全ての準備が整い、博士を待ち構えている間、蛍はニコと話していた
「……そういえば…ニコはカナメとはどんな関係なの?」
「……私がまだ天の使いだった頃の話よ」
ニコが炎で何かを描き出す
緻密に描かれたそれは、カナメの似顔絵だった
「彼と会ったのは…私が天の使いとして初めて地上に降りてきた時」
次に描くのは炎の人型と炎の天使
2人は一緒に動き、回り、どこかへと歩いていった
「でも…私たちは天の使い。誰かと恋することは認められてない」
そう言ってニコは指を振る
2人は引き剥がされた
「……天の使いから知恵と力が奪われ、私が再び地上に戻ってきた時、既に彼は死んでいたわ」
「……そっか…」
「だから、最初彼を見つけた時、偽物だと思ったの」
「…そっか」
「だって信じられるかしら?死んだと思って……何百年も引きずった人だったのに……ある時ポッと出てくるなんて」
「私だったらアビスを疑っちゃうなぁ」
思わず苦笑が出てしまう
ナタでも経験したがアビスは人に擬態することがある
「ね、ねぇ……その…ニコはカナメのことが好きだったの?」
「ええ。彼の遺体を抱いて数十年泣いてしまうくらいにはね」
2人も黙り込んでしまう
その間、炎の人型は倒れ、炎の天使は泣いていた
「……旅人の提案が上手くいったなら…またカナメは帰ってくるのかしら?」
「…分からない。帰ってきたとしても…それが今までのカナメ本人なのかも分からない」
新しく作られたカナメは本当にカナメなのか?
記憶はもう無くて、全く別人になってしまうんじゃないか
「でも…カナメが帰ってきてくれるならやる価値はある」
「そうね。今日、2人を取り戻しましょう」
「おーい!旅人!ニコさん!あいつが来たぞ!」
下からヤフォダの声がした
蛍は柵を乗り越え、下に降りる
「各自作戦通りにお願い!」
蛍は自分の持ち場へと急ぐ
その場にはドットーレの作り出した造物と部下のファデュイが徘徊しており、剣を使って切り伏せていく
手分けしてドットーレの造物やファデュイを倒していく
そして…残るはドットーレのみとなった
「喜ばしい限りだ。実験対象が簡単に死んでくれては実験のしようがない」
悠然と歩きながら拍手をしてくるドットーレ
彼の背後には月髄が埋め込まれた装置が浮いている
「お前らのときを終わらせる前に、世界は私の降臨を知るべきだ」
ドットーレの姿が変わり、地面が揺れる
砂埃の後、場は巨大な掌の上へと移り変わる
偽りの空が裂かれ、本来の宇宙と月が垣間見える
「さぁ、実験を開始する」