「お祭り?月神祭?」
「ああ。その日にコロンビーナは月に帰る手はずだ」
いや月に帰るって…かぐや姫かよ…
「彼女は蒼月の子の讃えているクータルその人であることはもう理解しているだろう?」
「ああ。あの像を見た時にはピンと来てたよ」
銀月の庭で少女本人から聞いたしそれは疑っていない
だが、月に帰ると言うのが突拍子もなくて信じられなかったのだ
「明日に行う。もう出店なども揃っているから楽しみにしているといい」
そう言って去っていく召使
カナメは渡されたチラシを見ながらベッドに寝転がる
(そういや蛍にも誘われてたし…任務終了の報告のためにも帰る時に見させて貰うか)
忘れてはいけないが女皇陛下からの命でカナメは少女を探しに来ていること
『別に無理に連れ帰ることは無いわ。体裁のために指名手配はするけど当人の意見を尊重しなさい』
女皇陛下は少女の自由を尊重しろと言っていた
ならカナメは従うだけだ
「一眠りするか…」
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「…ああ…寝すぎたか」
次に目が覚めた時、外では夜なのに明るく、子供たちが遊ぶ声が聞こえた
服を整えて外に出ると色んな人たちが祭りを楽しんでいた
「おかえりなさい月神様」
道を歩いていると飴を持ったお兄さんから飴を貰いながら挨拶される
月神祭だしそういう挨拶にしたのだろう
「……祭、久しぶりだな」
スネージナヤには祭のようなものはないし、もしかしたら日本の夏祭り以来かもしれない
「お!腹黒野郎!」
「おかえりなさい!月神様!」
「ハハッ。楽しんでるみたいだな」
楽しそうに笑いながら挨拶してくる蛍
「私もいますよ」
「おお。ティレルも楽しんでそうだな」
横からひょっこりと猫耳を付けたティレルが出てくる
髪の色と合った猫耳はまるで元々猫耳があったように感じる
「猫耳可愛いな」
「カナメさんは…こんな感じが好きなんですか?」
猫耳をいじりながら聞いてくるティレル
好きか嫌いかで言ったら好きだ
「……………」
だが、後ろから痛いほど刺さってくる視線で答えられない
そのまま固まっていると後ろからツンツンと小突かれる
後ろを見るとティレルと同じく髪色にあった猫耳をつけている蛍がそこにはいた
「………何かないの?」
「………似合ってるよ。それっぽい」
「ッ…う……っ!!…そ、それっぽいって何!?何が言いたいの?」
「猫みたいだって言ってんだよ。ほら、お友達が来たぞ」
詰めてくる蛍からどうにか逃れようとしていた時に蛍の後ろから歩み寄って来ていた人影を見て笑う
「わっ…!」
「わぁ!?コ、コロンビーナ!?」
蛍の後ろから脅かすように声をかける少女
蛍は突然の強襲に驚くことしかできていなかった
「楽しそうな話してたから来ちゃった。さっきあっちでサンドローネとアルレッキーノも猫耳つけてたよ」
(マジか)
あの傀儡と召使が猫耳…
あまり考えられないな
「コロンビーナも楽しんでる?」
「うん。色んな人と遊べて楽しい」
あんなににこやかな少女は初めて見る
いつも見る時はぼーっとしているというか、浮世離れしているというか…
とにかく今みたいに等身大に楽しんでいる姿は見なかった
「…カナメ…だっけ?楽しい?」
「ええ。俺は祭の雰囲気だけで楽しめるので」
「敬語じゃなくていいよ。もう執行官じゃないし」
「……いえいえ…性分的にあまりすぐには変えられない質でして…敬語でも?」
「うんいいよ」
昔の話しかけづらい雰囲気ではなく、ただ1人の少女としてそこにいるコロンビーナはそう言って微笑んだ
「この後、蛍と一緒に色んなとこで遊ぼうと思ってるんだけど…一緒に来る?」
「……蛍も良いか?」
「うん!大歓迎だよ!」
蛍からの了承も得たため、コロンビーナと蛍に同行することになる
様々なアトラクションをみんなで回った
まぁ、カナメはアトラクションに乗るよりも蛍とコロンビーナを写真機で撮ることが多かったが
写真機には前よりもはるかに多くの楽しい写真が残っていた__________________________________________________
「じゃあね」
楽しい時間はすぐに過ぎ去り、コロンビーナが月に帰る時になった
蛍、召使、ラウマさんが光の先へと歩を進めるコロンビーナを見守っていた
カナメは外側でそれを見守る
「ありがとう。テイワットで1番楽しい夜だった」
「またね!コロンビーナ!」
蛍も笑顔で手を振る
悲しい別れではなく、喜ばしい門出
コロンビーナは4人の見守る中、光の中へ消えていった
月神祭の夜、ナドクライは人々の喧騒に満ちていた
その喧騒も人が心から笑顔になるような満月の下、街中を賑やかにしていた
だからこそ、ドドコの音は喧騒に呑まれてしまった
月夜を暗雲が覆い尽くしてしまう
「ほう?月はこうも我々と近かったのか!」