クロスアンジュ 天使と竜の輪舞~愛するミスティ・ローゼンブルムと共に~ 作:田中_jack
2015年の1月7日から8日にかけてのパリで発生した連続テロ事件、そして11月13日夜にパリで発生した同時連続テロ事件は、皆様のご記憶にも新しい出来事かと存じます。
しかし、そのテロ事件であっても、複雑怪奇な「国際情勢」と、「各勢力の駆け引き」が背景にあるのです。
本作品にある、2125年の「2つの大統領府秘書室長事件」で、2015年のテロ事件同様に、事件の背景を「二次小説的な感覚」で浮き彫りにしたいと存じます。
リデル・田中やミスティらはどのように立ち回るでしょうか??
2125年12月24日、午後4時30分。
フランスの軍と警察が「クリスマスプレゼント」として、共和制の崩壊と、臨時政府の設立を宣言した。
これにより、現在の日本連邦とフランスとの間の緊張関係は、これ以上は悪化することはないことになった。
後に、これらの事件は「2つの大統領府秘書室長事件」と呼ばれることになる。
そして、この事件が発端で社会の矛盾という名の燻っていた火が燃え広がり大波乱と大激動へと、歴史は進んで行くことになったのだ。
ところが、私達「機動任務対処集団」38人のように、出来事に関わっている人物にとっては、当時の状況では歴史がどう動くかなどを考える余裕もなかったし、それどころではない状況であった。
皮肉な事だが、それは事実だ。
何故ならば、臨時政府の成立の直後に、臨時政府のアラン・ド・シャルプール大統領(大元帥より名目上の5大元帥に昇進)から、このような緊急メッセージが寄せられたからだ。
「ドウラクードット前大統領が、支離滅裂な命令をして、モンブラン・ド・パスツール大統領府秘書室長に書類を渡した件について、至急、ご対応をお願いしたい。
ドウラクードット前大統領より公布された「国家予算の全てを報酬として渡す」の書類が無ければ、我が国の明日、25日の全ての政府からの支給金が停止してしまうのだ。
クリスマスの大混乱を避けるためにも、大至急、渡して欲しい。」
おい、もう4時30分だぞ!!
フランス政府の無能!!
22世紀には銀行業務も自動化が進み、ATMも銀行も長時間稼働している場所が多くなった。
また、インターネットの送金システムやコンビニ等のATMの普及も進んでいるので、逆に言うならば、今回の事件で国家予算が全て無くなれば、フランス中を混乱に陥れることになるのだ!!
それこそ、現代の「取り付け騒ぎ」「国家の債務不履行」が発生してしまう!!
ジェノヴァの王宮に移動した私達やケマル・縁部理桜(えんぶるお)財務大臣、植村仁志外務大臣、シルヴィオ・ベルルスコーニ国防総省大臣が、慌ててフランス政府や日本連邦政府、欧州連邦政府と直通立体映像回線で協議して、ここは何とかしのいだ。
その時間、約10分間。
「国家予算の全てを報酬として渡す」の書類の手続きと、そこに書かれていた予算命令とその書かれていたコードNoの取り消し、日本連邦で差押えしていたフランス政府の予算のフランス財務省への送金が終わった。
本当に、緊張が走った10分間であった。
もっとも、独大統領府の秘書室長のボーゲン・シュルツ氏を襲撃した「殺し屋集団」に支払われた機密費としての報酬は没収し、私達が頂いたままですが。
(機密費としての報酬は、フランスの国家予算の10%!!)
この後、フランスの臨時政府のニース・ド・ジュール国防大臣(大元帥より名目上の5大元帥に昇進)から、今回の一連の事件の顛末を聞かされ、更に唖然とした。
「今回のテロは、シリアやリビアで人員と武器の調達、計画や作戦訓練が行われ、スペイン経由でベルギーとフランスに入国してアジトを構え、ドイツのベルリン近郊で大統領府秘書室長へのテロを起こした。
日本連邦各国各地域では、出入国管理やテロ対策の警備や監視が厳しく、難民の入国すら厳しい。
とても21世紀初頭のように、地中海から小型船で侵入して救助、即、難民認定とはいかないからだ。
また、トルコからバルカン半島経由で中欧や北欧諸国や諸地域入国するのも難しい。
(宇宙時代である22世紀に入っても、陸海空軍や沿岸警備部隊などの強化を行っているのは、テロやゲリラ、特殊部隊等への対処だけではなく、不法上陸や難民対策のためでもある。)
シリアやリビアからは空路や海路でも侵入は出来ないので、警備の甘いスペイン経由でフランスやベルギーに入国した。
紛争難民を装えば、これらの国には入国は簡単だからだ。
南朝鮮、スペイン、フランス、ポーランドからは外務省職員の身分を持った殺し屋や工作員などが集まったが、その資金や武器はドウラクードット前大統領が勝手に国家予算の10%を機密費としており、全額使用した。
これらの一連の工作には、ドウラクードット前大統領と、その子飼いの部下や企業などが深く関わっていた。
何しろ、ベルギーは銃器類の産業が盛んで、その手の工場や技術者、熟練工も多い。
また、ブラックマーケットでは爆発物や携行対戦車ロケットなどの飛び道具も入手しやすい。
ドウラクードット前大統領は、「アケノミハシラ」に巣くっていた金融資本の連中に迎合した政治家や官僚、企業などから、毎日のように多額の政治献金や賄賂、裏金を受け取っていたので、彼らへの利益も考えなければならなかったのだ。
彼は腐敗しているだけではなく、政治手腕も無為無策で無能であった。
フランスの軍や警察などは、フランスの救国委員会系の政権ではない、2125年に就任したドウラクードット前大統領とその政権と厳しく対立しており、我々は今回の事件でも早期終結に向けて事前に準備していたのだ。
勿論、スペイン、フランス、ポーランド、南朝鮮に主に居る、「アケノミハシラ」に巣くっていた金融資本の連中に迎合した政治家や官僚、企業などの取締にも全面的に協力する。
だから今後も、私達の臨時政府に日本連邦政府も協力して欲しい。」
もう、腐敗仕切った無能な政治家が国のトップになれば、どのようになるかは、フランス革命や第二次フランス革命でも証明されているのに、どうして同じような事を繰り返すのかねえ。
私達やケマル・縁部理桜(えんぶるお)財務大臣、植村仁志外務大臣、シルヴィオ・ベルルスコーニ国防総省大臣が、フランス政府や日本連邦政府、欧州連邦政府と直通立体映像回線で協議が終わろうとしていた時、最後に私がフランス政府の代表らにお尋ねした。
「今回の一件で、フランス国民の支持は得られていますか??」
「はい、市民は大歓迎しております。」
フランス政府を代表して臨時政府のアラン・ド・シャルプール大統領は誇らしげに答えた。
「もう、フランス革命でも成功したかのように、皆、はしゃいでいますよ!!」
フランス国民の性格から見れば、期待が大きいほど、それが裏切られた時の怒りも大きい。
例えば、かの歴史上の人物として有名な(悪名高い、と言った方が的確かもしれない)ルイ16世が国民から「若くておやさしい国王陛下」と期待されていたにも関わらず、彼の政治的な無能により国民の期待を裏切り、フランス革命を勃発させ、ついにはルイ16世自身も断頭台の露と消えた。
このような事にならなければ良いがと、その時は一抹の不安を感じた。
そして、後年、その予感が的中したのだ!!
12月24日、午後5時。
「2つの大統領府秘書室長事件」に関する、全ての業務や事後処理が終わった。
やっと、帰れるぞ!!
私達は執務室や会議室の外に出た。
その途端に、ミスティが私に何か秘め事を告白するかのように、ちょっと赤い顔をして言った。
「ねえ、リデル。
今日は、クリスマス・イヴだったよね??」
全員、この言葉に、はっ、と気が付いた。
そうだ、今日はクリスマス・イヴだったね、と。
クリスマス・イヴを忘れるまで、私達は夢中になってこの件を処理していたのだ。
「ごめん、忘れていたよ、ミスティ。
愛しているよ、ミスティ」
私は、この時とばかりに、愛するミスティを抱き寄せ、唇を重ね、キスした。
そして、それを見ていたヒルダが、もじもじした顔でアルベルトに言った。
「ねえ、アルベルト。
誕生日パーティー、明日だったね。
おめでとう。」
「有難う、ヒルダ。
愛しているよ。」
アルベルトは、私がミスティにしたように、この時とばかりに、愛するヒルダを抱き寄せ、唇を重ね、キスした。
ここまでは良かった。
まるで、ハーレークィーンのような恋愛小説に良くある、愛を確かめ、確信した瞬間のように。
ところが、2121年に結婚した同僚で職場結婚した、私達と親しい、大手インターネット紙「JU-CAST」の高田純次記者と妻の女性記者、高田(旧姓:善永)さゆり記者、有名芸能スポーツ紙「ザンスポ」の高橋大輔記者と、その同僚で妻の高橋(旧姓:林)めぐみ記者、英国の有名芸能新聞「サンデー・ミラー」のマイケル・ジョーダン記者とその同僚で妻のスザンヌ・ジョーダン(旧姓:ロレーヌ)記者、JUFNNの笹井レポーターとその撮影スタッフが、私達の側にいたのだ!!
もちろん、財務大臣になったプロデューサーのケマル・縁部理桜(えんぶりお)氏とその妻マギーさん、縁部理桜氏と懇意の写真家、篠原紀信氏とそのスタッフ、いつもお世話になっている観光庁などの政府広報撮影記録関係者も一緒であったことを、すっかり忘れていた。
そして、他のジャーナリストらも、すぐ近くの一角にいたことも。
高田さゆり記者が言った。
「へえー(にこにこ笑い)。
田中夫妻にアルベルト夫妻は、なかなかの親しい、アツアツ夫婦ぶりですねえ。
これからのご予定は??」
いきなり、芸能レポーター風情の質問かよ。
他の記者らも、同じような質問が飛んだ。
「今日の夜は家族を含めて、皆が王宮に集まります。」
私は一応、冷静に答えた。
全く、これからはこの手の報道も多くなるね。
12月24日から25日にかけて、久し振りに、ローゼンブルム王宮にて、皆がゆっくりとパーティーやディナーを楽しんだ。
さて、新年の年明けからは、欧州連邦とアジア太平洋連邦の双方の議会が開催される。
出席しなければ。
年が明けて、2116年1月1日。
元旦だ。
この日は、私達は正月明けの新年会の関係から、東京に移動していた。
午前12時に初詣や新年の挨拶、ROマークの教団での新年祭に出席、それらを終えて帰宅。
そして改めて、私の家で、皆でゆっくりと宴会。
私とミスティ、アルベルトとヒルダの両家族が一緒だ。
午後1時に、何故か家の玄関のチャイムが鳴った。
「明けましておめでとうございます。
何か、ネタはないでしょうか??」
恥ずかしい表情ながら、大手インターネット紙「JU-CAST」の高田純次記者と妻の高田さゆり記者が言った。
何、それ??
何かの「ドッキリ番組」の撮影かい??
尋ねて来た2人を、私は家の中に招き入れた。
「一応、私達は政治家のはしくれですから、逆に高田純次記者と高田さゆり記者には、政治問題のネタでも欲しいくらいなのですが。」
私は尋ねた。
「政治家の見通しなどの、生の情報も欲しいのですよ。」
高田純次記者が答えた。
「現代の情報源は、ブログやツイッター、動画サイトに代表されるインターネット関連が多いけれど、玉石混交でしょう。
本当の情報はそれ程多くは無いのよ。」
高田さゆり記者が答えた。
「これからはフランスなどの欧州が面白いでしょうね。」
私とアルベルトは、同じ内容の返事をした。
この後、この言葉が本当に事実になったとは。
この時には、それ程の予測はしていなかった。
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「ちょっとコーヒーブレイク その3」
2130年のある土曜日の朝。
何故か私の家の玄関のチャイムが鳴った。
「おはようございます。
何か、ネタはないでしょうか??」
恥ずかしい表情ながら、大手インターネット紙「JU-CAST」の高田純次記者と妻の高田さゆり記者が言った。
いつもの事ながら、特にこの2人は騒がしい人だ。
マスコミの関係者は、こうでなければ勤まらないのか??
私の家には私とミスティ、アルベルトとヒルダの両家族が一緒だ。
尋ねて来た2人を、私は家の中に招き入れた。
私は日本連邦大統領、アルベルトは欧州連邦大統領だ。
「欧州連邦の拡大問題のネタがあるでしょう。」
私が言った。
欧州連邦が、中近東欧州連邦になるか、欧州地中海連邦になるか、その加盟範囲などで深い議論や検討が進んでいる。
おそらく、欧州地中海連邦になるだろう。
「いやいや、南朝鮮やアジア太平洋連邦の問題のネタの方が面白いですね。」
アルベルトも、負けずに言った。
南朝鮮の日本連邦加盟問題、アジア太平洋連邦の拡大問題もある。
「どうする??
いっそのこと、『アジア太平洋・ユーラシア連邦』でも作ろうか??」
アルベルトが提案した。
「いいね、いいね。
その意見。
早速検討しようか??」
私が、アルベルトの提案に賛同した。
「こんな事で、重要な政策が決定されるとは、驚きだ!!」
高田純次記者と妻の高田さゆり記者が、本当に驚いて言った。
ミスティとヒルダが、その応答を聞いて、笑った。
「2人は、いつもこうですわ。」
ミスティが言った。
「良いコンビだわねえ。」
ヒルダが言った。
ああ、今日も朝が楽しく、そして美しい。
今回は、悪徳金融資本の崩壊後の政変劇とその後の動乱の顛末を2125年年末から2126年年始にかけて描きました。
歴史やマスコミへの皮肉、昨今の国際情勢についての厳しい指摘も盛り込んだつもりです。
宇宙医科大学校の真の目的が『新人類や新文明の創造』であったことが判明しました。
私達は政治家の仲間入りを果たした後、どのように実行していくのか??
私達に対する期待もますます膨らむ中、日本連邦や欧州連邦に加えて、新たにアジア太平洋連邦が結成され、それらの更なる拡大や大統領就任に向けて、何を求められ、成果を挙げるのか??
次回は新章に突入、いよいよ、大激動の動乱の中で大統領への道を切り開いていきます。
次回をお楽しみに。