのだ。
もっとも、日本連邦が立替えして払っている部分もかなりの金額に上っているのも事実だが。
まあ、これで、立替金も回収しました。
めでたし、めでたし。
「次に、スペイン、フランス、ポーランド、南朝鮮に主に居る、「アケノミハシラ」に巣くっていた金融資本の連中に迎合した政治家や官僚、企業などに対する処置ですが、徹底的な取締や摘発、経済制裁しか、対処方法はないのでしょうか??
少なくとも、南朝鮮については、ご考慮をお願いしたいところです。」
私は、このように提案した。
私の幹部学校での同期生だった金定男元帥が、南朝鮮の大統領に就任してからおよそ半年。
徐々にではあるが、成果が挙がりつつある。
今、その成果を無駄にする訳にはいかない。
「その件に関しては、私から提案があります。
打ち合わせ終了後、私と夫のアーセナル・シュワルツネッガー大統領が緊急記者会見をします。
そして、独の南部ミュンヘン郊外の鍾乳洞にあった、20世紀以来の隠し財産や「聖杯」と呼ばれる異能な品物の取り扱いについての経緯の説明と、謝罪をします。
その上で、スペイン、フランス、ポーランド、南朝鮮に主に居る、「アケノミハシラ」に巣くっていた金融資本の連中に迎合した政治家や官僚、企業などに対する徹底した取締の処置を発表します。
南朝鮮については、リデル・田中大元帥が、事前に直接、金定男大統領に連絡をして、協力と賛同を求めては如何でしょうか??
同期生ですし、そのくらいの事はしても宜しいかと。」
リィザ首相が、そのように提案した。
「素晴らしいご提案です!!」
中谷元雄副大統領が賛成した。
「私も賛成します!!」
アーセナル・シュワルツネッガー大統領も賛成した。
「そのご提案で宜しいかと。」
志木田茂雄大統領も賛成した。
「植村仁志外務大臣、シルヴィオ・ベルルスコーニ国防総省大臣、記者会見で同席を宜しくお願いします。
リデル君には、同期生として金定男大統領をしっかりと協力を取り付けて下さいね。
多少の譲歩や情報提供は構わないから。」
午後7時45分。
私は、南朝鮮の金定男大統領に電話を掛けた。
「同期生のよしみでお教えしますが、これからすぐに重大な内容を緊急記者会見で公表します。
その内容に賛同して協力して下さい。」
私は、「あせった口調で」、必死で話を持ちかけた。
「その重大な内容とは何です??」
金定男大統領が尋ねた。
「金定男大統領が6月25日に就任された理由、そのものに関するものです。
「アケノミハシラ」に巣くっていた金融資本の連中に迎合した政治家や官僚、企業などは、貴国にもまだまだたくさん居ます。
それに対する、徹底した取締に賛同し、協力して欲しいのです。」
私は、必死に説得した。
まあ、我が日本連邦にも、例えば英国の社会労働者党とか、ロシアの人民労働党とか、過激な環境保護団体やNPO法人にも連中の支援や協力者が居たことが分かり、摘発が進んでいるが。
「分かった、協力しましょう。
情報提供には感謝します。」
金定男大統領が賛同してくれた。
「経済へのてこ入れに支障が出ないように、お手柔らかに。
それに、我が国に対しての軍事や技術の協力、経済支援などを何とか進めて頂きたいのですがねえ。
我が国の軍を日本式に編成替えしたり、宇宙軍の本格編成などをしたり、重機重電工業を発展させたりしたいのですが。
志木田茂雄大統領閣下にも、お話をしてみて下さい。
宜しくお願いしますよ。」
やはり、こう来たか。
「お話をしてみます。」
私としては、このように答えるしかなかった。
午後8時。
私達「機動任務対処集団」38人も参加して、緊急記者会見が始まった。
そして、アーセナル・シュワルツネッガー大統領と、夫人のリィザ首相が、冒頭に自身の不徳を詫びた後、独の南部ミュンヘン郊外の鍾乳洞にあった、20世紀以来の隠し財産や「聖杯」と呼ばれる異能な品物の取り扱いについての経緯の説明と、謝罪をした。
その上で、スペイン、フランス、ポーランド、南朝鮮に主に居る、「アケノミハシラ」に巣くっていた金融資本の連中に迎合した政治家や官僚、企業などに対する徹底した取締の処置を日本連邦の処置として発表した。
その記者会見で発表された内容の衝撃は、世界を駆け巡った。
そして、これが、私を大統領へ引き上げる大きな機会の一つとなったことは事実だ。
何しろ、この後で、フランスなどでは政変劇や経済動乱が多発、第三次フランス革命、そして私が大統領になる決定的な出来事が起きる、引き金を引いたのだから。
正に、歴史を作る仕事とは政治と軍事を執る事である!!
そして、リィザらの提案で私達は大きなチャンスを得ることになったのだ。
今回は、悪徳金融資本の崩壊後の政変劇とその後の動乱の予感を2125年冬の動きを描きました。
リィザ、アンジュやサラにも、久し振りに登場して頂きました。
このような機会を可能な限り、作ります。
宇宙医科大学校の真の目的が『新人類や新文明の創造』であったことが判明しました。
私達は政治家の仲間入りを果たした後、どのように実行していくのか??
私達に対する期待もますます膨らむ中、日本連邦や欧州連邦に加えて、新たにアジア太平洋連邦が結成され、それらの更なる拡大や大統領就任に向けて、何を求められ、成果を挙げるのか??
次回は大波乱と大激動への道です。
次回をお楽しみに。