「ねぇなんで!?なんでまたその女を庇うの!?」
錯乱したように剣を振るう蛍
カナメは怪我させないように受け流しながら蛍を押し込み、銀月の庭の外に出す
一心不乱に6元素を振り回してくる蛍
(稲妻の時よりかなり強くなってるな…)
前までは難なく受け止められた剣戟も今は受け流せないと致命傷足りうるほどになっている
だが、今は正気を失った蛍だからこそ優位に立てている
「蛍!一旦落ち着け!」
「落ち着くのはカナメの方!なんでまだあいつらみたいな!人殺しの組織に従ってるの!?」
(…そういうことか)
稲妻での哲平の1件から3つの国を跨いだが、彼女の中に憎悪が根深く息づいていることに気づく
旅をしている中で彼女はとんでもないお人好しだが自分の目的のためなら様々なことを切りかねない…そんな人物だと思っていた
(蛍…お前…)
いや…それよりももっと彼女の心に傷を残してしまったのかもしれない
彼女に頼み込まれ、少しの間旅に同行した
そして稲妻で自身の上司である淑女を助けるため、彼女を裏切った
仲間から裏切られるというのは人の心を容易に壊す
「………蛍」
激しき剣戟の中、カナメは突如として剣を手放す
蛍は突飛な行動に目を剥き、対応が遅れてしまう
雷元素で突っ込んできていた蛍をカナメは抱きとめ、そのまま強く抱き締めた
「ッ!?」
急に抱きしめられた蛍は少し頬を赤く染める
驚きから彼女も剣を落としていた
「………すまなかった」
カナメの口から漏れた謝罪の言葉
その言葉に蛍は固まる
「俺の都合だけで…お前に辛い思いをさせてしまった」
彼女にすることは謝罪だ
彼女の心を裏切った罪、彼女の傷を放置した罪
「……そんなこと言われたって…」
「許して欲しいとは言わない…だけど…これだけは言いたかった」
蛍を離し、目を真っ直ぐみる
先程の底冷えするような昏い目では無くなっている
「お前との旅は…人生でいちばん楽しかった」
それは嘘偽りのない真実の言葉
日本からテイワットに来て、たしかに色んな人たちと楽しく生きてきた
でも、やっぱりこの世界の人間では無いと思ってしまうことがあった
外の世界から来たという旅人と一緒にいる時は、何も気にせずに過ごせていた
「そっか…そうだよね…」
蛍は落ち着き、何かを呟いている
少し暴れすぎたのかウトウトとして、そのまま腕の中で寝てしまった
地面に降り立ち、銀月の庭に戻る
「…話は済んだのか?」
「…目覚めたらまたしっかりと…」
「あんた、自分でやったんだからしっかりとそこら辺の話はつけときなさいよ」
執行官達に礼をしてからパイモンちゃんに案内して貰って彼女の部屋のベッドに寝かせる
「……今日の蛍は何かおかしかったぞ」
「ごめんねパイモンちゃん。起きたらちゃんと話するからさ」