「全く…面倒なことになった…」
ロノヴァは蛍の部屋からカナメを連れ出し、彼の部屋に寝かせる
そのまま虚空を睨みつける
「そんなに見ないでよ…私も君も合意の上だったでしょ」
そこにイスタロトが現れる
「……君が時間軸を弄ったせいでいろいろ無理が出て来てるんだよ…君とアスモダイが時空を弄って集めたせいで…」
「でも、そうしなきゃこの世界にカナメは存在してないでしょ」
イスタロトはいつの間にか眠っているカナメの頭部を自身の膝に乗せておりおでこを撫でている
「彼はどの世界でも…どの時間に生まれても誰かと恋に落ちて…世界を…その誰かを守るために死ぬ。私たちはそれが許せなかった。だから無理をしてでも彼をここにいさせてるんでしょ?」
それは天理が眠りについてから秘密裏に4つの影で交わした密約
世界樹にも記録されない異物…そんな彼はどの時間軸でもテイワットを訪れ、誰かと仲を深める
だが、この世界には決められた破滅が大なり小なり訪れる
本来なら犠牲を出して乗り越える破滅…だがカナメはそれを許さない
矮小な凡人の身でありながら運命を乗り越え、誰かを救う
例え自分の身を犠牲にしてでも
4つの影達は、その生き方に興味を持ち、人に初めての嫉妬の気持ちを芽生えさせた
そして、彼女達は選んだ
彼が来たことで生れた無数の可能性の世界
本来なら破滅して剪定され、アビスと成り下がる世界は彼の尽力で世界として進んでいた
だが、どの世界でも時間がズレている違いはあれども彼の人生は終わる
なら…すべての世界を集めれば、「彼」という人間を再現できるのではないか
「君とアスモダイが提案してきた時…背筋が凍ったよ」
「レインドット…」
「すでに死んでる人の人生を継ぎ接ぎにすることで無理やり生きているという結果を生み出すという考えは私がまだ人間だったころには考えもしなかったよ」
楽しそうにクツクツと笑うレインドット
彼女はカナメの前に立って体を舐めるようにゆっくりと見る
「だが…その影響で彼と過ごした記憶のある者たちが少しずつ漏れ始めている…由々しき事態だ」
「……この前も危なかった…土着神…フェイ…彼が記憶を取り戻すきっかけは無数にある」
本来なら4人で話し合うことを今は3人で話し合っている
空間を司り、彼以外の人間の融合を防ぐ役割である彼女がいないことが今の事態を引き起こしている
3人の結論は同様だった
「アスモダイ…」
「まぁ…彼女がいなくてもそこまで大きい問題は起きないと思う。彼をしっかり見といて、記憶を思い出しそうな時に死を、時を与えて天空の島にばれる前に生で蘇らせればいい。今までと変わらない」
「もう時間だ。彼を起こすよ」
レインドットが指を鳴らす
ピクリともしなかったカナメが呼吸を始める
「大丈夫さ。きっと上手く行く」
そう言いながらレインドットは去っていく
名残惜しそうにしながらもイスタロトも戻る
「………君は…」
ロノヴァはまだ眠っているカナメの顔を見下ろす
寝ているときは少し幼さを感じるその顔の頬を撫でる
「カナメ無事!?」
ドアが蹴破られ、蛍が部屋に押し入ってくる
その時にはもうその部屋にはカナメしかいなかった